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男女平等への攻撃 ~憲法第24条を考える~(その2)

2006年06月24日 | 国際・政治
2004年6月発表された「自民党憲法調査会憲法改正プロジェクトチーム」による「論点整理」を見てみましょう。


「論点整理」では、まず総論で「新憲法制定にあたっての基本的考え方」として、「家族や共同体が、“公共”の基本をなすものとして、新憲法において重要な位置を占めなければならない」とし、基本的人権の分野に関して「新しい時代に対応する新しい権利をしっかり書き込むべきである」としつつ、「同時に、権利・自由と表裏一体をなす義務・責務…についても…新憲法にしっかりと位置付けるべきである」としています。
そして見直すべき規定の一つとして「婚姻・家族における両性平等の規定(現第24条)は、家族や共同体の価値を重視する観点から見直すべきである」と展開します。

「家族や共同体の価値を重視」することが、なぜ「婚姻・家族における両性平等の規定を見直す」ことになるのか――よく分かりません。“両性の平等”が“家族や共同体の価値”を邪魔するようです。
それを解くカギが「今後の議論の方向性」という項目で語られています。

「……本プロジェクト内の議論の根底にある考え方は、近代憲法が立脚する『個人主義』が戦後のわが国においては正確に理解されず、『利己主義』に変質させられた結果、家族や共同体の破壊につながってしまったのではないか、ということへの懸念である。権利が義務を伴い、自由が責任を伴うことは自明の理であり、われわれとしては、家族・共同体における責務を明確にする方向で、新憲法における規定ぶりを考えていくべきではないか。……」


さらに「国民の権利及び義務」の項で「公共の責務(義務)」として「社会連帯・共助の観点から“公共的な責務”に関する規定を設けるべきである」「家族を扶養する義務を設けるべきである」「国の防衛及び非常事態における国民の協力義務を設けるべきである」としていることから、まず「家族・共同体における責務」とは「家族を扶養する義務」のようです。

つまり、「戦後の利己主義」⇒「義務や責任への無理解」⇒「家族・共同体の破壊」⇒「家族・共同体の価値の重視」⇒「家族・共同体における責務の明確化」⇒「家族を扶養する義務の新憲法への明記」⇒「婚姻・家族における両性平等の規定の見直し」という図式が念頭に置かれて書かれているわけです。

それでも新憲法に明記するとした「家族を扶養する義務」が、どうして「婚姻・家族における両性平等の規定の見直し」に繋がるのか。
その答えは「公共の責務(義務)」のもう一つ「国の防衛及び非常事態における国民の協力義務を設けるべきである」と合わせて考えれば見えてきます。

つまり国防ということに関して、主に兵役の義務は男性に、それを銃後で支えるのが女性であると。それは、戦後の国民が権利ばかり主張し、社会や国家に対する責務を果たさなくなったという危機意識にもとづいています。特に男女平等の精神が、女性の「利己主義」を助長し、家庭の義務をかえりみないできたと。今のジェンダーバッシングの根底にある「男は男らしく、女は女らしく」とする性別役割分業意識とピッタリ重なります。

さらに「公共の責務(義務)」として「社会連帯・共助の観点から“公共的な責務”に関する規定を設けるべきである」というように、現行憲法の第25条の社会権規定についても「国家に課せられている社会保障整備義務が、社会保障を支える国民の義務」にすりかえられています。これも国防を果たすための一体の「公共の責務」なのです。


「今の日本国憲法をみておりますと、あまりにも個人が優先し過ぎで、公というものがないがしろになってきている。個人優先、家族を無視する、そして地域社会とか国家というものを考えないような日本人になってきたということを非常に憂えている。夫婦別姓が出てくるような日本になったということは大変情けないことで、家族が基本、家族を大切にして、家庭と家族を守っていくことが、この国を安泰に導いていくもとなんだということを、しっかりと憲法でも位置付けてもらわなければならない」<森岡正宏衆議院議員>

「実は日本国憲法の最大の欠陥は、第9条以上に、24条的なもの、家族とかコミュニティというものを全く認めないところではないか。日本国憲法が、家族やコミュニティ、あるいは愛国心を含めて、コミュニティの最大のものである国家というものに対する国民のあるべき姿を全く描いていない」<鳩山邦夫衆議院議員>


……自民党憲法調査会での自民党議員の発言です。


「よい家族こそ、よい国の礎」<熊代明彦衆議院議員>なのに、第24条の定める男女平等の家族観では、“国を守るために立ちあがる男性も、そうした男性を支える女性も育たない”そして、戦後はびこった利己主義によって破壊された“公共”を再構築したい」――これこそが改憲派の第24条攻撃の本音なのです。


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