At The Living Room Reloaded

忙しい毎日の中で少し足を止めてみる、そんな時間に聴きたい素晴らしい音楽の紹介です。

Peacemaker / Per Husby Septett

2008-01-30 | Hard Bop & Modal
ノルウェーのコンポーザー兼ピアニスト、パー・ハスビー率いるセプテットによる76年録音のアルバム。Plateselskapetという全く聞いたことのないマイナー・レーベルからのリリースな上、録音も70年代中盤のノルウェー盤と言うことで、これまで完全に視界に入っていなかったものの、いざ聴いてみるとこれがなかなかの力作で驚かされました。どうもノルウェーと言うと、ヤン・ガルバレクを始めとしたECM系フリー・ジャズの印象が強いですが、こんな正当派のモダンを演奏していた人もいたんですね。アレンジの節々に新主流派の影響を感じさせながら、同じ北欧のスウェーデン辺りに近い透明感を持った素敵な一枚に仕上がっています。エレガントな管のアンサンブルで聴かせるB-1のタイトル曲や、ステファン・アベリーンにも通じるバラードのB-2、The Masquerade Is Overなど、この手の北欧モーダル好きならきっと気に入るはず。良い意味で陰があり芯の細い演奏なので、いわゆるヨーロピアン・ジャズのイメージにもぴったりなのではないかと思います。少なくとも僕はこの質感が大好き。もともと非米国産ジャズに惹かれたきっかけがこの辺りの繊細な雰囲気だったので、そういった意味で本作はツボど真ん中と言った感じですね。そして何より素晴らしいのがA-5のFantasy In D。シダー・ウォルトン作による名曲のカバーですね。Ugetsu(ジャズ・メッセンジャーズが演奏していました)と言う別名でも知られるナンバーですが、ここではその曲を非常に北欧的な解釈でバピッシュに好演。ともすれば分厚くなりがちな4管編成ですが、一切の無駄を排したアレンジでタイトにプレイしています。イーロ・コイヴィストイネンのSo Niceにも通じる、込み上げ系ユーロ・バップの最高峰。真にキラーな曲とは、おそらくこういうものを指すのでしょう。クラブ・ジャズ好きの人にも十二分にアピール出来ること請け合いです。なお、数年前に別ジャケでCD化されたそうです。さっき探してみたらi tunesにもありました。オリジナルは結構なレア盤に部類される一枚だと思うので、興味のある方は是非まずはそちらでチェックしてみてください。自信を持ってオススメします。
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Musicanossa O Som & O Tempo / Various Artists

2008-01-27 | Brasil
多くのミュージシャンの海外流出により、当時ブラジル本国で下火になっていたボサノバの復刻運動。ポルトガル語で「僕達の音楽」と称され、一連の非商業主義ムーヴメントの中で生み出された中の1枚が本作です。レコード会社の垣根を超え、全部で4つ製作されたムジカノッサ・シリーズのOdeon盤。以前サバービア誌において取り上げられたことや、この印象的な振り子のジャケットの素晴らしさも相まり、おそらく同シリーズの中でも最も知名度が高いのがこれなのではと思います。構成としては、6つの参加アーティストが表裏各面1曲ずつ提供したオムニバス形式。有名どころではベッチ・カルヴァーリョ辺りも参加していて、その素敵な歌声を披露していますが、やはり本作の目玉は知る人ぞしるフルーティスト、フランクリンによる貴重な音源が収録されていることでしょう。特にA-3のMeu Fraco É Café Forteは、以前からコンピやミックス・テープに収録されている人気曲。リオ65トリオのオリジナル演奏にも全く引けを取らない秀逸なジャズ・サンバで、おそらくジャズ・サンバ好きでこれを嫌いと言う人はいないはず。超絶技巧のピアノ・トリオでタイトにまとめたオリジナルとは一味違う、豪快かつ華やかなアレンジが非常に素晴らしいです。豪快な管の援護射撃も去ることながら、フランクリンのフルートがまた抜群に巧く、つくづくブラジルのミュージシャンが持つポテンシャルの高さには驚かされるばかりですね。また、裏面にもう1曲収録されたB-3のDerradeira Genteは、ハードなMeu Fraco~とは対照的に、ストリングスを交えたどこまでも美しいジャズ・ボッサ。以前ここにも取り上げたボランのオーケストラ作品辺りに近い肌触りのエレガントな曲で、実は僕が今回この盤を購入した本当の目当てはこちらだったりします。どちらかと言うと、今はこういう美しい曲の方が気分なんですよね。何にせよ、フランクリンと言えばMeu Fraco~という認識しかない人が、こちらの曲を聴くとあまりの違いに驚くこと請け合い。ちなみに今のところ再発が存在しない上、オリジナルがまた結構なレア盤。あまり真剣に探していなかったこともありますが、コンピだからすぐ手に入るとタカを括っていたら、結局購入までに4年ほどかかってしまったという私的エピソードもあったりします。それでもオススメ盤であることには変わりありませんが。
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Routine Jazz Quintet / Same

2008-01-26 | Contemporary Jazz
もう1枚続けて話題の新譜から。DJの小林径氏率いるRoutine Jazz Quintetのデビュー作品です。帯には「海外のクラブ・ジャズに対する東京からの回答」と言う文句が書かれていますが、正にその通りと言った雰囲気で、特に先日紹介したQuintetto Lo Greco辺りに最も肌触りの近い一枚。クラブを分かっている人が、敢えて正当派のジャズをやっている感じが良く似ています。カバーする楽曲のセンスやリズム・アレンジ等々クラビーな要素も節々に散見されるものの、基本的には極めてオーセンティックでモダンなジャズ作品。最もライナーで書かれているような「熱さ」は、僕には感じられませんでした。と言うよりも、どちらかと言うとヨーロッパのジャズに近い質感なので、むしろ意図的に「熱さ」を排除しているように思えます。まぁこの辺りは個人の感じ方の問題なので、別に誰が正しいと言うことではないのでしょうが…。さて、収録されている曲個々の話。結論から言うと、やはり昨年末のコンピに収録されたM-3のBook's BossaとM-4のDown In The Villageの2曲が頭一つ飛び越えて好きです。前者はヨーロッパ的感覚で演奏されるモーダルなボサノバで、ニコラ・コンテ辺りのファンが好みそうな繊細で綺麗なナンバー。曲全体を包む儚げな雰囲気が好みですね。また、後者はクラブ・ジャズ好きにはお馴染みの一曲ですが、ミヒャエル・ナウラのスタジオ録音版をベースにしながら今風に解釈し直したようなアレンジで興味深い内容になっています。どこかナミスロウスキ辺りを思わせる線の細いサックス(ソプラノなのかな?)の音色が素敵ですね。ラテン・パーカス効かせまくりのクォシモードによるカヴァーも話題になりましたが、こちらの方がより正当派と言った雰囲気で僕は好きです。最もこの2曲以外も全体に雰囲気は良く、M-1のToots SweetやM-5のMishima(ブレイキー・カヴァー)辺りもなかなかに楽しめるナンバー。クラブ・ジャズ好きはもちろんですが、普段あまりこの辺りを聞かない人にも是非いちど耳を傾けて頂きたい一枚です。オススメ。
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Modal Jazz loves Disney / Various Artists

2008-01-23 | Contemporary Jazz
須永氏監修のディズニー作品カヴァー集。日本人は世界的に見てもディズニー好きの人種なようで、年に一枚以上のペースでこの手のカヴァー作品がリリースされますが、今作はそんな中でクラブ・ジャズに焦点を当てた一枚となっている模様です。参加メンバーは例によって生音派のクラブジャズ系アーティストとその周辺。普段からこの辺りの音を聴いている人ならば、恐らく一度は名前を耳にした人たちばかりで、素材自体の馴染み深さも含め非常に聴き易い一枚になっています。M-1のWinnie The Poohは久々にその名を聞くThe Five Corners Quintetがプレイ。ヒットした10インチ諸作に比べればパンチ力が劣るのは否めないものの、このネタをここまでバップ・アレンジで披露しているところは評価に値するのではないでしょうか。続くM-2のA Whole New Worldは国産クラブ・ジャズ・バンドのnativeによるもの。柔らかいアフロ・キューバン・タッチで上品に纏めた一曲になっていて、こちらもなかなかの出来です。良い意味で主張し過ぎないアレンジなので、夜のカフェのBGM辺りにぴったりなのではないでしょうか。また、リズムのアレンジはやや違いますが、LTC演じるM-7のBaby Mineもソフトなボサ・ジャズ仕様でカフェ向き。澤野工房辺りの作風にも通じるサニー・サイドの好トリオ・ナンバーになっています。そして何と言っても圧巻なのはM-8のWhen You Wish Upon A Star。ディズニー楽曲の中でも定番中の定番であるこの曲を、とびきり洒落たワルツ・ジャズ・ヴォーカルに仕立て挙げたニコラ・コンテの手腕はやはり只者ではありません。おそらくアルバム中ベスト・トラックなのではないでしょうか。こちらもリズム隊自体は完全にLTCそのものなのですが、例え同じメンバーでもプロデューサーが変わるとここまで雰囲気が変わるのかと舌を巻かされます。おそらく今後アナログでも出るのでしょうが、個人的にはこのLTCとニコラの2曲で7インチを切って貰いたいものですね。それはともかく、他の楽曲もなかなかに良いアレンジになっているので、是非一度聴いてみてください。この手の生音系クラブ・ジャズ的なものへの取っ掛かりとしても最適だと思います。
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European Jazz Sounds / Max Greger & His Orchestra

2008-01-20 | Hard Bop & Modal
澤野工房から再発されたミヒャエル・ナウラの作品と同時期に製作された「もう1つのEuropean Jazz Sounds」。ジャケットのデザインも似通っている上、タイトルもリリース年も同じなので、当時何らかのシリーズ企画として作られたことは容易に想像が付くのですが、この2枚以外の作品を見たことがないので、残念ながら他にも同シリーズが存在しているのかは不明です。さて、そんな本作はドイツのコンダクター兼テナー奏者のマックス・グレガーが、総勢17名による自身のオーケストラを率いて吹き込んだ一枚。彼名義の作品と言えば、CelesteからCD化されたMaximumという盤が比較的良く知られていますが、こちらの方が2年ほど録音が古い分だけ、もう少しオーソドックスなジャズ作品になっています。どことなくショウビズ的な雰囲気を漂わせつつ、豪快かつアップテンポにスウィングするA-1のDiscussionがまず良い感じ。これから何か楽しいことがありそうな予感のする一曲です。また、B-1のCarreraはルパン三世ライクなアレンジが耳を惹く、スリリングな快速バップ・チューン。ディック・スペンサーなる人物の吹く都会的なアルト・ソロが抜群に気持ちいいですね。そして白眉はコンピにも収録されたA-3のRevelation。まるで同時代のデンマークを思わせるスタイリッシュなバップに仕上がっています。ベニー・ベイリーによる鋭いトランペットと、歯切れの良いバックの援護射撃が格好良し。2番手は先ほども名を挙げたスペンサーで、こちらも元気なソロを展開してくれます。例のサヒブ・シハブのOktav盤なんかの雰囲気が好きだったら、多分この曲も気に入るのではないでしょうか。他の曲も全体的に中々の出来で、普段ビッグバンドに馴染みのない僕でも楽しむことが出来ました。ちなみに7~8年前にCDでリイシューされている他、アナログの2ndプレスなどと言うものもあるそうです。CDは既に廃盤のようですが、何故かi tunesで音源だけ購入出来るようなので、特に拘らない方でしたらそちらでもどうぞ。僕の手元には一応オリジナルがありますが、探そうとするとこれも多分なかなか出てこないものだと思いますので。
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Ascenseur Pour L'echafaud / Miles Davis

2008-01-19 | OST / Library
ジャズ界・映画界共に非常に良く知られた、57年のフランス映画「死刑台のエレベーター」のサントラ盤。主演を務めるジャンヌ・モローの写真を使った仏Fontanaオリジナルのジャケットが有名ですが、こちらは同時期にプレスされたと思われるオランダ盤ジャケット仕様の12インチ国内盤です。詳しくは知らないのですが、どうやら以前に日本フォノグラムが特典盤として製作した一枚とのこと。同じく日本フォノグラムからリリースされた白地に青の廉価盤は非常に良く見ますが、こちらはそれほど目にする機会がないかもしれません。ただ、個人的にはマイルスとジャンヌが2ショットで写っているこのジャケットが一番好きなので、敢えて若干拘ってこちらで買ってみました。さて、ジャケの話題はこの辺りで中身に移ります。「映画のフィルムを見ながらマイルスが即興で演奏した」などと言う逸話もあるくらいで、内容的にはほぼ完全な即興音楽。サバービアの言葉を借りるならば、同時期に製作されたブレイキーの「殺られる」と同じく「ハードバップの短編集」とでも言った趣です。ただ、アルバム全編を覆う夜感と緊張感はこちらの方が上。冒頭A-1のGeneriqueが一瞬聞こえただけで、部屋は一気にミステリアスでサスペンスな夜の世界へ。音楽的にどうこうと言うよりも、何よりこういう雰囲気作りの巧さがブレイキーとは一味違うような気がします。ちなみに僕の中でのベスト・トラックはB-4のAu Bar Du Petit Bac。アルバム中では最もインプロ度が低いと思われるナンバーですが、その分だけ曲としての完成度が高く、非常に聴き応えのあるブルース・ナンバーになっています。おそらく普通の人が本作を聴いて、最もジャズっぽいと考えるのはこの曲なのではないでしょうか。終始マイルスのトランペットと絡み合うバルネ・ウィランのテナー・プレイがまた素晴らしいですね。クラーク=ボランの諸作のように華やかな雰囲気も好きですが、こういうアダルトでムーディーな音楽も昔から大好きです。ちなみにサントラだけ聴いても充分楽しめますが、やはり映画を見てから聴くのが正解。映画の方も非常に良い作品なので、若い世代でまだ見たことのない人は是非チェックしてみてください。
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The Flip / Hank Mobley

2008-01-12 | Hard Bop & Modal
もう1枚続けてブルーノートから。このレーベルを代表するジャズメンの一人、ハンク・モブレーによる69年の作品です。その後の未発表シリーズでは何枚かリリースがありますが、一応これがモブレーのBN最終作品ということになるのでしょうか。Dippin'以降ということで正当派のジャズ・ファンからはそれほど評価の高いアルバムではありませんが、今の耳で聴けば内容は決して悪いものではなく、むしろモブレーの諸作の中でもコスト・パフォーマンスの高い部類の一枚なのではないかと思います。スライド・ハンプトン(tb)とディジー・リース(tp)という強力な二人をサイドに配し、ドラムスにはフィリー・ジョー・ジョーンズが参加しているものの、本作の録音は当時のブルーノートとしては珍しいパリで行われた模様。ピアノとベースの二人はあまり耳馴染みのない人なので、おそらく当地のミュージシャンだと思われます。注目はB-1のSnappin' Out。マイナー・コードで演奏される若干ボサ~ラテンがかったミッド・ナンバーなのですが、白木秀雄が「プレイズ・ボッサ・ノバ」でプレイしたサヨナラ・ブルースそっくりのアレンジになっていて面白いです。テンポとコード進行もほぼ同じなのではないでしょうか。よくある雰囲気の曲と言ってしまえばそれまでとは言え、ここまで似ていると何か不思議なものを感じてしまいますね。なお各ソロともなかなかの出来ですが、中でもディジー・リースによる突き抜けるようなトランペットが個人的には気持ち良いです。また、この曲以外では続くB-2の18th HoleやB-3のEarly Morning Strollも小気味よくスイングする佳作で好き。全体的にB面の方が内容良いような気がします。A-2のFeelin' Folksyもブルージーで良いですけれどね。ちなみにモブレーの中でも数ある作品の中でもマイナーな部類であるためか、これまで国内盤では見たことがありません。もしかしたらCD/LP共に国内プレスがないのかも。ただ、オリジナルで買ってもさほど高くはないので、ご興味があれば探してみてください。CDも輸入盤でならば労せず見つけることが出来ると思います。
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Easterly Winds / Jack Wilson

2008-01-05 | Hard Bop & Modal
残念ながら昨年ひっそりと亡くなったピアニスト、ジャック・ウィルソンがブルーノート時代に吹き込んだ67年作。いわゆるジャズ界のメインストリームにおける扱いの小ささとは裏腹に、クラブ・ジャズ方面での人気は古くから高いことで知られる人で、だいぶ前にここにも掲載したDiscovery盤などもその筋で人気があったりします。さて、そのDiscovery盤含め、ピアノ・トリオないしロイ・エアーズを加えたホーン・レスのカルテットのイメージが強い彼の作品ですが、本作はモーガン&マクリーンを含む3管セクステット編成による(彼にとっての)異色リーダー作。A-1のDo Itこそファンキーなジャズ・ロックですが、他は基本的にスタンダードなプレイ・スタイルなので、わりと万人受けする一枚なのではないかと思います。中でも取り分け素晴らしいのが、以前Jazz Next Standard誌でも取り上げられていたA-2のOn Children。若干前のめり気味な3管アンサンブルによるテーマ部が、ジャズ・メッセンジャーズの人気曲Alamodeを彷彿とさせる高速4ビートで、聴いていると自然と楽しい気持ちになるゴキゲンな一曲です。華やかな3管の影に隠れてしまいがちですが、ビリー・ヒギンズの正確無比なドラミングが抜群。いわゆるクラブ・ジャズ的な楽曲が好きならば確実にストライクでしょう。続くA-3のA Time For Loveはピアノ・トリオのみで演奏される静かな曲。先ほどの楽しい雰囲気とは一転して、真夜中の静寂とでも言うべき抑制の効いた演奏が素敵です。また、こちらは再びホーン入りですが、B-2のNirvannaも同系統のセンチメンタルな演奏。フロア用としてはOn Childrenが抜群で、部屋聴きならばこれらの曲と言ったところでしょうか。ちなみに個人的には、こういう落ち着いた演奏の方がジャケットのイメージにもより近い気がします。ラストのB-3、Frank's Tuneは高揚感溢れるバップ。これもまたメロディアスで非常に良い曲です。何はともあれ、一枚通して洒落た雰囲気を持った作品なので、興味があれば是非試してみてください。本場アメリカのジャズはそれほど得意でないという方にこそ、もしかしたらオススメの一枚なのかもしれません。
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Reencontro Com Sambalanco Trio / Sambalanco Trio

2008-01-01 | Brasil
明けましておめでとうございます。そして今年もまた、どうぞ宜しくお願いいたします。年明け最初と言うことで何を載せようか迷いましたが、最近わりと気に入っているこの盤から。この手のジャズ・サンバ好きにはお馴染み、セザール・カマルゴ・マリアーノとアイルト・モレイラ擁するサンパウロのサンバランソ・トリオによる3rdアルバムです。彼らの作品と言えば、例のスリリングなキラー・ナンバーのSambluesが収められた1st、Nanaなど華やかなアレンジのナンバーが並ぶ2ndも良く知られていますが、個人的にはグッと洗練されたこの3rdが断然今の気分。彼らの作品の中でも一番後期に録音されたアルバムだけあって、過去の2作に比べ格段に大人びたプレイが楽しめる好盤になっています。小ぎれいに纏まったA-1のSamba Pro Pedrinhoから既に良い感じですが、続くA-2のDeixaがまた抜群に素敵。Bossa Jazz TrioやG/9 Groupを始め、この曲を演奏する人はブラジルには多いですが、その中でも一際上品なアレンジになっていて、セザルゴの弾くきらきらと輝くようなピアノが最高に気持ちいいですね。またハード路線ではA-4のTensãoがなかなか。Sambossa 5の演奏もハード・ジャズ・サンバの名演として知られている曲です。当然のことながら、ホーン入りだったあちらと比べこちらは純トリオ。それぞれの良さがあるので甲乙は付け難いですが、このサンバランソによる演奏もムダを削ぎ落としたようなアレンジで巧くまとまっていて、僕個人としては気に入っています。そして、何と言っても絶対の名演なのはA-3のLenda。まるで長編映画のラスト・シーンを思わせる幻想的なナンバーです。しっとりとした曲ではあるものの雰囲気がとても洒落ていて、ついつい何度も繰り返して聴きたくなる魔法のような一曲。デンマークのベント・アクセンらによるMore Peaceにも通じる世界観が非常に僕好みですね。ちなみに確証はありませんが、冒頭部は恐らくピチカート・ファイブの「子供たちの子供たちの子供たちへ」の引用元ネタだと思います。いずれにしろ、最高の1曲であることは間違いありません。冬の寒い夜には、こんな心温まるピアノ・トリオ演奏を聴いてみるのも良いのではないでしょうか。
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