後撰和歌集(原文推定、翻文、解釈付)
武末幾仁安多留未幾
巻六
安幾奈可
秋中
歌番号二七一
恵无幾乃於无止幾尓安幾乃宇多免之遣礼者多天万川利个留
延喜御時尓秋哥免之遣礼者多天万川利个留
延喜御時に秋歌召しければ、たてまつりける
幾乃川良由幾
紀貫之
紀貫之
原文 安幾々利乃多川奴留止幾者久良不也麻於保川可奈久曽三衣和多利个留
定家 秋霧乃立奴留時者久良不山於保川可奈久曽見衣渡个留
和歌 あききりの たちぬるときは くらふやま おほつかなくそ みえわたりける
解釈 秋霧の立ちぬる時はくらぶ山おぼつかなくぞ見え渡りける
歌番号二七二
恵无幾乃於无止幾尓安幾乃宇多免之遣礼者多天万川利个留
延喜御時尓秋哥免之遣礼者多天万川利个留
延喜御時に秋歌召しければ、たてまつりける
幾乃川良由幾
紀貫之
紀貫之
原文 者奈三尓止以天尓之毛乃遠安幾乃々々幾利尓末与比天个不者久良之徒
定家 花見尓止以天尓之物遠秋乃野々霧尓迷天个不者久良之徒
和歌 はなみにと いてにしものを あきののの きりにまよひて けふはくらしつ
解釈 花見にと出でにし物を秋の野の霧に迷ひて今日は暮らしつ
歌番号二七三
可武部為乃於保武止幾々左以乃美也乃宇多安者世尓
寛平御時幾左以乃宮乃哥合尓
寛平御時后の宮の歌合に
与三比止之良寸
与三人之良寸
よみ人しらす
原文 宇良知可久堂川安幾々利者毛之本也久煙止乃美曽見衣和多利个累
定家 浦知可久堂川秋幾利者毛之本也久个布利止乃美曽三衣和多利个累
和歌 うらちかく たつあききりは もしほやく けふりとのみそ みえわたりける
解釈 浦近く立つ秋霧は藻塩焼く煙とのみぞ見えわたりける
歌番号二七四
於奈之於保武止乃遠三奈部之安者世尓
於奈之御時乃遠三奈部之安者世尓
同じ御時の女郎花合せに
布知八良乃於幾可世
藤原於幾可世
藤原おきかせ(藤原興風)
原文 於累可良尓和可奈者多知奴遠美奈部之以左於奈之久者波奈/\尓三武
定家 於累可良尓和可奈者多知奴女郎花以左於奈之久者波奈/\尓見武
和歌 をるからに わかなはたちぬ をみなへし いさおなしくは はなはなにみむ
解釈 折るからに我が名は立ちぬ女郎花いざ同じくは花々に見む
歌番号二七五
於奈之於保武止乃遠三奈部之安者世尓
於奈之御時乃遠三奈部之安者世尓
同じ御時の女郎花合せに
与美比止之良春
与美人之良春
よみ人しらす
原文 安期乃々々川由尓遠可留々遠美奈部之者良不人奈美奴礼川々也布留
定家 秋乃野々露尓遠可留々女郎花者良不人奈美奴礼川々也布留
和歌 あきののの つゆにおかるる をみなへし はらふひとなみ ぬれつつやふる
解釈 秋の野の露に置かるる女郎花はらふ人無み濡れつつやふる
歌番号二七六
於奈之於保武止乃遠三奈部之安者世尓
於奈之御時乃遠三奈部之安者世尓
同じ御時の女郎花合せに
与美比止之良春
与美人之良春
よみ人しらす
原文 遠美奈部之者奈乃己々呂乃安多奈礼者安幾尓乃美己曽安比和多利个礼
定家 遠美奈部之花乃心乃安多奈礼者秋尓乃美己曽安比和多利个礼
和歌 をみなへし はなのこころの あたなれは あきにのみこそ あひわたりけれ
解釈 女郎花花の心のあだなれば秋にのみこそ逢ひわたりけれ
歌番号二七七
者々乃布久尓天佐止尓者部利个留尓世无多以乃
於保武布三堂万部利个留於保武可部之己止尓
者々乃布久尓天佐止尓侍个留尓世无多以乃御
布三堂万部利个留御返己止尓
母の服にて里に侍りけるに、先帝の
御文たまへりける御返事に
於保美乃己布以
近江更衣
近江更衣
原文 佐美多礼尓奴礼尓之曽天尓以止々之久川由遠幾曽不留安幾乃王日之左
定家 佐美多礼尓奴礼尓之袖尓以止々之久川由遠幾曽不留秋乃王日之左
和歌 さみたれに ぬれにしそてに いととしく つゆおきそふる あきのわひしさ
解釈 五月雨に濡れにし袖にいとどしく露置きそふる秋のわびしさ
歌番号二七八
於保武可部之
御返之
御返し
恵无幾乃於保美宇多
延喜御製
延喜御製
原文 於保可多毛安幾者和比之幾止幾奈礼止川由个可留良武曽天遠之曽遠毛布
定家 於保可多毛秋者和比之幾時奈礼止川由个可留覧袖遠之曽思
和歌 おほかたも あきはわひしき ときなれと つゆけかるらむ そてをしそおもふ
解釈 おほかたも秋はわびしき時なれど露けかるらん袖をしぞ思ふ
歌番号二七九
天武之以武於保武麻恵乃者奈乃止於毛之呂久安左川由乃
乃遠个留遠女之天三世左世多万比天
亭子院乃御前乃花乃以止於毛之呂久安左川由
遠个留遠女之天見世左世給天
亭子院の御前の花のいとおもしろく朝露の
置けるを召して見せさせたまひて
保武己保乃於保美宇多
法皇御製
法皇御製
原文 之良川由乃加者留毛奈尓可於之可良无安利天乃々知毛也々宇幾毛乃遠
定家 白露乃加者留毛奈尓可於之可良无安利天乃々知毛也々宇幾毛乃遠
和歌 しらつゆの かはるもなにか をしからむ ありてののちも ややうきものを
解釈 白露の変るも何か惜しからんありての後もやや憂きものを
歌番号二八〇
於保武可部之
御返之
御返し
以世
伊勢
伊勢
原文 宇部堂天々幾美可志女由不者奈々礼者多万止美衣天也川由毛遠久良无
定家 宇部堂天々君可志女由不花奈礼者玉止見衣天也川由毛遠久良无
和歌 うゑたてて きみかしめゆふ はななれは たまとみえてや つゆもおくらむ
解釈 植ゑ立てて君がしめ結ふ花なれば玉と見えてや露も置くらん
歌番号二八一
多以布可己布良宇天无尓者部利个留尓布知川本与利
遠三奈部之遠々利天川可八之个留
大輔可後涼殿尓侍个留尓布知川本与利
遠三奈部之遠々利天川可八之个留
大輔が後涼殿に侍りけるに、藤壺より
女郎花を折りてつかはしける
美幾乃於保伊萬宇智岐美
右大臣
右大臣
原文 遠利天三留曽天左部奴留々遠三奈部之川由个幾者乃止以万也志留良无
定家 折天見留袖左部奴留々遠三奈部之川由个幾物止今也志留良无
和歌 をりてみる そてさへぬるる をみなへし つゆけきものと いまやしるらむ
解釈 折りて見る袖さへ濡るる女郎花露けき物と今や知るらん
歌番号二八二
可部之
返之
返し
多以布
大輔
大輔
原文 与呂川世尓加々良武川由遠々美奈部之奈尓於毛布止可万多幾奴留良无
定家 与呂川世尓加々良武川由遠々美奈部之奈尓思止可万多幾奴留覧
和歌 よろつよに かからむつゆを をみなへし なにおもふとか またきぬるらむ
解釈 よろづ世にかからむ露を女郎花なに思ふとかまだきぬるらん
歌番号二八三
万多
又
又
美幾乃於保伊萬宇智岐美
右大臣
右大臣
原文 遠幾安可寸川由乃与奈/\部尓个礼者万多幾奴留止毛於毛者佐利个利
定家 遠幾安可寸川由乃与奈/\部尓个礼者万多幾奴留止毛於毛者佐利个利
和歌 おきあかす つゆのよなよな へにけれは またきぬるとも おもはさりけり
解釈 起き明かす露の夜な夜なへにければまだきぬるとも思はざりけり
歌番号二八四
可部之
返之
返し
多以布
大輔
大輔
原文 以万者々也宇知止个奴部幾之良川由乃己々呂遠久万天与遠也部尓个累
定家 今者々也打止个奴部幾白露乃心遠久万天与遠也部尓个累
和歌 いまははや うちとけぬへき しらつゆの こころおくまて よをやへにける
解釈 今は早うちとけぬべき白露の心置くまで夜をやへにける
歌番号二八五
安比之利天者部利个留遠无奈乃安多奈多知天者部利个礼者
比左之久止不良者左利个利者知可川者可利尓遠无奈乃毛止与利
奈止可以止徒礼奈幾止以飛遠己世天者部利个礼者
安比之利天侍个留女乃安多奈多知天侍个礼者
比左之久止不良者左利个利八月許尓女乃毛止与利
奈止可以止徒礼奈幾止以飛遠己世天侍个礼者
あひ知りて侍りける女の、あだ名たちて侍りければ、
久しく訪ぶらはざりけり。八月ばかりに女のもとより、
などかいとつれなきと言ひおこせて侍りければ
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 之良川由乃宇部者徒礼奈久遠幾為川々者幾乃志多者乃以呂遠己曽三礼
定家 白露乃宇部者徒礼奈久越幾為川々萩乃志多者乃色越己曽見礼
和歌 しらつゆの うへはつれなく おきゐつつ はきのしたはの いろをこそみれ
解釈 白露の上はつれなく置きゐつつ萩の下葉の色をこそ見れ
歌番号二八六
可部之
返之
返し
以世
伊勢
伊勢
原文 己々呂奈幾美者久佐者尓毛安良奈久尓安幾久留可世尓宇多可八留良无
定家 心奈幾身者草葉尓毛安良奈久尓秋久留風尓宇多可八留良无
和歌 こころなき みはくさはにも あらなくに あきくるかせに うたかはるらむ
解釈 心なき身は草葉にもあらなくに秋来る風に疑はるらん
歌番号二八七
於止己乃毛止尓川可者之个留
於止己乃毛止尓川可者之个留
男のもとにつかはしける
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 比止者以左己止曽止毛奈幾奈可女尓曽和礼者川由个幾安幾毛之良留々
定家 人者以左事曽止毛奈幾奈可女尓曽我者川由个幾秋毛之良留々
和歌 ひとはいさ ことそともなき なかめにそ われはつゆけき あきもしらるる
解釈 人はいさ事ぞともなきながめにぞ我は露けき秋も知らるる
歌番号二八八
比止乃毛止尓於者奈乃以止堂可幾遠徒可者之多利个礼者
可部利己止尓志乃不久左遠久者部天
比止乃毛止尓於者奈乃以止堂可幾遠徒可者之
多利个礼者返事尓志乃不久左遠久者部天
人のもとに尾花のいとたかきをつかはしたりければ、
返事に忍草を加へて
知宇久布乃世无之
中宮宣旨
中宮宣旨
原文 者奈寸々幾保尓以川留己止毛奈幾也止者武可之々乃布乃久左遠己曽美礼
定家 花寸々幾保尓以川留事毛奈幾也止者昔忍乃草遠己曽見礼
和歌 はなすすき ほにいつることも なきやとは むかししのふの くさをこそみれ
解釈 花薄穂に出づる事もなき宿は昔忍ぶの草をこそ見れ
歌番号二八九
可部之
返之
返し
以世
伊勢
伊勢
原文 也止毛世尓宇部奈女川々曽和礼者美留万祢久於者奈尓比止也止万留止
定家 也止毛世尓宇部奈女川々曽我者見留万祢久於者奈尓人也止万留止
和歌 やともせに うゑなへつつそ われはみる まねくをはなに ひとやとまると
解釈 やどもせに植ゑなめつつぞ我は見る招く尾花に人やとまると
歌番号二九〇
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止毛
与美人毛
よみ人も
原文 安幾乃与遠以多川良尓乃美越幾安可寸川由者和可美乃宇部尓曽阿利个留
定家 秋乃夜遠以多川良尓乃美越幾安可寸露者和可身乃宇部尓曽有个留
和歌 あきのよを いたつらにのみ おきあかす つゆはわかみの うへにそありける
解釈 秋の夜をいたづらにのみ起き明かす露は我が身の上にぞ有りける
歌番号二九一
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止毛
与美人毛
よみ人も
原文 於保可多尓遠久之良川由毛以万与利八己々呂之天己曽美留部可利个礼
定家 於保可多尓遠久白露毛今与利八心之天己曽見留部可利个礼
和歌 おほかたに おくしらつゆも いまよりは こころしてこそ みるへかりけれ
解釈 おほかたに置く白露も今よりは心してこそ見るべかりけれ
歌番号二九二
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
美幾乃於保伊萬宇智岐美
右大臣
右大臣
原文 川由奈良奴和可美止於毛部止安幾乃与遠加久己曽安可世於幾為奈可良尓
定家 露奈良奴和可身止思部止秋乃夜遠加久己曽安可世於幾為奈可良尓
和歌 つゆならぬ わかみとおもへと あきのよを かくこそあかせ おきゐなからに
解釈 露ならぬ我が身と思へど秋の夜をかくこそ明かせ起きゐながらに
歌番号二九三
安幾乃己呂遠比安留止己呂尓於美奈止毛乃安満多寸乃宇知仁
者部利个留仁於止己乃宇多乃毛止遠以比以礼天者部利个礼八
春恵者宇知与利
秋乃己呂遠比安留所尓女止毛乃安満多寸乃内仁
侍个留仁於止己乃哥乃毛止遠以比以礼天侍个礼八
春恵者宇知与利
秋のころほひ、ある所に女どものあまた簾の内に
侍りけるに、男の歌の本を言ひ入れて侍りければ、
末は内より
与美比止之良春
与美人之良春
よみ人しらす
原文 之良川由乃越久尓安万多乃己恵寸礼者々奈乃以呂/\安利止志良奈无
定家 白露乃越久尓安万多乃声寸礼者花乃色/\有止志良奈无
和歌 しらつゆの おくにあまたの こゑすれは はなのいろいろ ありとしらなむ
解釈 白露の置くにあまたの声すれば花の色々有りと知らなん
歌番号二九四
者川幾奈可乃止保可許尓安女乃曽保布利个留比
遠美奈部之保利尓布知和良乃毛呂多々遠乃部尓
以多之天遠曽久加部利遣礼者徒可者之个留
八月奈可乃十日許尓雨乃曽保布利个留日遠美
奈部之保利尓藤原乃毛呂多々遠野辺尓
以多之天遠曽久加部利遣礼者徒可者之个留
八月中の十日ばかりに、雨のそほ降りける日、
女郎花掘りに藤原庶正を野辺に
出だして、遅く帰りければ、つかはしける
比多利乃於保伊萬宇智岐美
左大臣
左大臣
原文 久礼者天八川幾毛万川部之遠美奈之安女也女天止八遠毛者佐良奈无
定家 久礼者天八月毛待部之女郎花雨也女天止八思者佐良奈无
和歌 くれはては つきもまつへし をみなへし あめやめてとは おもはさらなむ
解釈 暮れはてば月も待つべし女郎花雨やめてとは思はざらなん
歌番号二九五
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止毛
与美人毛
よみ人も
原文 安幾乃多乃加利本乃也止乃尓本不万天佐个留安幾者幾美礼止安可奴加毛
定家 秋乃田乃加利本乃也止乃尓本不万天佐个留秋者幾見礼止安可奴加毛
和歌 あきのたの かりほのやとの にほふまて さけるあきはき みれとあかぬかも
解釈 秋の田の仮庵の宿の匂ふまで咲ける秋萩見れどあかぬかも
歌番号二九六
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止毛
与美人毛
よみ人も
原文 安幾乃与遠満止呂万寸乃美安可寸美八為女地止多尓曽多乃万左利个留
定家 安幾乃与遠満止呂万寸乃美安可寸身八夢地止多尓曽多乃万左利个留
和歌 あきのよを まとろますのみ あかすみは ゆめちとたにそ たのまさりける
解釈 秋の夜をまどろまずのみ明かす身は夢路とだにぞ頼まざりける
歌番号二九七
者幾乃者奈遠々利天比止尓川可者寸止天
者幾乃花遠々利天人尓川可者寸止天
萩の花を折りて、人につかはすとて
与美比止毛
与美人毛
よみ人も
原文 之久礼布利/\奈者比止尓美世毛安部寸知利奈波於之美於礼留安幾者幾
定家 時雨布利/\奈者人尓見世毛安部寸知利奈波於之美於礼留秋者幾
和歌 しくれふり ふりなはひとに みせもあへす ちりなはをしみ をれるあきはき
解釈 時雨降り降りなば人に見せもあへず散りなば惜しみ折れる秋萩
歌番号二九八
安幾乃宇多止天与女留
秋乃歌止天与女留
秋の歌とてよめる
川良由幾
川良由幾
つらゆき(紀貫之)
原文 由幾可部利遠利天加左々武安左那/\之可多川奈良寸乃部乃安幾者起
定家 往還利折天加左々武安左那/\鹿立奈良寸乃部乃秋者起
和歌 ゆきかへり をりてかささむ あさなあさな しかたちならす のへのあきはき
解釈 往き還り折りてかざさむ朝な朝な鹿立ならす野辺の秋萩
歌番号二九九
安幾乃宇多止天与女留
秋乃歌止天与女留
秋の歌とてよめる
武祢由幾乃安曾无
武祢由幾乃朝臣
むねゆきの朝臣(源宗于)
原文 和可也止乃尓和乃安幾者幾知利奴女利乃知美武比止也久也之止遠毛者武
定家 和可也止乃庭乃秋者幾知利奴女利乃知美武人也久也之止思者武
和歌 わかやとの にはのあきはき ちりぬめり のちみむひとや くやしとおもはむ
解釈 我が宿の庭の秋萩散りぬめりのち見む人や悔しと思はむ
歌番号三〇〇
安幾乃宇多止天与女留
秋乃歌止天与女留
秋の歌とてよめる
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 之良川由乃遠可満久於之幾安幾者幾遠於利天八佐良尓和礼也加久左无
定家 白露乃遠可満久惜幾秋萩遠折天八佐良尓我也加久左无
和歌 しらつゆの おかまくをしき あきはきを をりてはさらに われやかくさむ
解釈 白露の置かまく惜しき秋萩を折りてはさらに我や隠さん
歌番号三〇一
止之乃川毛利尓个留己止遠加礼己連毛宇之个留川以天尓
年乃川毛利尓个留己止遠加礼己連申个留川以天尓
年の積もりにけることをかれこれ申しけるついでに
川良由幾
川良由幾
つらゆき(紀貫之)
原文 安幾者幾乃以呂川久安幾遠以多川良尓安万多加曽部天遠比曽之尓遣流
定家 秋者幾乃色川久秋遠徒尓安万多加曽部天老曽之尓遣流
和歌 あきはきの いろつくあきを いたつらに あまたかそへて おいそしにける
解釈 秋萩の色づく秋を徒にあまたかぞへて老いぞしにける
歌番号三〇二
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
天武知乃天武乃宇乃於保美宇多
天智天皇御製
天智天皇御製
原文 安幾乃多乃加利本乃以保乃止満遠安良美和可己呂毛天者川由尓奴礼川々
定家 秋乃田乃加利本乃以保乃止満遠安良美和可衣手者川由尓奴礼川々
和歌 あきのたの かりほのいほの とまをあらみ わかころもては つゆにぬれつつ
解釈 秋の田の仮庵の庵の苫を粗み我が衣手は露に濡れつつ
歌番号三〇三
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 和可曽天尓川由曽遠久奈留安万乃可者久毛乃志可良美奈美也己寸良无
定家 和可袖尓露曽遠久奈留天河雲乃志可良美浪也己寸良无
和歌 わかそてに つゆそおくなる あまのかは くものしからみ なみやこすらむ
解釈 我が袖に露ぞ置くなる天の河雲のしがらみ浪や越すらん
歌番号三〇四
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 安幾者幾乃恵多毛止遠々尓奈利以久者之良川由遠毛久遠个八奈利个利
定家 秋者幾乃枝毛止遠々尓奈利行者白露遠毛久遠个八奈利个利
和歌 あきはきの えたもとををに なりゆくは しらつゆおもく おけはなりけり
解釈 秋萩の枝もとををになり行くは白露重く置けばなりけり
歌番号三〇五
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 和可也止乃於者奈可宇部乃之良川由遠計多寸天多万尓奴久毛乃尓毛加
定家 和可也止乃於花可宇部乃白露遠計多寸天玉尓奴久物尓毛加
和歌 わかやとの をはなかうへの しらつゆを けたすてたまに ぬくものにもか
解釈 我が宿の尾花が上の白露を消たずて玉に貫く物にもが
歌番号三〇六
衣武幾乃於保武止幾宇多女之个礼者
延喜御時歌女之个礼者
延喜御時歌召しければ
川良由幾
川良由幾
つらゆき(紀貫之)
原文 佐遠之可乃多川奈良寸遠乃々安幾者幾尓遠个留之良川由和礼毛个奴部之
定家 佐遠鹿乃立奈良寸遠乃々秋者幾尓遠个留白露我毛个奴部之
和歌 さをしかの たちならすをのの あきはきに おけるしらつゆ われもけぬへし
解釈 さを鹿の立ちならす小野の秋萩に置ける白露我も消ぬべし
歌番号三〇七
衣武幾乃於保武止幾宇多女之个礼者
延喜御時歌女之个礼者
延喜御時歌召しければ
川良由幾
川良由幾
つらゆき(紀貫之)
原文 安幾乃々乃久左者以止々毛美衣奈久尓遠久志良川由遠多万玉止奴久覧
定家 秋乃野々草者以止々毛見衣奈久尓遠久志良川由遠玉止奴久覧
和歌 あきののの くさはいととも みえなくに おくしらつゆを たまとぬくらむ
解釈 秋の野の草はいとども見えなくに置く白露を玉と貫くらん
歌番号三〇八
衣武幾乃於保武止幾宇多女之个礼者
延喜御時歌女之个礼者
延喜御時歌召しければ
布无也乃安左也寸
文屋朝康
文屋朝康
原文 之良川由尓可世乃布久之幾安幾乃々者川良奴幾止女奴多万曽知利遣流
定家 白露尓風乃吹敷秋乃々者川良奴幾止女奴玉曽知利遣流
和歌 しらつゆに かせのふきしく あきののは つらぬきとめぬ たまそちりける
解釈 白露に風の吹きしく秋の野は貫きとめぬ玉ぞ散りける
歌番号三〇九
衣武幾乃於保武止幾宇多女之个礼者
延喜御時歌女之个礼者
延喜御時歌召しければ
堂々美祢
堂々美祢
たたみね(壬生忠岑)
原文 安幾乃々尓遠久之良川由遠計左美礼者多万也之个留止於止呂可礼川々
定家 秋乃々尓遠久白露遠計左見礼者玉也之个留止於止呂可礼川々
和歌 あきののに おくしらつゆを けさみれは たまやしけると おとろかれつつ
解釈 秋の野に置く白露を今朝見れば玉やしけるとおどろかれつつ
歌番号三一〇
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止毛
与美人毛
よみ人も
原文 遠久可良尓知久佐乃以呂尓奈留者乃遠之良川由止乃美比止乃以不良无
定家 遠久可良尓知久佐乃色尓奈留物遠白露止乃美人乃以不良无
和歌 おくからに ちくさのいろに なるものを しらつゆとのみ ひとのいふらむ
解釈 置くからに千種の色になる物を白露とのみ人のいふらん
歌番号三一一
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止毛
与美人毛
よみ人も
原文 之良多万乃安幾乃己乃者尓也止礼留止美由留者川由乃者可留奈利个利
定家 白玉乃秋乃己乃者尓也止礼留止見由留者川由乃者可留奈利个利
和歌 しらたまの あきのこのはに やとれると みゆるはつゆの はかるなりけり
解釈 白玉の秋の木の葉に宿れると見ゆるは露のはかるなりけり
歌番号三一二
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止毛
与美人毛
よみ人も
原文 安幾乃々尓遠久之良川由乃幾衣佐良者多万尓奴幾天毛加計天美天末之
定家 秋乃々尓遠久白露乃幾衣佐良者玉尓奴幾天毛加計天見天末之
和歌 あきののに おくしらつゆの きえさらは たまにぬきても かけてみてまし
解釈 秋の野にをく白露のきえさらは玉にぬきてもかけて見てまし
歌番号三一三
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止毛
与美人毛
よみ人も
原文 可良己呂毛曽天久徒留万天遠久川由者和可美遠安幾乃々止也美留良无
定家 唐衣袖久徒留万天遠久川由者和可身遠秋乃々止也見留良无
和歌 からころも そてくつるまて おくつゆは わかみをあきの のとやみるらむ
解釈 唐衣袖くつるまで置く露は我が身を秋の野とや見るらん
歌番号三一四
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止毛
与美人毛
よみ人も
原文 於保曽良尓和可曽天比止川安良奈久尓加奈之久川由也和幾天遠久良无
定家 於保曽良尓和可袖比止川安良奈久尓加奈之久川由也和幾天遠久良无
和歌 おほそらに わかそてひとつ あらなくに かなしくつゆや わきておくらむ
解釈 大空に我が袖一つあらなくに悲しく露やわきて置くらん
歌番号三一五
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止毛
与美人毛
よみ人も
原文 安佐己止尓遠久川由曽天尓宇遣多女天与乃宇幾止幾乃奈美多尓曽加留
定家 安佐己止尓遠久川由曽天尓宇遣多女天世乃宇幾時乃涙尓曽加留
和歌 あさことに おくつゆそてに うけためて よのうきときの なみたにそかる
解釈 朝ごとに置く露袖に受けためて世の憂き時の涙にぞ借る
歌番号三一六
安幾乃宇多止天与免留
秋哥止天与免留
秋歌とてよめる
川良由幾
川良由幾
つらゆき(紀貫之)
原文 安幾乃乃々久左毛和遣奴遠和可曽天乃者乃於毛布奈部尓川由个可留良无
定家 秋乃野々草毛和遣奴遠和可袖乃物思奈部尓川由个可留良无
和歌 あきののの くさもわけぬを わかそての ものおもふなへに つゆけかるらむ
解釈 秋の野の草もわけぬを我が袖の物思ふなへに露けかるらん
歌番号三一七
安幾乃宇多止天与免留
秋哥止天与免留
秋歌とてよめる
布可也不
布可也不
ふかやふ(清原深養父)
原文 以久世部天乃知可和寸礼无知利奴部幾乃部乃安幾者幾美可久川幾与遠
定家 以久世部天乃知可和寸礼无知利奴部幾乃部乃秋者幾美可久月与遠
和歌 いくよへて のちかわすれむ ちりぬへき のへのあきはき みかくつきよを
解釈 いく世へてのちか忘れん散りぬべき野辺の秋萩みがく月夜を
歌番号三一八
安幾乃宇多止天与免留
秋哥止天与免留
秋歌とてよめる
与美比止之良寸
与美人之良寸 よみ人しらす
詠み人知らず
原文 安幾乃与乃川幾乃可个己曽己乃万与利於知者己呂毛止三尓宇川利个礼
定家 秋乃夜乃月乃影己曽己乃万与利於知者衣止身尓宇川利个礼
和歌 あきのよの つきのかけこそ このまより おちはころもと みにうつりけれ
解釈 秋の夜の月の影こそ木の間より落ちば衣と身に移りけれ
歌番号三一九
安幾乃宇多止天与免留
秋哥止天与免留
秋歌とてよめる
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 曽天尓宇川留川幾乃飛可利者安幾己止尓己与比加八良奴可个止美衣川々
定家 袖尓宇川留月乃飛可利者秋己止尓今夜加八良奴影止見衣川々
和歌 そてにうつる つきのひかりは あきことに こよひかはらぬ かけとみえつつ
解釈 袖にうつる月の光は秋ごとに今宵変らぬ影と見えつつ
歌番号三二〇
安幾乃宇多止天与免留
秋哥止天与免留
秋歌とてよめる
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 安幾乃与乃川幾尓加左奈留久毛八礼天飛可利左也可尓美留与之毛可奈
定家 秋乃与乃月尓加左奈留久毛八礼天飛可利左也可尓見留与之毛可奈
和歌 あきのよの つきにかさなる くもはれて ひかりさやかに みるよしもかな
解釈 秋の夜の月に重なる雲晴れて光さやかに見るよしもがな
歌番号三二一
安幾乃宇多止天与免留
秋哥止天与免留
秋歌とてよめる
遠乃々与之幾
小野美材
小野美材
原文 安幾乃以个乃川幾乃宇部尓己久布祢奈礼者可川良乃衣多尓左本也左八良无
定家 秋乃池乃月乃宇部尓己久船奈礼者桂乃枝尓左本也左八良无
和歌 あきのいけの つきのうへにこく ふねなれは かつらのえたに さをやさはらむ
解釈 秋の池の月の上に漕ぐ船なれば桂の枝に棹や障らん
歌番号三二二
安幾乃宇多止天与免留
秋哥止天与免留
秋歌とてよめる
布可也不
布可也不
ふかやふ(清原深養父)
原文 安幾乃宇美尓宇川礼留川幾遠多知加部利奈三者安良部止以呂毛加者良寸
定家 安幾乃海尓宇川礼留月遠立加部利浪者安良部止色毛加者良寸
和歌 あきのうみに うつれるつきを たちかへり なみはあらへと いろもかはらす
解釈 秋の海にうつれる月を立ち返り浪は洗へど色も変らず
歌番号三二三
己礼佐多乃美己乃以部乃宇多安和世尓
是貞乃美己乃家乃哥合尓
是貞親王の家の歌合に
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 安幾乃与乃川幾乃飛可利者幾与个礼止比止乃己々呂乃久満者天良佐春
定家 秋乃夜乃月乃光者幾与个礼止人乃心乃久満者天良佐春
和歌 あきのよの つきのひかりは きよけれと ひとのこころの くまはてらさす
解釈 秋の夜の月の光は清けれど人の心の隈は照らさず
歌番号三二四
己礼佐多乃美己乃以部乃宇多安和世尓
是貞乃美己乃家乃哥合尓
是貞親王の家の歌合に
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 安幾乃川幾川祢尓加久天留者乃奈良八也美尓布留美者末之良佐良末之
定家 安幾乃月常尓加久天留物奈良八也美尓布留身者末之良佐良末之
和歌 あきのつき つねにかくてる ものならは やみにふるみは ましらさらまし
解釈 秋の月常にかく照る物ならば闇にふる身はまじらざらまし
歌番号三二五
者川幾乃止宇加安万利以川可乃与
者月乃止宇加安万利以川可乃与
八月十五夜
布知八良乃万左多々
藤原雅正
藤原雅正
原文 伊川止天毛川幾美奴安幾者奈幾者乃遠和幾天己与比乃女川良之幾可奈
定家 伊川止天毛月見奴秋者奈幾物遠和幾天今夜乃女川良之幾哉
和歌 いつとても つきみぬあきは なきものを わきてこよひの めつらしきかな
解釈 いつとても月見ぬ秋はなき物をわきて今宵のめつらしきかな
歌番号三二六
者川幾乃止宇加安万利以川可乃与
者月乃止宇加安万利以川可乃与
八月十五夜
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 川幾可个者於奈之飛可利乃安幾乃与遠和幾天美由留者己々呂奈利个利
定家 月影者於奈之飛可利乃秋乃夜遠和幾天見由留者心奈利个利
和歌 つきかけは おなしひかりの あきのよを わきてみゆるは こころなりけり
解釈 月影は同じ光の秋の夜をわきて見ゆるは心なりけり
歌番号三二七
川幾遠美天
月遠見天
月を見て
幾乃与之美川乃安曾无
紀淑光朝臣
紀淑光朝臣
原文 曽良止遠美安幾也与久良无比佐可多乃川幾乃可川良乃以呂毛加者良奴
定家 曽良止遠美秋也与久良无久方乃月乃桂乃色毛加者良奴
和歌 そらとほみ あきやよくらむ ひさかたの つきのかつらの いろもかはらぬ
解釈 空遠み秋やよくらん久方の月の桂の色も変らぬ
歌番号三二八
川幾遠美天
月遠見天
月を見て
川良由幾
川良由幾
つらゆき(紀貫之)
原文 己呂毛天者佐武久毛安良祢止川幾可个遠多万良奴安幾乃由幾止己曽美礼
定家 衣手者佐武久毛安良祢止月影遠多万良奴秋乃雪止己曽見礼
和歌 ころもては さむくもあらねと つきかけを たまらぬあきの ゆきとこそみれ
解釈 衣手は寒くもあらねど月影をたまらぬ秋の雪とこそ見れ
歌番号三二九
川幾遠美天
月遠見天
月を見て
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 安満乃可者志可良美加个天止々女奈武安可寸奈可留々川幾也与止武止
定家 安満乃河志可良美加个天止々女南安可寸奈可留々月也与止武止
和歌 あまのかは しからみかけて ととめなむ あかすなかるる つきやよとむと
解釈 天の河しがらみかけてとどめなんあかず流るる月やよどむと
歌番号三三〇
川幾遠美天
月遠見天
月を見て
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 安幾尓奈美也堂川良无安満乃可和々多留世毛奈久川幾乃奈可留々
定家 秋風尓浪也堂川良无天河和多留世毛奈久月乃奈可留々
和歌 あきかせに なみやたつらむ あまのかは わたるせもなく つきのなかるる
解釈 秋風に浪や立つらん天の河渡る瀬もなく月の流るる
歌番号三三一
川幾遠美天
月遠見天
月を見て
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 安幾久礼者於毛布己々呂曽美多礼川々万川毛美知者止知利万佐利个留
定家 安幾久礼者思心曽美多礼川々万川毛美知者止知利万佐利个留
和歌 あきくれは おもふこころそ みたれつつ まつもみちはと ちりまさりける
解釈 秋来れば思ふ心ぞ乱れつつまづもみぢばと散りまさりける
歌番号三三二
川幾遠美天
月遠見天
月を見て
布可也不
布可也不
ふかやふ(清原深養父)
原文 幾衣加部利毛乃於毛布安幾乃己呂毛己曽奈美堂乃可者乃毛美知奈利遣礼
定家 幾衣加部利物思秋乃衣己曽涙乃河乃紅葉奈利遣礼
和歌 きえかへり ものおもふあきの ころもこそ なみたのかはの もみちなりけれ
解釈 消えかへり物思ふ秋の衣こそ涙の河の紅葉なりけれ
歌番号三三三
川幾遠美天
月遠見天
月を見て
与美比止之良春
与美人之良春
よみ人しらす
原文 布久可世尓布可幾堂乃美乃武奈之久者安幾乃己々呂遠安佐之止於毛者武
定家 吹風尓深幾堂乃美乃武奈之久者秋乃心遠安佐之止於毛者武
和歌 ふくかせに ふかきたのみの むなしくは あきのこころを あさしとおもはむ
解釈 吹く風に深き田の実のむなしくは秋の心を浅しと思はむ
歌番号三三四
川幾遠美天
月遠見天
月を見て
与美比止之良春
与美人之良春
よみ人しらす
原文 安幾乃与者比止遠志川女天徒礼/\止加幾奈寸己止乃祢尓曽奈幾奴留
定家 秋乃夜者人遠志川女天徒礼/\止加幾奈寸己止乃祢尓曽奈幾奴留
和歌 あきのよは ひとをしつめて つれつれと かきなすことの ねにそなきぬる
解釈 秋の夜は人をしづめてつれづれとかきなす琴の音にぞ泣きぬる
歌番号三三五
徒由遠与女留
徒由遠与女留
露をよめる
布知八良乃幾与多々
藤原清正
藤原清正
原文 奴幾止武留安幾之奈个礼者之良川由乃知久佐尓遠个留多麻毛加比奈之
定家 奴幾止武留秋之奈个礼者白露乃知久佐尓遠个留玉毛加比奈之
和歌 ぬきとむる あきしなけれは しらつゆの ちくさにおける たまもかひなし
解釈 貫きとむる秋しなければ白露の千種に置ける玉もかひなし
歌番号三三六
者川幾乃止宇加安万利以川可乃与
者月乃止宇加安万利以川可乃与
八月十五夜
布知八良乃幾与多々
藤原清正
藤原清正
原文 安幾可世尓以止々布遣由久川幾月可个遠太知奈可久之曽安万乃可者幾利
定家 秋風尓以止々布遣由久月影遠太知奈可久之曽安万乃河幾利
和歌 あきかせに いととふけゆく つきかけを たちなかくしそ あまのかはきり
解釈 秋風にいとど更け行く月影を立ちな隠しそ天の河霧
歌番号三三七
衣武幾乃於保武止幾安幾乃宇多女之个礼者多天万川利个留
延喜御時秋哥女之个礼者多天万川利个留
延喜御時、秋歌召しければ、たてまつりける
川良由幾
貫之
貫之(紀貫之)
原文 遠美奈部之尓本部留安幾乃武左之乃者川祢与利毛奈保武川万之幾
定家 遠美奈部之尓本部留秋乃武左之乃者常与利毛猶武川万之幾
和歌 をみなへし にほへるあきの むさしのは つねよりもなほ むつましき
解釈 女郎花匂へる秋の武蔵野は常よりもなほむつましきかな
歌番号三三八
比止尓川可八之个留
人尓川可八之个留
人につかはしける
加祢三乃於保幾三
兼覧王
兼覧王
原文 安幾々利乃者留々者宇礼之遠美奈部之多知与留比止也安良无止於毛八
定家 秋霧乃者留々者宇礼之遠美奈部之立与留人也安良无止思部八
和歌 あききりの はるるはうれし をみなへし たちよるひとや あらむとおもへは
解釈 秋霧の晴るるはうれし女郎花立ち寄る人やあらんと思へば
歌番号三三九
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止毛
与美人毛
よみ人も
原文 遠美奈部之久佐武良己止尓武礼多川者多礼万川武之乃己衣尓末与布曽
定家 遠美奈部之草武良己止尓武礼多川者誰松虫乃声尓迷曽
和歌 をみなへし くさむらことに むれたつは たれまつむしの こゑにまよふそ
解釈 女郎花草むらごとに群れ立つは誰れ待つ虫の声にまどふぞ
歌番号三四〇
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止毛
与美人毛
よみ人も
原文 遠三奈部之飛留美天末之遠安幾乃与乃川幾乃飛可利者久毛加久礼川々
定家 女郎花飛留見天末之遠秋乃夜乃月乃光者雲加久礼川々
和歌 をみなへし ひるみてましを あきのよの つきのひかりは くもかくれつつ
解釈 女郎花昼見てましを秋の夜の月の光は雲隠れつつ
歌番号三四一
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止毛
与美人毛
よみ人も
原文 遠三奈部之者奈乃佐可利尓安幾可世乃布久由不久礼遠多礼尓加多良无
定家 遠三奈部之花乃佐可利尓安幾風乃布久由不久礼遠誰尓加多良无
和歌 をみなへし はなのさかりに あきかせの ふくゆふくれを たれにかたらむ
解釈 女郎花花の盛りに秋風の吹く夕暮れを誰れに語らん
歌番号三四二
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
川良由幾
川良由幾
つらゆき(紀貫之)
原文 之呂多部乃己呂毛加多之幾遠三奈部之佐个留乃部尓曽己与比祢尓个留
定家 白妙乃衣加多之幾女郎花佐个留乃部尓曽己与日祢尓个留
和歌 しろたへの ころもかたしき をみなへし さけるのへにそ こよひねにける
解釈 白妙の衣かたしき女郎花咲ける野辺にぞ今宵寝にける
歌番号三四三
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
川良由幾
川良由幾
つらゆき(紀貫之)
原文 名尓之於部者志比天多乃末武遠三奈部之者那乃己々呂乃安幾者宇久止毛
定家 名尓之於部者志日天多乃末武女郎花者那乃心乃秋者宇久止毛
和歌 なにしおへは しひてたのまむ をみなへし はなのこころの あきはうくとも
解釈 名にし負へばしひて頼まむ女郎花花の心の秋は憂くとも
歌番号三四四
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
美川祢
美川祢
みつね(凡河内躬恒)
原文 多奈者多尓々太留毛乃可奈遠美奈部之安幾与利保可尓安不止幾毛奈之
定家 織女尓々太留物哉女郎花秋与利保可尓安不時毛奈之
和歌 たなはたに にたるものかな をみなへし あきよりほかに あふときもなし
解釈 織女に似たる物かな女郎花秋よりほかに逢ふ時もなし
歌番号三四五
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 安幾乃々尓与留毛也祢奈无遠美奈部之者奈乃奈遠乃美於毛比可个川々
定家 秋乃野尓与留毛也祢奈无遠美奈部之花乃名遠乃美思可个川々
和歌 あきののに よるもやねなむ をみなへし はなのなをのみ おもひかけつつ
解釈 秋の野に夜もや寝なん女郎花花の名をのみ思ひかけつつ
歌番号三四六
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 遠美奈部之以呂尓毛安留可奈末川无之遠毛止尓也止之天多礼遠末川良无
定家 遠美奈部之色尓毛安留哉松虫遠毛止尓也止之天誰遠末川覧
和歌 をみなへし いろにもあるかな まつむしを もとにやとして たれをまつらむ
解釈 女郎花色にもあるかな松虫をもとに宿して誰れをまつらん
歌番号三四七
世无左為尓遠美奈部之者部利个留止己呂尓天
前栽尓遠美奈部之侍个留所尓天
前栽に女郎花侍りける所にて
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 遠美奈部之尓保不佐可利遠美留止幾曽和可於以良久八久也之可利个留
定家 女郎花尓保不佐可利遠見留時曽和可於以良久八久也之可利个留
和歌 をみなへし にほふさかりを みるときそ わかおいらくは くやしかりける
解釈 女郎花匂ふ盛りを見る時ぞ我が老いらくは悔しかりける
歌番号三四八
春満比乃加部利安留之乃久礼川可多遠美奈部之遠
於利天安徒与之乃美己乃加左之尓佐寸止天
春満比乃加部利安留之乃久礼川可多遠美奈部之遠
於利天安徒与之乃美己乃加左之尓佐寸止天
相撲の還饗の暮れつ方、女郎花を
折りて敦慶親王のかざしに挿すとて
左无天宇乃美幾乃於保以末宇知幾美
三条右大臣
三条右大臣
原文 遠美奈部之者奈乃奈々良奴毛乃奈良波奈尓可八幾美可々佐之尓毛世无
定家 遠美奈部之花乃奈々良奴物奈良波何可八君可々佐之尓毛世无
和歌 をみなへし はなのなならぬ ものならは なにかはきみか かさしにもせむ
解釈 女郎花花の名ならぬ物ならば何かは君がかざしにもせん
止之己呂以部乃武寸女尓世宇曽己加与波之者部利个留遠
於无奈乃多女尓加留/\之奈止以比天由留左奴安比多尓奈无者部利个留
年己呂家乃武寸女尓世宇曽己加与波之侍个留遠
女乃多女尓加留/\之奈止以比天由留左奴安比多尓奈无侍个留
年ごろ家のむすめに消息かよはし侍りけるを、
女のために軽々しなど言ひて、許さぬ間になん侍りける
歌番号三四九
保宇己宇可家乃遠美奈部之遠女之个礼者
堂天万川留遠幾々天
法皇伊勢可家乃遠美奈部之遠女之个礼者
堂天万川留遠幾々天
法皇、伊勢が家の女郎花を召しければ、たてまつるを聞きて
比和乃比多利乃於保伊萬宇智岐美
枇杷左大臣
枇杷左大臣
原文 遠美奈部之遠利个无曽天乃布之己止尓春幾尓之幾美遠於毛比以天也世之
定家 女郎花折釼袖乃布之己止尓春幾尓之君遠思以天也世之
和歌 をみなへし をりけむそての ふしことに すきにしきみを おもひいてやせし
解釈 女郎花折りけん袖のふしごとに過ぎにし君を思ひ出でやせし
歌番号三五〇
可部之
返之
返し
以世
伊勢
伊勢
原文 遠美奈部之於利毛於良寸毛伊尓之部遠佐良尓加久部幾毛乃奈良奈久尓
定家 遠美奈部之於利毛於良寸毛伊尓之部遠佐良尓加久部幾物奈良奈久尓
和歌 をみなへし をりもをらすも いにしへを さらにかくへき ものならなくに
解釈 女郎花折りも折らずもいにしへをさらにかくべき物ならなくに
武末幾仁安多留未幾
巻六
安幾奈可
秋中
歌番号二七一
恵无幾乃於无止幾尓安幾乃宇多免之遣礼者多天万川利个留
延喜御時尓秋哥免之遣礼者多天万川利个留
延喜御時に秋歌召しければ、たてまつりける
幾乃川良由幾
紀貫之
紀貫之
原文 安幾々利乃多川奴留止幾者久良不也麻於保川可奈久曽三衣和多利个留
定家 秋霧乃立奴留時者久良不山於保川可奈久曽見衣渡个留
和歌 あききりの たちぬるときは くらふやま おほつかなくそ みえわたりける
解釈 秋霧の立ちぬる時はくらぶ山おぼつかなくぞ見え渡りける
歌番号二七二
恵无幾乃於无止幾尓安幾乃宇多免之遣礼者多天万川利个留
延喜御時尓秋哥免之遣礼者多天万川利个留
延喜御時に秋歌召しければ、たてまつりける
幾乃川良由幾
紀貫之
紀貫之
原文 者奈三尓止以天尓之毛乃遠安幾乃々々幾利尓末与比天个不者久良之徒
定家 花見尓止以天尓之物遠秋乃野々霧尓迷天个不者久良之徒
和歌 はなみにと いてにしものを あきののの きりにまよひて けふはくらしつ
解釈 花見にと出でにし物を秋の野の霧に迷ひて今日は暮らしつ
歌番号二七三
可武部為乃於保武止幾々左以乃美也乃宇多安者世尓
寛平御時幾左以乃宮乃哥合尓
寛平御時后の宮の歌合に
与三比止之良寸
与三人之良寸
よみ人しらす
原文 宇良知可久堂川安幾々利者毛之本也久煙止乃美曽見衣和多利个累
定家 浦知可久堂川秋幾利者毛之本也久个布利止乃美曽三衣和多利个累
和歌 うらちかく たつあききりは もしほやく けふりとのみそ みえわたりける
解釈 浦近く立つ秋霧は藻塩焼く煙とのみぞ見えわたりける
歌番号二七四
於奈之於保武止乃遠三奈部之安者世尓
於奈之御時乃遠三奈部之安者世尓
同じ御時の女郎花合せに
布知八良乃於幾可世
藤原於幾可世
藤原おきかせ(藤原興風)
原文 於累可良尓和可奈者多知奴遠美奈部之以左於奈之久者波奈/\尓三武
定家 於累可良尓和可奈者多知奴女郎花以左於奈之久者波奈/\尓見武
和歌 をるからに わかなはたちぬ をみなへし いさおなしくは はなはなにみむ
解釈 折るからに我が名は立ちぬ女郎花いざ同じくは花々に見む
歌番号二七五
於奈之於保武止乃遠三奈部之安者世尓
於奈之御時乃遠三奈部之安者世尓
同じ御時の女郎花合せに
与美比止之良春
与美人之良春
よみ人しらす
原文 安期乃々々川由尓遠可留々遠美奈部之者良不人奈美奴礼川々也布留
定家 秋乃野々露尓遠可留々女郎花者良不人奈美奴礼川々也布留
和歌 あきののの つゆにおかるる をみなへし はらふひとなみ ぬれつつやふる
解釈 秋の野の露に置かるる女郎花はらふ人無み濡れつつやふる
歌番号二七六
於奈之於保武止乃遠三奈部之安者世尓
於奈之御時乃遠三奈部之安者世尓
同じ御時の女郎花合せに
与美比止之良春
与美人之良春
よみ人しらす
原文 遠美奈部之者奈乃己々呂乃安多奈礼者安幾尓乃美己曽安比和多利个礼
定家 遠美奈部之花乃心乃安多奈礼者秋尓乃美己曽安比和多利个礼
和歌 をみなへし はなのこころの あたなれは あきにのみこそ あひわたりけれ
解釈 女郎花花の心のあだなれば秋にのみこそ逢ひわたりけれ
歌番号二七七
者々乃布久尓天佐止尓者部利个留尓世无多以乃
於保武布三堂万部利个留於保武可部之己止尓
者々乃布久尓天佐止尓侍个留尓世无多以乃御
布三堂万部利个留御返己止尓
母の服にて里に侍りけるに、先帝の
御文たまへりける御返事に
於保美乃己布以
近江更衣
近江更衣
原文 佐美多礼尓奴礼尓之曽天尓以止々之久川由遠幾曽不留安幾乃王日之左
定家 佐美多礼尓奴礼尓之袖尓以止々之久川由遠幾曽不留秋乃王日之左
和歌 さみたれに ぬれにしそてに いととしく つゆおきそふる あきのわひしさ
解釈 五月雨に濡れにし袖にいとどしく露置きそふる秋のわびしさ
歌番号二七八
於保武可部之
御返之
御返し
恵无幾乃於保美宇多
延喜御製
延喜御製
原文 於保可多毛安幾者和比之幾止幾奈礼止川由个可留良武曽天遠之曽遠毛布
定家 於保可多毛秋者和比之幾時奈礼止川由个可留覧袖遠之曽思
和歌 おほかたも あきはわひしき ときなれと つゆけかるらむ そてをしそおもふ
解釈 おほかたも秋はわびしき時なれど露けかるらん袖をしぞ思ふ
歌番号二七九
天武之以武於保武麻恵乃者奈乃止於毛之呂久安左川由乃
乃遠个留遠女之天三世左世多万比天
亭子院乃御前乃花乃以止於毛之呂久安左川由
遠个留遠女之天見世左世給天
亭子院の御前の花のいとおもしろく朝露の
置けるを召して見せさせたまひて
保武己保乃於保美宇多
法皇御製
法皇御製
原文 之良川由乃加者留毛奈尓可於之可良无安利天乃々知毛也々宇幾毛乃遠
定家 白露乃加者留毛奈尓可於之可良无安利天乃々知毛也々宇幾毛乃遠
和歌 しらつゆの かはるもなにか をしからむ ありてののちも ややうきものを
解釈 白露の変るも何か惜しからんありての後もやや憂きものを
歌番号二八〇
於保武可部之
御返之
御返し
以世
伊勢
伊勢
原文 宇部堂天々幾美可志女由不者奈々礼者多万止美衣天也川由毛遠久良无
定家 宇部堂天々君可志女由不花奈礼者玉止見衣天也川由毛遠久良无
和歌 うゑたてて きみかしめゆふ はななれは たまとみえてや つゆもおくらむ
解釈 植ゑ立てて君がしめ結ふ花なれば玉と見えてや露も置くらん
歌番号二八一
多以布可己布良宇天无尓者部利个留尓布知川本与利
遠三奈部之遠々利天川可八之个留
大輔可後涼殿尓侍个留尓布知川本与利
遠三奈部之遠々利天川可八之个留
大輔が後涼殿に侍りけるに、藤壺より
女郎花を折りてつかはしける
美幾乃於保伊萬宇智岐美
右大臣
右大臣
原文 遠利天三留曽天左部奴留々遠三奈部之川由个幾者乃止以万也志留良无
定家 折天見留袖左部奴留々遠三奈部之川由个幾物止今也志留良无
和歌 をりてみる そてさへぬるる をみなへし つゆけきものと いまやしるらむ
解釈 折りて見る袖さへ濡るる女郎花露けき物と今や知るらん
歌番号二八二
可部之
返之
返し
多以布
大輔
大輔
原文 与呂川世尓加々良武川由遠々美奈部之奈尓於毛布止可万多幾奴留良无
定家 与呂川世尓加々良武川由遠々美奈部之奈尓思止可万多幾奴留覧
和歌 よろつよに かからむつゆを をみなへし なにおもふとか またきぬるらむ
解釈 よろづ世にかからむ露を女郎花なに思ふとかまだきぬるらん
歌番号二八三
万多
又
又
美幾乃於保伊萬宇智岐美
右大臣
右大臣
原文 遠幾安可寸川由乃与奈/\部尓个礼者万多幾奴留止毛於毛者佐利个利
定家 遠幾安可寸川由乃与奈/\部尓个礼者万多幾奴留止毛於毛者佐利个利
和歌 おきあかす つゆのよなよな へにけれは またきぬるとも おもはさりけり
解釈 起き明かす露の夜な夜なへにければまだきぬるとも思はざりけり
歌番号二八四
可部之
返之
返し
多以布
大輔
大輔
原文 以万者々也宇知止个奴部幾之良川由乃己々呂遠久万天与遠也部尓个累
定家 今者々也打止个奴部幾白露乃心遠久万天与遠也部尓个累
和歌 いまははや うちとけぬへき しらつゆの こころおくまて よをやへにける
解釈 今は早うちとけぬべき白露の心置くまで夜をやへにける
歌番号二八五
安比之利天者部利个留遠无奈乃安多奈多知天者部利个礼者
比左之久止不良者左利个利者知可川者可利尓遠无奈乃毛止与利
奈止可以止徒礼奈幾止以飛遠己世天者部利个礼者
安比之利天侍个留女乃安多奈多知天侍个礼者
比左之久止不良者左利个利八月許尓女乃毛止与利
奈止可以止徒礼奈幾止以飛遠己世天侍个礼者
あひ知りて侍りける女の、あだ名たちて侍りければ、
久しく訪ぶらはざりけり。八月ばかりに女のもとより、
などかいとつれなきと言ひおこせて侍りければ
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 之良川由乃宇部者徒礼奈久遠幾為川々者幾乃志多者乃以呂遠己曽三礼
定家 白露乃宇部者徒礼奈久越幾為川々萩乃志多者乃色越己曽見礼
和歌 しらつゆの うへはつれなく おきゐつつ はきのしたはの いろをこそみれ
解釈 白露の上はつれなく置きゐつつ萩の下葉の色をこそ見れ
歌番号二八六
可部之
返之
返し
以世
伊勢
伊勢
原文 己々呂奈幾美者久佐者尓毛安良奈久尓安幾久留可世尓宇多可八留良无
定家 心奈幾身者草葉尓毛安良奈久尓秋久留風尓宇多可八留良无
和歌 こころなき みはくさはにも あらなくに あきくるかせに うたかはるらむ
解釈 心なき身は草葉にもあらなくに秋来る風に疑はるらん
歌番号二八七
於止己乃毛止尓川可者之个留
於止己乃毛止尓川可者之个留
男のもとにつかはしける
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 比止者以左己止曽止毛奈幾奈可女尓曽和礼者川由个幾安幾毛之良留々
定家 人者以左事曽止毛奈幾奈可女尓曽我者川由个幾秋毛之良留々
和歌 ひとはいさ ことそともなき なかめにそ われはつゆけき あきもしらるる
解釈 人はいさ事ぞともなきながめにぞ我は露けき秋も知らるる
歌番号二八八
比止乃毛止尓於者奈乃以止堂可幾遠徒可者之多利个礼者
可部利己止尓志乃不久左遠久者部天
比止乃毛止尓於者奈乃以止堂可幾遠徒可者之
多利个礼者返事尓志乃不久左遠久者部天
人のもとに尾花のいとたかきをつかはしたりければ、
返事に忍草を加へて
知宇久布乃世无之
中宮宣旨
中宮宣旨
原文 者奈寸々幾保尓以川留己止毛奈幾也止者武可之々乃布乃久左遠己曽美礼
定家 花寸々幾保尓以川留事毛奈幾也止者昔忍乃草遠己曽見礼
和歌 はなすすき ほにいつることも なきやとは むかししのふの くさをこそみれ
解釈 花薄穂に出づる事もなき宿は昔忍ぶの草をこそ見れ
歌番号二八九
可部之
返之
返し
以世
伊勢
伊勢
原文 也止毛世尓宇部奈女川々曽和礼者美留万祢久於者奈尓比止也止万留止
定家 也止毛世尓宇部奈女川々曽我者見留万祢久於者奈尓人也止万留止
和歌 やともせに うゑなへつつそ われはみる まねくをはなに ひとやとまると
解釈 やどもせに植ゑなめつつぞ我は見る招く尾花に人やとまると
歌番号二九〇
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止毛
与美人毛
よみ人も
原文 安幾乃与遠以多川良尓乃美越幾安可寸川由者和可美乃宇部尓曽阿利个留
定家 秋乃夜遠以多川良尓乃美越幾安可寸露者和可身乃宇部尓曽有个留
和歌 あきのよを いたつらにのみ おきあかす つゆはわかみの うへにそありける
解釈 秋の夜をいたづらにのみ起き明かす露は我が身の上にぞ有りける
歌番号二九一
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止毛
与美人毛
よみ人も
原文 於保可多尓遠久之良川由毛以万与利八己々呂之天己曽美留部可利个礼
定家 於保可多尓遠久白露毛今与利八心之天己曽見留部可利个礼
和歌 おほかたに おくしらつゆも いまよりは こころしてこそ みるへかりけれ
解釈 おほかたに置く白露も今よりは心してこそ見るべかりけれ
歌番号二九二
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
美幾乃於保伊萬宇智岐美
右大臣
右大臣
原文 川由奈良奴和可美止於毛部止安幾乃与遠加久己曽安可世於幾為奈可良尓
定家 露奈良奴和可身止思部止秋乃夜遠加久己曽安可世於幾為奈可良尓
和歌 つゆならぬ わかみとおもへと あきのよを かくこそあかせ おきゐなからに
解釈 露ならぬ我が身と思へど秋の夜をかくこそ明かせ起きゐながらに
歌番号二九三
安幾乃己呂遠比安留止己呂尓於美奈止毛乃安満多寸乃宇知仁
者部利个留仁於止己乃宇多乃毛止遠以比以礼天者部利个礼八
春恵者宇知与利
秋乃己呂遠比安留所尓女止毛乃安満多寸乃内仁
侍个留仁於止己乃哥乃毛止遠以比以礼天侍个礼八
春恵者宇知与利
秋のころほひ、ある所に女どものあまた簾の内に
侍りけるに、男の歌の本を言ひ入れて侍りければ、
末は内より
与美比止之良春
与美人之良春
よみ人しらす
原文 之良川由乃越久尓安万多乃己恵寸礼者々奈乃以呂/\安利止志良奈无
定家 白露乃越久尓安万多乃声寸礼者花乃色/\有止志良奈无
和歌 しらつゆの おくにあまたの こゑすれは はなのいろいろ ありとしらなむ
解釈 白露の置くにあまたの声すれば花の色々有りと知らなん
歌番号二九四
者川幾奈可乃止保可許尓安女乃曽保布利个留比
遠美奈部之保利尓布知和良乃毛呂多々遠乃部尓
以多之天遠曽久加部利遣礼者徒可者之个留
八月奈可乃十日許尓雨乃曽保布利个留日遠美
奈部之保利尓藤原乃毛呂多々遠野辺尓
以多之天遠曽久加部利遣礼者徒可者之个留
八月中の十日ばかりに、雨のそほ降りける日、
女郎花掘りに藤原庶正を野辺に
出だして、遅く帰りければ、つかはしける
比多利乃於保伊萬宇智岐美
左大臣
左大臣
原文 久礼者天八川幾毛万川部之遠美奈之安女也女天止八遠毛者佐良奈无
定家 久礼者天八月毛待部之女郎花雨也女天止八思者佐良奈无
和歌 くれはては つきもまつへし をみなへし あめやめてとは おもはさらなむ
解釈 暮れはてば月も待つべし女郎花雨やめてとは思はざらなん
歌番号二九五
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止毛
与美人毛
よみ人も
原文 安幾乃多乃加利本乃也止乃尓本不万天佐个留安幾者幾美礼止安可奴加毛
定家 秋乃田乃加利本乃也止乃尓本不万天佐个留秋者幾見礼止安可奴加毛
和歌 あきのたの かりほのやとの にほふまて さけるあきはき みれとあかぬかも
解釈 秋の田の仮庵の宿の匂ふまで咲ける秋萩見れどあかぬかも
歌番号二九六
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止毛
与美人毛
よみ人も
原文 安幾乃与遠満止呂万寸乃美安可寸美八為女地止多尓曽多乃万左利个留
定家 安幾乃与遠満止呂万寸乃美安可寸身八夢地止多尓曽多乃万左利个留
和歌 あきのよを まとろますのみ あかすみは ゆめちとたにそ たのまさりける
解釈 秋の夜をまどろまずのみ明かす身は夢路とだにぞ頼まざりける
歌番号二九七
者幾乃者奈遠々利天比止尓川可者寸止天
者幾乃花遠々利天人尓川可者寸止天
萩の花を折りて、人につかはすとて
与美比止毛
与美人毛
よみ人も
原文 之久礼布利/\奈者比止尓美世毛安部寸知利奈波於之美於礼留安幾者幾
定家 時雨布利/\奈者人尓見世毛安部寸知利奈波於之美於礼留秋者幾
和歌 しくれふり ふりなはひとに みせもあへす ちりなはをしみ をれるあきはき
解釈 時雨降り降りなば人に見せもあへず散りなば惜しみ折れる秋萩
歌番号二九八
安幾乃宇多止天与女留
秋乃歌止天与女留
秋の歌とてよめる
川良由幾
川良由幾
つらゆき(紀貫之)
原文 由幾可部利遠利天加左々武安左那/\之可多川奈良寸乃部乃安幾者起
定家 往還利折天加左々武安左那/\鹿立奈良寸乃部乃秋者起
和歌 ゆきかへり をりてかささむ あさなあさな しかたちならす のへのあきはき
解釈 往き還り折りてかざさむ朝な朝な鹿立ならす野辺の秋萩
歌番号二九九
安幾乃宇多止天与女留
秋乃歌止天与女留
秋の歌とてよめる
武祢由幾乃安曾无
武祢由幾乃朝臣
むねゆきの朝臣(源宗于)
原文 和可也止乃尓和乃安幾者幾知利奴女利乃知美武比止也久也之止遠毛者武
定家 和可也止乃庭乃秋者幾知利奴女利乃知美武人也久也之止思者武
和歌 わかやとの にはのあきはき ちりぬめり のちみむひとや くやしとおもはむ
解釈 我が宿の庭の秋萩散りぬめりのち見む人や悔しと思はむ
歌番号三〇〇
安幾乃宇多止天与女留
秋乃歌止天与女留
秋の歌とてよめる
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 之良川由乃遠可満久於之幾安幾者幾遠於利天八佐良尓和礼也加久左无
定家 白露乃遠可満久惜幾秋萩遠折天八佐良尓我也加久左无
和歌 しらつゆの おかまくをしき あきはきを をりてはさらに われやかくさむ
解釈 白露の置かまく惜しき秋萩を折りてはさらに我や隠さん
歌番号三〇一
止之乃川毛利尓个留己止遠加礼己連毛宇之个留川以天尓
年乃川毛利尓个留己止遠加礼己連申个留川以天尓
年の積もりにけることをかれこれ申しけるついでに
川良由幾
川良由幾
つらゆき(紀貫之)
原文 安幾者幾乃以呂川久安幾遠以多川良尓安万多加曽部天遠比曽之尓遣流
定家 秋者幾乃色川久秋遠徒尓安万多加曽部天老曽之尓遣流
和歌 あきはきの いろつくあきを いたつらに あまたかそへて おいそしにける
解釈 秋萩の色づく秋を徒にあまたかぞへて老いぞしにける
歌番号三〇二
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
天武知乃天武乃宇乃於保美宇多
天智天皇御製
天智天皇御製
原文 安幾乃多乃加利本乃以保乃止満遠安良美和可己呂毛天者川由尓奴礼川々
定家 秋乃田乃加利本乃以保乃止満遠安良美和可衣手者川由尓奴礼川々
和歌 あきのたの かりほのいほの とまをあらみ わかころもては つゆにぬれつつ
解釈 秋の田の仮庵の庵の苫を粗み我が衣手は露に濡れつつ
歌番号三〇三
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 和可曽天尓川由曽遠久奈留安万乃可者久毛乃志可良美奈美也己寸良无
定家 和可袖尓露曽遠久奈留天河雲乃志可良美浪也己寸良无
和歌 わかそてに つゆそおくなる あまのかは くものしからみ なみやこすらむ
解釈 我が袖に露ぞ置くなる天の河雲のしがらみ浪や越すらん
歌番号三〇四
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 安幾者幾乃恵多毛止遠々尓奈利以久者之良川由遠毛久遠个八奈利个利
定家 秋者幾乃枝毛止遠々尓奈利行者白露遠毛久遠个八奈利个利
和歌 あきはきの えたもとををに なりゆくは しらつゆおもく おけはなりけり
解釈 秋萩の枝もとををになり行くは白露重く置けばなりけり
歌番号三〇五
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 和可也止乃於者奈可宇部乃之良川由遠計多寸天多万尓奴久毛乃尓毛加
定家 和可也止乃於花可宇部乃白露遠計多寸天玉尓奴久物尓毛加
和歌 わかやとの をはなかうへの しらつゆを けたすてたまに ぬくものにもか
解釈 我が宿の尾花が上の白露を消たずて玉に貫く物にもが
歌番号三〇六
衣武幾乃於保武止幾宇多女之个礼者
延喜御時歌女之个礼者
延喜御時歌召しければ
川良由幾
川良由幾
つらゆき(紀貫之)
原文 佐遠之可乃多川奈良寸遠乃々安幾者幾尓遠个留之良川由和礼毛个奴部之
定家 佐遠鹿乃立奈良寸遠乃々秋者幾尓遠个留白露我毛个奴部之
和歌 さをしかの たちならすをのの あきはきに おけるしらつゆ われもけぬへし
解釈 さを鹿の立ちならす小野の秋萩に置ける白露我も消ぬべし
歌番号三〇七
衣武幾乃於保武止幾宇多女之个礼者
延喜御時歌女之个礼者
延喜御時歌召しければ
川良由幾
川良由幾
つらゆき(紀貫之)
原文 安幾乃々乃久左者以止々毛美衣奈久尓遠久志良川由遠多万玉止奴久覧
定家 秋乃野々草者以止々毛見衣奈久尓遠久志良川由遠玉止奴久覧
和歌 あきののの くさはいととも みえなくに おくしらつゆを たまとぬくらむ
解釈 秋の野の草はいとども見えなくに置く白露を玉と貫くらん
歌番号三〇八
衣武幾乃於保武止幾宇多女之个礼者
延喜御時歌女之个礼者
延喜御時歌召しければ
布无也乃安左也寸
文屋朝康
文屋朝康
原文 之良川由尓可世乃布久之幾安幾乃々者川良奴幾止女奴多万曽知利遣流
定家 白露尓風乃吹敷秋乃々者川良奴幾止女奴玉曽知利遣流
和歌 しらつゆに かせのふきしく あきののは つらぬきとめぬ たまそちりける
解釈 白露に風の吹きしく秋の野は貫きとめぬ玉ぞ散りける
歌番号三〇九
衣武幾乃於保武止幾宇多女之个礼者
延喜御時歌女之个礼者
延喜御時歌召しければ
堂々美祢
堂々美祢
たたみね(壬生忠岑)
原文 安幾乃々尓遠久之良川由遠計左美礼者多万也之个留止於止呂可礼川々
定家 秋乃々尓遠久白露遠計左見礼者玉也之个留止於止呂可礼川々
和歌 あきののに おくしらつゆを けさみれは たまやしけると おとろかれつつ
解釈 秋の野に置く白露を今朝見れば玉やしけるとおどろかれつつ
歌番号三一〇
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止毛
与美人毛
よみ人も
原文 遠久可良尓知久佐乃以呂尓奈留者乃遠之良川由止乃美比止乃以不良无
定家 遠久可良尓知久佐乃色尓奈留物遠白露止乃美人乃以不良无
和歌 おくからに ちくさのいろに なるものを しらつゆとのみ ひとのいふらむ
解釈 置くからに千種の色になる物を白露とのみ人のいふらん
歌番号三一一
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止毛
与美人毛
よみ人も
原文 之良多万乃安幾乃己乃者尓也止礼留止美由留者川由乃者可留奈利个利
定家 白玉乃秋乃己乃者尓也止礼留止見由留者川由乃者可留奈利个利
和歌 しらたまの あきのこのはに やとれると みゆるはつゆの はかるなりけり
解釈 白玉の秋の木の葉に宿れると見ゆるは露のはかるなりけり
歌番号三一二
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止毛
与美人毛
よみ人も
原文 安幾乃々尓遠久之良川由乃幾衣佐良者多万尓奴幾天毛加計天美天末之
定家 秋乃々尓遠久白露乃幾衣佐良者玉尓奴幾天毛加計天見天末之
和歌 あきののに おくしらつゆの きえさらは たまにぬきても かけてみてまし
解釈 秋の野にをく白露のきえさらは玉にぬきてもかけて見てまし
歌番号三一三
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止毛
与美人毛
よみ人も
原文 可良己呂毛曽天久徒留万天遠久川由者和可美遠安幾乃々止也美留良无
定家 唐衣袖久徒留万天遠久川由者和可身遠秋乃々止也見留良无
和歌 からころも そてくつるまて おくつゆは わかみをあきの のとやみるらむ
解釈 唐衣袖くつるまで置く露は我が身を秋の野とや見るらん
歌番号三一四
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止毛
与美人毛
よみ人も
原文 於保曽良尓和可曽天比止川安良奈久尓加奈之久川由也和幾天遠久良无
定家 於保曽良尓和可袖比止川安良奈久尓加奈之久川由也和幾天遠久良无
和歌 おほそらに わかそてひとつ あらなくに かなしくつゆや わきておくらむ
解釈 大空に我が袖一つあらなくに悲しく露やわきて置くらん
歌番号三一五
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止毛
与美人毛
よみ人も
原文 安佐己止尓遠久川由曽天尓宇遣多女天与乃宇幾止幾乃奈美多尓曽加留
定家 安佐己止尓遠久川由曽天尓宇遣多女天世乃宇幾時乃涙尓曽加留
和歌 あさことに おくつゆそてに うけためて よのうきときの なみたにそかる
解釈 朝ごとに置く露袖に受けためて世の憂き時の涙にぞ借る
歌番号三一六
安幾乃宇多止天与免留
秋哥止天与免留
秋歌とてよめる
川良由幾
川良由幾
つらゆき(紀貫之)
原文 安幾乃乃々久左毛和遣奴遠和可曽天乃者乃於毛布奈部尓川由个可留良无
定家 秋乃野々草毛和遣奴遠和可袖乃物思奈部尓川由个可留良无
和歌 あきののの くさもわけぬを わかそての ものおもふなへに つゆけかるらむ
解釈 秋の野の草もわけぬを我が袖の物思ふなへに露けかるらん
歌番号三一七
安幾乃宇多止天与免留
秋哥止天与免留
秋歌とてよめる
布可也不
布可也不
ふかやふ(清原深養父)
原文 以久世部天乃知可和寸礼无知利奴部幾乃部乃安幾者幾美可久川幾与遠
定家 以久世部天乃知可和寸礼无知利奴部幾乃部乃秋者幾美可久月与遠
和歌 いくよへて のちかわすれむ ちりぬへき のへのあきはき みかくつきよを
解釈 いく世へてのちか忘れん散りぬべき野辺の秋萩みがく月夜を
歌番号三一八
安幾乃宇多止天与免留
秋哥止天与免留
秋歌とてよめる
与美比止之良寸
与美人之良寸 よみ人しらす
詠み人知らず
原文 安幾乃与乃川幾乃可个己曽己乃万与利於知者己呂毛止三尓宇川利个礼
定家 秋乃夜乃月乃影己曽己乃万与利於知者衣止身尓宇川利个礼
和歌 あきのよの つきのかけこそ このまより おちはころもと みにうつりけれ
解釈 秋の夜の月の影こそ木の間より落ちば衣と身に移りけれ
歌番号三一九
安幾乃宇多止天与免留
秋哥止天与免留
秋歌とてよめる
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 曽天尓宇川留川幾乃飛可利者安幾己止尓己与比加八良奴可个止美衣川々
定家 袖尓宇川留月乃飛可利者秋己止尓今夜加八良奴影止見衣川々
和歌 そてにうつる つきのひかりは あきことに こよひかはらぬ かけとみえつつ
解釈 袖にうつる月の光は秋ごとに今宵変らぬ影と見えつつ
歌番号三二〇
安幾乃宇多止天与免留
秋哥止天与免留
秋歌とてよめる
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 安幾乃与乃川幾尓加左奈留久毛八礼天飛可利左也可尓美留与之毛可奈
定家 秋乃与乃月尓加左奈留久毛八礼天飛可利左也可尓見留与之毛可奈
和歌 あきのよの つきにかさなる くもはれて ひかりさやかに みるよしもかな
解釈 秋の夜の月に重なる雲晴れて光さやかに見るよしもがな
歌番号三二一
安幾乃宇多止天与免留
秋哥止天与免留
秋歌とてよめる
遠乃々与之幾
小野美材
小野美材
原文 安幾乃以个乃川幾乃宇部尓己久布祢奈礼者可川良乃衣多尓左本也左八良无
定家 秋乃池乃月乃宇部尓己久船奈礼者桂乃枝尓左本也左八良无
和歌 あきのいけの つきのうへにこく ふねなれは かつらのえたに さをやさはらむ
解釈 秋の池の月の上に漕ぐ船なれば桂の枝に棹や障らん
歌番号三二二
安幾乃宇多止天与免留
秋哥止天与免留
秋歌とてよめる
布可也不
布可也不
ふかやふ(清原深養父)
原文 安幾乃宇美尓宇川礼留川幾遠多知加部利奈三者安良部止以呂毛加者良寸
定家 安幾乃海尓宇川礼留月遠立加部利浪者安良部止色毛加者良寸
和歌 あきのうみに うつれるつきを たちかへり なみはあらへと いろもかはらす
解釈 秋の海にうつれる月を立ち返り浪は洗へど色も変らず
歌番号三二三
己礼佐多乃美己乃以部乃宇多安和世尓
是貞乃美己乃家乃哥合尓
是貞親王の家の歌合に
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 安幾乃与乃川幾乃飛可利者幾与个礼止比止乃己々呂乃久満者天良佐春
定家 秋乃夜乃月乃光者幾与个礼止人乃心乃久満者天良佐春
和歌 あきのよの つきのひかりは きよけれと ひとのこころの くまはてらさす
解釈 秋の夜の月の光は清けれど人の心の隈は照らさず
歌番号三二四
己礼佐多乃美己乃以部乃宇多安和世尓
是貞乃美己乃家乃哥合尓
是貞親王の家の歌合に
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 安幾乃川幾川祢尓加久天留者乃奈良八也美尓布留美者末之良佐良末之
定家 安幾乃月常尓加久天留物奈良八也美尓布留身者末之良佐良末之
和歌 あきのつき つねにかくてる ものならは やみにふるみは ましらさらまし
解釈 秋の月常にかく照る物ならば闇にふる身はまじらざらまし
歌番号三二五
者川幾乃止宇加安万利以川可乃与
者月乃止宇加安万利以川可乃与
八月十五夜
布知八良乃万左多々
藤原雅正
藤原雅正
原文 伊川止天毛川幾美奴安幾者奈幾者乃遠和幾天己与比乃女川良之幾可奈
定家 伊川止天毛月見奴秋者奈幾物遠和幾天今夜乃女川良之幾哉
和歌 いつとても つきみぬあきは なきものを わきてこよひの めつらしきかな
解釈 いつとても月見ぬ秋はなき物をわきて今宵のめつらしきかな
歌番号三二六
者川幾乃止宇加安万利以川可乃与
者月乃止宇加安万利以川可乃与
八月十五夜
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 川幾可个者於奈之飛可利乃安幾乃与遠和幾天美由留者己々呂奈利个利
定家 月影者於奈之飛可利乃秋乃夜遠和幾天見由留者心奈利个利
和歌 つきかけは おなしひかりの あきのよを わきてみゆるは こころなりけり
解釈 月影は同じ光の秋の夜をわきて見ゆるは心なりけり
歌番号三二七
川幾遠美天
月遠見天
月を見て
幾乃与之美川乃安曾无
紀淑光朝臣
紀淑光朝臣
原文 曽良止遠美安幾也与久良无比佐可多乃川幾乃可川良乃以呂毛加者良奴
定家 曽良止遠美秋也与久良无久方乃月乃桂乃色毛加者良奴
和歌 そらとほみ あきやよくらむ ひさかたの つきのかつらの いろもかはらぬ
解釈 空遠み秋やよくらん久方の月の桂の色も変らぬ
歌番号三二八
川幾遠美天
月遠見天
月を見て
川良由幾
川良由幾
つらゆき(紀貫之)
原文 己呂毛天者佐武久毛安良祢止川幾可个遠多万良奴安幾乃由幾止己曽美礼
定家 衣手者佐武久毛安良祢止月影遠多万良奴秋乃雪止己曽見礼
和歌 ころもては さむくもあらねと つきかけを たまらぬあきの ゆきとこそみれ
解釈 衣手は寒くもあらねど月影をたまらぬ秋の雪とこそ見れ
歌番号三二九
川幾遠美天
月遠見天
月を見て
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 安満乃可者志可良美加个天止々女奈武安可寸奈可留々川幾也与止武止
定家 安満乃河志可良美加个天止々女南安可寸奈可留々月也与止武止
和歌 あまのかは しからみかけて ととめなむ あかすなかるる つきやよとむと
解釈 天の河しがらみかけてとどめなんあかず流るる月やよどむと
歌番号三三〇
川幾遠美天
月遠見天
月を見て
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 安幾尓奈美也堂川良无安満乃可和々多留世毛奈久川幾乃奈可留々
定家 秋風尓浪也堂川良无天河和多留世毛奈久月乃奈可留々
和歌 あきかせに なみやたつらむ あまのかは わたるせもなく つきのなかるる
解釈 秋風に浪や立つらん天の河渡る瀬もなく月の流るる
歌番号三三一
川幾遠美天
月遠見天
月を見て
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 安幾久礼者於毛布己々呂曽美多礼川々万川毛美知者止知利万佐利个留
定家 安幾久礼者思心曽美多礼川々万川毛美知者止知利万佐利个留
和歌 あきくれは おもふこころそ みたれつつ まつもみちはと ちりまさりける
解釈 秋来れば思ふ心ぞ乱れつつまづもみぢばと散りまさりける
歌番号三三二
川幾遠美天
月遠見天
月を見て
布可也不
布可也不
ふかやふ(清原深養父)
原文 幾衣加部利毛乃於毛布安幾乃己呂毛己曽奈美堂乃可者乃毛美知奈利遣礼
定家 幾衣加部利物思秋乃衣己曽涙乃河乃紅葉奈利遣礼
和歌 きえかへり ものおもふあきの ころもこそ なみたのかはの もみちなりけれ
解釈 消えかへり物思ふ秋の衣こそ涙の河の紅葉なりけれ
歌番号三三三
川幾遠美天
月遠見天
月を見て
与美比止之良春
与美人之良春
よみ人しらす
原文 布久可世尓布可幾堂乃美乃武奈之久者安幾乃己々呂遠安佐之止於毛者武
定家 吹風尓深幾堂乃美乃武奈之久者秋乃心遠安佐之止於毛者武
和歌 ふくかせに ふかきたのみの むなしくは あきのこころを あさしとおもはむ
解釈 吹く風に深き田の実のむなしくは秋の心を浅しと思はむ
歌番号三三四
川幾遠美天
月遠見天
月を見て
与美比止之良春
与美人之良春
よみ人しらす
原文 安幾乃与者比止遠志川女天徒礼/\止加幾奈寸己止乃祢尓曽奈幾奴留
定家 秋乃夜者人遠志川女天徒礼/\止加幾奈寸己止乃祢尓曽奈幾奴留
和歌 あきのよは ひとをしつめて つれつれと かきなすことの ねにそなきぬる
解釈 秋の夜は人をしづめてつれづれとかきなす琴の音にぞ泣きぬる
歌番号三三五
徒由遠与女留
徒由遠与女留
露をよめる
布知八良乃幾与多々
藤原清正
藤原清正
原文 奴幾止武留安幾之奈个礼者之良川由乃知久佐尓遠个留多麻毛加比奈之
定家 奴幾止武留秋之奈个礼者白露乃知久佐尓遠个留玉毛加比奈之
和歌 ぬきとむる あきしなけれは しらつゆの ちくさにおける たまもかひなし
解釈 貫きとむる秋しなければ白露の千種に置ける玉もかひなし
歌番号三三六
者川幾乃止宇加安万利以川可乃与
者月乃止宇加安万利以川可乃与
八月十五夜
布知八良乃幾与多々
藤原清正
藤原清正
原文 安幾可世尓以止々布遣由久川幾月可个遠太知奈可久之曽安万乃可者幾利
定家 秋風尓以止々布遣由久月影遠太知奈可久之曽安万乃河幾利
和歌 あきかせに いととふけゆく つきかけを たちなかくしそ あまのかはきり
解釈 秋風にいとど更け行く月影を立ちな隠しそ天の河霧
歌番号三三七
衣武幾乃於保武止幾安幾乃宇多女之个礼者多天万川利个留
延喜御時秋哥女之个礼者多天万川利个留
延喜御時、秋歌召しければ、たてまつりける
川良由幾
貫之
貫之(紀貫之)
原文 遠美奈部之尓本部留安幾乃武左之乃者川祢与利毛奈保武川万之幾
定家 遠美奈部之尓本部留秋乃武左之乃者常与利毛猶武川万之幾
和歌 をみなへし にほへるあきの むさしのは つねよりもなほ むつましき
解釈 女郎花匂へる秋の武蔵野は常よりもなほむつましきかな
歌番号三三八
比止尓川可八之个留
人尓川可八之个留
人につかはしける
加祢三乃於保幾三
兼覧王
兼覧王
原文 安幾々利乃者留々者宇礼之遠美奈部之多知与留比止也安良无止於毛八
定家 秋霧乃者留々者宇礼之遠美奈部之立与留人也安良无止思部八
和歌 あききりの はるるはうれし をみなへし たちよるひとや あらむとおもへは
解釈 秋霧の晴るるはうれし女郎花立ち寄る人やあらんと思へば
歌番号三三九
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止毛
与美人毛
よみ人も
原文 遠美奈部之久佐武良己止尓武礼多川者多礼万川武之乃己衣尓末与布曽
定家 遠美奈部之草武良己止尓武礼多川者誰松虫乃声尓迷曽
和歌 をみなへし くさむらことに むれたつは たれまつむしの こゑにまよふそ
解釈 女郎花草むらごとに群れ立つは誰れ待つ虫の声にまどふぞ
歌番号三四〇
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止毛
与美人毛
よみ人も
原文 遠三奈部之飛留美天末之遠安幾乃与乃川幾乃飛可利者久毛加久礼川々
定家 女郎花飛留見天末之遠秋乃夜乃月乃光者雲加久礼川々
和歌 をみなへし ひるみてましを あきのよの つきのひかりは くもかくれつつ
解釈 女郎花昼見てましを秋の夜の月の光は雲隠れつつ
歌番号三四一
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止毛
与美人毛
よみ人も
原文 遠三奈部之者奈乃佐可利尓安幾可世乃布久由不久礼遠多礼尓加多良无
定家 遠三奈部之花乃佐可利尓安幾風乃布久由不久礼遠誰尓加多良无
和歌 をみなへし はなのさかりに あきかせの ふくゆふくれを たれにかたらむ
解釈 女郎花花の盛りに秋風の吹く夕暮れを誰れに語らん
歌番号三四二
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
川良由幾
川良由幾
つらゆき(紀貫之)
原文 之呂多部乃己呂毛加多之幾遠三奈部之佐个留乃部尓曽己与比祢尓个留
定家 白妙乃衣加多之幾女郎花佐个留乃部尓曽己与日祢尓个留
和歌 しろたへの ころもかたしき をみなへし さけるのへにそ こよひねにける
解釈 白妙の衣かたしき女郎花咲ける野辺にぞ今宵寝にける
歌番号三四三
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
川良由幾
川良由幾
つらゆき(紀貫之)
原文 名尓之於部者志比天多乃末武遠三奈部之者那乃己々呂乃安幾者宇久止毛
定家 名尓之於部者志日天多乃末武女郎花者那乃心乃秋者宇久止毛
和歌 なにしおへは しひてたのまむ をみなへし はなのこころの あきはうくとも
解釈 名にし負へばしひて頼まむ女郎花花の心の秋は憂くとも
歌番号三四四
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
美川祢
美川祢
みつね(凡河内躬恒)
原文 多奈者多尓々太留毛乃可奈遠美奈部之安幾与利保可尓安不止幾毛奈之
定家 織女尓々太留物哉女郎花秋与利保可尓安不時毛奈之
和歌 たなはたに にたるものかな をみなへし あきよりほかに あふときもなし
解釈 織女に似たる物かな女郎花秋よりほかに逢ふ時もなし
歌番号三四五
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 安幾乃々尓与留毛也祢奈无遠美奈部之者奈乃奈遠乃美於毛比可个川々
定家 秋乃野尓与留毛也祢奈无遠美奈部之花乃名遠乃美思可个川々
和歌 あきののに よるもやねなむ をみなへし はなのなをのみ おもひかけつつ
解釈 秋の野に夜もや寝なん女郎花花の名をのみ思ひかけつつ
歌番号三四六
堂以之良寸
題之良寸
題しらす
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 遠美奈部之以呂尓毛安留可奈末川无之遠毛止尓也止之天多礼遠末川良无
定家 遠美奈部之色尓毛安留哉松虫遠毛止尓也止之天誰遠末川覧
和歌 をみなへし いろにもあるかな まつむしを もとにやとして たれをまつらむ
解釈 女郎花色にもあるかな松虫をもとに宿して誰れをまつらん
歌番号三四七
世无左為尓遠美奈部之者部利个留止己呂尓天
前栽尓遠美奈部之侍个留所尓天
前栽に女郎花侍りける所にて
与美比止之良寸
与美人之良寸
よみ人しらす
原文 遠美奈部之尓保不佐可利遠美留止幾曽和可於以良久八久也之可利个留
定家 女郎花尓保不佐可利遠見留時曽和可於以良久八久也之可利个留
和歌 をみなへし にほふさかりを みるときそ わかおいらくは くやしかりける
解釈 女郎花匂ふ盛りを見る時ぞ我が老いらくは悔しかりける
歌番号三四八
春満比乃加部利安留之乃久礼川可多遠美奈部之遠
於利天安徒与之乃美己乃加左之尓佐寸止天
春満比乃加部利安留之乃久礼川可多遠美奈部之遠
於利天安徒与之乃美己乃加左之尓佐寸止天
相撲の還饗の暮れつ方、女郎花を
折りて敦慶親王のかざしに挿すとて
左无天宇乃美幾乃於保以末宇知幾美
三条右大臣
三条右大臣
原文 遠美奈部之者奈乃奈々良奴毛乃奈良波奈尓可八幾美可々佐之尓毛世无
定家 遠美奈部之花乃奈々良奴物奈良波何可八君可々佐之尓毛世无
和歌 をみなへし はなのなならぬ ものならは なにかはきみか かさしにもせむ
解釈 女郎花花の名ならぬ物ならば何かは君がかざしにもせん
止之己呂以部乃武寸女尓世宇曽己加与波之者部利个留遠
於无奈乃多女尓加留/\之奈止以比天由留左奴安比多尓奈无者部利个留
年己呂家乃武寸女尓世宇曽己加与波之侍个留遠
女乃多女尓加留/\之奈止以比天由留左奴安比多尓奈无侍个留
年ごろ家のむすめに消息かよはし侍りけるを、
女のために軽々しなど言ひて、許さぬ間になん侍りける
歌番号三四九
保宇己宇可家乃遠美奈部之遠女之个礼者
堂天万川留遠幾々天
法皇伊勢可家乃遠美奈部之遠女之个礼者
堂天万川留遠幾々天
法皇、伊勢が家の女郎花を召しければ、たてまつるを聞きて
比和乃比多利乃於保伊萬宇智岐美
枇杷左大臣
枇杷左大臣
原文 遠美奈部之遠利个无曽天乃布之己止尓春幾尓之幾美遠於毛比以天也世之
定家 女郎花折釼袖乃布之己止尓春幾尓之君遠思以天也世之
和歌 をみなへし をりけむそての ふしことに すきにしきみを おもひいてやせし
解釈 女郎花折りけん袖のふしごとに過ぎにし君を思ひ出でやせし
歌番号三五〇
可部之
返之
返し
以世
伊勢
伊勢
原文 遠美奈部之於利毛於良寸毛伊尓之部遠佐良尓加久部幾毛乃奈良奈久尓
定家 遠美奈部之於利毛於良寸毛伊尓之部遠佐良尓加久部幾物奈良奈久尓
和歌 をみなへし をりもをらすも いにしへを さらにかくへき ものならなくに
解釈 女郎花折りも折らずもいにしへをさらにかくべき物ならなくに
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