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読書日記

いろいろな本のレビュー

黒船前夜  渡辺京二  洋泉社

2010-08-09 16:13:01 | Weblog
 渡辺氏には『逝きし世の面影』というベストセラーがあるが、本書はその前の17世紀のロシア・アイヌ・日本の三国志である。ロシアはカムチャッカ半島から千島(クリル)諸島などで、日本の様子を窺いながら領土確保を期して、先住民のアイヌとの戦いを繰り広げていた。その頃のロシア人の所行はまだ山賊同然のものであり、アイヌをてなづけるどころか、却って仇敵に追いやるような蛮行を次々と重ねていたという。江戸幕府は松前藩を作って蝦夷開拓の契機にすべくアイヌ統治に全力を傾けてたが、とにかく辺境地のこととて本州のようには行かない。間宮林蔵に探検させていたくらいだから、地勢調査は緒に就いたばかりだ。したがって松前藩には石高がない。コメができないからである。このロシアとアイヌと日本のせめぎ合いの様子が克明に記されている。
 ロシアは日本との交流を図るため、オホーツク海域で捕まえた日本人をペテルブルクに送り、アカデミー付属日本語学校の教師にしてロシア人に日本語を学ばせた。しかるに日本は厳しい鎖国政策のもとロシアとの交易についてもノーの態度をとり続けていた。レザノフはこのおかげで一年もの間、長崎港で滞在を余儀なくされた。渡辺氏は言う、日本はこの時幕府主導の開国というもう一つの近代化の可能性を喪ったのだったと。また日本に幽閉されたゴローヴニンが再びロシアに送り返されるプロセスを観ても誠にまどろっこしい限りで、世界の中の国家という意味ではその体をなしていないことが分かる。鎖国によって300年の平和を享受した日本は独特の江戸文化発展させたという評価もあるが、世界の時流に乗り遅れるという弊害も大きかった。昨今の日本の外交の無能ぶりを観るにつけ諸外国と真剣勝負で渡り合う体験が文化として根付かなかったのが多いに悔やまれる。民主党政権は言ってみれば黒船によって長い鎖国から解かれた直後の幕府みたいなものだ。これでは外交は無理だ。最後に著者は言う、アイヌには国家形成の能力がなかったのではなく、その意思がなかったのであると。自然条件が厳しい北辺の地では部族を超えた共同体は確かに作りにくいであろう。
結果的にアイヌは日本の支配下に置かれて同化を余儀なくされたが、本書を読むとアイヌを日本人というくくり方で表すのは無理な気がする。

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