竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
初めてのお人でも、それなりのお人でも、楽しめると思います。

万葉集 集歌4159から集歌4163まで

2023年02月15日 | 新訓 万葉集
季春三月九日擬出擧之政行於舊江村道上属目物花之詠并興中所作之謌
過澁谿埼見巌上樹謌一首  (樹名都萬麻)
標訓 季春三月九日に、出擧(すいこ)の政(まつりごと)に擬(よ)りて舊江村(ふるえむら)に行き、道の上(ほとり)にして物花(ぶつくわ)の属目(しょくもく)せる詠(うた)并せて興中に作りし所の謌
澁谿(しぶたに)の埼(さき)を過ぎて巌の上の樹を見たる謌一首  (樹の名は「都萬麻=つまま」なり)
集歌4159 礒上之 都萬麻乎見者 根乎延而 年深有之 神佐備尓家里
訓読 礒し上(へ)しつままを見れば根を延へて年(とし)深(ふか)からし神さびにけり
私訳 磯のほとりの「つまま」を眺めると、根を延ばして何年も経っているようだ。実に神々しい。

悲世間無常謌一首并短謌
標訓 世間(よのなか)の常(つね)無きを悲しびたる謌一首并せて短謌
集歌4160 天地之 遠始欲 俗中波 常無毛能等 語續 奈我良倍伎多礼 天原 振左氣見婆 照月毛 盈興之家里 安之比奇能 山之木末毛 春去婆 花開尓保比 秋都氣婆 露霜負而 風交 毛美知落家利 宇都勢美母 如是能未奈良之 紅能 伊呂母宇都呂比 奴婆多麻能 黒髪變 朝之咲 暮加波良比 吹風能 見要奴我其登久 逝水能 登麻良奴其等久 常毛奈久 宇都呂布見者 尓波多豆美 流啼 等騰米可祢都母
訓読 天地し 遠き初めよ 世の中は 常なきものと 語り継ぎ 流らへ来たれ 天つ原 振り放け見れば 照る月も 満ち起きしけり あしひきの 山し木末(こづゑ)も 春されば 花咲きにほひ 秋づけば 露霜負(を)ひて 風交り もみち散りけり うつせみも かくのみならし 紅(くれなゐ)の 色もうつろひ ぬばたまの 黒髪変り 朝し咲(ゑ)み 夕変らひ 吹く風の 見えぬがごとく 行く水の 止まらぬごとく 常もなく うつろふ見れば にはたづみ 流るる涙 留めかねつも
私訳 天地創造の遠い昔の初めから、世の中は定まるものがないものだと、語り継がれて、時を流れて来た。天の原を振り仰いで眺めると、照る月も満ち昇ってくる。葦や檜の生える山の梢も、春になって来ると花が咲きほこり、秋になると、霜露を負って吹く風に交じって黄葉が散ります。この世も、このような姿です。紅の顔色もやがて移ろい衰え、漆黒の黒髪も変わり、朝に幸福の頬笑みも、夕べには変わってしまい、吹く風の姿が見えないように、流れ逝く水が留まらないように、定まることなく、流れ逝くと、庭に溢れるように、流れる涙は、留めることができません。

集歌4161 言等波奴 木尚春開 秋都氣婆 毛美知遅良久波 常乎奈美許曽
訓読 言問はぬ木すら春咲き秋づけば黄葉(もみち)散らくは常を莫(な)みこそ
私訳 語ることもしない木でも、春に花咲き、秋になれば黄葉となり散っていくのは、定まるものが無いからです。
一云 常無牟等曽
一(ある)は云はく、
訓読 常なけむとぞ

集歌4162 宇都世美能 常無見者 世間尓 情都氣受弖 念日曽於保伎
訓読 現世(うつせみ)の常なき見れば世の中に心つけずて念(おも)ふ日ぞ多き
私訳 この世の定まるものがないことを考えると、世の中のものごとに気持ちを集中することなく、物思いをする日々が多い。
一云 嘆日曽於保吉
一(ある)は云はく、
訓読 嘆く日ぞ多き

豫作七夕謌一首
標訓 豫(あらか)しめ作れる七夕の謌一首
集歌4163 妹之袖 我礼枕可牟 河湍尓 霧多知和多礼 左欲布氣奴刀尓
訓読 妹し袖我枕(まくら)かむ川し瀬に霧立ち渡れさ夜更けぬとに
私訳 愛しい貴女の袖を、私は抱きたい。川の瀬に霧立ち渡れ、夜が更けきらないうちに。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 万葉集 集歌4154から集歌415... | トップ | 万葉集 集歌4164から集歌416... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

新訓 万葉集」カテゴリの最新記事