とだ九条の会blog

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真の国際貢献とは

2006年06月15日 | 国際・政治
イラク戦争を機に「国際貢献」とか「国際協調」という言葉を耳にする機会が多くなったように思います。世界第2位の経済大国・日本が、国際的な役割を果たすという主張はわからないでもありませんが、その中身が問題です。

イラク戦争では、日米同盟を重視し、日本が米国に協力することが「国際協調」であるかのような論調がありました。しかし、米国は国連加盟国の圧倒的多数がイラクへの武力行使に反対するなかで、それを無視して先制攻撃に踏み切りました。それも結果的にはありもしなかった「大量破壊兵器」を口実に、10万人ともいわれるイラク市民を殺戮しました。その犠牲の7割が非戦闘員の女性や子どもだったのです。
その意味では、米国自身が「国際協調」の立場に立っていなかったわけで、その米国に同調した日本政府の責任は重大です。

「内戦や紛争に苦しむ国々に対して、国連として軍事的な対応も含めて必要なときに日本は何もしないでいいのか」との主張は、「国際協調」を理由に憲法九条を変えるべきだという論調につながります。
日本だけが“一国平和主義でいいのか”と聞こえてきそうですが、そのことについて埼玉大学名誉教授の暉峻淑子(てるおか・いつこ)さんが、2004年11月に衆議院「憲法調査会」の中央公聴会で次のように発言しています。

暉峻さんは、自分自身が10数年かかわっている、紛争下での難民・孤児・病人・貧困者を救援しているNGO(非政府組織。平和・人権問題などで国際的な活動を行っている非営利の民間協力組織)の活動の中で、国際貢献についてどう考えているかについて話したいと切りだし、
「現在、私たちが十分でないにせよ享受している人権も、環境も福祉も、民主主義も言論の自由も、平和憲法がなければありえなかった……私たちの日々の暮らしを支えている人権規定は、すべて九条の規範と表裏一体となっているものだと思います」と述べたうえで、
「国民の人権と福祉のレベルが高い国ほど、例えば北欧の国々の国際援助の国内総生産に占める割合は、日本よりもはるかに高く、公的な資料で、日本はGDP比0.23、デンマーク1.03、スウェーデン、ノルウエーともに0.81という状況です。私はむしろ、自分の国で平和と人権を尊重している国こそが、外国への本当の意味の人道援助ができる国であると思っています」と語っています。
改憲勢力は、「国際貢献」という言葉を自衛隊の派兵と同じ意味で使っていますが、自衛隊の派兵を歓迎する国は、イラク戦争でも明らかなようにアメリカ以外にありません。
「国際貢献」とか「国際協調」とかいうならば、世界が歓迎するものでなければなりません。真の「国際貢献」とは、武力によるのではなく、世界のほとんどの紛争の原因である“地球上に広く存在する飢餓や貧困”の克服に、我が国の高度に発達した経済や科学技術の力を役立たせることではないでしょうか。

暉峻さんは公述のなかで、現在の日本社会が、新自由主義が生んだいわゆる「勝ち組」「負け組」の世界に分裂し、国の政策も税制や補助金やその他でこれを推し進め、格差と差別思想が広がって人権意識がなくなってきていることに触れながら、「…『国際貢献』も、すべての基礎は人権の尊重に由来しているのに、国内の人権意識が衰えていくのは、人権に逆行する軍事化路線が強くなっていっているからではないでしょうか」と指摘しています。


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