At The Living Room Reloaded

忙しい毎日の中で少し足を止めてみる、そんな時間に聴きたい素晴らしい音楽の紹介です。

Sketches Of Samba / Nicola Conte

2008-09-20 | Hard Bop & Modal
もう1枚続けてニコラ・コンテの新作レビュー。こちらは今のところ10インチのみのリリースで、アフロ志向の強かったアルバムとはやや赴きが異なり、タイトル通りのサンバ集になっています。最もサンバとは言ってもそこは彼のこと。いわゆる正統派のサンバではなくジャズ・サンバ、それも飛び切りダンサンブルな作品集になっているので、いわゆるクラブ・ジャズ好きの方もご安心ください。気になる中身としてはアルバム収録曲の別バージョンが二つ(うち一つは日本盤ボーナス・トラックとしてCDにも収録)と、60年代ジャズ・サンバのカバーが二つ。もちろんメインはこのカバー2曲です。まずはA-1のGroovy Samba。セルジオ・メンデス作によるタイトル通りのグルーヴィーなジャズ・サンバで、原曲はクラブ・ジャズ・クラシックスとして知られている一曲。僕自身は一度しか聴いたことがありませんが、ニコラ・コンテ・ジャズ・コンボのライブでは以前から度々レパートリーに上がっていたようなので、そう言った意味では待望の音源化というところでしょう。フロントのファブリツィオ・ボッソとダニエル・スカンナピエコを始めとしたハイ・ファイブ・クインテット勢をサイドに従え、バピッシュかつスタイリッシュなプレイをしてしています。ちなみにメンバーはほぼ同じですが、先日出たハイ・ファイブのアルバムは個人的に少し苦手。ギターで参加するニコラ自身を除けば、メンバーとしてはピアノが違うだけなのに、これだけ音全体の雰囲気が違って聴こえるのは、(プレイはどうあれ存在として)バンドの頭脳であるニコラの手腕によるところが大きいのでしょうね。また、続くA-2のSoloはJ.T.メイレレース作によるベッコ・ダス・ガハーファス発ジャズ・サンバの名曲。同時期に録音されたエディソン・マシャードのサンバ・ノーヴォでもプレイされていた曲ですが、ここではメイレレースのオリジナル盤を元にアレンジされています。特にファイブ・コーナーズ・クインテットのティモ・ラッシーによるフルート・ソロに至っては、ほぼメイレレース自身が吹くオリジナルの完コピ状態。と言うか僕の場合はまず、そもそも彼がフルートを吹くこと自体が驚きでしたが…。今度の来日ツアーでは彼も来るようなので、是非生で見てみたいです。もちろんテッポ・マキネンの高速ドラミングも。何はともあれ、来月のライブを楽しみに待ちたいと思います。
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Rituals / Nicola Conte

2008-09-17 | Contemporary Jazz
ここ日本のシーンを中心に数多くのフォロワーを生みながら、結局誰一人として超えることの出来なかったクラブ・ジャズの金字塔的作品である前作から丸4年。ついにと言うかようやくと言うか、やっとリリースされた新譜が本作です。二年くらい前に別名義で先行してリリースされたM-6のMacedoniaの曲調から、個人的には今回も60年代欧州ジャズ路線を踏襲するものと勝手に想像していましたが、実際に出来上がった作品を聴いてみると今回はどうやら少し切り口が違うよう。と言うか、はっきり言ってしまうと今回のテーマは恐らくアフロです。もっとも巷の先行レビューではヴォーカル曲が多いことばかりに焦点が当てられていて、この点に全然触れていないような気がしますが…。発表だけ聞いて最初は驚いたTFCQのティモ・ラッシー起用もこの作風なら納得。まぁ、そうは言っても基本的には彼なりの美学に則った作品であるので、そういう意味では、いわゆる黒人系のモロなアフロ・ジャズとは一線を画していますが、だからと言って国内盤の帯に書かれているような、「いま最もクールでスタイリッシュなジャズのモード」では絶対にないでしょう。(自分で勝手にその一員だと思ってる人を含め)いわゆる内輪の人が、この作品をいかにもクラブ・ジャズのネクスト・スタンダードであるかのように位置づけることは容易に想像できますが、個人的にはそういう風には思えません。ちなみに誤解しないで頂きたいので補足しておくと、僕は別にこの作品が嫌いなわけではありませんし、まして予想と違う仕上がりでがっかりしたとも思ってないです。確かに前作とはテイストが違いますが、これはこれで好きですし、単純に一つの作品としてみた時の完成度は高いのでしょう。ただ、これをスタンダードと解釈して手放しで賛美するような風潮が出てくるとすれば、その姿勢にはやっぱり少し疑問が残ります。大切なのは回りに流されず自分の基準で判断すること。ご興味のある方は是非ご自分の耳で聴いてみてください。ちなみに個人的には前作路線のM-9、Song For The Seasonsが一番好きです。他の方がどう評価するのかは分かりませんが、少なくとも自分の中でのニコラ・コンテのイメージと最も近いのがこれなので…。
コメント (3)
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