読書日記

いろいろな本のレビュー

ハイドリヒを撃て! シェーン・エリス 脚本/監督/撮影 

2017-08-22 20:27:53 | Weblog
 サブタイトルは「ナチの野獣」暗殺作戦。前掲『ヒトラーの絞首人ハイドリヒ』(ロベルト・ゲルバルト 白水社)でこの映画の予告をしたが、8/21(月)、テアトル梅田で見た。平日なのにほぼ満席、と言っても座席数が100席ぐらいなので、絶対数は少ない。でもこのような映画に興味を持っている人が多いのに意外な感じがしたが、悪いことではない。
 1941年冬、ナチス統治下のチェコ。イギリス政府とチェコ亡命政府の指示を受け、2人の軍人、ヨゼフ・ガプチャークとヤン・クビシュがパラシュートで人気のない森に降下。その後プラハに潜入した。彼らの目的はナチス親衛隊大将ラインハルト・ハイドリヒ暗殺、コードネーム「エンスラポイド(類人猿)作戦」だった。国内に潜むレジスタンスの協力を得て、ハイドリヒ暗殺の準備を始めるが、抵抗組織インドラの幹部ヴアネックは「奴を殺せばヒトラーはこの街を潰す。家族や知人は皆殺しにされるぞ」と反対するが、ヨゼフは「愛国者なら国のために命を落とす覚悟が必要だ」と反論する。結局1942年5月27日、計画を実行するが、狙撃に失敗。手投げ弾で負傷させた。後、ハイドリヒは病院で死亡する。暗殺の場面は忠実に再現され、ハイドリヒ役の俳優はそっくりだった。撮影は全編プラハで行なわれ非常に臨場感がある。ハイドリヒの日常は一切描かれておらず、レジスタンス側の人間模様だけが描かれている。これがこの作品の成功した理由だと思う。ヨゼフとヤンはカモフラージュのためにレジスタンスの女性とカップルになるが、2人の女性は存在感があって熱演している。
 ハイドリヒが死んだ後のナチスの報復は想像以上で、ヴァネックの予想は的中する。その過酷さに、ヨゼフが祖国愛の一点でハイドリヒ暗殺を実行した事を後悔していく様子が後半描かれていく。このナチスのリアクションは最初から予想できたわけで、ハイドリヒが死んでも後任が来るだけの話なのだが、そこにレジスタンス運動の難しさがある。ハイドリヒ暗殺は苦渋の選択だった。暗殺後、ナチスの、密告した者には懸賞金とレジスタンスであることの罪を問わないという甘い蜜に、引っかかってしまう同志。裏切りはレジスタンス運動につきものだが、むごいものだ。最後、教会に立てこもったヨゼフとヤンとレジスタンス同志の最期の戦いは壮絶の一語。全員自決という結末は、戦争の虚しさを改めて感じさせてくれる。多くの人に見て欲しい映画だ。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。