一時期の大人気が嘘のように最近はすっかり身を潜めているイタリアのIrma Records。しかしやはり良いレコードというのは流行り廃りなんかと関係なく時を越えるもの、そんなわけでこの盤の紹介です。ブラジル生まれの女性ヴォーカリスト、Bruna Loppezを迎えて98年にリリースされた本作は彼らの2ndアルバム。ただ、この盤に関して言えば僕はむしろインストものの方が気に入っていて、たとえばイタリアからのアシッド・ジャズへの回答のようなA-3のLife辺りがツボだったりします。基本的にはクールなジャズ・ファンク~フュージョンなのだけれど、どことなくイタリアという土地特有のオシャレさなんかも伝わってきて、そこが僕にとってはUK産アシッド・ジャズにはない魅力かな?疾走感溢れるD-3のNastyもかなり好き。鮮烈なホーンがカッコよくて夜のドライブなんかにぴったりな気がします。さてさて、そんな本作で今もっとも旬だと思えるのがC-1のChico Desperado。こちらはBruna Loppezを迎えた歌モノですが、程よくオシャレでヨーロピアンなラテン・ジャズで、フロアの空気を一発で南国の香りを運んでくれそうな名曲です。ちなみに、Routine Jazzの最新作に収録された関係からか、安くてよくある盤のはずなのに最近都内ではあまり見ないような・・・。
主にスイスとフランスで活動していたキーボード奏者Jean-Francois Boillatとフルート・テナー奏者Raymond Theraceがスイスでリリースした2枚のアルバムからの編集盤。以前にも書いたとおり編集盤の紹介って何となくあまりしたくないのですが、あまりにも内容が素晴らしいのでここで紹介しておこうと思います。このジャケにも小さく写っているハートマーク・ジャケの盤がヨーロッパのジャズDJの間では古くから人気ある盤で、この盤にはその中から選りすぐりの曲が収録。特にFreddie Hubbard作によるA-1のGibraltarはフロアを揺るがす高速アフロ・キューバンで素晴らしい。出だしから激パーカッシヴなビートに乗ってテナーサックスとトランペットが暴れまくります。中盤で飛び出すエレピのソロも秀逸。そしてKenny Dorham作のB-3、Blue Bossaはフルートの音色が美しいモーダルなジャズ・ボッサの好例。パーカッシヴな躍動感に満ち溢れながらも全体の雰囲気はあくまでシックでどことなく哀愁が漂うミディアム・ナンバーです。他の曲もなかなかに良いのですが、やはりこの2曲が飛びぬけて素晴らしい出来と呼べるでしょう。ちなみにハート・マークのオリジナルもたまに見ますが微妙に高いですね・・・。とりあえずこの編集盤で我慢しようかなと思います。ちなみにこの編集盤も限定らしく今ではなかなかアナログでの入手が難しかったりします。CDも出ているみたいなので、よければそちらでどうぞ。ヨーロピアン・ジャズ好きにはオススメな盤です。
50年代のクール期を代表する白人アルト奏者Lee Konitzによる渡欧後68年の作品です。元々はアメリカで活動していた彼ですが、イタリアのミラノにて現地の著名ジャズメンらと吹き込まれたこの作品は、全編に渡って上品な香りが漂うヨーロピアン・ジャズ普及の名作と言ったほうが良いかもしれません。特にA-2のFive Four And ThreeはKoopなどにも多大な影響を与え、多くのクラブジャズDJが声を揃えて絶賛するモーダルなジャズ・ワルツの大傑作。これぞまさにヨーロピアン・ジャズの醍醐味と言わんばかりの知的で気品に満ちた演奏を聴かせてくれます。最近何かのコンピにも収録されたようで、ますます人気も高まっていくことでしょう。どことなくイントロからコルトレーンのMy Favorite Thingsを思わせるB-3のGiovani D'oggiも深遠でスピリチュアルなワルツで文句なしの出来栄えです。夜中にロックでスピリッツを飲みながら一人で浸りたいですね。ちなみに僕が持っているのは国内で当時リリースされたと思われる盤で、オリジナルとはジャケが違います。カラフルなオリジナル・ジャケの方でも国内盤ありますが、そちらはどうやら後にリリースされたもののよう。さらに別ジャケのフランス盤もあったりします。どれもそれほど高くはないですが、微妙に見つかりにくいです。ただ、イタリアRCAのオリジナル盤は本当にレアな上に高額なので、がんばってこれらの廉価盤を探しましょう。現在は廃盤ですがCDでもあるそう・・・。
久々の紹介となる完全に詳細不明な謎盤。Lello Tartarinoなるヴォーカリストによるスウェーデンでのライブ録音です。クレジット表記を見る限り彼を含めバンド全体がイタリア系の人だと思われますが、とにかくインターネットで検索かけても全く情報が得られなかったので、本当のところがどうなのかは分かりません。ただ内容はカリプソ~ラテン風のカヴァー系ヴォーカルものとしては抜群に素晴らしい。特にA-3のPaul Anka-Medley中にて披露されるEse Besoの格好良さと言ったら鳥肌モノです。切れのある強烈なドラム・ブレイクの後に続く熱い歌声と涼しげなエレピの好対照、中盤から入るホーンも盛り上げに一役買っています。メドレーと言いながら完全に曲が切れているためにDJでの使用も可能。同じくラテン仕様のGeorgie Fameヴァージョンよりもこちらの方が僕は好きかな? B-1のLa Piu Bella Del Mondoなる曲も程よく込み上げるラテン風フリーソウルで良いです。Tighten Up風のギター・カッティングと打っているドラム、豪快ながらも小粋なホーンを聴けば誰しも胸が熱くなるはず。ライブ盤なのに異常に音が良く、さらに少なくともこの2曲に関してはきっちり始まって終わっているという点もポイント高いです。久々にニュー・ディスカヴァリーもの買って見ましたが、まだまだ世界には良い盤が眠っていますね。
いまだに店によっては多少高めに値段設定しているところもあるラッパーECDによる98年のクラブヒット。B-3のオリジナルもそこそこ悪くないのですが、何せこの盤でリミックスを務めるのは小西・須永の両レコード番長です。当然悪くなるはずはなく、どちらも共にOrgan b. SUITEに収録済。一瞬のアカペラの後に1,2,1,2,3,4!とPeddlersの声ネタ・サンプリングから始まるaudiomusica N°2 remixはSunaga t Experience名義の最初期ワークとしてはGemini IV Space Nova!と並び屈指の好ナンバー。ジャズボッサmeetsヒップホップと言った感じの軽快かつオシャレな曲に仕上がっています。中盤ではいるAsiana嬢のナレーションとも相まって極上のグルーヴを生み出しています。そしてメガミックス仕立てのthe Readymade All That Jazzは、Lester WilsonのLight My Fireをメインに持ってきつつ至るところに小ネタを散りばめた小西印のド派手チューン。桃井かおりやClementineと一緒にテープで聴いたのが懐かしくなります。文句なしに素晴らしい一枚。ちなみにこの曲はアナログが何枚か出ていますが一番本命なのはこの作品。まだ聴いたことない人やECDの存在を軽く見ている人は必聴です。もう古いかもしれないけれど、それでもオススメ盤。ただ高く買う必要がある盤ではないので1000円くらいで見つけたときに買いましょう。両ヴァージョンともインストでも充分使えます。
同じようなジャケットだらけで分かりにくいですが、レペゼン仙台GagleのトラックメーカーDJ Mitsu The Beatsによるシングルです。もともと彼の作る音はPlactice&Tactix(Soljazzmix)の頃から好きでしたが、ソロ作品出してからの人気は本当に凄いですね。ヒップホップ界に留まらずヨーロッパのジャズDJなんかにも受けているよう。さてさて、こちらはそのソロ・アルバムNew Awakeningのリミックス集から最近カットされた12インチで、僕にとっては本当に待望の1枚です。理由はA-2に独行Jazz道(SW Mix)が収録されているから。SWの名の通りサックスとドラムにSleep Walkerの面々が参加した完全生音一発録りによる最高のリミックスです。Sleep Walker勢ではありませんが、うねうねしたベース・ラインとメロウなエレピの音色も抜群。ハンガーによる独特のフロウも見事にマッチして素晴らしい一曲に仕上がっています。中盤でのエレピ・ソロからサックス・ソロも決まっていますね。これは文句なしにカッコいい。小林径氏による人気セレクトCDシリーズ、Routine Jazzの最新作にも収録されているようです。ヒップホップ好きよりもむしろクラブ・ジャズ好きに聴いてもらいたい渾身の一曲、アナログはいずれ完売してしまうと思うのでお早めにどうぞ。
久々に紹介となる直球フリーソウル。CCM界の貴公子Bruce Hibbardによる問答無用の2ndアルバムです。CCMということで一般の人は敬遠してしまうかもしれませんが、いろんなディスクガイドで取り上げられているように単純にAORとしても大名盤なので、John Valentiなどのブルーアイズドソウルが好きならば聴かないという手はありません。とりあえずフリーソウル的にはA-1のタイトル曲がパーフェクト。朝焼けを思わせるサックスのメロウなイントロからして既に爽快なAOR大名曲です。海でドライブでこんな曲がラジオから流れてきたら、それだけで少し嬉しい気分になれそうな気がします。爽快という点ではA-5のYou're So Good Meも素晴らしい。まるでRay Parker Jr.のA Woman Needs Loveを白人が歌ったかのような清々しいグルーヴ。どこまでも美しいエレピの響きとパーカッシヴなドラム、そしてBruce Hibbardの甘く爽やかな歌声の前に女性なら誰しもメロメロになるはず。これぞ正にUSが産んだ白人ライトメロウの至宝というべき。男性の方にもぜひ聴いてもらいたいです。若干ファンキーながら込み上げるB-4のLove Will Always Make A Wayもなかなかのお気に入り。ちなみにアナログだとそこそこ値が張りますが日本企画で数年前にCDもリリースされています。John ValentiやMacky Fearyが好きな人なら必ずハマること間違いなし。超オススメ盤です。
87年にオランダで自主制作されたローカル・ジャズ。Paulus Pottersなるピアニストを中心に、ピアノ・トリオからホーンや歌入りのフュージョンまで幅広い音を聴かせてくれます。まず素晴らしいのが冒頭A-1のYou Came Along。サニーサイドのハッピー・ジャズと言ったところでしょうか?あのLove, Oh Loveなどにも通じる美しくも軽快にスウィングするピアノの音色は一度聴いたら病みつきになること間違いなしです。続くA-2のPiccadilly Circusはフュージョン気味ながらフルートが美しい4ビート・スウィング。こちらも素晴らしいです。そしてA-5のNobody Can Take You Away From Meはメロウな展開が否応にも都会をイメージさせるAOR名作。ソウルフルな男性シンガーによるヴォーカル・ワークと、それをしっかりバックで支えるミュージシャン陣。ジャズ~フュージョンとAORの中間という僕にとっては理想的な曲です。これぞフリーソウルと言ったところ。ローカル・ジャズと言えど録音が新しいので、音が凄くクリアなところもポイント高いです。あまり見たことがある盤ではないですが本国ではCDでもリリースされているよう。一応CDの方はHMVの通販などでも買えそうなのでチェックしてみてください。昼間のカフェ~夜のバーまで馴染む隠れ名盤です。
すでに巷では話題沸騰の強力盤。シカゴの古参ラッパーCommonによる最新アルバムです。評判聞く限りではメインストリームのファンのみならずアンダーグラウンド好きからも受け入れられているよう。それから僕のようなフリーソウル好きにもね。9割方のプロデュースは押しも押されぬ大人気のKanye Westなんだけれど、それがうまくハマっているというかアルバム全体が凄い統一されている気がします。最も2枚組なので通して聴くことはなかなか出来ず、僕が聴くのは1枚目だけなのですが・・・。さてさて、これはそんな1枚目のレビュー。まずA-1のBe(Intro)からしてカッコ良いです。ジャジーなウッド・ベースに導かれてシンセとピアノ、そしてストリングスが重なった後に入ってくるCommonのスムースなラップにノックアウト。そしてLinda Lewis使いのA-3、Goはこのアルバム中屈指のライトメロウ・ソング。アップテンポなのに込み上げるという理想的な展開と、John Mayerによる控えめながらも強力な援護射撃。フロアがポジティヴな光に包まれそうな大名曲です。DillaがプロデュースしたB-3のLove is...も本当に良い曲。パーティーの終わり、朝方のフロアでこんなの聴いたら気持ちよさそうですね。Disc 2も悪くないけど、とにかくこの3曲が飛びぬけて良いのでDisc 1ばかり聴いてしまいます。21世紀のソウル・ミュージック。こういうのが聴きたかったんですよね。オススメ。
昨年リリースされたアルバムがアンダーグラウンド・シーンで大きな話題となったタイムマシーンの国内限定12インチ。アルバムの方はLPをいろんなところで何度か試聴して悩んだ末に結局買わなかったんだけれど、さすがにこのシングルは買ってしまいました。国内盤CDのみに追加収録されていたタイトル曲が素晴らしすぎる。Hydeout辺りのジャジー・ヒップホップと言うよりも、まさに現在進行形のニュースクールという表現が適切なサンプリングに涙です。思えば僕が最初にヒップホップを好きになったのは、こういうメロウなサンプリングに巡り合えたからでした・・・。その後シーンは気づかぬうちにギャングスタ方面に傾倒しちゃって、そういうのに興味がない僕はいつの間にかヒップホップから離れてしまったけれど、こういうのを聴くと毎日毎日ヒップホップばかりを追い求めていたあの頃を思い出します。おそらく70'sフュージョンからのサンプルと思われるエレキ・ギターのメロウなフレーズと、その上に乗る2MCの暖かいフロウがどこまでも心地よい一曲。もちろんラップ入りの方が僕は好きだけれど、ラップが苦手な人にはインストでもいいから聴いてもらいたいです。最近の新譜ヒップホップではオススメ。限定なのでなくなる前にお早めにどうぞ。