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判例紹介
借地条件変更の裁判を得た賃借人が当初の建築予定建物と規模、構造用途の異なる建物を建築することは認められないとされた事例 (東京地裁平成5年1月25日判決、判例タイムズ814号)
(事件の内容)
木造建物所有の目的で賃借していた借地人が、鉄筋又は鉄骨造3階建の工場を建築しようとして、昭和57年裁判所に借地条件変更の申立をしたところ、850万円の支払を条件に本件借地の目的を堅固建物の所有を目的とするものに変更するという決定がなされた。
借地人は、右850万円を支払ったが建物を建築しないでいた。9年後に、借地と自己所有地に跨って、当初の予定建物とは異なる鉄骨(一部鉄筋コンクリート)造7階建の貸事務所・駐車場・住宅を建築しようとして、増改築許可の申立を行った。
本件では、増改築禁止の特約は存在しなかったから、この申立は却下されたが、昭和57年に得た借地条件変更の決定により7階建の建物を建築できるか、借地と自己所有地に跨って建築することができるのか、という問題について詳しく判断を示している。
(決定の要旨)
「57年決定においては、堅固建物の規模、構造、用途を明示的に制限はしていないが、申立人が建築予定建物として提示した鉄筋3階建工場が財産上の給付額を算定する資料の一つとして斟酌され、それが条件変更と不可分一体の内容となっているのであって、条件変更を認められた部分と切り離すことはできないから、申立人は57年決定に基づいては、自ら提示した建築予定建物と規模、構造、用途の大きく異なる本件建物を建築することは認められない。
条件変更の裁判を得た後に当初の予定建物とは異なる建物を建築しようとする場合には、申立人が当初呈示した建築予定建物の規模、構造、用途を借地条件の制限に準ずるものと見て、新借地借家法17条を類推適用することによって相手方との利益調整を図るのが実際的であり、法律の趣旨に合致するのではないかと解される。
跨り建物は、賃貸借契約の終了に伴う地上建物の収去や買取請求あるいは賃借権譲渡の場合における介入権行使との関係で困難な問題を生じ、賃貸人に対して著しい不利益を与える可能性がある。特に、本件計画建物の場合には、その規模構造及び建築された場合の跨りの状況からすると、建物収去、介入権行使後の建物取得は事実上不可能であることが推認されるので、跨り建物たる本件計画建物を建築することは認められない。」
(1993.09.)
(東借連常任弁護団)
東京借地借家人新聞より
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