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【判例紹介】 借家人が老齢、病身等の事情を重くみて明渡しの正当事由がないとした事例

2008年06月24日 | 建物明渡(借家)・立退料

 判例紹介

 自己経営会社の従業員寮として自己使用の必要があるとしても、長年居住し強い愛着を抱いている老齢、病身の賃借人の犠牲において実現すべき強度の必要性は認められないとして、解約申入の正当事由がないとされた事例 東京高裁昭和60年12月12日判決、判例タイムズ603号)

 (事案)
 賃借人は昭和11年から建物の1階を借り、夫死後三男と同居している。年齢は77歳、厚生年金を受領して生活し、長年心臓病で時折発作もある。通院する病院は、借家から徒歩10分近くにあり、転居を嫌い、今後も長年住み慣れた本件借家で生活するのを強く望んでいる。

 本件建物は、昭和8年頃建築され、36年頃2階が増築された。

 現在の家主は、もともとの家主から、借家人がいるのを承知して、昭和40年7月、本件建物を買取って、その2階を自分が経営する水産物卸会社の従業員寮として使ってきた。

 その2年後、家主は本件建物を取壊して、4世帯用のアパートを新築し、自分の会社の従業員寮として使いたいと、明渡しの要求をしてきた。

 家主は、それに加えて、建物の古さを強調し、床、壁は下がり、敷居は水平でなく建具は閉まらず、人が乗れば音をたててへこむ部分があり、鴨居も下がっている部分がある。雨漏りも激しく、1階部分裏側の土台、柱も腐蝕してもろくなっていて、建物は全体的に歪んで危険な状態である、と主張した。

 さらに、60万円の立退料を支払うので正当事由を認めてくれと、裁判所に申立てたが、家主の、以上の請求は認められなかった。

 (判決要旨)
 「本件建物は、昭和36年2階にした際土台を入れ替えるなどの修理をしたのでしっかりしており、柱に傾斜、損傷はなく、床、敷居等が下がっていることもなく、居住としての使用にも支障がない。

 賃貸人は、借家人がいることを知りながら、自ら経営する会社の従業員寮として使用するために本件建物を買受けたのであり、賃借人は、老齢、病身であるが、長年本件建物に居住しこれに強い愛着を抱いており、本件賃貸部分以外は現在人が住んでおらず、一部損傷している部分があるとはいえ、本件建物はなお現状のまま居住の用に耐えるのであり、賃貸人が本件建物の明渡を受けて従業員寮として使用し得ないことにより不利益があるとしても、それはある程度予想されたことであって、賃借人の犠牲において従業員寮の新築計画を早期に実現すべき強度の必要性がある事情は認められないので、本件解約申入には正当事由がないものというべきである。

 また正当事由の補充として60万円又は裁判所の適当と認める立退料を支払う用意がある旨の申出をしたことが認められるが、右立退料の提供によって本件解約申入について正当事由が具備するに至るものと解することはできない。」

 (短評)
 裁判所のする正当事由の判断は微妙なところもあるが、本件の判断では借家人が老齢、病身で長く居住してきたことを重くみて、弱者保護の借家法の精神に沿っての判断をしている。家主が借家を途中から買取った者であったことも、借家人に有利な事情とされている。
 なお、この事件について、横浜地方裁判所も、借家人勝訴の判決をしている。

(1986.11.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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