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浦部法穂の憲法時評 --「ミサイル」狂騒曲 (2)

2009年07月01日 | 国際・政治

昨日に引き続き、2009年4月20日付け法学館憲法研究所HPの「浦部法穂の憲法時評」から「『ミサイル』狂騒曲 」のつづきを転載します。(サイト管理者)

もし、北朝鮮のミサイルの脅威をいうのであれば、少なくとも日本にとっては、今回の「発射」は、「万一の失敗・事故」以外には新たな「脅威」をもたらすものであったわけではない。なぜなら、北朝鮮は、すでに、日本を射程に収める中距離ミサイルを持っており実戦配備済みだといわれているからである。その意味で、今回の「発射」について、日本がとくに突出して大騒ぎしなければならない必然性はないのである。北朝鮮が長距離ミサイルをもつことになれば、アメリカ本土へのミサイル攻撃が可能になるという意味で、アメリカにとっては直接的な「脅威」となろう。そのアメリカでさえ、今回の「発射」をアメリカに対する直接の脅威とはみなさないと表明しているのだから、日本の騒ぎ方は異常としかいいようがない。
安保理の協議でも、アメリカは「国連決議に合致しない」という表現での声明案を提案したが、日本は「国連決議違反」と明記することを主張するなど、日本の強硬さは突出している。また、韓国は、自分から強硬な態度を表明するのでなく、日本に言わせてそれへの支持を表明するにとどめるという、したたかな外交戦略をとっている。こうした各国の対応のなかで、日本だけが北朝鮮と真正面から対立するような構図になることが、はたして日本にとって得策であろうか。
支持率低迷にあえぎ解散さえままならない麻生政権にとってみれば、大騒ぎすることで政権の求心力を高め支持率を回復させたいという思いがあるのであろう。また、自衛隊の存在感を高める効果も期待できよう。分かりやすい「敵」を作り上げることで権力の求心力を高めるというのは、権力にとっての常套手段である。北朝鮮という分かりやすい「敵」が日本の方向に向けて「ミサイル」を発射してきたのだからこれ以上の好機はない、ということであろう。だが、それは、北朝鮮の金正日政権にとっても同じである。日本が騒げば騒ぐほど、日本という分かりやすい「敵」のおかげで、金正日体制の求心力は一層高まるのである。日本の対応は、いってみれば、向こうの思うつぼ、なのである。北朝鮮の「瀬戸際外交」に対し、真っ向からぶつかって怒るだけが能ではなかろう。敵対するばかりでは、対話の道は閉ざされてしまい、核問題や拉致問題といった懸案の解決は遠のくだけである。政府やマスコミに踊らされて大騒ぎするのでなく、冷静な目でものを見ることが、私たちには求められると思う。

【出典】法学館憲法研究所顧問HP「浦部法穂の憲法時評」2009年4月20日付けより

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