読書日記

いろいろな本のレビュー

見えないアメリカ  渡辺将人 講談社現代新書

2008-07-10 07:59:53 | Weblog

見えないアメリカ  渡辺将人 講談社現代新書



アメリカに於ける「保守」と「リベラル」は政党で言えば「共和党」と「民主党」という図式で表されることが多いが、実はそれほど単純にはいかないようだ。分かりやすい例としてスターバックスコーヒー好きがリベラルで、クアーズビール好きが保守というのをあげている。前者はデリカテッセンのニドルのコーヒーよりはるかに割高の「ラテ」や「モカ」をすすりながら、「ニューヨークタイムス」のページをめくるライフスタイルのことで、後者はけばけばしいネオンやアメリカンフットボールのテレビ中継が流れるバーやダイナーで、フライドチキンやチップスをかじりながら飲むものである。ハイネケンでもギネスでもなくアメリカ製のクアーズであることに意味がある。
 著者は米下院議員事務所、ヒラリークリントン上院選本部=アル・ゴア大統領選ニューヨーク支部アウトリーチ局(アジア系集票担当)で働いた経験をもとに「保守」と「リベラル」の移ろい易さを実証的に説いていく。かつては「民主党」の牙城だったアメリカ中西部が「共和党」の地盤に変わっていく過程は非常に興味深い。中でも宗教と政治の分離について、アメリカでは、一つの宗教だけを優遇しないと言う意味であり,宗教の敬虔な信者であることと政治を司ることは矛盾しないという指摘は重要だ。証人として宣誓するときにバイブルを手に、神に誓っている情景が一般的である理由がよくわかった。しかし「進化論」を排撃するようになると「超保守」という烙印を押されて、村八分状態になる。微妙なバランス感覚が求められる所以である。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。