昔はフットルースで検索をかけると、ケニー・ロギンスが主題歌を歌う同名映画のサントラ盤ばかり出てきたような気がしますが、最近はさすがに少し事情が変わってきたようで、結構な割合でこの盤もヒットするようになりました。こちらのフットルースは、後にソロでも活躍するティム・フィーハンを中心としたカナダの5人組バンドで、この盤は彼らによる80年の作品。他にリリースがあるいう噂は耳にしたことがないので、おそらくこれが唯一のアルバムと思われます。正直アルバム通して聴くと産業ロック系のナンバーもあるため、アルバム一枚まるごと好みというほどではないのですが、とにかくA-1のLeaving For Mauiが絶品メロウ・フローターで素敵。似たような時期にリリースされたナイトフライトのIf You Want It直系のたまらなくアーベインな一曲で、おまけに題材がハワイと来れば自ずと食指も動くというものです。彼ら自身はカナダの人たちですが、この曲についてはハワイアンAORの一つとして捉えてもいいかもしれません。たしか実際にハワイでこの曲をカバーをした人たちもいたはず。また他の曲ではB-1のTime Is Rightも同系統のライトメロウなナンバー。サビでの転調もばっちりで、とてもフリーソウル受け良さそうな一曲です。ミディアム・ダンサーで決めたA-2のJust Enough Love辺りも、際立った派手さはないもののなかなかの仕上がり。間奏でのサックスソロが気持ちいいですね。ちなみにこのアルバム、10年ほど前のAORリバイバルブーム時に国内盤でリイシューされたCDは、比較的売れ行きが良いのか現在でも度々再プレスされているので入手が容易ですが、オリジナルのLPはMustardというカナダのローカル・レーベルからのリリースということもあり若干レア。さらに専門店でときどき見かけても、それなりに良い値段が付いていたりします。スニーカー好きとしては放っておけないジャケットなので僕はついLPも買ってしまいましたが、その辺りこだわりがなければCDでも充分かと。またitunesでもダウンロード出来るので、興味がある方はまずはそちらでA-1を聴いてみてください。リアルタイム派と言うよりフリーソウル・ムーヴメント以降のAOR好きにオススメな作品です。
マッキー・フェアリーが一時脱退後の77年にリリースされた彼らの3rd。マッキー不在ということであまり取り上げられることも多くなく、オリジナル盤/日本盤問わず街の中古屋でも常に安値で売られているLPですが、実は何気に完成度の高い作品なので見逃しは厳禁です。まず注目はA-2のSongbird。マイケル・パウロのフルートが印象的なミディアム・ナンバーで、これぞ正にハワイアンAORと言った趣です。続くA-3のThoughts of Youは新メンバーのRandy Aloya(ランディ・アロヤ)とマイケル・パウロの共作で、この曲はランディ自身がヴォーカルも担当。派手さはないもののアコースティックな雰囲気で心地よい一曲に仕上がっています。A-4のManaはD.J.プラット作によるインストの高速ブラジリアン・フュージョン。この曲のみインストのため、通常歌詞が書かれている内袋に、テーマ部のメロディーが手書きの楽譜で書かれていて、それがまたオシャレです。そして何より注目なのはカーク・トンプソンが書いたB面の2曲。B-2のSeasonsはランディ、B-4のUp To Youはマラニ・ビリューとヴォーカルはそれぞれ違いますが、共にミディアム~スロウテンポのアイランドメロウなナンバーで、この翌年カークのプロデュースでリリースされるLemuriaの楽曲群と同タイプの、洗練されたコンテンポラリー・ハワイアン・サウンドを存分に堪能できます。カークのエレピやシンセ、そしてマイケル・パウロのサックスの使い方が非常にハワイ的。Lemuriaによるフリーソウル・クラシックAll I've Got to Giveの雰囲気が好きなら絶対に気に入ると思うので、まだ聴いたことがない人は是非聴いてみてください。いつだったかライトメロウの金澤さんが、5万だろうが10万だろうが300~500円で買えるカラパナやセシリオ&カポノに音楽的に勝るコンテンポラリー・ハワイアンはないと仰っていましたが、この盤を聴いていると本当にその通りだと思います。たとえば高額盤で有名なあのBabadu!にしても、例のビリー・カウイのカバーとLemuriaと同オケのAll I've Got to Give以外は特に耳を惹く曲はありませんしね。まぁそれが分かっていながら、高額でマイナーなレア盤を求めてしまうというのも、それはそれでレアグルーヴ好きの性なのですが。。。
Fabulous Krushの元ヴォーカリストによるソロアルバム。リリース時期の記載がないのでいつ頃録音されたのか分かりませんが、ジャケットに映る写真を見る限り、おそらく80年代前半の作品と思われます。その出自からAORとして紹介されることもありますが、全体的な雰囲気としてはもう少しSSW寄りと言うか、良くも悪くもチープな音作り。全10曲中7曲がカバーで占められておりオリジナル曲は3曲のみ。ただ、カバー曲もしっかり自分の作品として消化しているので、聴いていてあまり違和感は感じません。特にA-1のタイトル曲やA-3のFriends、それからB-1のThis Time AroundやB-3のBy Now辺りのしっとりとした曲の雰囲気は、いかにも白人SSWサウンドという感じでなかなか。レアグルーヴ的な注目曲はMuroさんのHawaiian Breaksに入っていたA-5のYou Win I Loose。元々はグラスゴーの女性シンガーであるLuluの曲で、ここではそれをド派手な原曲を印象的なホーンのメロディーはそのままに、若干チープでローカルな演奏でカバーしています。この曲に関してはわりとAORっぽい雰囲気で、ハルの歌声も曲調にマッチしているため好きな人は好きなはず。自作曲であるA-2のCall Meも、ホーンこそ入らないものの基本的には同タイプの楽曲。個人的にはこちらの方がすっきりした音で好みです。女性コーラスの入り方もなかなかに良い感じ。ただ、この2曲を含めたアルバム全編通して言えることですが、いわゆるハワイらしさはあまり感じられない一枚になっているので、そうした雰囲気を求めての購入は要注意。わりと普通に白人シンガーのアルバムです。そもそもあまり見かけないハワイの作品の中でもレアな部類の上にジャケットも良い雰囲気なので、一部では隠れ名盤扱いされそれなりの高値も付いていますが、これが普通のよくある米本国産SSW作品であったら、正直それほど騒がれたりすることはしないはず。少なくとも$100オーバーの出来とは言い難いので、コンテンポラリー・ハワイアン作品のマニア以外は高い値段で買う必要はないと思います。最も普通に街の中古屋でレコードを探しているだけでは、そもそも出会う機会自体が稀でしょうが。。。
少し前まではわりと手軽に手に入ったのに、ここ数年で一気に化けたカナダ出身のシンガーソングライターによる79年の作品。英Expansionから毎年リリースされる人気コンピシリーズSoul Togethernessの2008年盤に収録されたのを皮切りに、タワレコ発のMellow Grooveコンピ2作目でセレクトされたり、7インチでリイシューが出たりと徐々にその人気に火が点き、今ではちょっとしたクラスのレア盤認定がされているようです。何年か前にCD-Rで出たリイシューですら、今ではとんでもない値段でamazonに並んでおり正直驚きを隠せません。僕自身はちょうど人気が出始めた走りのころに二束三文でLPを買ったのですが、最近では僕が買ったときの値段の4~5倍以上が相場のようです。人気の理由はラストのB-4を飾るCaught In A Whirlwind。緩めの四つ打ちとドリーミーな演奏に甘い歌声が乗る、フリーソウル受け抜群の絶品メロウ・フローターです。フリーソウル系の人気ナンバーにはたまにある、イントロ一発で明らかに名曲と分かるタイプの曲なので人気が出るのも納得。終盤で一気に歌い上げるテナー・サックスも良い雰囲気ですね。個人的にはこの曲からブラジリアンAORのDon Betoによる同タイプの名曲Renascendo Em Mimと繋げるのがお気に入りで、実際に自作セレクトでは2曲セットで選曲しています。あからさまに相性抜群な2曲なので、おそらく僕以外にもやっている人はいるはず。ちなみにこの曲以外の収録曲はと言うと、残念ながら全体的に一枚落ちる感じ。若干Pre-AORテイストなA-2のThere's Always Another Dayや、ポップソウル風なA-3のタイトル曲、それからコーラスが気持ちいいA-4のHold On辺りはそれなりに悪くありませんが、フリーソウル視点からすると件のB-4がずば抜けて素晴らしいため、ほかの曲はやはり影に隠れてしまいがちです。まぁフリーソウル系でクラシックとされていたLPの中には、一曲入魂でその他の曲が駄作な盤など山ほどあるので、それはそれで良いのかもしれませんが。ちなみに最近はitunesでもダウンロード可能なようなので、特にこだわりがない限り無理に高いCDを買う必要はないと思われます。アナログも今から探して買うと価格が異常なので、もう少しほとぼりが冷めて落ち着いてからでもいいかもしれません。
そしてこちらがPlaytimeの次にリリースされた彼らの2nd。記載がないためリリース年は分かりませんが、サウンド的には1st時と比べグッと洗練され全体にアーバンな雰囲気の一枚となっており、おそらくAOR好き的にはこちらの方が好みかと思われます。当の本人たちはあまり気に入っていないという話もあるようですが、個人的にもこちらの2ndの方が気に入っています。冒頭A-1のSweet Loveはミラーボールの眩しいアップテンポのディスコ・ナンバー。腰に来るベースラインが気持ち良く、聴いていると自然にカラダが動き出す一曲です。初期の頃の山下達郎などが好きな人はおそらくハマるはず。続くA-2のGirl It's Up To Youは洗練されたアーバンなバラード。いわゆるリアルタイム派のAORファンが好きそうなのはこの辺りでしょうか。そして本作のハイライトはA-4のAngels Around You。これぞコンテンポラリー・ハワイアンの真骨頂と言うべき、たそがれ時によく映えるアイランド・メロウなナンバーで、個人的には彼らのベストはこの曲だと思います。サビでさらっと入るフルートの音色がいかにもハワイ的。この曲とA-5のLive It Up - Love It Upについては表裏で7インチのリリースもあります。もしかしたらLPよりも7インチの方が手に入りやすいかも。なおB面は全体的にわりと産業ロックっぽい雰囲気なので好みが分かれるかと思います。それでもB-4のSay The World辺りはリアルタイム派受けの良さそうなバラードなので好きな人はきっといるはず。ちなみにこのLPのリリース元であるShell Recordsはどうやら大手Paradise Records傘下のレコード会社のようで、Paradiseレーベルのコンテンポラリー・ハワイアンを集めたコンピCDであるThe Best Of Paradiseの第4集には、本盤ハイライトのA-4が収録されています。そしてそのコンピのクレジットを読む限り、本作のCD盤らしき型番が記載されているので、見たことはありませんがどうやらCDでもリリースされているようです。元々LPですらそれなりのレア盤のため、LP→CD移行期に少量プレスされていたと思われるCDを探すのは非常に厳しいでしょうが、前回の1st復刻時に権利関係から復刻されなかった作品なので、興味のある人は探してみても良いかもしれません。
こちらもハワイの7人組ステージバンド。一部でハワイ版Avarage White Bandなどとも言われるグループによる80年のアルバムです。LPはハワイものの中でもわりとレアな部類で、探している人も多いのか値段も方もそれなりにするのですが、何年か前にLight Mellow Picksの企画でVivid SoundからCD化されました。ただこのCD、あまり音質が良いものとは言えず少し残念。盤起こしなのは仕方ないにしても、明らかにそれと分かるノイズが混じるのはちょっと頂けません。同じ盤起こしでも似たような時期にリイシューされたBabadu!はもう少し音が良かったような気がするのですが。。。何となくCDの音質で聴くのが嫌だったので、ついLPも購入してしまいました。内容的にはAWBと比較されることからも分かるように、アダルト・オリエンテッド・ロックというよりもブラウン・アイド・ソウルと言った方が近い雰囲気。冒頭A-1のタイトル曲から太いベースで本格ファンクをやっています。続くA-2のSlip Awayはメロウなモダン・ソウル。しっとりした雰囲気の落ち着いた曲で、この辺りはSociety Of Sevenにも通じるところがあります。そして次に流れるA-3のCould It Be Loveが本作のハイライト。ほぼ全編ファルセットで歌われるエレピまみれのライトメロウ系ダンサーです。残念ながらCDでは肝のこの曲の音質が最も悪かったですが、LPでは別に特に音質が悪いということはなく、普通に聴けるのでご安心を。B-1のSo Good To Be In Loveは、どことなくオデッセイのBattened Shipsに通じるブラジリアン・ソウル。高揚感と多幸感に満ちたホーンの音色が堪りません。これも恐らくフリーソウル好きの人にはツボなはず。古き良き四つ打ちディスコ・サウンドで送るB-2のLove Lifted Meもなかなか。とにかく全編に渡ってソウル寄りの演奏なので、いわゆるAORを期待するとちょっと肩透かしを喰らいますが、アイランドソウルとしては間違いなく極上の部類に入る一枚。7upのロゴを模したジャケットも見事なので、これは是非大きなジャケットのLP盤で持ってこそ価値のある作品かと思います。
現在でも活動を続けているらしいハワイの7人組長寿ステージバンドによるLP。ステージバンドという都合上、ゲストの求める音を演奏するという意味で、ある程度世間の流行の影響を受けながら活動を続ける必要があったと思われる彼らですが、この78年盤ではAOR的な音をやっています。元々この手の音を専門にやっている人ではないわりに、やたらとこなれているそのサウンドは恐らく、長年のステージで積み上げてきたキャリアの賜物でしょう。AB面でプロデューサーが違うため若干質感も異なりますが、よりアーバン度が高いのはTerry Randazzoなる人物が手がけるA面。冒頭A-1のLoving You Won't Hurt As Much Tommorowからこみ上げ系の絶品ミディアムAORで飛ばしてくれます。サビでの開放感が見事で、これはフリーソウル好きなら一発で落ちるはず。またA-3のBetween Hello And Goodbyeは、近年USでリリースされたコンピCDにも収録されたメロウフローター。出だしの儚げなラララコーラスからして抜群で、個人的にはこの盤の中でも最もハワイアンAOR度が高い1曲と思っています。終わっても繰り返し聴きたくなるグルーヴィーなナンバーで本作のハイライト。コンピ収録にこの曲を選んだのも納得です。ニューソウルの影響が色濃いA-5のI Was Born To Be Your Clownもなかなかの佳曲。モダンソウル好きにお勧めはこの曲でしょうか。B面はAORというよりは若干SSW風の白人ロックバンドっぽい雰囲気の音作りになっていますが、メロウなB-2のTaking My Love For GrantedやB-4のWhat Am I Gonna Do Babe辺り好きな人もいるかと思われます。70年代全般にかけて多数のリリースがある彼らのアルバムの中では、その内容の良さからか比較的見ない一枚ですが、それでもさほどレアと言うわけでもないので、ハワイものの中ではわりと手に入りやすい作品。現在では日本にも多数入ってきていると思われ、単にレア度だけでいうなら、せいぜいミドル級の盤といったところでしょう。なんとなく店によって値段に多少のバラつきがある気もするので、安く見つけたら買うくらいの感覚で良いかもしれません。
コンテンポラリー・ハワイアンを語る上で必ず出てくる、ハワイのラジオ局KKUA編纂のコンピシリーズの中の一枚。全部で4枚のLPが出ていますが、こちらは1978年にリリースされた3作目です。裏ジャケットを読む限り、76年の1作目は67,000枚、翌年の2作目は78,000枚ほど売れたそうですが、なにせ当時のハワイの総人口は100万人以下。それを考えるとこれはとんでもないヒット作品です。正にコンテンポラリー・ハワイアンを代表する作品と言うことが出来るでしょう。ただこの3作目については、前2作と比べここ日本での知名度的には若干低めな印象。まぁ、バート・バスコーンやCountry Livingの入っている1作目、ノヘラニ・シプリアーノのフリーソウル人気作Lihueが収められた2作目と比べて、特に知名度のある人が参加しているわけではないので、当たり前といえば当たり前なのですが、実はレアグルーヴ的にはこれが一番内容良いので、スルーするのはちょっともったいないかなと思います。レアグルーヴ的に捉えた場合の注目曲は2つ。まずはMarvin Flanklin(マーヴィン・フランクリン)によるA-6のKona Winds。MuroさんのHawaiian Breaksにも入っていた曲で、マーヴィンの低音ボイスとギターのリフがどこか癖になるレアグルーヴ系ナンバーです。そしてもう1曲は、Miles Lee and the Hawaiian Electric BandらによるB-3のBlu Pacific Nights。裏ジャケのレビューにもある通り、当時のトレンドだったMackey Feary BandやKalapanaの影響が色濃いボサノバ調のAORナンバーでこの盤の本命曲です。マイルス・リー自身のヴォーカルもマッキー風で、特にナイトライフ時代の彼の曲そっくりです。こちらの盤の方が5年も前なのでパクりではないのでしょうが、非常に雰囲気が似ているので聴き比べてみるのも面白いかと。ちなみにこのHome Grownシリーズ、CD時代になってからベスト盤が出ていますが、残念ながらここに挙げた2曲を含め、いわゆるレアグルーヴ系の注目曲はほとんど収録されていないのでご注意を。前述の通りヒット作であるため、LP自体は中古屋でもよく見ます。4作目だけはあまり見かけませんが、あいにく目ぼしい曲が入っているわけでもないので、コンプリートを目指している人以外は、この3作目までを購入すれば充分かと。
エレピ&ヴォーカルのKraig Wallと主にベースを弾くGregg Wallという兄弟を中心とした、アトランタのCCMバンドによる78年の3rdアルバム。この後の作品ではブルース・ヒバードの作品を取り上げたりもしているようですが、この作品に関しては全て自作曲で占められており、際立った特徴はないものの、全体的に中々の出来栄えとなっています。曲を書いているのは主にメインボーカルのクレイグと、ドラムスのLance Demars(ランス・デマーズ)。ドラムの人が曲を書くのは少し珍しい気もしますが、考えてみればあのジョン・バレンティもPuzzle時代にはドラマーだったので、そんなに特別なことでもないのかもしれません。さてこの盤、なんといっても注目はA-2のWind On Summer Nights。軽やかなドラムブレイクで始まるミディアムアップのライトメロウなナンバーで、おそらくフリーソウル好きなら誰しもときめくであろう素敵な仕上がりになっています。サビで転調するところを含め、ロブ・ガルブレイスのJust Be You辺りによく似た印象。フルートやエレピの使い方等、音のつくり方が完全にフリーソウル好きの求めるそれなので、もしもあの時代に知られていたらきっと人気曲の一角を担っていたことでしょう。その他の収録曲は、程よいアコースティック感が気持ちいいPre-AOR的なサウンドが多め。兄弟ならではの息の合ったコーラスが見事で、CCM特有のメロディーの暖かさも相まり、どの曲も聴いていて幸せな気分になれる曲ばかりです。個人的に特に気に入っているのはB-3のJoyman。まるでロードムービーのBGMのような古き良きアメリカン・サウンドと言った雰囲気で、たまにはこういう曲を聴くのも良いものです。グレッグの奏でる12弦ギターがどこか夕焼けを連想させるB-5のWhere Will You Be Tomorrow?もなかなか。以前はこういういかにも白人と言った雰囲気の曲にはあまり興味を示さなかったのですが、最近は年をとったせいか、これはこれで悪くないと思うようになりました。ちなみにCDにはなっていないようですが、LP自体は特段レア盤と言ったわけではないので、CCM系を取り扱っているお店で少し探せば、たぶんわりとすぐに安値で見つかります。件のA-2はyoutubeにも上がっているようなので、興味のある方はとりあえず聴いてみてください。
数年前にCreole Stream MusicからCD化もされたCCMの名盤。ジム・シュミットなるこのヴォーカリストの詳細は良く分かりませんが、キーボードにデヴィッド・ディグスが参加していたり、ギターでポール・ジャクソンJrが参加していたりと、フュージョン業界ではそれなりに知名度のある面子が関わっており、サウンド的には非常に洗練されたライトメロウな一枚に仕上がっています。クラブ・プレイ的な意味でのキラー曲はないものの、全体的に良い雰囲気の曲が揃っているあたり、個人的にはエリック・タッグの2ndと同じような位置づけ。元々はそこそこレア盤なのに、わりと見かけるところも何となく共通の匂いがします。特にA-1のLove Has Taken It All AwayやB-1のSeriousなどは、フリーソウル以降のAORファンが好みそうな雰囲気の曲になっているので、おそらく好きな人も多いはず。女性Vo.とデュエットで歌われるA-3のNot Your Love Aloneも、しなやかなアレンジで良いですね。基本的に賛美歌であるが故、メロディーやアレンジにどこか暖かさや優しさが感じられるのがCCM共通の魅力だと思っていますが、この作品でもその傾向は顕著。それを1980年前後のAOR的にもっとも美味しい時期の録音でやっているのだから、人気が出るのも当然ですね。A-4のWithin His Joyはスコット・ウェズリー・ブラウンも同時期に歌っていた曲。フリーソウル的な完成度という意味ではスコット版の方が上ですが、元々の曲が跳ね系AORで良いので、このジム・シュミットらによる演奏もなかなかです。B-5のSurer Of Myselfはロビー・デュークのペンによる曲ですが、ここではロビー本人もアコギで参加。こちらも地味ではありますが洗練された良い曲だと思います。とにかく全編に渡り暖かい雰囲気に包まれた一枚なので、休日の朝にコーヒーを飲みながらのんびりと聴くのに最適。ふわっとした空気感の中で幸せなひとときを過ごすことが出来ることでしょう。Creole Stream Musicから出てたCDは初回限定世界初CD化という触れ込みでリリースされ、発売後わりとすぐに市場から消えてしまいましたが、AOR関連の中古CDセールではわりとよく見かける気がします。まだ聴いたことのない方は是非聴いてみてください。