At The Living Room Reloaded

忙しい毎日の中で少し足を止めてみる、そんな時間に聴きたい素晴らしい音楽の紹介です。

Un Show De Bossa En Bossa Copa / Various Artists

2007-12-30 | Brasil
おそらく60年代中盤にリリースされたと思われるCopacabanaレーベルの自社音源コンピ。マニアの間で知られるカルト・トリオ、Banzo Trioの7インチ音源が収録されていることで有名な一枚です。ジャケットはご覧の通り、エレンコを意識した典型的ボサノバ盤風味ですが、そんな外見をよそに中身の方は超絶ジャズ・サンバの嵐。中でも初めに記したBanzo Trioのプレイがあまりに圧倒的で、個人的に驚きの一枚でした。そのBanzo Trioが参加しているのは、歌ものの伴奏を含め収録曲中約半数の7曲。冒頭M-1を飾るMuchacha Moderna(Garôta Moderna)から、非常に卓越した神懸り的プレイを披露しています。まるで獲物を狙うかのようにスリリングな高速ハード・ジャズ・サンバ。ドカドカ叩きまくる凄腕ドラムと神秘的なピアノが絶品ですね。同じく純トリオ演奏では、中盤から徐々に盛り上がるM-7のGenteも素晴らしいです。ありきたりな言い方ですが、とにかく演奏のテクニックが異常なほどに高く、それでいて曲構成も完璧で、聴いてて全く飽きを感じさせません。玄人筋から人気が高いのも頷けますね。そんな彼らの曲構成(というかアレンジ力)の素晴らしさが一際感じられるのはM-10のPat Pourri。リタなる女性シンガーによるボサノバ4曲のメドレーなのですが、これがもう偉いことになっています。僅か2分半の演奏のなかに、よくもまぁこれほど色々詰め込めたものだなと、ただひたすら舌を巻くばかり。特に中盤見せるSambou, SambouからSamba Da Minha Terraへの一瞬の繋ぎは、DJ顔負けの絶妙なカットインで痺れます。さも当然のようにプレイしていますが、嵐のような超高速の中でこれだけのことをやってのけるのは、並大抵のことではないでしょう。普段あまりメドレーは好まない僕ですが、これは別格。ちなみにこのメドレーもBanzo Trioの音源と同じように7インチ化されているようですね。恐ろしく高価かつレアなので、とても手が出るような代物ではありませんが…。なお、僕が持っているのは先日リリースされた復刻CDですが、LPでも80年代に再プレスがあったとのこと。7インチを手にするのは容易ではないので、とりあえずLPで探してみようと思います。
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Novas Estruturas / Luiz Carlos Vinhas

2007-12-28 | Brasil
押しも押されぬクラシックなので今さら載せるのもどうかと思ったのですが、最近この辺りの音が一番ツボな感じなので紹介。ボサ・トレスの中心的存在であるルイス・カルロス・ヴィーニャスによる64年の作品です。ホベルト・クアルチン主催のFormaから最初期にリリースされたアルバムで、以前紹介したボサ・トレス名義の作品と共に、このレーベルの中でも一際知名度が高い作品なのではないでしょうか。トリオとしての完成度の高さを目指したボサ・トレスとは異なり、こちらは一人のミュージシャンとしてのルイス・カルロス・ヴィーニャスの可能性が模索された一枚となっていて、あちらとはまた別の楽しみ方が出来るアルバムです。参加メンバーも非常に豪華で、曲によって編成は変わりますが、さながら当時のベッコ仲間全員集合と言った感じ。ある意味ではセルメン&ボサ・リオ・セクステットの作品にも近いかもしれません。A-3のTempoはハウルジーニョの強烈なワンホーン・プレイが格好良い王道ハード・ジャズ・サンバ。この辺りの音が好きな人は間違いなく好きだと思います。続くA-4のPrimaveraはしっとりした大人のジャズ・ボッサで、メイレレースのフルートが非常に気持ちいい一曲。ボサ・トレスでもそうでしたが、このように硬軟どちらのプレイでも対応出来る器用さが、もしかしたらルイス・カルロス・ヴィーニャス最大のポイントなのかもしれません。A-5のMas Que NadaやB-3のBatucadaのようなブラジル音楽好きにはお馴染みの曲を、ジャズ度高めのアダルトな雰囲気でカヴァーしているところも面白いですね。ただ、何と言っても個人的に白眉なのは冒頭A-1を飾るCurta Metragem。マウリシオ・アインホルンのハーモニカ(!)が異常に格好良い極めつけの一曲です。正直ここまで凄いハーモニカは人生で聴いたことありません。とにかく、ただただ「凄い」としか言いようのない絶品プレイ。ブート再発が結構出回っている他、ボンバからCDでも出ているので、まだ知らない人はこの1曲のためだけにも是非聴いてみてください。それにしても初めてハウルジーニョを聴いた時も感じましたが、この時期のベッコ・ダス・ガハーファスには、当時の表舞台には出てこなかったものの異常なテクニックの持ち主が、これほどまでに沢山いたんですね。脱帽です。
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Zabele etc... / Flora

2007-12-27 | Brasil
70年代にブラジリアン・フュージョン的な作品を数多く残すことになるフローラ・プリム。本作はそんな彼女が渡米直前の68年に、祖国ブラジルのOdeonレーベルに吹き込んだEP作品です。これ以外にも何枚かEPが出てるみたいですが、聴いたところによるとこれが一番内容が良いとのこと。全4曲とも非常に美しいボサノバで構成された一枚になっています。ちなみに演奏者はクレジット無しですが、どうやらピアノはあのテノーリオ・ジュニオールが務めているらしいそう。言われてみれば確かにこの繊細なタッチはテノーリオ風ですね。すぐに耳を惹くのはやはりピアノを前面に押し出したA面の2曲。特に冒頭A-1のZabelēは、後のヨーロピアン・ライブラリー・サウンドにも通じる流麗なジャズ・ボッサで抜群に気持ちいいです。朝焼けを思わせる爽やかなフルートが好き。もちろんフローラ嬢の澄み切ったヴォーカル・ワークも素敵です。サバービア~カフェ・アプレミディなどに象徴される上品なボサノバが好きならばきっと気に入るはず。続くA-2のO CantadorもG/9 Group風のお洒落ボサ・ナンバーで良い感じ。こちらもポイントはやはりピアノとフルートでしょうか。ただ、個人的にはピアノではなくギターをフィーチャーしたB面2曲もかなり気に入っていて、特にB-1のCoraçāo Vagabundoは地味ながらサウダージ心に溢れた好曲だと思っています。まるで実際に耳元でフローラが歌っているかのような、ヴォーカル・パートを強調した録音の仕方が印象的。冬の気怠い午後にはこんな曲を聴きながらコーヒーを飲んでみるのも良いかもしれません。ちなみにこのEPも先日のマルコス・ヴァーリ同様、某DJさんに教えてもらった一枚。ブラジル盤でもこの辺りのボーカルものはこれまでほぼノータッチだったので、これを機に色々聴いてみたいなと思います。硬派なジャズ・サンバしか受け付けないという人には不向きかもしれませんが、肩の力を抜いた演奏も好きと言う人にはオススメ。僕自身、以前は本作のようなレコードを聴いても反応しなかったでしょうが、最近はわりとこういう耳に優しい洗練された音楽が好みです。このブログのタイトル通り正にAt The Living Roomな一枚ですね。
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At The Living Room Awards 2007

2007-12-25 | Weblog
少しだけお久しぶりです。最近めっきりレコード購入しなくなったので、あまり満足に更新も出来ていない状況ですが、とりあえず年末ということで恒例(?)のこの企画。例によって今年購入したLPの中から、特にお気に入りのレコードをチャート風に再リコメンしてみたいと思います。相変わらず趣味丸出しではありますが、よろしければご参考にどうぞ。

1. Desenhos / Vitor Assis Brasil (Forma/Brazil)
2. Out Of The Background / Francy Boland (Saba/MPS/Germany)
3. My Little Cello / Oscar Pettiford (Debut/Denmark)
4. 'Round About Midnight / Miles Davis (Fontana/France)
5. Plays Bossa Nova / Hideo Shiraki Quintet (King/Think/Japan)
6. Jazz In Relief / Jazz-Hip Trio (Major Minor/United Kingdom)
7. What's New? / Gil Cuppini Quintet (Meazzi/Broadway/Italy)
8. Vol.2 / Bossa Jazz Trio (Fermata/Brazil)
9. Music For Mice And Men / Jørn Elniff (Debut/Denmark)
10. Downstream / Staffan Abeleen Quintet (Phillips/Universal/Sweden)

去年に比べて比較的地味めなチャートですが、その分だけ密度が濃いめ。この辺りは自分の趣味の変化によるところが大きいのでしょう。フロア志向と言うより、どちらかと言うと部屋で静かに聴きたいアルバムが多めです。5と10は最近話題の再発盤、それから2と7も当時モノの2ndプレスで4と6は国籍違い。なので完オリと呼べるのは1・3・8・9だけですが、今年はそれほどオリジナル盤に拘って買ってたわけでもないんでまぁ良しとしておきましょう。そんな感じです。更新はまばらになると思いますが、とりあえずこれからも細々とは続けていこうと思ってるんで、今後とも是非よろしくお願いします。
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The Right Spirit / Quintetto Lo Greco

2007-12-16 | Contemporary Jazz
一昔前のリリース・ラッシュがまるで嘘のように、このところすっかり身を潜めている伊Schemaレーベルから届けられた新作。ロ・グレコ兄弟の双頭リーダー・コンボによるSchemaリリース3作目です。前回のSnap Countとはややメンバーが変更されているものの、編成自体は同じくフロント2管のクインテット。相変わらず正当派なネオ・バップ的作風で、全体的に好感の持てる一枚ですね。曲ごとの解説に入っていくと、まず最初に耳を惹くのがM-4のUpdated Sound。スマートかつクラビーな高速アフロ・キューバン・チューンで、ジャズDJの方々にも好まれると思われる素敵な一曲です。若干長尺気味ではありますが、彼らの楽曲の中でも一際クラブ映えしそうなナンバーなので、おそらくこれから先しばらくはクラブやカフェで引っ張りだこになることでしょう。ニコラ・コンテの2nd以降、急速に生音ジャズ路線にシフトして人気を博したSchemaですが、もしかしたらこの曲がOther Directionsの雰囲気に一番近いかもしれません。高速でありながらも演奏自体は丁寧で、アグレッシヴになり過ぎてない辺りがポイントなのでしょうね。また曲調がガラリと変わりますがM-7のFlowing Linesもなかなか。少しスピリチュアルな感も漂うモーダルな変拍子ジャズで、先の曲とタイプは違えどこちらもヨーロピアン・ニュー・ジャズ直系の好ナンバーです。美しいテーマ部はもちろんですが、一曲を通して若干リズムがボサ打ち風なところが非常に僕好み。なお、個人的にはこの2曲がベストかと思いますが、他にもM-4と同じく高速アフロ・キューバンなM-8のIdolsや、ワルツ・タイムから4ビートへの転調も鮮やかなM-6のOver Powerなど、アルバム全体的にわりと良い雰囲気です。少なくとも僕は同時期にリリースされたLTCの新作よりこちらに惹かれました。ただ、同じイタリアの若手ミュージシャン同士、比較しながら聴いてみるのも、それはそれでまた面白いかもしれません。二枚を聴き比べてみると、おそらくリリース元であるRicky-TickとSchemaの似て非なる各レーベル・カラーも見え隠れしてくるはず。そう言った意味でも興味深い一枚ではあります。もちろん難しいことは知らないというライト・ファンの皆様にもオススメ。おそらく今度もCDのみですが、アナログ派の方も是非聴いてみてください。
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Downstream / Staffan Abeleen Quintet

2007-12-11 | Hard Bop & Modal
以前CDでも紹介したスウェーデンのピアニスト、ステファン・アベリーンによる66年の2ndアルバムが本作。須永辰緒さん監修でリイシューされたユニバーサル「夜ジャズ」シリーズの一枚です。おそらく自分を含め多くの方に取って、今回のリイシュー企画の目玉盤に当たる存在なのが本作なのではないでしょうか。全体的には決して派手な作品ではないものの、ジャケ・演奏共に非常に洗練された完成度の高いアルバムで、60年代当時におけるスウェディッシュ・モーダルの完成形が存分に堪能出来る一枚になっています。「北欧ジャズ=透明感のある洗練された演奏」という我々日本人の思い込みをそのまま地で行ってるような作品。いくら北欧のジャズとは言え、ここまでタッチが細く洗練された演奏って実はなかなかないですよ。A-2のRelaxからメドレー風に連なるA-3のタイトル曲がまず素敵。カツカツ刻むリムショットとふくよかな2管フロント、その間を絶妙なバランスですり抜けるアベリーンのピアノが最高に好みです。ある意味女性的とも言える柔らかでしなやかなタッチに、僕と同じようなこの手の欧州ジャズ好きなら溜め息を漏らすこと間違い無しでしょう。また若干タイプは違いますがB-1のDegageもモーダル風のバラードでかなり良い感じ。この前ここで紹介したFinn Mickelborgとは方向性が違いますが、これもマイルスの'Round About Midnightの北欧的解釈と言ってしまって問題ない気がします。ただ、唯一このリイシューで納得が行かないのは冒頭A-1のFin Skit Over Havet。導入部のナレーションがバッサリと全てカットされてしまってるのが非常に残念ですね。僕としては、最初にあのナレーションが入るからこそ、イントロの綺麗なピアノの入りが生きてくるのだと考えているのですが…。肝心の曲本編が60's北欧ジャズで3本指に入るほどの絶品ジャズ・ワルツなだけに、出来るだけオリジナルに近いカタチで聴きたかったです。まぁ編集の都合上で仕方のなかったことなんだろうとは思うんですけれどね。おそらく近いうちにCD化もするのだと思いますので、その時は是非ナレーション部も追加して下さるようお願いします。
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Vol.2 / Finn Mickelborg Quintet

2007-12-09 | Hard Bop & Modal
こちらも久々に紹介となるダニッシュもの。ジャズの世界では比較的珍しいアルト・ホルンを吹くフィン・ミッケルボルグなる奏者のDebut盤EPです。ちなみに録音は60年で、Vol.2と冠してあるのは恐らくジャズ批評誌にも掲載されたA Bit á la Miles(DEP 46)に対してのものでしょう。但しピアノレスの変則クインテットで吹き込まれたあちらとは違い本作はピアノ入り。詳細は良く分かりませんが、この時期のDebut盤で(広義の)Jazz Quintet 60一派絡み(ボッチンスキー、アクセンetc...)でない作品としては、このミッケルボルグの2枚が唯一の作品なのではないかと思います。最もピアノのAtli Bjørn(アトリ・ビョルン?)はJazz Quintet 58に参加しているので、あの一派とは全くの無関係と言うわけでもないのでしょうが…。収録曲はオリジナル2曲にスタンダードが3曲。A-2でMy Funny Valentineが、そしてB-2で'Round About Midnightが取り上げられている辺り、それなりにマイルスの影響を受けてはいるのだと思いますが、演奏にその様が露骨に表れているかというとそんなこともなく、全体としては同時期のJazz Quintet 60周りに良く似た肌触りのダニッシュ・ハードバップになっています。中でも一番近いのは以前ここでも取り上げたJørn ElniffのLP辺りでしょうか。オリジナルの2曲もなかなかに良く、当時のデンマークにおけるジャズのレベルの高さが伺えます。特にA-3のTimenが絶品で、Jazz Quintet 60のMetronome盤に収録されていてもおかしくないような重厚ハードバップ。夜の始まりを彩るのに良く似合う至福の1分25秒です。B-1のGroovin' Highはガレスピー作。オールドタイムなウェストコースト・サウンドで快活に飛ばします。初期のバッソ=ヴァルダンブリーニ・サウンドに若干の陰影を付けたような独特の雰囲気が良いですね。そして前述B-2の'Round About Midnightはピアノ・トリオでしっとりと。マイルスの演奏に勝るとも劣らない緊迫感が素敵です。ただ、僕の持っている盤は若干盤質が悪くパチパチとノイズが入るのが玉にキズ。綺麗なのがあれば買い換えたいのですが…。
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Blue Spirits / Freddie Hubbard

2007-12-09 | Hard Bop & Modal
少し久々な感じのあるBN作品。新主流派トランペッターの代表格であるフレディー・ハバードの65年作です。これまでも3管メッセンジャーズのフロントとして良く聴いてはいたものの、意外なことに自身のリーダー作をしっかりと聴くのはこれが初めて。Open SesameやReady For Freddie辺りは中古店でも比較的良く見かける(無論オリジナルではないですよ)ので、何度か試聴したこともあったのですが、個人的にやや衝撃が少なかったこともあって何となく購入まで至らなかったんですよね。そんな僕が本作を購入するに至ったのは一重にA-2のBlue Spiritsを薦められたせい。「絶対好きだと思う」と言われ薦められ聴いてみたところ、案の定やっぱり好きでした。どこかヨーロッパの上流階級を思わせる壮大なワルツ・ナンバーなのですが、何と言ってもそのテーマ部分が印象的。ハバードのペットを含む3管のアンサンブルに乗る、ジェームス・スポールディングのフルート捌きが抜群に僕好みです。全体的に非常に優雅な雰囲気の曲ですが、12分にも及ぶ長尺なのにも拘らず少しも長さを感じさせず、むしろいつまでもこのグルーヴに包まれていたいと思わせるような珠玉のナンバー。こういう曲はある意味スピリチュアル・ジャズと言ってしまっても良いような気さえします。その他の曲では高速モーダル・バップのB-1、Outer Forcesもなかなか良い感じ。要所でエキゾな側面も覗かせつつ全体的にはスマートな演奏で、ゴリゴリのUSハードバップには抵抗のある僕でも無理なく自然に聴けます。ソロのメロディー・ラインが綺麗なところがポイントなのかもしれません。コンガを交えたB-2のCunga Blackは昨今のニュー・ジャズ好きにもアピール出来そうなミッド・テンポのラテン・ジャズ。やや土着的な演奏ではありますが、TFCQのメンバーなんかがカバーしてもおかしくないような曲です。その辺り踏まえ(僕を含めた)、欧州ジャズ以降の今のクラブ世代に向けたブルーノート入門編としても悪くないのではないでしょうか。オリジナルもそれほど高くないですし、CDでも普通に出ててi tunesでも買えます。ご興味のある方は是非どうぞ。
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Seeds / Sahib Shihab Quintet

2007-12-08 | Hard Bop & Modal
米ArgoからリリースされたSummer Dawnや、60年代当時のアウトテイク集であるVogue原盤のCompanionshipと並び称されるシハブの68年作が本作。最も先に挙げた2枚と同様に、実質的にはジジ・カンピのプロデュースによるクラーク=ボラン関連作という意味合いの方が強く、これを純粋にシハブの作品と呼べるかと言うと疑問が残る点もありますが…。ただ、いずれにしろユーロ・ジャズ史上に渾然と輝く名盤であることに疑いはなく、クラーク=ボランのセクステット名義でリリースされたMusic For The Small Hoursと並び、本作も非常に洗練を極めた一枚になっています。物憂げなバリトンの音色がクールなA-2のPeter's Waltzや、ジェラルド・フリシナがブレンド素材に使ったことでも知られるA-1のタイトル曲などA面も相当に良い感じですが、それ以上にシハブがフルートに専念するB面が好き。ほとんどMusic For~の直接の続編と言っても差し支えないような、非常に気品に満ちた演奏が繰り広げられています。まるで朝の爽やかな風に包まれるかのようなB-1のAnother Sambaは、ややフュージョン風味なパーカス音が楽しいソフト・ラテン・ジャズ。どことなくイギリスやフランスのライブラリー音源にも通じる雰囲気もあるので、その辺りのファンの方もきっと気に入ることでしょう。そして続くB-2のMy Kind'A Worldは、佳曲揃いの本作の中でも個人的にアタマ一つ飛び越えて好きな曲。とびきり上品なワルツ・タイムに乗せた、サディのヴァイブとシハブのフルートが非常にツボです。人によっては地味に感じるかもしれませんが、自分の中で一番「らしさ」を感じるのがこのタイプの曲。こういう雰囲気を持っている曲は彼らのレパートリーに沢山ありそうですが、アレンジ面においてここまで柔らかい演奏となると実はあまりないのではないでしょうか。Music For~の収録曲をもう少しだけ大人っぽく演じた感じという表現が一番近いかも。単純に素敵です。と言うわけで是非とも多くの方に聴いてもらいたい作品なのですが、何せ大変な人気盤な上にCD化もされていないので、なかなかに入手が困難な音源でもあります。何を隠そう実は僕もレコードはもってないものでして・・・。こういう作品は是非とも早くCD化して欲しいものですね。
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Viola Enluarada / Marcos Valle

2007-12-04 | Brasil
ボサノバ第三世代マルコス・ヴァーリの68年作。専門外であまり詳しいことは知らないのですが、例の有名な英語詞アルバムSamba '68とほぼ同時期に製作されたアルバムだと思います。マルコス・ヴァーリと言えば活動期間の非常に長いシンガーで、ボサノバやMPBの時代はおろかアシッド・ジャズを通過した現在のクラブ・シーンでも作品を発表している人物ですが、お恥ずかしながら僕はアルバム通して彼の曲をしっかり聴くのはこれが初めて。こっち系の音楽を聴き始めた当初から名前自体は意識していたのですが、数年前に聴いたSamba'68が今ひとつピンと来なかったことと、後のMPB作品の雰囲気に馴染めなかったことが原因で、今まで何となく避けていたアーティストの一人でした。多分、初めて「答え」を聴いたあの頃はまだ若かったんでしょう…(笑) とあるDJさんの紹介で聴いてみる気になったのがつい最近。きっかけはM-6のViagemという曲でした。知らずにプレイを聴いていた僕は、曲の雰囲気から勝手にフレンチ辺りのレアなサントラ音源と思っていたのですが、それがマルコス・ヴァーリの作品だっと知って非常に驚かされたことが印象に残っています。後に曲名が分かり、慌ててアルバム(とりあえずCDですが…)ごと買ってきた次第。とにかく何はなくともこのViagemが最高です。エレガントで華やかなアレンジがヨーロッパ(それも前述の通りフレンチ辺り)を感じさせるナンバーで、もし予備知識なしに聴いたら10人中10人がブラジル産だとは思わない極上のワルツ・ジャズ・ヴォーカル。バックの演奏もホーンのアンサンブルがメインなものの、微かに聞こえるフルートやピアノの音色がまた抜群にオシャレで、つくづく巧いアレンジするなと舌を巻かされます。もちろんマルコスの甘くとろけるような歌声も最高。全てにおいて完璧な一曲ですね。なお、ここではこの曲だけ大きく取り上げましたが、他の曲もエレガントかつメロウな好曲揃いで全体的に良いアルバムです。例えばピアノの音色が物憂げなM-3のMaria Da Favela辺りも個人的にはかなり好き。ちなみにM-1のViola Enluaradaは、あのG/9 Groupもカヴァーしています。先にカヴァーで知っていて後からオリジナルを聴くという楽しみ方もクラブ世代ならではで面白いですね。CDだとすぐ見つかると思いますので、興味のある方はぜひ。
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