At The Living Room Reloaded

忙しい毎日の中で少し足を止めてみる、そんな時間に聴きたい素晴らしい音楽の紹介です。

Jazz In Italy N.1 / Franco Mondini

2008-03-30 | Hard Bop & Modal
全部で16枚ある伊CetraレーベルのJazz In Italyシリーズ。イタリアにおけるモダン・ジャズ黎明期の貴重な記録として知られる本シリーズですが、リリース媒体がEP(N.13だけはLPのようですが)のみということ、またどの作品も一様に演奏と録音の技術が高いこともあって、今ではかなりの高額で取引されているようです。中でもセルジオ・ファンニのN.3、モダン・ジャズ・ギャングのN.6、ディノ・ピアーナ+ジャンニ・バッソのN.9辺りはクラブ系リスナーにもわりと知られているので、もしかしたら若くてもお探しの人も多いのではないでしょうか。さて、そんな中でこれはたまたま安価で見つけたので購入した一枚。同シリーズの記念すべき第一作目ですね。ドラマーのフランコ・モンディーニを中心とした2管のピアノレス変則カルテットによるスタンダード曲集で、初期バッソ=ヴァルダンブリーニ(Jolly盤辺り)にも通じる快活なウェスト・コースト・サウンドが気持ちいい作品です。それもそのはず、ベースとトロンボーンには当時バッソらのサイドを務めていたアゾリーニとピアーナが参加。はい、納得ですね。ピアノレスと言うことで最初は不安になりましたが、いざ実際に聴いてみるとピアノがいないことなど気にならない快演揃いで、特に縦横無尽に吹きまくるピアーナが良い感じ。いつもは主役の二人がいない分だけ逆にその演奏の巧さが際立っていて、彼のトロンボーンが聴きたい人には打ってつけの一枚です。アゾリーニのウォーキング・ベースも心地良いA-SideのBag's Groove、同じくバッソ=ヴァルダンブリーニ楽団に参加していたアティリオ・ドナディオとのフロントが微笑ましいB-1のAll The Things You Are、使い方次第によってはクラブ・プレイもいけそうなB-2のThere Will Never Be Another Youと、収録曲はいずれも高水準の出来。Rearwardレーベルから以前出ていたコンピが好きな人などはきっと気に入るのではないでしょうか。出来れば他の作品も全て聴いてみたいところですが、残念ながらどれも高価。ここは一つ、ぽろっと安く出てきた時を待って地道に集めていきたいと思います。
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Loosdrecht Jazz Concours 1964 / Various Artists

2008-03-29 | Hard Bop & Modal
ルイス・ヴァン・ダイクの1961年盤でも知られるオランダのジャズ祭Loodsrecht Jazz Concours。本作は1964年度にそのLoodsrecht~に出演した2組のワン・ホーン・コンボによるスプリット盤EPです。たまたまジャケットに惹かれて購入したので詳細は良く分からないですが、内容的にも非常に完成度の高い一枚で、駄作名作入り混じったこの手のマイナーEP盤の中でも、かなり上位の部類に入る一枚なのではないでしょうか。とにかくA-Sideに収録されたKwartet Martin HaakによるLove Potionが素晴らし過ぎ。フェルディナンド・ポヴェルによるアルトの筆舌に尽くし難い美しさと、それを支えるマルティン・ホークの繊細なピアノ・ワークが余りに素敵過ぎる至宝の一曲です。これほどまでのポテンシャルを秘めた曲はそう多くないはず。決して大袈裟な表現ではなく、ヨーロッパにおけるモーダル・ジャズの一つの完成形と言ってしまっても良いでしょう。その演奏はただただ美しく、正に「麗しきモーダル・ジャズ」と言う例のJazz Next Standard誌のコピーにぴったりなナンバーとなっています。往年の本格ジャズ・ファンはもちろんですが、おそらく最近のクラブ系リスナーもこれは好きなはず。ニコラ・コンテ辺りのファンならハマるとでしょう。また、B-Sideに収録されたKwartet Martin VerlindenによるFour And Sixは、心地良いミッド・テンポがグルーヴィーなモーダル・バップ。A-Sideとは若干雰囲気が違いますが、こちらもエノ・スパンデルマンなるテナー奏者による高水準な演奏が聴ける名演に仕上がっています。本場アメリカに近い演奏を求めるのならこちら。実況録音であることもあり、「針を落とせばジャズ・クラブ」な雰囲気が存分に楽しめる一曲です。リーダーのマルティン・ヴェルリンデンのピアノ・プレイも良い感じですね。どうやら結構なレア盤のようなので、正直どこにでもあるようなものではないと思いますが、それでもどこかで見かけたら是非耳を傾けてみてください。洗練されたヨーロピアン・ジャズによる至福のひと時をお約束します。
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Os Sambeatles / Same

2008-03-21 | Brasil
その名もオス・サンビートルズなるブラジルのピアノ・トリオによる66年作。例のLondon Jazz Fourの1stと並び、この手のビートルズ・カヴァーものの中でも際立ってセンスの良い作品として、一部でカルト的な人気のある一枚です。それもそのはず、この通り冗談のようなネーミングではありますが、実は本作、この手のジャズ・ボサ・トリオでは良く知られるマンフレッド・フェスト・トリオによる覆面ユニット。従って当然ながら、その演奏スタイルはマンフレッド・フェスト・トリオそのものです。あの上品なセンスでビートルズという上質な素材をボサノバに変換しているのだから、どう考えても悪いはずがありませんよね。と言うか実際かなり良いです。M-3のA Hard Day's NightやM-7のHelpなど、たとえ洋楽好きでなくても一度は聴いたことのある有名曲の数々を、見事なまでに小粋なジャズ・ボッサにアレンジ。音楽の好みは人それぞれだと思いますが、少なくともこの雰囲気が嫌いな人はいないのではないでしょうか。それくらい万人受けしそうな一枚です。中でもクラブ世代以降の方々にオススメなのはM-9のAll My Loving。全収録曲中で最もノリが良くダンサンブルな演奏に、きっと誰しもハッピーな気分になれるはず。また、個人的に気に入っているのは、バックのオルガンの音色も素敵なM-10のAnd I Love Her。こういう風に比べるのもおかしな話かもしれませんが、僕としてはビートルズのオリジナルより全然好きです。もちろんここに挙げた曲以外も、いずれもとびきりポップな名曲揃い。12曲で30分強とあっという間に終わってしまう作品ですが、終わった瞬間ついついリピート・ボタンを押したくなるような素敵なアルバムです。ブラジル音楽好きはもちろんのこと、セルジュ・デラート・トリオを始めとしたポップ・サイドの澤野作品が好きな人にもオススメ。ただ、残念ながらこのCDは正規の流通ルートには乗ってないブートだそうで、国内の大手CDショップでは取り扱いがない模様。とは言え、海外から取り寄せれば普通に買えるので、興味のある方はお試しください。オリジナルのアナログも頑張れば買えないレベルではありませんが、この辺りのジャズ・ボサとしては若干高め。内容的なものもあり、個人的にはどちらかと言うとCD向きのアルバムだと思います。
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The Metronome Quintet / Same

2008-03-19 | Hard Bop & Modal
1年半ほど前に発行されたジャズ批評のEP特集でも取り上げられていた本作は、テナーのブルーノ・スポエリを中心としたスイスのクインテットが50年代後半に吹き込んだ一枚。この辺りの欧州ジャズの中でもかなりマイナーな部類であるため、日本にはほとんど情報が入ってきていませんが、どうやらクインテット自体はメンバーを変えながら現在も存続しているようで、インターネット上には彼らの公式(?)ホームページまであったりします。さて、本作はそんな彼らの記念すべきデビュー作。盤自体には録音年の記載がありませんが、ホームページに記載されたディスコグラフィを見たところによると、59年にリリースされた作品のようです。ちなみに7インチのわりに収録曲は片面3曲ずつ。おまけに回転数も通常の45回転ではなく33回転なので、どちらかと言うとEPと言う表現よりミニLPと呼んだ方が適切なのかもしれません。編成的にも基本的にはスポエリのワン・ホーンにヴィブラフォンを加えたクインテットなのですが、曲によってはフロント2人のいずれかが抜けていたり、さらにどちらも抜けて完全なピアノ・トリオで演奏されていたりするため、一枚で色々な編成の演奏が聴けるお得な一枚になっています。ヨーロッパらしい翳りに満ちたピアノ・トリオでプレイされるA-2のGolden Earringsや、スポエリのテナー・プレイを存分に堪能出来るA-3のDear Old Stockholmも良いのですが、個人的にはヴァイブの音色が好きということもあり、B-2のGigoloが中でも一番のお気に入り。ミディアム・アップで心地良くスウィングするリズムの上を優雅に駆け抜けるヴィブラフォンが素敵です。テーマ部で聴かせるピアノとのユニゾンも上品で良い感じ。ちなみに5人全員でプレイしている曲の中ではB-1のFriday The 19thが気に入ってます。取り立てた派手さはないものの、真夜中のBGMに良く映える良い演奏と言えるのではないでしょうか。何となく最近はフロア向きの曲より、こう言った落ち着いた演奏の方が好みだったり。ちなみに彼らの作品には、この青盤と同時期にリリースされた赤盤もありますが、あちらはスウィングやらディキシーやら入っていて企画色が強い上、肝心のモダン2曲は本作収録曲と被ってます(しかも同テイク)。なので、どうせ購入するならばこちらの青盤が断然オススメ。飽きずに楽しめそうな素敵な一枚です。
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Folklore e Bossa Nova Do Brasil / Various Artists

2008-03-16 | Brasil
独Sabaレーベルにて吹き込まれた素晴らしき一枚。時は1967年。本国ブラジルにおけるブームの終焉と、それに変わり世界各地で起こったボサノバ・ムーブメントにより、当時ドイツを巡業中だったというシルヴィア・テレスらにSabaが声をかけ製作されたアルバムです。さて、そんな本作。メインで参加メンバーに名を連ねているのはシルヴィア・テレスにエドゥ・ロボ、ホジーニャ・ヂ・ヴァレンサらで、そこからも分かる通り基本的にはボサノバが主体の作品なのですが、バック・ミュージシャンとしてドン・サルヴァドールやメイレレースなど例のベッコ・ダス・ガハーファス組が参加していたりもするので、実は意外にジャズ・サンバ~ジャズ・ボサ好きも要チェックな一枚だったりします。特に注目すべきはサルヴァドールらがピアノ・トリオで演じるM-6のMeu Fraco e Cafe Forte。言わずと知れたリオ65トリオのあの名曲の再演です。ただし、本家で見せていたようなアグレッシヴなアプローチは皆無。ここではむしろ、グッとテンポを抑えて大人の雰囲気漂う上質なジャズ・ボサに仕立て挙げられています。あの爆発的な派手さはないものの、さながら真夜中のカフェ仕様と言った趣で質感が非常にオシャレ。澤野工房などの繊細なピアノ・トリオ好きにもぴったりの上品なアレンジで、おそらくその辺りのファンは一瞬で虜になるはず。また、このトリオにメイレレースのフルートを加えたM-5のBarquinho(小船)も抜群。自身のアルバムでは激しくモーダルな世界観を追及していた彼ですが、ここではその雰囲気とは180度路線の異なる可愛らしいプレイを披露。こういう絶妙なバランス感覚は大好きです。ちなみにアナログでもそれほど高くなく買えますが、本作に関して言うならば、むしろ個人的には数年前に出た紙ジャケCDで持っていたい一枚。LPの大きなパッケージよりも紙ジャケのコンパクトさが逆に作品の雰囲気に良く似合うと思います。ただ、この紙ジャケCDも何やら限定盤の模様。まだ普通に買えますが、こういうマイナーな盤は市場からなくなった後に探すの意外にキツいです。そんなわけで興味のある方はお早めに。僕のようにヨーロッパのジャズとブラジル音楽の両方が好きな人にオススメの一枚です。
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Love Birds / Archie Cavanaugh

2008-03-11 | Rock
このところ宇田川町界隈ではロジャー・ニコルスの40年ぶりのアルバムが話題になっているようですが、そんな裏で今年に入りひっそりとリリースされたのが本作。以前このブログでも紹介したアラスカのシンガー、アーチー(・ジェームス)・キャバナーの28年ぶりの2ndアルバムです。最もこちらはロジャニコと違い完全自主制作。大手の流通ルートには乗っておらず、当然の如く全くのノン・プロモーション。今のところ手に入れるには、アーチー自身のサイトから購入する以外に術がないので、よっぽどコアなライト・メロウ好きでも意外に見落としている方が多いのでしょうか。僕も某所で紹介されているのを見るまでは、この新作の存在を全く知りませんでした。ただ、そうした知名度の低さとは裏腹にアルバム自体の完成度は非常に高く、この手のAOR好きなら見逃すのはもったいなさ過ぎる作品。ややダンサンブルな傾向の強かった前作に比べ、全体的に落ち着いた雰囲気にはなっていますが、あの瑞々しい奇跡のような歌声は今作でも健在。写真で見る限り、どう考えてもかなりのご高齢なはずなのですが、こうして声だけ聴くと20代と言われても全く違和感ないほどです。曲はいわゆるアダルト・コンテンポラリーなものが中心。都会的かつ繊細な大人のロックが満載です。どの曲も素晴らしいですが、M-7のLet Me GoやM-12のTogether You & Meは特にフリーソウル度が高く、サバービアな雰囲気が好きな人にもオススメ。たまらなくアーベインな雰囲気が余りに素敵過ぎます。ポップなメロディーでアップ・テンポに進むM-13のI Can't Get You Off Of My Mindや、泣きのサックスで始まるM-4のRemember When辺りもアーバン度高めで良いですね。コンテンポラリー・ハワイアンにも通じるスムース・ジャズのM-6、Perfect Love Songも正にタイトル通り完璧な一曲。クラブ・プレイ云々を抜きにして考えたら、個人的には前作よりむしろ本作の方が好みかもしれません。仕事で疲れた後の帰りの電車でこんなアルバムを聴いたら、ふっと優しい気持ちになれること間違いなしの大名盤。本人の名前で検索かけたらすぐにサイトは見つかるので、興味のある方は是非チェックしてみてください。
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Lee Morgan Indeed! / Lee Morgan

2008-03-09 | Hard Bop & Modal
当時クリフォード・ブラウンの再来と騒がれた驚異の神童リー・モーガンの1st。年季の入ったジャズ愛好家の方にしてみればハードバップの基本と言ったところでしょうか。さて、まず始めに断っておくと、僕はモーガンというトランペッター自体は実はそれほど得意ではありません。例の有名なThe Sidewinderも、小川氏のJazz Next Standardに掲載されていたThe Rumproller収録のEddaも、そして極めつけにはブレイキーのMoanin'もダメ。もちろん、どの曲も聴いたことがないというわけではないのですが、何度聴いても僕には良さがあまり分からないんですよね。この辺りは完全に個人の趣味志向の問題なので、何が良いとか悪いとか答えは別にないと思うのですが、少なくとも僕の場合、要は演奏に何かしらのファンキーさを感じてしまうと、それだけで頭から苦手意識が働いてしまうようです。そんなこともあり、本作も存在自体は知っていながら最近まで敬遠していた一枚。ご覧の通り非常に魅力的なジャケットなのでずっと気にはなっていたのですが、モーガン=ファンキーというイメージからどうにも聴く気が起こらず避けて通っていました。そんな作品を購入する気になったのは、ずばりこの中に収録されたM-5のGaza Tripに惹かれたから。レコード屋で特に欲しい盤もなかった時に何となく試聴して、一発で飛ばされました。他の曲はともかく、これだけはかなり僕好み。タイトなドラム・ブレイクに続く不良っぽいテーマ、そして畳み掛けるように始まるクラレンス・シャープの切れのあるアルト・ソロが異常に格好良いです。中盤もう一度軽くテーマを挟んでから始まるモーガンのソロも美味し過ぎ。元々こちらがオリジナルなのでこういう言い方は本末転倒なのかもしれませんが、欧州バップやブラジルのハード・ジャズ・サンバにも通じるスタイリッシュな雰囲気が非常に魅力的ですね。ちなみに本当はレコードで欲しいのですが、東芝盤は音の雰囲気が何となく好きになれず今のところ購入を見送っています。そのうちキング盤を見つけたら買う予定。なお、言うまでもありませんが、オリジナルはそこそこの値段がします…。ここは素直に国内盤で諦めましょう。
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Fra Erik Moseholm... / Erik Moseholm Trio

2008-03-04 | Hard Bop & Modal
澤野工房から再発されたロストヴォルドの「馬車」で知られるHitレーベルの706番。このHitはEPのリリースが主なレーベルだったようで、例の「馬車」以外で知られているレコードはいずれもEPばかりなのですが、本作もそんな中の一枚です。ただ、他のHit諸作とはやや雰囲気の異なるジャケットになっているため、恐らくは何らかの企画盤なのでしょう。収録曲もスタンダードは全くなく、トリオを構成する3人それぞれを主役としてフィーチャーしたHilsen Fra ○○というタイトルのものが3つと、それ以外にモーセホルムのオリジナルが1つ。そんなこともあって正直それほど期待はしていなかったのですが、いざ蓋を開けてみるとこれが意外にも充実したEPで素直に驚かされました。ピーター・ウィッシングのドラム・ブレイクを大きくフィーチャーしたA-2のHilsen Fra Peterは、強烈なアフロ・キューバン・ビートのイントロが格好良い曲。曲の特性上、メロディー部分が少ないのが若干気になるものの、これはこれで悪くないのではないと思います。またモーセホルムのベースにスポットを当てたB-1のHilsen Fra Erikは、緊迫した雰囲気がデンマークらしい夜感漂うナンバー。この辺りのダニッシュ・ジャズ好きなら、おそらくわりと好きな質感なのではないでしょうか。そして何と言っても白眉はA-1のHilsen Fra Bent。タイトルからも分かる通り、ベント・アクセンのソロをメインとした楽曲なのですが、これが凄いことになっています。高速4ビートの上を流れるように進むアクセンのピアノが異常なまでにセンスが良くスタイリッシュ。例のJazz Quintet 60ではやや脇役に回っている彼ですが、ここではその力量を思う存分に発揮していて、正直ただただ驚かされるばかりです。全部を聴いたことがあるわけではないので何とも言えませんが、少なくともこれまで聴いた彼のプレイの中では個人的に断然ベスト。しかもこの曲に関しては展開も非常に分かり易く、バックで支えるリズム隊もしっかりと打っている上、さらに音の質感も古臭くないので、おそらく昨今のクラブ系のリスナーも好きなのではないかと思います。少し曲調は異なりますが、ルイス・ユルマンドのOpbrudのスタイリッシュな雰囲気が好きな人ならきっとハマるはず。しかしこのEPでこれだけ内容が良いとなると、例のアクセン/ペデルセン/ロストヴォルドのsketchは果たしてどれだけ素晴らしいのでしょう。
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Isto E Musicanossa! / Various Artists

2008-03-02 | Brasil
先日Odeon盤を紹介したムジカノッサ(68年のボサノバ復刻ムーヴメント)絡みの一枚。こちらは歌姫クラウデッチ・ソアレスのリリース等で知られるRozenblitからリリースされた盤になります。他の関連シリーズと同じく、本作もアルバム未収録の楽曲(当時の新録なのでしょうか)のみを集めたオムニバス体裁の作品ですが、大御所ジョニー・アルフや既に全くトリオではないTrio 3Dが参加している辺り、もしかしたらわりと豪華な参加メンバーと言えるのかもしれませんね。その御大ジョニー・アルフによるA-1のSamba Do Retornoは、Sexteto Contrapontoなるコンボを従えた軽快なジャズ・サンバ・ヴォーカル。お世辞にも派手な曲とは言えませんが、洗練されたピアノの音色が耳馴染み良い佳曲だと思います。また続くA-2のAlegria Da Carnavalはエキゾチックな雰囲気漂うダンサーで、どこか民族音楽にも通じるフルートが印象的な一曲。既存の枠には収まらないアドルフォの奇才ぶりが現れた好ナンバーと言えるのではないでしょうか。ただ、僕にとっての本作の目玉は、実はこれら大御所の曲ではなく異色のハーモニカ奏者マウリシオ・アインホルン(エイニョルン?)のリーダーによる2曲。例のベッコ・ダス・ガハーファス組で、以前紹介したルイズ・カルロス・ヴィーニャスのアルバムでも特に存在感の際立っていたあの人ですね。あまり詳しくないので何とも言えないのですが、彼の単独自己リーダー名義作品は60年代には他になかったと思います。そんな彼による2曲はどちらも非常に高水準なジャズ・サンバ。特にB-4のSistemaはジャズDJの方々も好みそうな疾走系ナンバーで最高にクールです。と言うよりも、ともすれば牧歌的な雰囲気になってしまいがちなハーモニカという楽器で、ここまで格好良いプレイが出来るという事実が何よりも驚き。もう1曲収録されたA-6のAlvoradaは逆にしっとりとした曲で、真夜中の雰囲気にもぴったりなジャジー・ボッサ。どこかモーダル・ジャズに通じる雰囲気もあるのではないでしょうか。ちなみに例によって、僕は派手なSistemaより洗練されたこちらの曲の方が好きです。そんなにどこにでもあるレコードではないと思いますが、見かけた際には是非チェックしてみてください。Odeon盤に比べると知名度は落ちますが、このブログを普段見て下さってる方ならきっと好きだと思います。
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Jazz Quintet 60 / Same

2008-03-01 | Hard Bop & Modal
60年代デンマークが生んだ最高のジャズ・コンボ、Jazz Quintet 60がリリースした数少ない作品のうちの一枚。もう一枚Top Pop(Top Jazz)レーベルから出ているVol.2と共に、現状で唯一CD化されていないJazz Quintet 60音源として、一部マニアの間で知られる作品です。同時期にリリースされたベント・アクセンのHoliday In Stuido(こちらもVol.1、2あり)と同じようなデザインなので、どこかでジャケットに見覚えのある方もいるのではないでしょうか。さて、そんな本作。どうやら元々はDominoというレーベルからジャケ違いでリリースされた一枚のようで、このTop Pop(Top Jazz)盤はそのDomino盤の廉価プレスだそう。ちなみに本作に収録された4曲が、いずれも1961年に録音された作品だということ。つまり、彼らのデビュー作であるDebut盤EPと例の澤野再発で知られるMetronome盤の間の吹き込みに当たるわけです。メンバーも若干変動していて、テナーがヤーディグからニルス・ハスムに変わったのもこの時期。また、ベースはエリック・モーセホルムが務めています。そんなメンバー・チェンジも含めて、内容的には正にDebut盤とMetronome盤のミッシング・リングと言った趣。二管のフロントで冒頭から捲し立てるA-1のSipping At The Bellsは、Debut盤時代のCosperを昇華したかのような快速ハードバップ。非常に勢いのあるナンバーで、存分に暴れ回るボッチンスキーとハスム、そしてアクセンが印象的な名演です。続くA-2のVakre Flickorはグッと抑揚を効かせた、これぞダニッシュ・ジャズな渋いナンバー。今度Ricky-Tickから出る新作コンピにも収録されるようですが、Metronome盤前夜の雰囲気が伝わってくる緊張感の張り詰めた曲で、こちらもダニッシュ好きには溜まらないのではないでしょうか。反対面に収録されたB-1のWabashとB-2のThe Touch Of Your Lipsは、またガラリと雰囲気が変わって華やいだ大人のスウィング・ナンバーになっています。アクセンのメロディアスなソロも気持ちいいですね。全4曲とあっという間に終わってしまうEPですが、それでも四者四様に異なる個性のある素晴らしい作品集で、個人的には非常に魅力的な一枚。文句なしに最高です。
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