At The Living Room Reloaded

忙しい毎日の中で少し足を止めてみる、そんな時間に聴きたい素晴らしい音楽の紹介です。

Equinox / The Beginning / Nite & Da / Various Artists

2015-03-31 | Detroit Techno
デトロイトテクノの紹介はもう少しだけ続きます。普段このブログでメインに取り上げているフリーソウルやAOR、それから過去に取り上げていた欧州ジャズなどのリスナーの中には、こうしたテクノサウンドなど全く興味ないという方も少なからず存在するというのは分かっているのですが、ジャンルの特性からかネット上にまとまった形でのしっかりした日本語レビューが見当たらないため、今回この場を借りて少しまとめて紹介してみることにしました。恐縮ですが今しばしお付き合いください。さて、気を取り直して作品の紹介を。何だか小難しいタイトルがつけられた本作は一連のBuzz作品の中でも恐らく最も人気が高いと思われる一枚。カール・クレイグが自身のライフワークとも言えるPlanet Eレーベルを設立する以前に運営していた自主レーベル、Retroactiveからリリースされた楽曲を編纂したコンピレーション盤です。もともと作品のリリース自体も少ないため、代表曲はほとんど全て網羅されており、かつそれらの作品をデジタル媒体で聴ける音源が他に存在しないというのが人気の理由。カール・クレイグ自身の楽曲を中心に、Placid Angles(=ジョン・ベルトラン)の作品なども交え、ピュアでインテリジェンスな世界観が全面的に展開された名盤となっています。なかでもマニアにとって嬉しいのは、クレイグ自身のペンによるM-5のNo More Wordsが収録されている点。Psyche名義で発表していた作品に通じる美しくもスペイシーなベッドルーム・テクノ作品で、この手の音が好きな方ならまず間違いなくハマることでしょう。あいにくその人気度から中古市場では未だに値下がりする気配が全くありませんが、初期デトロイトサウンド愛好家にとっては見過ごすことのできない作品だと思いますので、気になる方は是非探してみてください。ちなみに収録されなかったRetroactive作品の内、ファンなら絶対聴いておくべきなのはUnderground ResistanceのThe Theory。こちらは4Heroが選曲したDeepest Shade Of Technoというコンピに収録されているので、合わせてチェックしてみると良いかもしれません。
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Relics / Various Artists

2015-03-30 | Detroit Techno
昨日に引き続きベルギーのBuzzからライセンス・リリースされたコンピレーション作品。こちらもデトロイトテクノ・ファンの間では非常に良く知られた一枚です。発売時期はVirtual Sexより1年早い1992年。一応サブタイトルにはA Transmat Compilationとあり、デリック・メイが1986年に設立したTransmatレーベルのコンピレーションという体裁を取ってはいるものの、収録曲の大半はオリジナルの12インチから何かしらの手が加えられているリミックス作品や完全なエクスクルーシヴ楽曲であり、申し訳程度に数曲収録されたThe Suburban Knight(=ジェームス・ペニントン)やModel 500(=ホアン・アトキンス)の作品を除き、全てのナンバーがデリック・メイとカール・クレイグの師弟コンビのペンによるものであるため、実質的には本作発売時点における彼らの新録作品という位置づけで良いと思います。収録曲はいずれもデトロイトテクノの源流を感じられるようなナンバーばかりですが、中でもとりわけ白眉なのがビートレスなアレンジで再構築されたM-10のStrings Of Life。荒々しくも切ないオリジナルとは異なり、どこかインテリジェンスを感じる仕上がりとなっているため、部屋聴きにはこちらのヴァージョンの方がより適しているかと思います。また、もう一つ見逃してはいけないのがPsyche(=カール・クレイグ)によるM-16のCrackDown Re-Mix。オリジナルにはないピアノが奏でるジャジーな主旋律が耳に心地よく、個人的には非常に好みだったりします。ちなみに本作もアナログでは何度かブートが出回っているものの、CDは当時リリースされたもののみしか存在しない模様。各曲間を繋ぐインタールード等も非常に凝っているため、本来はCDで聴いてほしい一枚なのですが、権利関係の問題からか再発は難しいのでしょう。もっとも知名度のある作品なので中古市場ではそれなりに出回っています。それなりに高騰していることが多いため、購入時には財布と相談ということになるでしょうが、もしも新品CDと同じくらいの値段で発見することが出来たなら迷わず買い。気になる人は是非中古CD店を探してみてください。
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Virtual Sex / Various Artists

2015-03-29 | Detroit Techno
普段ここを見ているような人には需要がないかもしれませんが、ここのところ個人的によく聴いているので少しデトロイトテクノ系のレビューを少々。このブログで取り上げるのはちょうど1年ぶりですね。前回は英Kool Katからリリースされたジャケ付12インチを中心にピックアップしたので、今回は同じころベルギーのBuzzレーベルからリリースされていたコンピレーション群を紹介することにしてみます。まず手始めに紹介するのは1993年に製作されたこの名作コンピ。おそらくこの手のデトロイト・テクノ系コンピ作品の中で最も有名な作品の一つだと思います。収録曲には純粋なデトロイト系ミュージシャンによるナンバーだけでなく、As One(=カーク・ディジョージオ)を始めとしたフォロワー系の作品も幾つかありますが、それらを含めコンピレーション全体の統一感がとにかく凄まじく、アルバム通して非の打ちどころが全くないという稀有な一枚。質感的には前年に英Warpから発売されたArtificial Intelligenceの流れを汲む、いわゆるインテリジェンス・テクノとかピュア・テクノと呼ばれる類のサウンドなのですが、本作のためにエクスクルーシヴ曲を提供したデトロイトのオリジネーターであるRhythim Is Rhythim(=デリック・メイ)とカール・クレイグの両御大による作品が、完全にこのマナーに沿って製作されているところがまた心憎いです。ちなみに彼ら以外の曲では、カーク・ディジョージオのArtからリリースされたコンピにも作品を残すNeuro Politique(=マシュー・コッガー)によるM-2のBananagateや、Lark(=ケニー・ラーキン)が手掛けるM-8のTedraあたりが出色の出来。何度かブートレグが出回っているアナログ盤とは異なり、CDではオリジナルのリリース以降リイシューが一切出ておりませんが、もしデトロイトテクノに興味があるのであれば、聴き始めの早い段階で是非触れてほしい一枚です。僕自身そうでしたが、普通の人がイメージしているテクノというジャンルと、実際のサウンドには深い隔たりがあることが伝わることでしょう。
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How Good It Is / Terri Gonzalez

2015-03-25 | Free Soul
その出自から悲運の歌姫などとも形容される女性シンガー、テリー・ゴンザレズがニューヨークの自主系レーベルEastbourneから1980年に発表した12インチ・シングル。同レーベルからはタイトル曲のみが収録された盤(EAR-101)もリリースされていますが、紹介するのは当然、裏面にCaught Up(In One Night Love Affairs)が収録されたEAR-102です。実は10年ほど前にも所有していた時期があるので、このブログで取り上げるのは2回目。一度は金欠により手放してしまったのですが、最近たまたま安値で売られているところを発見して買い戻したため今回改めて紹介させて頂ければと思います。件のCaught Upは前年ジョセリン・ブラウンが歌ってクラブヒットしたI'm Caught Up (In A One Night Love Affair)のセルフ・カヴァー。曲自体の製作経緯に関しては至る所で紹介されているので割愛しますが、力強く歌い上げるジョセリンの歌唱と比べ、テリーの歌声はしなやかで女性らしいものになっており、この曲のみに関して言うのであれば彼女の歌い方の方がより曲にマッチしていると思います。個人的にはサルソウル・オーケストラとロレッタ・ハロウェイのRun Away、テルマ・ヒューストンのSaturday Night, Sunday Morningと合わせて、いわゆるフリーソウル以降における3大ダンスクラシックの一角という位置づけ。発売当時に権利関係で訴訟が起きたためか一向にCD化される気配がありませんが、どこかのインディーズ・レーベルからこっそりとでも良いので一刻も早い再発を望みます。ちなみにオリジナルの12インチはその圧倒的な知名度と未CD化という事実が仇となり、未だ高額で取引されていることが多いですが、市場ではそれなりに流通しているため、金に糸目をつけなければ入手自体はそれほど難しくないはず。よく激レア盤として紹介されているのを見かけますがそんなことは決してないと思います。単に音源を聴くのみであればYoutubeにも普通にあるので、もし聴いたことないという方がいたらとりあえず聴いてみてください。
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Together Live / Cecilio & Kapono

2015-03-15 | Hawaii
知っている人は知っているセシリオ&カポノによる1982年のライブ盤。70年代にColumbiaからリリースされた3枚のアルバムや、その後ハワイに帰ってから製作されたLife's Different Nowは、コンテンポラリー・ハワイアンの草分け的作品としてこの手のジャンルを取り扱うディスクガイドやブログでは必ずと言ってピックアップされていますが、このライブ盤に関しては取り上げられることが少ない気がするので、ここで一度紹介しておきます。演奏されているのはColumbiaからの3枚から万遍なくセレクトされた14曲にカバー2曲、それからセシリオ・カポノ両名のソロ3曲ずつにオールディーズ・ロックンロールのメドレー1曲を加えた計23曲。後にリリースされたCDでは各ソロとアルバム中異色なロックンロール系ナンバー2曲がオミットされ15曲となっていますが、本来は2枚組LPの大作です。収録時間の関係上仕方ないのかもしれませんが、CDの残念なところは本格ソロ活動開始前のセシリオが歌うB-1のLatelyとB-3のJust Onceがカットされているところ。前者はスティービー・ワンダー、後者はクインシー・ジョーンズのカバーで、いずれもオリジナルの良さは残しつつも、美しいピアノを中心としたハワイらしい壮大なバラードに仕上がっています。また本作中AOR~コンテンポラリー・ハワイアン的に最も洗練されていて完成度が高いのはD-2のHere With You。アルバム「Night Music」に収録されたスタジオ演奏では冴えない印象でしたが、こちらはオリジナルにはないエレピを主軸にしたグルーヴィーな仕上がりとなっており、数ある彼らのデュオ曲の中でも最もフリーソウル的かと思います。こちらはきっちりとCDにも収録されているのでご安心を。ただLP自体も特段レア盤と言うわけではないので、もしもアナログ盤を聴ける環境にあるのであれば、やはりオリジナルの2LPがお勧めです。リリースはお馴染みBluewater Recordsから。前にも少し書きましたが、早いところこの辺りのParadise周辺作品をフリーソウル的な切り口で編集したコンピ盤がリリースされることを望むばかりです。
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Let It Go / Raffia

2015-03-13 | Free Soul
前回のグリーンウッドに引き続き、オリジナルコンピ収録曲のネタばれシリーズ。ロングアイランド出身の女性シンガーソングライター、RaffiaことNadine Raffia Ford(ネイディーン・ラフィア・フォード)による2013年リリースの新録作品です。正直この手の新録インディー・ソウルは追いかけているとキリがないのであまり積極的に手を出してはいないのですが、ふと何気なく英Expansionレーベルの人気コンピ"Soul Togetherness"をチェックしていたら、本作中M-1のInto My Lifeが収録されており、はじめて聴いた途端に虜になってしまいました。なんと言うかスムース・ジャズとR&BとAORを足して3で割ったような都会的で大人っぽい生音サウンドと、ソウルフルかつキュートな歌声が個人的には非常に好み。ジャンル的にはいわゆるネオソウルに分類される作品なのだと思いますが、なんだかんだメインストリームのR&Bがバックグラウンドにある普通のネオソウル作品とは違い、もう少しストレートに70'sのクロスオーヴァー・サウンドを模倣した仕上がりになっているため、フリーソウルやAORの流れでかけても違和感なく機能するところが最大のポイントでしょうか。僕自身、件のInto My LifeをスウェーデンのセルメンことギミックスによるEW&Fカバーからの流れで選曲しましたが、間に横たわる40年近い時差をものともせず驚くほど自然に繋がっており、自分でも驚いています。なおitunesに代表される配信サービスで簡単に購入可能なほか、自主制作ながら紙ジャケでCDでもリリースされているため、僕のようにしっかりモノとして所有したいマニアの人にはこちらのCD盤がお勧め。流通の都合上、一度市場から消えると入手は困難になると思うので、気になる方はお早めにご購入ください。
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Lost In Paradise / Greenwood

2015-03-08 | Hawaii
先日このブログでもコメントが入っていたハワイの大所帯バンド、グリーンウッドが昨年末にインディーでリリースした作品。この前アップした自作コンピにも収録したことだし、今夜はこの作品を紹介することにしましょう。冒頭M-1のSparkleがご存じ山下達郎のカバーで、数年前一部で話題になった7inchヴァージョンとは別の新録テイクなため、初見ではどうしてもそこばかりに目線が行きがちですが、実はその他の収録曲もなかなかの粒揃い。収録された11曲にオリジナルのナンバーはなく全てがカバー、おまけに各々原曲に忠実な完コピ演奏ばかりで構成されていますが、有名無名問わず純粋に彼ら自身が好きな曲だけをチョイスして取り上げているせいか、作品全体は一定の空気感で統一されており、アルバム通して聴いてもそれほど違和感はありません。メンバー12人のうち過半数の7人が日系であるためか、どの曲も日本人好みするナンバーばかりで、おそらくいわゆる70~80年代の洋楽ポップスが好きな人ならハマることでしょう。個人的に特に気に入っているのはカナダのブラスロック系バンド、ライトハウスのカバーであるM-3のPretty Lady、シカゴのローカルバンド、James Massacre(ジェームス・マッサカ)による7インチ・オンリー作品が原曲なM-5のSummer Sun、AOR前夜のボズ・スキャッグスによるグルーヴィーなM-8のWe Were Always Sweethearts(恋人同士)あたり。ちなみにCDのほかitunes等の配信でもリリースされていますが、CDにはライナーに彼ら自身が本作を製作した経緯や各収録曲の詳しい紹介が記載されているため、どうせ購入するのであればCDがお勧めです。自主流通のため一度市場から消えてしまうと入手は難しくなってしまうと思いますが、今ならまだ普通に買えると思うので、もしも気になるようであればお早めに購入した方が良いかと。
コメント (2)
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