At The Living Room Reloaded

忙しい毎日の中で少し足を止めてみる、そんな時間に聴きたい素晴らしい音楽の紹介です。

Key Of Dreams / 児島 未散

2013-05-26 | Japanese AOR
知っている人は知っている林哲司プロデュースによる1989年の一枚。いわゆる二世タレントであるというこの児島未散さんのことは残念ながら存じ上げませんが、これがなかなかに良質なJ-AOR作品となっており、たまたま安く見つけたので購入してみました。1989年と言うとちょうどレコードからCDへの移行期にあたる時期ですが、おそらくこれはCDでのリリースのみ。ただ特段珍しい作品というわけではないので、ブックオフ等で見かけたら普通に250円で買えると思います。気になる内容ですが、プロデューサーの林哲司を始め、コーラス&編曲を務める東北新幹線の山川恵津子や、作曲で参加する村田和人など脇を固めるメンバーが豪華なので、この辺りの名前にピンと来る人には見逃せない仕上がりとなっています。少しアイドルっぽい歌声で聴かせる児島未散のヴォーカルがまた良い雰囲気で、特徴こそないもののシティポップス寄りのアイドル歌謡としては満点。時代がら打ち込みも多用されていますが、サノトモミさん時代の流線系の雰囲気が好きな人ならば多分気に入ると思います。特に素晴らしいのはM-1のタイトル曲。まるで間宮貴子の「真夜中のジョーク」のようなミディアムテンポのライトファンクに仕上がっており、アダルト・コンテンポラリー路線のアレンジと少女のようなヴォーカルの対比が見事です。その他の曲では、山川恵津子が書いたM-2の「なまいきCinq」や杉真理が書いたM-6のSweetest jokerあたりが、いかにもアイドルと言った雰囲気な元気いっぱいのポップナンバーで良い感じ。この手のシティポップス系アイドル歌謡の場合、気合を入れて作った演奏自体は良くても、肝心のヴォーカルがあまりに下手過ぎて、音楽好きが聴くには少し厳しいというような作品も多々ありますが、この作品についてはそうした心配は無用です。アイドル歌謡自体に抵抗がある人はNGかもしれませんが、それ以外の人には是非聴いてみてもらいたい一枚。「Light Mellow 和モノ669」でこの辺りの音に興味を持った世代にはぴったりな作品だと思います。
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Hawaii Today / Loyal Garner

2013-05-26 | Hawaii
Hulaレーベル繋がりでもう一枚。こちらはお馴染みロイヤル・ガーナーによる1977年の作品。後のParadise期の作品と異なり、ジャケットにその豊満すぎる体型を強調するバストアップ写真が使われているため、正直中身を知らない普通の人にはなかなか手が伸びにくいと思いますが、内容的には非常に良質なのでジャケットだけで敬遠してしまうのはもったいない一枚です。盤自体の音圧の高さもあり、冒頭A-1のタイトル曲に針を落とした瞬間の感動は抜群。おもちゃ箱をひっくり返したようなこの高速サンバは、正に音の洪水という表現がぴったりなナンバーとなっており、これだけで掴みは完璧です。そして語りを交えながら壮大に歌い上げるA-2のMaui Waltzを経て、続くA-3のYou Are The Sun, Hawaiiは本作におけるフックとなる曲。ミニー・リパートンのLoving Youを思わせるイントロから一転、ミディアムアップなライトファンクへと展開する極めてフリーソウル度の高いナンバーで、フロアでも昔から人気の高い一曲です。このLPを購入する人の半数くらいはおそらくこの曲が目当てでしょう。もう一つ人気があるのがB-1のCity Lights。こちらは心地よくスウィングするジャズ調のナンバーになっており、中盤には4ビートの間奏なども飛び出てくるため、フリーソウルと言うよりは全盛期の頃のオルガンバーが好きな人にお勧めです。ちなみにこの作品は何年か前にCDでリイシューされており、今では彼女の作品の中で唯一ダウンロード購入も可能となっているのですが、前述したようにオリジナル盤は音圧が高くリイシューとは迫力が段違いとなっているため、彼女の魅力を思う存分堪能したいという方は出来ればアナログで購入した方が良いかと思われます。値段的にもレア度的にもそれほど極端に高い作品ではないので、おそらく本腰を入れて探せばわりと簡単に見つけられるはず。まだ聴いたことがないという方はジャケットだけで判断せずに、是非チェックしてみてください。
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Zoomin' Away / Toma/Natto

2013-05-25 | Hawaii
仕事の忙しさにかまけて少し更新が滞っていました。すいません。そんなこともあり今回は忙しい毎日を送る現代人にこそ是非聴いて欲しい一枚を紹介。デイヴ・トマとリチャード・ナットというアコースティックなハワイのシンガーソングライター・デュオによる1978年の作品です。このデュオは他にも何枚か作品を出していて、日本でもCool Hawaiiからリイシューが発売されていたりもするのですが、今のところこの1stだけは未CD化。大手のHulaレーベルからリリースされていることもあり、個人的にはそれほどレアとは思えませんが、リイシュー盤のおかげで彼ら自身の知名度は高く、レコード屋ではそれなりの値段が付けられていることもある一枚です。内容的には全編通していなたいロコ・グルーヴ。カラパナ勢のような都会的サウンドを期待すると裏切られますが、これはこれで一つのコンテンポラリー・ハワイアンの形なので、好きな人は多いと思います。特に冒頭にも書いたように、普段忙しい毎日に追われている人がほっと一息つくには最適。こうして休日の朝にコーヒーでも飲みながら聴くのに良いアルバムです。中でも僕がお気に入りなのはB-1のLoan-some Love。いなたさの中にもメロウネスを感じられるミディアム・テンポの好曲です。また横揺れのラテン・パーカッションがどことなくジャングルを思わせるA-5のGone Tomorrow, Here Todayはアルバム中で最もテンポの速いグルーヴィーな一曲で、海外のDJなどから受けが良さそうな雰囲気です。大枚を叩いて買うようなアルバムではないと思いますが、もしもどこかで安く見かけたら聴いてみても良いかもしれません。ただ経験上、中古市場に流れている盤であまり綺麗なものに遭遇したことがないため、購入の際にはその点わりと要注意。特に海外サイト等で試聴も出来ないようなところから買うのは危険です。必ず国内のレコード屋でしっかりと試聴してから買いましょう。僕自身も先日入手するまでに6~7枚見かけていますが、実際買った盤以外は全てハズレだったので、充分に気をつけた方が良いかと思います。
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Dear Breeze / Various Artists

2013-05-19 | Compilation
ようやくブログ復活後の記事のみでトップページが埋まるようになってきたので、この辺りで先日から話題に出しているマイ・セレクトCDを紹介。最近は一時期に比べこの手のセレクトものを作ることも非常に少なくなったのですが、なんとなく漠然と自分が好きな雰囲気のAORを中心にコンピを作ってみたいという思いは数年前からあったので、去年の夏にちょっと気合入れて作ってみました。結構難産だっただけに自分でもわりと納得のいく完成度で、今も通勤時によく聴いてます。コンセプトはミニFM。1年半ほど前に引越しをして、今はわりと海の近くに住んでいるので、海辺のカフェで流れてきたら気持ちいいような曲を中心に選曲しています。ちょうど自分がこれを作ってたのと同じ時期にサバービアの橋本さんが同じようなコンセプトでコンピCDをリリースしていたことをあとから知って、自分でもちょっと驚いているのですが、肝心の選曲自体は全然違うので一安心。とりあえず選曲リストは以下の通り。

Side. A
1. Valeu a Pena / Lady Zu
2. Words To A Song / Babadu!
3. I Name This Ship Survival / Cado Belle
4. Who,What,Where,When,Why / Madelaine
5. Be There In The Morning / Renee Geyer
6. A Million Stars / Mackey Feary Band
7. Sun Goddess / Legacy
8. Had And Run / Nalu
9. Child Of The Father / Mike & Von Rogers

Side.B
1. Girl's In Love With Me / 芳野 藤丸
2. Blow My Blues Away / Koola
3. What'll Become Of The Children / The Rah Band
4. Native Boy / Animal Nightlife
5. Caught In A Whirlwind / Richard Stepp
6. Renascendo Em Mim / Don Beto
7. It's You (It's Muro Mix) / Sunaga t Experience
8. What The Child Needs / Terry Ronald
9. You Need Me / Noriki

昔のテープをイメージして、約40分でA面B面を分けている他、FMというコンセプトなので要所要所で某局のジングルも混ぜてます。曲自体にレアなものはあまりないですが、いわゆるクラシックと最近の流行りもの、それからあまり知られていなかったり、知られていてもあまり他の人がチョイスしないマニアックな曲が同居しつつ、全体的に洗練されたテイストを保っている辺り、非常に自分らしい選曲ではあるので、個人的にはわりとお気に入り。まぁ自己満と言ってしまえばそれまでなのですが、僕が好きな曲はこんな曲ですというショーケース変わりに紹介してみました。ちなみに収録曲でまだここで紹介していないものの幾つかについては、今後徐々にここで紹介予定。乞うご期待下さい。

※追記

前々から興味があったmixcoludにアップしてみました。↓に貼り付けておきますので、良かったら聴いてみてください。どこかで間違えたようでアーティスト名と曲名が逆ですがそこはご容赦を。もし聴いていただけたらコメントなど頂けると有難いです。

Dear Breeze

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Alive / Kalapana

2013-05-13 | Hawaii
あまり語られることのないカラパナの1981年作。米本国では日本のリードで制作された78年のNorth Boundと80年のHold Onが発売されていないため、本作は間にMany Classic Momentsのサントラを挟んで彼らの4thアルバムという位置づけとなっているようです。しかしながら本作収録曲9曲中6曲は、先ごろCDでもリイシューされた1980年に横浜で開催されたJapan Jam IIからのライブ録音。残り3曲のうち2曲も日本制作盤からの曲が占めているため、日本人にとっては正直なところ新鮮味が薄い作品と言わざるを得ません。おまけにこの頃のカラパナはD.J.プラットを除くオリジナルメンバーが全てバンドから離れており、サウンド的にも似合わぬ産業ロック~フュージョンをやっているため若干迷走気味。見ての通り、Tバック姿のスレンダーなボディが悩ましいジャケットは素晴らしいのですが、ここまで悪条件が重なれば話題に上がらないのは当然で、大半の方からスルーされてしまうのも仕方ないかと思います。ただ実はそんな本作にも一つだけ耳を傾ける理由があり、それがA-3のGot To Find You Girl。おそらく多くの人が気づいていないと思われますが、78年のNorth Boundに収録されているものとは別テイクです。ベースとなるオケ自体はおそらく同一なものの、ヴォーカルとサックスは明らかに録り直されており、そのせいでNorth Bound収録ヴァージョンに比べアイランドメロウ度20%増し。D.J.プラットのソウルフルなヴォーカルに執拗に絡むサックスが最高に気持ちいい好ヴァージョンとなっています。CDになっているかどうかは分かりませんが、アナログはカラパナらしく非常に安価なので、この曲のためだけに購入しても損はしないかと。ちなみにB-2のSweet Lady Loveは以前紹介したDavid John名義でのアルバムの収録曲で、こちらもリテイクが収録されており完成度はこちらの方が上。新鮮味がないからといってスルーするのはもったいない一枚なので、この記事を見て気になった方は是非実際に耳を傾けてみてください。
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Cheerleader "Sturt" / Greenwood

2013-05-12 | Hawaii
山下達郎の全英語詞作品と来たら避けることが当ブログ的に避けることが出来ないのが本作。日系アメリカ人のロビン・キムラを中心に1972年にハワイで結成されたバンドが、活動休止~再開後の1985年に自主制作でリリースした7インチです。Side-Bに入っているSparkleが言わずと知れた山下達郎の名曲カバー。最初に見つけたのが誰なのかは分かりませんが、数年前の発見当初はレアグルーヴ界隈でも大きな話題となり、デッドストックが大量に流れ込んできた後、7インチでリイシューが出回ったりしました。ちょうど本作の発見がタイミング的にリリース時期と重なったため、既に何度も取り上げているHawaiian Breaksにも収録。さすがに最近は一通りブームも沈静化したのか市場でも見かける機会はなくなりましたが、いくら鮮度が低くなったとは言えネタとしては面白い一枚なので、まだ知らない人はどこかで見かけたら耳を傾けてみてもいいかもしれません。あの完璧過ぎるオリジナル演奏と比べてしまうと完成度は落ちますが、全英語詞でDJ的に使い易いというのが何より本作最大の売りでしょう。…と、こんな調子で本作を語る際にはどうしてもSparkleカバーばかりに目が行きがちですが、実は語られる機会が少ないSide-AのCheerleader "Strut"もなかなかの名演なので見逃しは禁物。こちらはフリーソウルの要素を持つ若干フュージョンがかったライトなインストゥルメンタル・ジャズ・ファンクとなっており、個人的にはむしろこちらの曲の方が聴く頻度が高かったりします。サウンド的には10年ほど前にクラブ界隈で大ヒットしたWack Wack Rhythm Bandの2ndに近いため、あの雰囲気が好きな人だったらまず間違いなく気に入るはず。2曲合わせて何かのコンピレーションにでも入ればそれなりに話題になると思うのですが、権利関係の問題があるのは想像に難くないので、まぁなかなかに厳しいのでしょう。幸いHawaiian Breaksにはほぼフルコーラスに近い形でSparkleが収録されているので、CD派の人はそちらで楽しむことをお勧めします。
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Big Wave / 山下 達郎

2013-05-12 | Japanese AOR
サーフィンを題材とした同名のドキュメンタリー映画のサウンドトラックとして制作された1984年の作品。あいにく映画の方は見ていませんが、アルバム自体の出来は非常に良く、この次のPocket Music以降デジタル録音に移行し若干作風が変わる山下達郎の、いわゆる「夏だ、海だ、タツローだ!」系列作品の総決算として楽しめる一枚となっています。A面が過去の作品からの焼き直しを含むオリジナル楽曲、B面がビーチボーイズのカヴァーという構成になっていますが、サントラということで全体を通しての統一感は保たれており、非常に夏を感じられる完成度の高いアルバム。オリジナル曲を含め全てが英語詞であるということもあり、数ある彼の作品中でも雰囲気を楽しむBGM的な聴き方に最適な一枚です。Joy 1.5にライヴ・ヴァージョンが収録されていたA-1のThe Theme From Big WaveとA-3のOnly With You、人気曲の英語版となるA-2のJodyあたりもいいですが、何よりオイシイのはこのアルバムのみに収録されているA-4のMagic Ways。きらきらしたギターのカッティングと一人多重コーラスが最高に気持ちいいクラブ世代好みの跳ね系AOR~ライトファンクの逸品で、英語で歌われていることを含め、おそらく彼の楽曲中でもっともフロアプレイに適したナンバーでしょう。2番で♪And when you want me you just clap your hands~と歌われた後の手拍子3回が気持ち良過ぎます。人気曲でフロアでも特大クラシックなSparkleやLove Spaceの影に隠れてあまり話題になることはないのが残念ですが、個人的には一押しのキラー・チューン。このブログを見てる方で知らないという人も少ないかと思いますが、既に知ってる方も良かったら是非聴き直してみてください。どこのレコード屋でも数百円で買える盤ですが内容は極上。コストパフォーマンス的にも最高なお勧めの一枚です。
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You're Something Special / Delaine

2013-05-11 | CCM
以前紹介したCCM系黒人シンガーソングライター、アイラ・ワトソンのプロデュースによる1983年の作品。まるでアメリカン・シットコムにでも出てきそうな、このディレインなる少し太めな女性シンガーの正体は良くわかりませんが、顔に似合わぬソウルフルかつチャームな美声で聴かせるタイプの、なかなかに良い雰囲気の一枚です。アイラ自身がプロデュースとアレンジを手がけているので当たり前と言えば当たり前ですが、全体的に女性版アイラ・ワトソンといった趣。さすがに例のShining Starには及ばないものの、落ち着いて聴ける80'sソウルとしては及第点の作品と呼べると思います。CCMなので全体的にやさしく暖かな雰囲気が漂っているのも高得点。少し前に韓国からリイシュー盤が発売されたケリー・ウィラード同様、仕事で疲れて帰ってきたときに聴く癒し系作品として聴くのが正解でしょう。収録曲は全てミディアム~スロウですが、ライトメロウ的にオイシイのはミディアムナンバーで、特にA-3のOne In A HundredとA-4のMade AliveはCCMのやわらかな雰囲気と80年代ブラコン特有の洗練された都会感が同居した名曲。フロアでかけられるような類のナンバーではありませんが、これはきっと嫌いな人のいないタイプの曲かと。Shining Starのときも感じましたが、アイラ・ワトソンはエレピやホーンやストリングスなど各楽器の使い方がうまいので、どの楽曲も聴いていて非常に心地良いです。ちなみに参加クレジットを見ると、コイノニアからハドリー・ホッケンスミス(g)とハーラン・ロジャース(key)、そしてビル・マックスウェル(ds)がさらっと参加。CCM界隈特有の人員不足といった側面はもちろんあるのでしょうが、この人たちは当時本当に引っ張りだこだったようですね。もちろん他の参加作品同様に素晴らしい演奏を披露しているので、彼らのファンにもお勧めの作品です。ジャケットがこんな感じなので一見では食指が伸びないタイプのアルバムかと思いますが、そのせいもあり比較的リーズナブルに手に入る作品なので、興味がある方は是非チェックしてみてください。
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First Time We Met / King James Version

2013-05-06 | CCM
レアグルーヴ界隈では非常に良く存在が知られたゴスペルソウルの激レア盤にして(価格的な意味での)問題作。僕自身も現物を持っているわけではなく、ずいぶん前に知人から録音した音源を頂いただけなので、ここに掲載するのもどうかと思ったのですが、ネット上にあまりまともなレビューも見当たらないため、あえて取り上げさせて頂きます。まず最初に一言。この作品、単純に内容からだけで判断すると、僕にはそこまで極端な高額で取引されるほどの名盤だとは思えません。たしかにトータルとして出来が悪い作品では決してないし、収録曲中には甘茶的展開で聴かせるナンバーやモダンソウルと呼べそうな作品も幾つか入っていますが、あくまでそれは一般的なレアグルーヴ系作品における水準内でのこと。平均的な水準を大きく逸脱するようなナンバーは、残念ながら収録されていません。結局のところ、人間発電所のメインループで使われているA-1のI'll Still Love Youが収録されているということにどれだけの価値を見いだせるのかが焦点ということになるのでしょうが、肝心のこの曲もあまり尖った内容とは言い難く、正直ブッダブランドのネタという事実がなければただの凡百なメロウ系ゴスペルです。あくまで曲単体で勝負するならば、むしろA-3のタイトル曲やA-4のWon't Have To Worryあたりの方がフリーソウル度も高く良い感じ。たとえばIngram Kingdomの1976年盤などが好きな人は素直に気に入ると思います。ただ、それはあくまで本作を通常のレアグルーヴ作品と同じ土俵で評価した場合の話。現在のように異常に高騰した状態では、とてもおいそれと人様にお勧め出来るような作品ではありません。正直普通の人は、もしもいつか再発されたら聴くくらいのレベルで充分かと。なお繰り返しますが、決して本作を駄作と言っているわけではありませんので、その点についてはくれぐれも誤解なきように。あくまでも個人的にこの価格に見合う作品ではないと感じているだけのことです。
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Yesterday, Today, & Forever / Holland, Dozier & Holland

2013-05-04 | Free Soul
前回のマーク・ウィリアムスからH=D=H繋がりでこんな作品を紹介。モータウン系列の音楽出版社であるJobete Musicからプロモーション目的で関係者のみに配布された3枚組LPです。僕はソウルにはそれほど明るくないので詳しいことは分かりませんが、なんでも一部ではモータウン究極のコレクターズアイテムとも呼ばれているそう。それもそのはず、収録された全ての曲がこの盤のみでしか聴けないもので、そのうち約2/3が彼らの過去のヒット曲の再演。おまけに制作時期が「サタデーナイトフィーバー」と同じ1977年ということもあり、全体的にディスコ~ダンスクラシック色の強いアレンジとなっています。収録曲は大ボリュームの全37曲。2~3分程度の短いものがほとんどですが、いずれも非常にグルーヴィーな名演に仕上がっており、フリーソウルの頃に人気があったディスコ系ナンバーが好きな人ならまず間違いなく虜になる内容です。特にこの年デビューすることになる4人組グループのHigh Inergy(ハイ・イナジー)が歌い手としてフックアップされた3曲は絶品。歌っているのはA-5のI Hear A Symphony、B-6のI'm Ready For Love、D-1のI'm Gonna Let My Heard Do The Walking。それぞれシュープリームスとマーサ&ザ・ヴァンデラスの曲ですが、これが全てフリーソウル系のダンクラ風アレンジとなっています。当時テルマ・ヒューストンのSaturday Night, Sunday Morningやサルソウル・オーケストラのRunawayで踊っていた人ならば、おそらく一発でKOされることでしょう。その他の曲では、Kathy McFarland(キャシー・マクファーランド)が歌うF-2のMemories (They Dance With Me)や、Margo Michaels(マーゴ・マイケルス)が歌うE-3のTake My Everything辺りも同系統の好ナンバーです。またThe Family AffairによるF-6のYou Can't Stop My Lovingは、モダンソウルとしても人気があるそう。いわゆるプロモオンリー盤で、現在に至るまでCD化もされていないため、当然レアリティは比較的高めですが、内容としてはそれをおしてあまりある逸品。マニア向けの作品ではありますが、今モダンソウルとして求められている音が山ほど詰まった大名盤です。
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