前回更新からまた少し間が開いてしまいましたが、久しぶりにレコード紹介。御大マイルス・デイヴィスが58年の吹き込んだ3曲を集めた国内仕様のコンパクト盤です。感の良い人は既にお気づきの通り、この3曲はもともとJazz TrackというアルバムのB面に収録されてもの(ちなみにA面は死刑台のエレベーターのサントラです)で、日本独自企画盤として製作された「1958マイルス」という作品に入っているものと同一。ただ、このEPのライナーが「1958~」に関して全く触れていないところから察するに、おそらく国内盤としてのリリースはこっちの方が先かと思われます。ちなみにリリースはもちろん他のマイルス作品同様にCBS/Sonyから。こんなジャケットまで作るなんてなかなか粋なことをするものです。収録曲はいずれもスタンダードばかりですが、MilestonesからKind Of Blueへ至る過程のミッシング・リングとして資料的価値は高く、また演奏自体のクォリティもなかなかのもの。メンバー編成がKind Of Blueと全く同じで、ビル・エヴァンスもしっかり参加しているところも嬉しい点でしょうか。ブートレグや別テイクの世界は良く分かりませんが、このメンバーで録音している演奏は正規盤では確かこれとKind Of Blueだけだったはずです。注目はやはりA-1のタイトル曲。エヴァンスの弾く優しいピアノに導かれテーマを取り、そのままスムーズにソロへ移行するマイルスが素敵です。My Funny ValentineやSomeday My Prince Will Come辺りの雰囲気が好きな人はきっとツボでしょう。そして何より2番手のコルトレーンが抜群。そもそも登場の時点からあまりに美味しいポジション過ぎて、何だか一人だけズルいような気もするのですが、それでもアドリブはやはり頭一つ抜けて格好いいです。その後、負けじと付いていくキャノンボールもなかなかの好印象。コルトレーンの影に隠れて何かと目立ちにくい彼ですが、個人的にここでのプレイは結構好きだったりします。サックス二人が盛り上げるだけ盛り上げた後に続くのはエヴァンス。マイルスの吹く〆のテーマに向けたこのクールダウンぶりがまた見事です。それにしても、本当に聴けば聴くほど完璧な一曲ですね。興味があれば是非聴いてみてください。ちなみにタイトル曲の完成度が余りに高く全く触れられませんでしたが、もちろん他の2曲も素晴らしいです。
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