竹取翁と万葉集のお勉強

楽しく自由に万葉集を楽しんでいるブログです。
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万葉集 集歌880から集歌885まで

2020年08月28日 | 新訓 万葉集
敢布私懐謌 三首
標訓 敢(あ)へて私の懐(おもひ)を布(の)べたる謌 三首
集歌八八〇 
原文 阿麻社迦留 比奈尓伊都等世 周麻比都々 美夜故能提夫利 和周良延尓家利
訓読 天離る鄙(ひな)に五年(いつとせ)住まひつつ京(みやこ)の風俗(てふり)忘(わす)らえにけり
私訳 奈良の京から遥かに離れた田舎に五年も住んでいて、奈良の京の風習を忘れてしまいそうです。

集歌八八一 
原文 加久能米夜 伊吉豆伎遠良牟 阿良多麻能 吉倍由久等志乃 可伎利斯良受提
訓読 如(かく)のみや息(いき)衝(つ)き居(を)らむあらたまの来(き)経(ふ)往(ゆ)く年の限り知らずて
私訳 このようにばかり、溜息をついているのでしょう。年魂が改まる新年がやって来て、そして去って往く。その区切りとなる年を知らないで。

集歌八八二 
原文 阿我農斯能 美多麻々々比弖 波流佐良婆 奈良能美夜故尓 咩佐宜多麻波祢
訓読 吾(あ)が主(ぬし)の御霊(みたま)賜(たま)ひて春さらば奈良の京(みやこ)に召上(めさ)げ賜はね
私訳 私の主人である貴方の思し召しを頂いて、春がやって来たら奈良の京に私を召し上げするお言葉を賜りたいものです。
左注 天平二年十二月六日、筑前國守山上憶良謹上
注訓 天平二年十二月六日に、筑前國守山上憶良、謹(つつし)みて上(たてまつ)る。

三嶋王後追和松浦佐用嬪面謌一首
標訓 三嶋王の後に追ひて松浦(まつら)佐用嬪面(さよひめ)の謌に和(こた)へたる一首
集歌八八三 
原文 於登尓吉伎 目尓波伊麻太見受 佐容比賣我 必礼布理伎等敷 吉民萬通良楊満
訓読 音(おと)に聞き目にはいまだ見ず佐用(さよ)姫(ひめ)が領巾(ひれ)振りきとふ君(きみ)松浦山(まつらやま)
私訳 噂に聞いてもこの目では未だ見たことがない、その佐用姫が領巾を振ったと云う、君を待つというその名の松浦山よ。

大伴君熊凝謌二首  大典麻田陽春作
標訓 大伴君熊凝の謌二首  大典(たいてん)麻田陽春の作れる
集歌八八四 
原文 國遠伎 路乃長手遠 意保々斯久 計布夜須疑南 己等騰比母奈久
訓読 国(くに)遠(とほ)き道の長手をおほほしく今日や過ぎなむ事(こと)問(と)ひもなく
私訳 故郷からの遠い旅路の長い道のりを想像も出来ず、今日にも死でしょう。旅路の出来事を問われることもなく。

集歌八八五 
原文 朝露乃 既夜須伎我身 比等國尓 須疑加弖奴可母 意夜能目遠保利
訓読 朝露の消(け)易(やす)き我が身他国(ひとくに)に過ぎかてぬかも親の目を欲(ほ)り
私訳 朝の露は消え易い、そのような我が身。それでも、異国に身を散らすことは出来ないでしょう。親の顔が見たくて。
コメント
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