嗄れ声の日本人ソウル・シンガー、円道一成が1983年にリリースした3rdアルバム。今となっては正直この円道氏自体の知名度はそれほどでもありませんが、山下達郎が全面サポートしたナンバーが2曲収録されており、未CD化ながらその筋では比較的人気の高い作品です。気になる達郎関連ナンバーはA-5のL.A.BabeとB-2の「酔いしれてDeja Vu」。このうち特にB-2の「酔いしれてDeja Vu」は山下氏自体も相当にお気に入りのようで、2年前にNHK-FMで放送された「今日は一日“山下達郎”三昧」で隠れ名曲として取り上げたり、昨年リリースされたベストアルバムでセルフカバーしてたりしていました。同時にピックアップされていたKinki Kidsや鈴木雅之らのネームバリューと比較すると、いずれも普通に考えれば有り得ない選曲なので、氏がいかにこの曲に愛着を感じているかが分かります。曲調としてはミディアムテンポのブルージーな和製AORナンバー。歌声にクセはありますが、そこさえ気にならなければおそらくわりと万人に受けるタイプの曲かと思います。個人的にはその他収録曲も含め、現クレイジーケンバンドの横山剣在籍時のクールス辺りに近い質感のアルバムとして比較的お気に入り。例の曲とは同名異曲ながらB-3に「シンデレラ・リバティー」なる曲が収録されていたりと、それなりに共通項も感じられるため親和性は高いと思います。昨日紹介した角松敏生らの優男路線とはまた少しベクトルが違いますが、これはこれで古き良き昭和を感じるシティポップスの一つの形。たとえば井田リエや当山マイラ恵子あたりのメロウながら多少やさぐれた雰囲気の曲が好きな人なら、きっと気に入るはずです。かっこいい不良の音楽という表現がぴったり。冒頭にも書いたように未CD化ですが、それほど極端にレアなアルバムと言うわけではないので、気になる人は探してみてください。
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