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(問) 平成16年8月1日から契約期間2年の定期借家契約を締結し、マンションに入居した。2年後、貸主は再契約に関しては何も言わず、その後も毎月家賃を受領し続けたので、そのまま居住していた。
期間満了後約1年5か月経過した平成19年12月になって定期建物賃貸借終了通知が送られて来た。内容は「平成20年6月30日で契約は終了しますので、期日までに建物の明渡しを完了して下さい」というものだ。貸主の要求に従わなければならないのか。
(答) 借地借家法38条4項は、1年以上の期間を定めた定期借家契約を期間満了により終了させるためには「建物の賃貸人は、期間の満了の1年前から6月前までの間(通知期間)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から6月を経過した後は、この限りでない」と規定している。
尚、契約期間が1年未満の場合、終了通知は免除されている。
法文上は「通知期間の経過後」とだけ定められ、通知期間の制限を定めていない。貸主は、通知期間を経過した場合の終了通知は期間満了後であっても、6か月の猶予期間を経過すれば、何年後であろうと貸主の好き勝手な日に契約を終了出来ると理解しているようである。
しかし、終了通知は期間満了前にしなければならない。何故ならば、38条4項本文には終了通知は「期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知」となっており、「但書」の「その旨の通知」が「期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知」を指すのは明らかである。従って、期間満了前までに終了通知をすることは、法の趣旨からも当然である。
定期借家契約は「更新」が無く、期間が満了すると確定的に契約が終了するものであり、従前の賃貸借が継続することは有り得ない。従前の賃貸借が更新(継続)するというのであれば、「期間の定めのない」定期借家契約ということになり、自己矛盾であり、更新が無いという定期借家契約の趣旨に反するものである。
定期借家契約が成立するためには、借地借家法38条1~3項の法律要件を満たさなければならない。
①定期借家の再契約は「確定期間の定めのある契約」で、且つ、「更新しない契約」であることを貸主は、あらかじめ契約書とは別の書面を交付して説明しなければならない(注)(借地借家法38条2項)。
②貸主がこれらの規定による上記①の説明をしなかった場合は、定期借家契約は無効になり、普通借家契約という扱いになる(同38条3項)。
③定期借家契約は、必ず公正証書等の書面による契約が必要である(借地借家法38条1項)。
以上①~③の手続が踏まれていない場合は定期借家契約は成立しない。
期間満了時に借地借家法38条1~3項の規定による再契約の手続きをしないで、貸主が契約期間満了後も借家人から家賃を受領し続けている場合は、定期借家契約自体は終了し、期間満了後の賃貸借契約は新たに民法619条1項の規定により期間の定めのない「普通借家契約」が成立する。
そもそも、定期借家契約の成立要件は、①書面による契約で、②特約で契約の更新がなく、③契約期間が確定しており、期間満了により確定的に契約が終了することである。契約満了後も定期借家契約が継続し、家主がいつでも好き勝手な日に終了通知をすれば、6か月後に確定的に契約が終了すると考えることに無理がある。
尚、契約期間満了後になされた「終了通知」は、解約申入れとみなされる。しかし、期間の定めのない賃貸借契約の場合は解約の申入れに際しては正当事由が必要とされている(借地借家法28条)。貸主が借家契約を解除するには正当事由を立証する必要であり、最終的には裁判所の判断に委ねられる。
(注) 平成12年2月1日 建設省建設経済局長・建設省住宅局長名で都道府県知事宛てに「定期賃貸住宅標準契約書に関する通達」が出されている。以下が借地借家法第38条2~3項関係の事項。
「定期賃貸住宅契約を締結しようとするときは、あらかじめ賃貸人は賃借人に対し、契約の更新がなく、期間満了により終了することについて、その旨を記載した書面を契約書とは別に交付して説明しなければならないこととされており、それを怠った場合は、定期賃貸住宅契約とはならず、従来型の正当事由がない限り賃貸人からの更新拒絶ができない賃貸住宅契約となること。このため、書面の雛形である「定期賃貸住宅についての説明」の周知を図ること。」(「定期賃貸住宅標準契約書に関する通達」建設省経動発第10号、建設省住民発第1号)
<追加>
定期建物賃貸借(定期借家契約)が成立するには、「借地借家法38条2項において賃貸借契約の締結に先立ち契約書とは別に説明書面が交付」されていなければならないとしている(最高裁平成22年7月16日判決)。
「法38条2項所定の書面は、賃借人が、当該契約に係る賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により終了すると認識しているか否かにかかわらず、契約書とは別個独立の書面であることを要するというべきである。」(最高裁平成24年9月13日判決)
参考法令
「借地借家法」第38条
(定期建物賃貸借)
第38条 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第30条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第29条第1項の規定を適用しない。
2 前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
3 建物の賃貸人が前項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。
4 第1項の規定による建物の賃貸借において、期間が1年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の1年前から6月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から6月を経過した後は、この限りでない。
民法
(賃貸借の更新の推定等)
第619条 賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第617条の規定により解約の申入れをすることができる。
(期間の定めのない賃貸借の解約の申入れ)
第617条 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
一 土地の賃貸借 1年
二 建物の賃貸借 3箇月
三 動産及び貸席の賃貸借 1日
2 収穫の季節がある土地の賃貸借については、その季節の後次の耕作に着手する前に、解約の申入れをしなければならない。
参考 「Q&A 定期借家契約」」(東京借地借家人組合連合会編)より
Q1 定期借家契約とは
Q2 定期借家契約を結ぶ手続き
Q3 既存の居住用借家契約から定期借家契約への切り替え
Q4 既存の店舗借家契約から定期借家契約への切り替え
Q6 定期借家契約の相続・譲渡・転貸借
Q7 定期借家契約期間途中の解約
Q8 借家人は定期借家契約の途中で家賃の減額を請求できるか
Q9 定期借家契約の期間が満了で必ず建物を明渡さなければならないのか
Q10 同じ建物で定期借家契約が繰り返された場合は
Q11 新しく借家契約をするときの注意点
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借地借家法改悪反対全国連絡会は、定期借家制度導入後の現状と課題や住宅政策について国土交通省と4月21日午前10時30分から1時間半ほど懇談した。国土交通省から住宅局住宅総合整備課の三浦賃貸住宅対策官が応対した。
規制改革会議の「借家制度の改善」の答申については、「借地借家法の所管は法務省であり、国土交通省は住宅政策として活用しやすいようにPRし普及させる」と述べ、「議員立法なので国会の動きをホローしていく」と国交省の役割について語った。
全国連絡会の代表は、定期借家制度が借家人の追い出しに利用されたり、「再契約可」と契約書に書いてあっても期間満了で借家人が追い出されている実態など指摘し、同制度について借主側の実態を調査すべきであると訴えた。
また、定期借家推進協議会が平成12年3月1日以後に契約した居住用の普通借家契約については、当事者が合意により定期借家契約への切替は可能であるとの解釈をしている問題については「グレーゾーンの問題で法務省の見解を聞いてみたい。当時の国会の審議を重く受け止める必要がある」と回答した。定期借家制度は、特別措置法の附則3条で法施行前にされた建物賃貸借の契約当事者が合意の上でも普通借家から定期借家の切替は禁止されている。
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2007年12月14日、事業用定期借地権の存続期間延長法案が参院本会議で賛成多数で可決、成立した。
現行の「事業用借地権」(借地借家法24条)は借地存続期間が「10年以上20年以下」と規定されている。その存続期間を「10年以上30年未満」(改正借地借家法23条2項)に変更して存続期間を10延長した。また、「30年以上50年未満」(改正借地借家法23条1項)を新設した。更に名称も「事業用借地権」から「事業用定期借地権」に変更された。
今回新設された23条1項は、公正証書で契約すれば、特約によって①更新を認めない、②再築による期間延長がない、③建物買取請求権を認めない、ことが出来る。
換言すれば、「事業用定期借地権」であるから、契約の更新は認められないが、当事者の合意があれば、再契約は勿論認められる。また、特約によって、建物再築による存続期間延長も可能であるが、その場合は50年未満の要件に合致していなければならない。更に「建物買取請求権」を認める「事業用定期借地権」も許容されるということである。
しかし、23条2項は、従前と同じで公正証書で契約すれば、条文で上記の①~③は禁止措置が採られているので、①~③の特約をしなくても、正当事由による更新制度(借地借家法5条・6条)、建物再築による存続期間延長制度(借地借家法7条)及び建物買取請求権(借地借家法13条)認められない。
なお、この存続期間延長の改正借地借家法23条は2008(平成20)年1月1日から施行される。
以下の青字部分が改正されたところ。主な改正点は、現行の23条→24条、24条→23条に入れ替え、青字部分を追加した。
(定期借地権)
第22条 存続期間を50年以上として借地権を設定する場合においては、第9条及び第16条の規定にかかわらず、契約の更新(更新の請求及び土地の使用の継続によるものを含。次条第1項において同じ)及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第13条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。この場合においては、その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない。
(事業用定期借地権等)
第23条 専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。次項において同じ。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を30年以上50年未満として借地権を設定する場合においては、第9条及び第16条の規定にかかわらず、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第13条の規定よる買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。
2 専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、かつ、存続期間を10年以上30年未満として借地権を設定する場合には、第3条から第8条まで、第13条及び第18条の規定は、適用しない。
3 前2項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。
(建物譲渡特約付借地権)
第24条 借地権を設定する場合(前条2項に規定する借地権を設定する場合を除く。)においては、第9条の規定にかかわらず、借地権を消滅させるため、その設定後30年以上を経過した日に借地権の目的である土地の上の建物を借地権設定者に相当の対価で譲渡する旨を定めることができる。
2 前項の特約により借地権が消滅した場合において、その借地権者又は建物の賃借人でその消滅後建物の使用を継続しているものが請求をしたときは、請求の時にその建物につきその借地権者又は建物の賃借人と借地権設定者との間で期間の定めのない賃貸借(借地権者が請求をした場合において、借地権の残存期間があるときは、その残存期間を存続期間とする賃貸借)がされたものとみなす。この場合において、建物の借賃は、当事者の請求により、裁判所が定める。
3 第1項の特約がある場合において、借地権者又は建物の賃借人と借地権設定者との間でその建物につき第38条第1項の規定による賃貸借契約をしたときは、前項の規定にかかわらず、その定めに従う。
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【Q11】 これから新しく借家契約を結ぶに当たってどんな点に注意したらいいでしょうか。
【A11】 今後、定期借家契約が出回ることが予想されますので、先ず、賃貸借契約書が、普通の賃貸借契約書か定期借家契約書かのどちらであるかを注意してください。
普通の賃貸借契約書では、「期間満了の時は当事者双方協議して更新することができる」と書かれていますが、定期借家契約書の場合は、「期間満了の時は、更新がないこととする」と書かれています。「契約の更新がない」と書かれていた場合は、定期借家契約になります。契約調印のときに、貸主や不動産屋さんに、「契約書にはこう書いてあるが実際は更新できるから」と言われたとしても、最後にものを言うのは賃貸借契約書に書いてある文字ですから、よく注意する必要があります。
次に注意すべき点は、契約の中途解約についての条項です。定期借家契約書には、「借主が契約期間の途中で解約するときは、残存期間の賃料を支払われなければならない」と書かれていることがあります。このような条項があったときは、中途解約ができるような条項、例えば「借主が中途解約を申し入れた場合、解約申入れから1ヶ月を経過したときに賃貸契約が終了する」というような条項に訂正してもらってください。
最後に家賃の値上げに関する条項に注意してください。定期借家契約書では、例えば「家賃は2年ごとに5%増額することに合意する」とか「家賃は5年間は不変とする」というような条項がある場合があります。
右のような契約条項は、定期借家契約のもとでは有効とされてしまいますので、契約をするときに、よく検討する必要があります。
「Q&A 定期借家契約」(東京借地借家人組合連合会編)より
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【Q10】 同じ建物について定期借家契約が繰り返されたときでも、期間が満了したとき、建物を明渡さなければならないのでしょうか。
【A10】 一般に賃貸契約書には、「期間満了の時は当事者双方協議して更新することができる」と書かれていますが、定期借家契約書では、「期間満了の時は、契約の更新ができないこととする」と定められることになります。
定期借家契約の期間が満了したときに、お互いの合意で、再度、定期借家契約書を取り交わすということもあり得ます。再度の定期借家契約をすることは、法律的に禁じられるものではありません。
しかし、契約期間の満了時に、何度も定期借家契約が繰り返された場合、当事者間において、「契約の更新がないこととする」という定期借家の契約意思が、真実あったのかどうか、大いに疑われることになり、ケースによっては、定期借家ではなく普通の借家契約であると見なされる場合が出てきます。そうなれば、期間満了だけの理由で明渡す必要はなくなります。
賃貸契約に「一時使用のための賃貸借」というものがあり、やはり契約更新がありませんが、一時使用賃貸借が何度も繰り返されると、賃貸借の更新制度を脱法するために一時賃貸借契約の形を作ったと判断され、普通の賃貸借契約であると見なされる場合があります。
「Q&A 定期借家契約」(東京借地借家人組合連合会編)より
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【Q9】 定期借家契約の期間が満了したとき、必ず建物を明渡さなければならないのでしょうか。
【A9】 定期借家契約では「契約の更新がない」という特約が付いています。「更新がない」とは、合意で更新することもないし、法定更新することもないという意味です。
定期借家契約の期間が満了したときに、借家契約が終了するには、次の「終了通告」のあることが必要です。定期借家契約では、法定更新というものがありませんので、理論的には、期間満了と同時に当然に契約が終了することになり、衝撃が強すぎます。
そこで、この摩擦や不都合を少しでも回避するために、改正された借地借家法は、「賃貸人は、期間の満了の1年前から6月前までの間(これを「通知期間」といいます)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了すること」を通知しなければならない、この通知をしなかったときは、「賃貸借の終了を賃借人に対抗できない」と定めています。「対抗できない」という意味は、あくまでも賃貸人からは契約終了を請求できないということです。
なお、改正借地借家法は、終了通知を正規の「通知期間」内にせず、それ以後にした場合、その通知の日から6月を経過した後は、定期借家による「賃貸借終了を賃借人に対抗することができる」と定めていますので、例えば、期間満了の1日前に終了通知が来ると、それから6ヵ月後には賃貸借が終了することになります。
契約期間の6月前までにこの終了通知がなく、そのまま契約期間を過ぎて、賃借人が建物使用を継続してしまったときは、賃貸人は、もはや賃貸借の終了を賃借人に請求することはできなくなります。その結果、定期借家契約における「定期特約」は、事実上、消滅して期間の定めない通常の賃貸借契約が継続することになります。この場合、以後の契約関係がどうなるのかについては、期間の定めのない定期借家契約になるという説と期間の定めのない普通借家契約になるという説がありますが、私たちは、後説が正しいと考えます。
「Q&A 定期借家契約」(東京借地借家人組合連合会編)より
借地借家法(定期建物賃貸借)
第38条 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第30条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第29条第1項の規定を適用しない。
2 前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
3 建物の賃貸人が前項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。
4 第1項の規定による建物の賃貸借において、期間が1年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の1年前から6月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から6月を経過した後は、この限りでない。
5 第1項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が200平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から1月を経過することによって終了する。
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【Q8】 定期借家契約の場合、借家人は契約の途中で家賃の減額を請求することができるでしょうか。
【A8】 借地借家法32条1項は、①土地や建物にたいする租税その他の負担増減、②土地や建物の価値の上昇又は低下その他の経済事情の変更、③近隣の家賃に比較して不相当になったときには、「契約の条件にかかわらず」、貸主は家賃の増額を、借主は減額を請求することができる、と定めています。
定期借家契約の場合にも、原則として右の規定が適用になります。5年とか10年とか比較的長期の定期借家契約の場合には、右の規定が適用される余地があります。
しかし、新法は、定期借家契約においては、「借賃の改定に係る特約がある場合」には、右の規定は適用しない、としました。すなわち、「借賃の改定に係る特約」が優先し、右の①~③のような事情が生じても、家賃の増額を請求したり、又は、減額を請求することはできなくなりました(借地借家法38条7項)。
したがって、例えば、「契約期間中家賃は据置きとする」とか「家賃は2年毎に5%ずつ増額する」とかの特約があれば、定期借家人は、たとえ前記①~③のような事情が生じても家賃の減額を請求することはできません。
「Q&A 定期借家契約」(東京借地借家人組合連合会編)より
(借賃増減請求権)
第32条 建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。(借地借家法32条1項)
7 第32条の規定は、第1項の規定による建物の賃貸借(定期建物賃貸借=定期借家契約)において、借賃の改定に係る特約がある場合には、適用しない。(借地借家法38条7項)
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【Q7】 借家人は定期借家契約を途中で終了させることができるでしょうか。
【A7】 普通の借家契約も定期借家契約も、期間を定めて契約を結んだ以上、その期間の途中において貸主はもちろん、借主も一方的に契約を終了させることはできません。これが原則です。
この点、新法は定期借家契約について特例を定めました。すなわち、床面積が200平方メートル未満の居住の用に供する建物(店舗兼居宅の場合もこれに含まれます)の定期借家契約については、「転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から1月を経過することによって終了する」(借地借家法38条5項)としました。そして、右の規定に反する特約で定期借家人に不利な特約(例えば、地上のいかんを問わず中途解約は認めない、など)は無効とされました。
右の規定の反対解釈として、
①床面積が200平方メートル未満の居住用建物であっても転勤等のやむを得ない事情がない場合とか、
②居住用建物であっても床面積が200平方メートル以上である場合とか、
③非居住用(店舗とか事務所など)である場合(面積の大小は問わない)には、
これまであったような例えば1ヶ月前に予告すれば解約できるというような特約でも結ばれない限り、借家人の方から一方的に中途解約することはできないことになります。すなわち、期間の中途で明渡しても残存期間の家賃は支払わなければならないのです。
「Q&A 定期借家契約」(東京借地借家人組合連合会編)より
借地借家法38条5項
第1項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が200平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から1月を経過することによって終了する。
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【Q6】 定期借家契約の場合、借家権の相続・譲渡・転貸借はどうなるのでしょうか。
【A6】 定期借家契約は、契約の更新がなく、期間の満了により賃貸借は終了し、借家人は建物を明渡さなければならない、というところに特徴がありますが、その他の点では普通の借家契約と何ら性質は変わりません。
したがって、借家権の相続・譲渡・転貸借についても普通の借家契約と同じように考えればよいことになります。建物の修繕についても同様です。
① 定期借家権の相続
定期借家権も財産権としての相続の対象になり、民法886条以下に定められている相続人(これを法定相続人といいます)が定期借家権を相続することができます。相続人が数人いる場合に、そのうち誰(と誰)が定期借家権を相続するかは、相続人間のみの協議で決めることができ、家主はこれに異議を挟むことはできません。相続人は被相続人が締結した期間の残存期間だけ賃借することができます。もし、相続人が定期借家権を相続しないとしても、残存期間の家賃は支払わなければなれません。
②定期借家権の譲渡と転貸
定期借家権の譲渡も定期借家の転貸も家主の承諾が必要です。承諾を得ずに無断で譲渡したり転貸したりしますと、家主から定期借家契約を解除されてしまいます(民法612条)。
「Q&A 定期借家契約」(東京借地借家人組合連合会編)より
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【Q4】 平成12年3月1日前から借家をして店舗を営業していますが、定期借家契約に切り替えられないでしょうか。
【A4】 平成12年3月1日前から店舗を借りて営業をしている場合には、借家契約の更新に関してはなお従前の例によるとされています(特別措置法第2条1項)。
したがって、これまでの店舗についての普通借家契約の場合にも、借地借家法第28条により、家主に建物を使う必要など正当の事由がない場合には、これまでどおりの借家契約の内容で更新されることになります。
ところで、家主がこれまでの借家契約の途中、あるいは時期満了に際して、借家人に対し、これまでの借家契約を合意解約して新たに定期借家契約を結ぶことを求めて来た場合、定期借家契約に切り替えることができるかどうか問題となります。
この場合、借家人が、定期借家契約への切り替えを拒否すれば、定期借家契約に切り替えることはできません。
次に、借家人が、定期借家契約への切り替えを承諾した場合、定期借家契約に切り替わるのかどうかが問題となります。
この場合、借家人が、居住用借家の場合とは異なり、定期借家契約に切り替えることに合意した以上、定期借家契約に切り替えることができるとされています(特別措置法第3条)。
そこでは、家主は借家人に対し、貸主・借主の力関係から定期借家契約に切り替えようとする場合がありますので、定期借家契約への切り替えの要求に対しては慎重に対処する必要があります。
なお、店舗だけでなく、事務所、工場、倉庫等の場合も同様です。
「Q&A 定期借家契約」(東京借地借家人組合連合会編)より
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【Q3】 平成12年3月1日前から借家をしていますが、定期借家契約に切り替えられないでしょうか。
【A3】 平成12年3月1日前から居住用の建物を借りている場合には、借家契約の更新に関してはなお従前の例によるとされています(特別措置法第2条1項)。
したがって、これまでの普通借家契約の場合には、借地借家法第28条により、家主に建物を使う必要など正当の事由がない場合には、これまでどおりの借家契約の内容で更新されることになります。
なお、この居住用借家には、生活の本拠として使用している店舗併用住宅を含みます。
ところで、家主が期間の途中あるいは更新時期に、借家人に対し、これまでの借家契約を合意解約して新たに定期借家契約を結ぶことを求めて来た場合、定期借家契約に切り替えることができるかどうか問題となります。
この場合、借家人が、定期借家契約への切り替えを拒否すれば、定期借家契約に切り替えることはできません。
次に、借家人が、定期借家契約への切り替えを承諾した場合、定期借家契約に切り替わるのかどうかが問題となります。
この場合でも、今回の改正では定期借家契約に切り替えることはできないとされました(特別措置法第3条)。
しかし、そこには『当分の間』定期借家契約に切り替えることはできないとされていますので、借家人の権利を守る上では、この『当分の間』を永続させることが必要です。
「Q&A 定期借家契約」(東京借地借家人組合連合会編)より
定期借家推進派は既存の居住用借家から定期借家への切り替えを禁止している「特別措置法第3条」の削除を目論んでいる。
(参考)
附 則 (平成11年12月15日法律第153号) 抄
(施行期日)
第1条 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第5条、次条及び附則第3条の規定は平成12年3月1日から施行する。
(借地借家法の一部改正に伴う経過措置)
第2条 第5条の規定の施行前にされた建物の賃貸借契約の更新に関しては、なお従前の例による。
2 第5条の規定の施行前にされた建物の賃貸借契約であって同条の規定による改正前の借地借家法(以下「旧法」という。)第38条第1項の定めがあるものについての賃借権の設定又は賃借物の転貸の登記に関しては、なお従前の例による。
第3条 第五条の規定の施行前にされた居住の用に供する建物の賃貸借(旧法第38条第1項の規定による賃貸借を除く。)の当事者が、その賃貸借を合意により終了させ、引き続き新たに同一の建物を目的とする賃貸借をする場合には、当分の間、第5条の規定による改正後の借地借家法第38条の規定は、適用しない。
(検討)
第4条 国は、この法律の施行後4年を目途として、居住の用に供する建物の賃貸借の在り方について見直しを行うとともに、この法律の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
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【Q2】 定期借家契約を結ぶにはどういう手続きが必要か。
【A2】 普通の借家契約の場合には、契約書など交わさなくても口頭でも結ぶことができます。しかし、定期借家契約の場合には、
第1に、書面によって契約をすることが必要です。したがって、契約書などの書面によらず口頭だけの場合には定期借家契約は成立しません。借地借家法38条1項は「公正証書等書面」によって契約しなければならないと規定していますが、公正証書に限らず書面であれば市販のものでもかまいません。
第2に、定期借家契約書には、契約の更新がないことが明記されていなければなりません。それと矛盾するような契約内容となっている場合には定期借家契約とは認められず、普通の借家契約となります。
第3に、定期借家契約を結ぶに当って、貸主は借主に、契約の更新がなく、期間が満了すれば賃貸借契約は終了することが記載された書面を渡して説明しなければなりません。この書面による説明がなかった場合には、定期借家契約は成立せず、更新のある普通の借家契約として扱われることになります。
「Q&A 定期借家契約」(東京借地借家人組合連合会編)より
第3節 定期建物賃貸借等
借地借家法(定期建物賃貸借)
第38条 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第30条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第29条第1項の規定を適用しない。
2 前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
3 建物の賃貸人が前項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。
4 第1項の規定による建物の賃貸借において、期間が1年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の1年前から6月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から6月を経過した後は、この限りでない。
5 第1項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が200平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から1月を経過することによって終了する。
6 前2項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
7 第32条の規定は、第1項の規定による建物の賃貸借において、借賃の改定に係る特約がある場合には、適用しない。
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【Q1】 定期借家契約とはどういうものですか。
【A1】 定期借家契約とは、契約の期間あるいは建物の種類・用途を問わず、契約期間が満了したときには、契約が更新されることなく、終了する契約です。(借地借家法第38条)
これまでの借家契約では、契約期間が満了しても、家主に建物を使う必要など正当の事由がないときは契約が更新されることになっていました。
ところが、定期借家契約では、契約期間満了に際して、家主と借家人との間で、特に再契約の合意がなされなければ借家を使用し続けることができなくなったのです。したがって、定期借家契約を結ぶかどうか慎重に考える必要があります。
また、定期借家契約の場合、これまでの借家契約と異なり、契約期間が重要な意味を持つことになります。これまでは、契約期間が満了しても、更新が予定されていましたので、契約期間がそれほど重要な意味をもっていなかったのですが、定期借家契約になると、契約期間が満了することによって当然に借家契約が終了することになりますので、期間を何年にするかが、重要な意味を持つことになります。
借家人は、定期借家契約を結ぶに当り、建物をどういう目的でどのように使用するかの計画を立て契約期間が長くも短くもないように決めなければなりません。
そして、3年なり、5年なり、あるいは10年という期間で契約することになるわけですが、契約内容によっては、中途で解約できなかったり、解約する上で厳しい条件がついていることもありますので、この意味でも契約期間を慎重に決める必要があるのです
「Q&A 定期借家契約」(東京借地借家人組合連合会編)より
借地借家法
(定期建物賃貸借)
第38条 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第30条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第29条第1項の規定を適用しない。
2 前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
3 建物の賃貸人が前項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。
4 第1項の規定による建物の賃貸借において、期間が1年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の1年前から6月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から6月を経過した後は、この限りでない。
5 第1項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が200平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から1月を経過することによって終了する。
6 前2項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
7 第32条の規定は、第1項の規定による建物の賃貸借において、借賃の改定に係る特約がある場合には、適用しない。
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(問題15) 店舗の定期借家契約への切替
店舗の普通借家契約が期間満了で契約更新に当り、更新ができるので今までの契約と変わりはないと言われ、2年間の定期借家契約に変更しました。家主からは定期借家契約について事前の説明は受けておりません。定期借家契約を取消して普通借家契約に戻すことはできますか。
(①取り消すことはできない。 ②取り消すことができる。)
●解答・解説は田見高秀弁護士(東借連常任弁護団)です。
(解答)
②取り消すことができる。
(解説)
東京・台東借地借家人組合2【2007年4月17日 (火)】 (参考)
無効な定期借家契約
仙台市でアンティ―クの雑貨のお店を営業している斉藤さんは今年の8月に建物を取り壊すので明渡して欲しいと言われた。突然の話しで困っていると家主はいきなりこの契約は今年の2月までの定期借家契約で期限が過ぎているので6ヶ月の予告で解約できると言ってきた。
心配になってインターネットや本などで借地借家人組合と言う組織の存在を知って相談にきた。電話での相談で困難な面があったが、契約書などをファックスで送付したところ、定期賃貸借契約だという家主の主張には定期借家契約に必要な書面による通知がなかった。その上、家主の夫は宅建主任の免許をもっており、その仲介での契約であった。家主の代理人である弁護士からは」「定期借家契約に基いて、引き続き契約するならば定期借家契約。それ以外ならば明渡しを求める」との通知がきた。
組合では斉藤さんと相談し「この『定期借家契約』そのものが借地借家法第38条2項の文書がないことで無効となり、通常の賃貸借契約であること。又、期限が過ぎての契約解除通告は無効である」と主張することにした。
東京借地借家人新聞より
参考法令は「借地借家法」
(定期建物賃貸借)
第38条 期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り第30条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第29条第1項の規定を適用しない。
2 前項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
3 建物の賃貸人が前項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。
4 第1項の規定による建物の賃貸借において、期間が1年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の1年前から6月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から6月を経過した後は、この限りでない。
5 第1項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が200平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から1月を経過することによって終了する。
6 前2項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
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2007年12月14日、事業用定期借地権の存続期間延長法案が参院本会議で賛成多数で可決、成立した。なお、改正法は2008年1月1日から施行。
現行の「借地借家法」第24条の「事業用借地権」の借地存続期間は「10年以上20年以下」と規定されており、特約を結ばなくても「契約更新」と「建物買取請求権」及び「建物再築許可の規定」は法的に排除されている。また契約は公正証書ですることを義務づけられている。
「事業用借地権」は約定した借地期間が終了すると「建物買取請求権」と「契約の更新」及び「再築による期間の延長」がないので、借地権は確定的に消滅する。従って借地権者は自己の費用で建物を取壊し、土地を原状に回復して借地権設定者に返還しなければならない。この義務を借地権者が怠った場合には、債務不履行となる。借地権者が原状回復しなかった場合、借地権設定者が裁判上の手続を取ることになるが、この場合の原状回復費用は借地権者に求償すべきものとされている。
このように定期借地は、存続期間が満了したら建物を取壊し、借地を更地にして返還しなければならない制度である。
但し、欧米諸国の「定期型借地権」は、多くの場合、物権的土地利用権であり、日本の「定期借地権」のように債権的権利である賃借権ではない。従って、欧米諸国の「定期型借地権」は譲渡性があり、借地権自体に担保権を設定することが出来る。
更に借地権が消滅した場合に建物を取壊し、更地にして返還する必要はない。建物は土地に附合するということから土地所有者のものになるのが原則である(注)。従って存続期間満了後に建物を取壊すことはない。これにより定期借地上の建物に居住する借家人の居住権も保護されることになる。
日本の「借地借家法」は35条で借地権の終了を知らなかった借家人を保護するために明渡しに1年以内の猶予期間を借家人に与えている。しかし、これも建物取壊しを前提とする特異な規定と言える。
いずれにしても借地権が満了すると建物を取壊さなければならない日本の「定期借地権」は、定期借地上建物の借家人の居住権を充分に保護していないということで、欧米諸国には存在しない特異な制度であることに注意すべきである。
(注)ドイツでは借地権が消滅すると建物は自動的に土地所有者の所有に属することになる。しかし土地所有者は建物の取引価格を基準とする償金を支払わなければならない。これにより借地権者は投下資本の回収を保障されている。
「改正法案」は「事業用定期借地」に関して2通りの借地期間を設定している。
①「改正法案」は現行「借地借家法法」第24条と同一内容で期間が「10年以上20年以下」から「10年以上30年未満」に延長されている(改正法案第23条2項)。
②借地の「存続期間を30年以上50年未満」とした場合、(1)更新排除特約、(2)建物再築による存続期間の延長を排除する特約、(3)建物買取請求権を排除する特約、以上(1)~(3)の特約は公正証書で契約を結ぶ場合に認められる(改正法案第23条1項)。
以上が事業用定期借地の「改正法案」の主な内容である。
次に掲載するのが、「借地借家法の一部を改正する法律案」である。
以下の青字部分が改正されるところ。主な改正点は、現行の23条→24条、24条→23条に入れ替え、青字部分を追加した。
(定期借地権)
第22条 存続期間を50年以上として借地権を設定する場合においては、第9条及び第16条の規定にかかわらず、契約の更新(更新の請求及び土地の使用の継続によるものを含。次条第1項において同じ)及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第13条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。この場合においては、その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない。
(事業用定期借地権等)
第23条 専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。次項において同じ。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を30年以上50年未満として借地権を設定する場合においては、第9条及び第16条の規定にかかわらず、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第13条の規定よる買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。
2 専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、かつ、存続期間を10年以上30年未満として借地権を設定する場合には、第3条から第8条まで、第13条及び第18条の規定は、適用しない。
3 前2項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。
(建物譲渡特約付借地権)
第24条 借地権を設定する場合(前条2項に規定する借地権を設定する場合を除く。)においては、第9条の規定にかかわらず、借地権を消滅させるため、その設定後30年以上を経過した日に借地権の目的である土地の上の建物を借地権設定者に相当の対価で譲渡する旨を定めることができる。
2 前項の特約により借地権が消滅した場合において、その借地権者又は建物の賃借人でその消滅後建物の使用を継続しているものが請求をしたときは、請求の時にその建物につきその借地権者又は建物の賃借人と借地権設定者との間で期間の定めのない賃貸借(借地権者が請求をした場合において、借地権の残存期間があるときは、その残存期間を存続期間とする賃貸借)がされたものとみなす。この場合において、建物の借賃は、当事者の請求により、裁判所が定める。
3 第1項の特約がある場合において、借地権者又は建物の賃借人と借地権設定者との間でその建物につき第38条第1項の規定による賃貸借契約をしたときは、前項の規定にかかわらず、その定めに従う。
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