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公安調査庁の深層  野田敬生  ちくま文庫

2008-07-12 17:19:32 | Weblog

公安調査庁の深層  野田敬生  ちくま文庫



公安調査庁といえば、2007年六月、朝鮮総連中央本部の不動産が、元公安調査庁長官名義のペーパーカンパニーに移転登記(同月一日付)されていたことが発覚した。朝鮮総連は整理回収機構から627億円の返還を求められており、支払いに応じなければ、本部不動産は差し押さえられてしまう。緒方重威・元長官との売買取引が成立すれば、その強制執行を回避できる。公安調査庁は破壊活動防止法に基づいて、総連を調査対象団体に指定している。つまり、公調の元最高幹部が、動機はともあれ敵対組織である朝鮮総連に協力した形になる。この事件についてはいろんな憶測が飛んだが、今のところ元長官の欲得ずくの犯行ということで公判を待っているところだ。
 退職後とはいえ、敵対組織に絡んで金儲けを企むとは恐れ入った話だが、こういう輩をトップに頂いた公安調査庁は著者によれば、法務省の付属機関で、公安警察と違い捜査権も逮捕権もない影の薄い存在であるらしい。日本版のCIAかというとそれほどの規模も人材もなく、共産党やオームや過激派などの調査に当たるのが仕事だ。まことに地味な役所である。大体諜報活動に携わる機関が検事上がりを幹部に据えて一丁あがりでは、いま流行のインテリジェンス(諜報)活動などできるわけが無い。ただの公務員の意識だから、簡単に敵対組織から買収されて機密事項をもらしてしまう。やはり防衛省に移管して、軍人的な発想で対処できる人材を育てるべきだ。聞くところによると、アメリカ大統領の机には毎朝、CIAが世界各地から集めた情報をA4の紙一枚にまとめられたものが置かれているらしい。大統領はそれを読んで、次の一手を考えるのだ。日本はまだまだ甘い。

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