At The Living Room Reloaded

忙しい毎日の中で少し足を止めてみる、そんな時間に聴きたい素晴らしい音楽の紹介です。

Nepa / Christian Schwindt Quintet

2008-07-24 | Hard Bop & Modal
以前このブログでも紹介したLP盤で一部にはよく知られたフィンランドのドラマー、クリスチャン・シュウィントによる7インチ盤。LPの方も相当に稀少な一枚ではありますが、こちらは現地のマイナーレーベルであるScandiaからリリースされている盤なので、おそらくLP以上にレアな盤かと思われます。もともとジャケットもなく、EPと言うよりもむしろ単なるシングルと言った方が適切な盤なので、現存数は多分かなり少ないはず。情報がないので詳細は分かりませんが、内容から察するにLPより少し前に録音されたものでしょう。A-SideのNepaは程よくアメリカナイズされたダンサンブルなバップ・ナンバー。彼らのイメージからするとやや意外な曲調ではありますが、キャッチーなテーマがつい癖になる佳作です。日本人よりもヨーロッパのジャズDJなどが好みそうな曲というのが僕の第一印象。ピアニストのペンチ・ヒエトネンの作によるオリジナルですが、ソロの応酬というよりは全体で一丸となって突き進むような演奏で、どことなくファイブ・コーナーズ・クインテットに通じる部分もあるような気もします。決して派手なプレイではないのですが、全体的に手堅くまとまっている感じなので、もしかしたらこういう曲はDJ向きなのかもしれませんね。また、B-SideのKaribaldiは打って変わって、いかにも欧州といった雰囲気の陰鬱な一曲。個人的にはLPでの演奏と同じく、初期のレンデル=カーやステファン・アベリーン辺りの演奏を、もう少しアブストラクト寄りにシフトしたかのような印象を受けました。決して悪くはないと思いますが、好みの分かれそうな雰囲気と言えそうです。ちなみに確認できるところによると、クリスチャン・シュウィントはこのScandiaからもう1枚シングルをリリースしているようで、そちらはエサ・ペスマンのコンボとのスプリット盤になっている模様。一応気にはなっていて探しているのですが全く見つかりません。最も40年以上前に出た無名バンドのシングル盤を探しているのだから、当然と言えば当然なのかもしれませんが…。しかし、それにしてもLP盤の方のここ1~2年の高騰ぶりはもの凄いことになっていますね。僕自身が運良く安価で手に入れたから言うわけではありませんが、6桁出すほどの盤かと考えると正直少し微妙です。たしかにHelsinki At Noonの格好良さは異常ですが、全体の内容を考えると、多めにみてもせいぜい4~5万が妥当な金額かと…。
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Bobby Jaspar Quintet / Same

2008-07-20 | Hard Bop & Modal
ベルギー生まれのテナー/フルート奏者ボビー・ジャスパーが、渡米後の56年に本場アメリカのジャズメンと吹き込んだアルバム。トミー・フラナガンやエルヴィン・ジョーンズの参加もあり、おそらくジャスパーの遺した作品の中でも比較的良く知られた一枚かと思われます。ちなみに名義的にはクインテットとなっているものの、実際には全10曲中8曲がワンホーン・カルテットでの演奏。ただ、ここでのジャスパーは曲によりクラリネット・テナー・フルートと楽器を持ち替えているため、聴いていてさほど単調な印象は受けません。おまけにいずれの楽器においても非常に良く歌うプレイになっていて、派手さはないものの全体的にとても雰囲気の良い1枚に仕上がりを見せています。特に気に入っているのはA-4のTutti Flutti。フラナガンのピアノと上手にハモるフルートが可愛らしいナンバーで、日曜日の午後に良く映える多幸感溢れる小品となっています。どことなく60年代辺りのライブラリー作品にも通じる雰囲気があるような。また、A-1のClarinescapadeは年代を感じさせるクラリネットが逆に良い感じの一曲。これまでクラリネットという楽器は少し抵抗があって敬遠していましたが、ここまでモダンに吹いてくれればこれはこれで全然OKです。テナーの曲で好きなのはA-2のHow Deep Is The Ocean。歌うように吹くテナーとは正しくこのようなプレイを指すのだと言うのでしょう。とにかく演奏技術が抜群に高く、全編において柔らかく温かいプレイを披露しています。高速調で迫るB-1のWee Dot辺りもなかなか。何よりバラエティに富みながらも全体的に巧くまとまった一枚なので、休みの日に部屋で流し聴きするのに最適な作品かと思われます。こういう作品を聴くと何となく心が休まる気がしますしね。ちなみに原盤は仏Columbia。若干リリース年代は違いますが、あのアルヴァニタスのSoul Jazzと同じJazz Stars Seriesのうちの一枚です。ただ、こちらはFresh Soundから再発が出ているのでご安心を。再発ならば比較的労せず見つけることが出来ると思います。クラビーでダンサンブルなジャズに少し疲れたら、たまにはこういう昔ながらの温かい作品を聴いてみるのも一興かと。何も踊れるジャズばかりがジャズではありませんしね。
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Durch Jazz wird diese... / Wolfgang Lauth Quartett

2008-07-16 | Hard Bop & Modal
先日に引き続きジャーマン・ジャズを紹介。ピアニスト兼アレンジャーのウォルフガング・ラス率いるヴァイブ入りカルテットによる57年のEP盤です。リリースはドイツのTelefunkenというレーベルからで、ディスコグラフィーを調べてみたところ、どうやら彼はこのレーベルから何枚かEPと10インチをリリースしている模様。ちなみにウィキペディアにも項目があるくらいの人なので、おそらく本国ではそれなりに有名な人なのだと思います。ただ、日本においての知名度は一部マニアを除きほぼ0に等しいのでしょうが…。個人的にもむしろ注目はラス本人ではなく、ヴィブラフォンでバンドをリードしていくFritz Hartschuh(読み方が分かりません…)の方。クラブ界隈のジャズ事情に精通した方ならご存知かと思いますが、何年か前に、60年代当時テレビ放送用として録音した「危険な関係のブルース」が未発表曲として出回り話題になった人ですね。あちらで聴けたスタイリッシュなヴァイブ捌きは本作でも健在。気品溢れるプレイを存分に発揮しています。軽快にスウィングするジョー・ハックバースのドラムに、上品なヴァイブの音色が乗ったA-1のIch nenne alle frauen babyがまず気持ち良し。続くブルージーなA-2のEs ist Nur Die Liebeもなかなかに良い感じです。同郷と言うこともあり、澤野再発で知られるミヒャエル・ナウラのLP辺りが好きなら、おそらくきっと気に入るのではないでしょうか。ちなみに比較的古めの年代の盤にも関わらず、録音のせいか音がかなりクリアな質感になっている上、演奏自体もとてもモダンでエレガントな内容になっているので、その辺りで抵抗のある方も問題なく聴けると思います。と言うよりも全体的なタッチの細さと相まって、そのプレイはむしろ非常に欧州的。世間一般でイメージされているヨーロピアン・ジャズそのものな音作りと言ってしまって良いでしょう。そして、そんなヨーロッパのエッセンスがギュッと凝縮された曲がB-2のBei dir war es immer so schön。洗練の極みとでも言うべき素晴らしいバップ・ナンバーになっています。ヨーロッパのジャズの雰囲気に惹かれる人には、クラブ/モダン問わず幅広くオススメ出来る一枚。どこかで見かけたら是非試聴してみてください。
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Greensleeves / Das Klaus Weiss Trio

2008-07-12 | Hard Bop & Modal
少し久しぶりに紹介する澤野工房関連盤。現在も活躍するドイツ出身のドラマー、クラウス・ヴァイス(個人的にはウェイスの方が読み方が正しい気もしますが…)による66年のリーダー作品です。これ以前にもクラウス・ドルディンガーのコンボなどに参加していたようですが、リーダー作としてはこれがデビュー作にあたるよう。おそらく欧州産のピアノ・トリオが好きな人にはわりと古くから人気のある作品だと思います。最も全体的に非常に雰囲気の良い一枚なので、人気が出るのは当然なのかもしれませんが…。全10曲中の半数以上がいわゆるトラッド曲で占められているものの、いずれもヴァイスによる巧みなアレンジが施されており、全ての曲が見事なまでにジャズ化されています。ジャケットの絵柄そのままに、全編で陰鬱ながらも耽美的な演奏が展開されており、これぞ正に日本人の好み真っ只中というところでしょうか。ピアノを務めるロブ・フランケンという人の名前は聴いたことありませんでしたが、ライナーを読む限りどうやらキーボーディストとして活躍していた人とのことで、本作のように生ピアノに専念している録音は貴重とのこと。ただ、だからと言って演奏技術が低いかと言うとそんなことは全くなく、むしろ他にアコースティック作品がないのが信じられないくらいピアノ捌きが上手いです。中でも特に素晴らしいのはM-6のDona Dona。あまりジャズで演奏することのない曲だとは思いますが、タイトにまとめたそのアレンジは非常に完成度が高く、このままジャズのスタンダードだと言っても通用するくらいの名演に仕上がっています。心地良く打っているヴァイスのドラミングも小気味良く、フランシー・ボランのトリオ作品が好きな人なども恐らくハマるはず。急ピッチかつスリリングながらメロディアスなピアノ・タッチは、どこかベント・アクセンを思わせる雰囲気もあるような…。弓弾きベースの重厚な雰囲気で始まるM-1のタイトル曲も、イントロが終われば基本的に同系統の演奏。こちらもきっと皆好きでしょう。どちらの曲も元々の曲自体が素晴らしいので、ある意味では反則技と言えなくもないような気がしますが、ここまで格好良くアレンジされたら文句の付け様がありません。オリジナルの独Phillips盤は多少高価ですが、澤野工房からリリースされたCDなら中古でもわりとすぐに見つかると思うので、ご興味があればどうぞ。おじさん方はもう知っていると思うので、どちらかと言うと若いリスナーの方に聴いて貰いたい盤です。
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I Remember Clifford / Art Blakey & The J.M.

2008-07-10 | Hard Bop & Modal
蘭Fontanaレーベルから1960年前後にリリースされたと思わしきジャズ・メッセンジャーズのEP作品。例のモーニンのリリース直後である58年末に渡仏していた時期のFontana音源を集めた編集盤で、実況録音の隠れ名盤である「オリンピアのジャズ・メッセンジャーズ」から2曲、「殺られる」のサントラから1曲が収録された一枚です。とにかく何はなくともA-1のタイトル曲が余りに素晴らし過ぎ。間違いなくジャズ史に残る屈指のバラード名演でしょう。この2年前に亡くなったクリフォード・ブラウンを偲びつつ、次の時代を担うリー・モーガンのためにゴルソンが書いたナンバーで、モーガン自身のブルーノート3作目でも披露されています(こちらも昔から大人気)が、やはり実況録音と言うことでこちらは臨場感が一味違います。演奏はほとんど当時若干20歳のモーガンによる独壇場状態ですが、この終始むせび泣くトランペットの音色に耳を奪われぬものはいないはず。昔ながらの渋めなジャズが好きで、この演奏が嫌いな人は恐らく存在しないでしょう。当時どの程度リリースされたのかは知りませんが、この曲をタイトルに持ってきた上に、独自の素晴らしいジャケット・デザインでEP化した蘭Fontanaレーベルは偉いと思います。また、B-1に収録されたLa Divorcee de Leo Fallは、この時期のメッセンジャーズとしては珍しい優雅なワルツ・ナンバー。前述の通り、元は「殺られる」のサントラに収録されていた曲で、実は以前そちらでもレビューしたことがあるのですが、こちらの盤で聴くと不思議なことに、まるで初めからこの形でリリースされることが必然だったかのように聞こえてくるのだから面白いものです。なお言うまでもなく、演奏しているのは全員本場アメリカの出身者ですが、録音された場所がパリであり、しかも良い意味でファンキーさを感じさせないプレイになっているおかげで、個人的には非常にヨーロッパの雰囲気を感じる一枚。おまけにそんな気分に拍車をかけるのが、この独特の色遣いによるブルーのジャケット。最近あまりレコードを買っていませんが、こういう盤を見かけるとやはり、自然とつい手を伸ばしてしまいます。
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Spiller Leo Mathisen / Jazz Kvintet 60

2008-07-03 | Hard Bop & Modal
昨年末に購入したVitor Assis Brasil以来、少し久々に手を出した高額盤。この辺りの欧州ジャズ・ファンには言わずと知れたデンマークの若獅子ら(当時)による61年の作品です。この盤に見覚えがあると言う時点で既に細かい説明は不要かと思いますが、例の澤野再発で知られるmetronome盤の前に地元で少数枚リリースされたと思わしき盤で、近年続々と再発の進むダニッシュ・ジャズの中でも最後の秘境的EPのうちの一枚ですね。以前紹介したTop JazzのNr.5005とは名実共に対を成す盤で、こちらも例によってTop JazzとDominoの両方からリリースされているようですが、今回僕が購入したのはDomino盤の方。某HPに最近記載されたものと同じく、僕の手元の盤にも5016の文字があるので、おそらくオリジナルはTop Jazzと言うことでほぼ百パーセント間違いないのでしょうが、このレベルになるとどちらがオリジナルかという以前に、そもそも盤自体に出会うことが非常に稀だと思うので、よほど特別なこだわりのない限り、いずれの盤にしろ出会ったら即買いが正解かと思われます。ちなみに内容的にも先のNr.5005と合わせて2枚でLP一枚分と言った趣き。あちらに入っていたSipping At The Bellsのような、彼らのDebut盤を思わせるハイテンポの曲は収録されていないものの、こちらはこちらでブルージーな曲が多数収録されていて別の意味で素敵です。冒頭のニルス・ハスムのテナーが抜群に男前なミッドテンポのA-1、To Be Or Not To Beがまず最高。まるで真夜中の始まりを告げるようなテーマが異常に格好良く、Metronome盤直前の雰囲気がひしひしと伝わってくる名演だと思います。また、収録曲中で唯一「打った」リズムのB-2、I Can Hop - I Can Runは程よく抑揚を効かせたハードバップの小品。クラブ・プレイ云々と言う話になると少し難しいとは思いますが、おそらく最近の若いジャズ・ファンの方でもすぐ気に入るナンバーでしょう。そして、何と言っても絶対の名演はB-1のLong Shadows。例のアクセン作の名曲、More Peaceとはまた若干趣きの絶品バラードです。ダークな雰囲気の中に潜む仄かな暖かさが何より北欧的。全体的にNr.5005に比べて地味ではありますが、個人的にはあちらと合わせて聴くと二倍にも三倍にも味の出てくる一枚だと思います。これも文句なし、エヴァーグリーン認定の一枚でしょう。
コメント (2)
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