At The Living Room Reloaded

忙しい毎日の中で少し足を止めてみる、そんな時間に聴きたい素晴らしい音楽の紹介です。

Julie Sue / Same

2017-10-10 | Free Soul
またまた前回の更新から結構なスパンが空いてしまいましたが、かなり久しぶりにいわゆるレア盤とされるLPを購入したので紹介しておきます。知っている人はこのジャケットを見るだけでピンと来ると思いますが、本作は蘇芮(スー・ルイ)という台北出身のシンガーが1976年に香港で吹き込みリリースした一枚。記載は少ないながら日本のウィキペディアにもページがあり、そこから引用すると「ソウルミュージックを中華圏の音楽に取り入れた」方だそうです。もっとも本格的に活動を開始するのは80年代中盤以降であるため、本作リリース時点ではまだ新進歌手といったところ。ここでは英名であるJulieを名乗り、ソウル寄りのアメリカン・ポップスをのびのびとカバーしています。そう言った意味では、同じ香港盤で今や定番となった感のあるTeresa Carpio(テレサ・カルピオ/杜麗莎)の諸作と似たような質感。知らずに聴いたら亜モノとは全く思えぬソフィスティケイトされた演奏に、これまた全く違和感のないネイティブな発音のキュートな歌声が乗るという点も同じです。一部で香港産フリーソウルの最高峰とされるA-5のMagic In My Lifeは、比較的もさっとした5th Dimensionの原曲を軽やかにカバー。往年のフリーソウル・フリークなら一発KO確実です。また同じく5th Dimension作品となるA-2のWedding Bell Bluesは、ジャクソン・シスターズもびっくりな傑作跳ね系ヤングソウル。こちらもフリーソウルの観点から考えるとオリジナルを軽く超越した完成度で驚かされます。その他の曲では時代がらもありディスコ調のアップナンバーもありますが、特筆すべきはミディアム~スロウ。とりわけB-1のDay Dreaming(原曲=アレサ・フランクリン)、B-3のYou've Made Me So Very Happy(原曲=ブラッド、スウェット&ティアーズ)、B-5のNot A Little Girl Anymore(原曲=リンダ・ルイス)あたりは会心の出来となっています。コロムビアやEMIなどの大手資本レーベルから発表されていた一連のテレサ作品とは異なり、House Recordsという現地のレーベルからのリリースなので、なかなか市場に出回りにくいですが、もしも見かけたら確実に抑えるべき一枚。よくある凡百の亜モノ系レコードとは完成度が段違い。決してMagic In My Lifeだけの作品ではないので、機会があれば是非他の曲も聴いてみて頂ければと思います。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする