At The Living Room Reloaded

忙しい毎日の中で少し足を止めてみる、そんな時間に聴きたい素晴らしい音楽の紹介です。

ロンリー・ガール / 佐東 由梨

2013-12-30 | Japanese AOR
「ECDのロンリーガール」のネタ曲として、一部では非常によく知られた1983年のシングル盤。この前年、雑誌「月刊セブンティーン」企画のミス・セブンティーンコンテストでグランプリを受賞し歌手デビューを果たした佐東由梨による2枚目の作品です。彼女は売上不振からかこの翌年引退してしまうため、結局アルバムを残すことはありませんでしたが、今となってはそのことが逆にコレクターの射幸心を煽る形となり、おまけに日本語ラップ・クラシックのネタという側面も持っているため、中古市場では結構な値段で取引されている一枚。シティポップ・日本語ラップ元ネタ・B級アイドルソングと、それぞれ出自の異なる3つのマニア層からウォントが重なっており、現在ではなかなかの入手困難盤となっています。しかしながら、その稀少性とは裏腹に曲自身の内容としてはそれなりと言ったところ。少し言い方が悪いかもしれませんが普通の歌謡ポップスです。松本隆と筒美京平のゴールデンコンビによる曲なので当然それなりのクォリティは持っていますが、もしもネタ曲という側面がなければこれほど注目されることはなかったでしょう。よく「マーヴィン・ゲイのSexual Healingを引用した…」などという枕で紹介されているところを見かけますが、それはあくまでネタ先である「ECDのロンリーガール」の話。こちらの元祖「ロンリー・ガール」にはその雰囲気はほとんどないので、むしろどこかの中古レコ屋からこの曲を掘ってきた上でSexual Healingとの相似性を見出したトラック製作者こそが、最も評価されるべき人物と思われます。ちなみにB面の「いかないで」はいかにもと言った雰囲気の80'sアイドルポップ。この時代のアニメのオープニングテーマなんかに使われていても違和感のないアップテンポな佳曲に仕上がっています。なお知っている人は当然知っていると思いますが本作を含め彼女のシングル4枚は、ソニー・コロムビア・東芝EMIの大手レコード会社3社による企画シリーズ「アイドル・ミラクル・バイブル」の一枚として9年ほど前にCD化済み。現在はこちらも廃盤になってしまっているため、中古市場でも高騰しているようですが、もしも興味のある方はこちらで探してみてもよいかもしれません。
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Foul Play / 小島 恵理

2013-12-21 | Japanese AOR
先日Light Mellow和モノSpecialに追加掲載されたのをはじめ、ここ最近一部で取り上げられることが増えてきた一枚。近年はボーカルトレーナーとして活躍している美人シンガーソングライター、小島恵理による1984年のシングル盤です。いかにもこの時代のポップス然としたタイトル曲もさることながら、この盤の目玉はB面に収録されたLonely Feelin'。ボブ・スキャッグスによるAORの大名曲Jojoを模したアレンジに小島の切ない歌声が乗るJ-AORの隠れ名曲です。クレジットがないため誰が演奏しているのか分かりませんが、キレのあるホーンとよく跳ねるリズム隊が素晴らしく、まさに都会の夜と言った雰囲気。間宮貴子の「真夜中のジョーク」をもう少し角松敏生やオメガトライブっぽくシフトしたような楽曲になっているため、その辺りのファンならばまず間違いなく好きでしょう。透明感のあるハイトーンで聴かせる小島のヴォーカル・ワークや、彼女自身のペンによる作詞作曲もかなり良い感じです。アルバム未収で当然のことながらCD化もされていないため、今のところ聴くにはこのシングルを探すしかありませんが、ライトメロウな雰囲気が好みなJ-AORファンならば是非とも聴いてみて欲しいと思います。それにしてもこの辺りのマイナーなシングル盤までが取り上げられるようになったところを見ると、和モノ再評価の波もいよいよ来るところまで来たと言うことなのでしょう。いわゆるレアグルーヴ的な再評価の中では、どんなジャンルでも最終的に行き着く先はローカルプレスの自主盤とアルバム未収のマイナーなシングル盤。個人的にはそれもまた楽しいのですが、こうなるとあまりのマニアックさからどうしても一見お断りの閉鎖的な雰囲気になってしまいがちなので、それはそれで何だかなと思う部分もありやや複雑な思いです。。。
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Loving You / 堀江 マミ

2013-12-18 | Japanese AOR
少し久しぶりとなる高額盤紹介。現在ではジャズシンガーやジャズピアニスト、はたまたゲーム音楽のプロデュースなどで活躍する高知出身のミュージシャン、堀江マミ(本名:堀江真美)による1979年のシングル盤です。元々は一部マニアのみに知られた作品でしたが、最近発売されたLight Mellow和モノSpecialに追加掲載されていたので、もしかしたら探している方もいるのではないでしょうか。詳しい情報が少なくどのような経緯でリリースされた作品なのか良く分かりませんが、何だかやたらと豪華な制作陣によって作られた一枚で、A面のタイトル曲が山下達郎、B面のCamouflageが呉田軽穂(=松任谷由実)のそれぞれ書き下ろし曲となっています。おまけにバックで演奏を務めるのは両面とも、山下達郎のバックバンドで有名なドラマーの青山純が在籍していたフュージョン系バンドのプリズム。当然ながらこの布陣で内容的に凡作であるはずはなく、特にA面のタイトル曲はシティポップ屈指の名曲となっています。あいにく達郎本人はそれほど積極的に制作に関わっていたわけではないようですが、聴けば一発でそれと分かる達郎節全開なライトメロウ系のミディアムナンバー。堀江マミ自体の歌唱や竜真知子が書いた歌詞も素晴らしく、Light Mellow和モノ以降のシティポップ好きなら悶絶すること間違いなしです。数ある達郎関連作品の中でもお蔵入りとなってしまったリンダ・キャリエールに次ぐ希少性を誇る作品ではありますが、個人的にはそれを推しても手に入れる価値のある一枚かと思います。間宮貴子や国分友里恵をはじめ名だたるレア盤が再発された今なお未CD化。おまけにアルバム未収でシングルのみの作品なので、何かのきっかけでコンピにでも収録されない限りCD化が望めないというところもまたコレクターの射幸心を煽りますね。空前の和モノブームである今だからこそ聴くべき一枚。興味のある方は是非探してみてください。
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Still There With You / Various Artists

2013-12-15 | Compilation
なんとなく勢いで作ってしまった新作コンピレーション。今回の題材は80年代後半~90年代前半のクラブヒットです。実は何年か前に作って未だに気に入っているアシッドジャズ系のコンピがあるのですが、その続編と言ったところでしょうか。いわゆるUKソウル的な楽曲が中心ではありますが、前回よりも収録曲に幅を持たせているので、もう少しポップ寄りな仕上がりになったと思います。とりあえず以下トラックリスト。

1. Jour et nuit / Mondo Grosso
2. Joy And Heartbreak (The Raid mix) / Movement 98 feat. Carrol Thompson
3. Love is the place to be / Workshy
4. Digging Your Scene / The Blow Monkeys
5. The Present / The Max feat. Xavier
6. Another Lover / The Pasadenas
7. Dream Come True / The Brand New Heavies
8. Fall Into My Love / Black Box
9. Hang On In There Baby (After Hours Mix) / Curiosity
10. We’ve Gotta Find A Way Back To Love / Bonnie Pink
11. Wherever You Go (Femifem Radio Version) / Sydney Youngblood
12. The Whistle Song (Sound Factory 12inch Mix) / Frankie Knuckles
13. Scattered Dreams (Bah-Dah-Ee-Dah Mix) / 280 West
14. He Loves You (Jazz Mix) / Paprika Soul
15. What The Child Needs / Terry Ronald
16. Breakout / Swing Out Sister
17. Positivity / Incognito

この辺りのジャンルはヒップホップやR&B系DJに好まれることが多いですが、彼らがプレイするとどうしてもグラウンドビート寄りな曲ばかりになってしまうため、もう少しフリーソウル寄りな仕上がりにしたつもり。個人的には今までずっとコンピレーションに選曲したかったけれど、タイミングがなく収録できなかったナンバーを多数収録できたのでなかなかに満足のいく仕上がりになりました。このブログの読者にどれだけいるか分かりませんが、1990年代にサバービアで育ってきた人にとっては否が応にも胸が熱くなる選曲かと。いつも通りmixcloudへのリンクを貼り付けておくので、良ければ是非聴いてみてください。

Still There With You
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Roma / Terry Ronald

2013-12-14 | Acid Jazz~UK Soul
いまいち取り上げられることが少ない1991年のUK作品。この人の作品と言えば、以前Diggin' Iceのミックステープに収録されたWhat The Child Needsというシングル・オンリーのナンバーが比較的よく知られていますが、本作はその少し前にリリースされたLPです。What The~のイメージが強いからかUKソウルにカテゴライズされているのをたまに見かけますが、本作に関して言うならば実際の内容はもう少しポップ。ダニー・ウィルソンやアンディ・ポーラックあたりのAOR系ネオアコに、当時流行っていたアシッドジャズのエッセンスを加えたような作風になっており、全体的にとても耳あたりの良い一枚に仕上がっています。何と言っても最大の特徴はその歌声。本作収録時に彼が幾つだったかは分かりませんが、このジャケット写真からはちょっと想像が付かない少年のような美声が気持ち良いです。当時シングルでもリリースされていたのは、A-1のChains Of LoveとA-2のCalm The Rage。どちらもミディアム~アップの非常に爽やかなポップナンバーで、休日の朝に聴くのにぴったりな名曲です。どこかスタイル・カウンシルやジャズ・デフェクターズあたりを思わせるB-1のLive Foreverや、こちらもシングルカットされたバラードナンバーのA-3、One More Dollarあたりもなかなかの完成度。ヒップホップ系から流れてきたようなUKソウルファンの求める音とは少し違うと思いますが、スタカンやレスポンド・レーベルの諸作が好みの方には最適な一枚かと思います。ちなみに1991年という比較的新しめのリリースながらCD/LP双方でリリースされているため、アナログ派の人は安心してLPを購入しましょう。ポップスおたく向けの作品としてはかなりのクォリティを持った作品です。お勧め盤。
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City / 早川 英梨

2013-12-04 | Japanese AOR
最近タワレコ限定で再発CDも発売された1981年のアルバム。アーバンリゾート系J-AORで知られる二名敦子がデビュー前に別名義で発表していた一枚です。本作リリースの2年後に改名し再デビューへと至ったことから考えてみてもセールス的にはまったく振るわなかったものと思われますが、アルバム自体は無名の新人作品としてはかなり力を入れて制作されたようで、作家陣は来生たかおやケーシー・ラーキンを始めシティポップス系リスナーにとってはお馴染みな名前がずらり。あいにく全体的に歌謡ポップ路線でまとめられているため、後のリゾート路線で感じられるようなライトメロウ要素は薄めですが、これはこれでなかなかの佳作と呼べるでしょう。J-AOR的に注目なのは林哲司が作曲を務めた2曲。特によく取り上げられるのはB-2の「ドラマティック グッドナイト」で、紀の国屋バンドに通じるミディアムアップなライトメロウ系楽曲となっています。J-AORというよりはシティポップスと表現した方がしっくりくる、どこか懐かしさを感じるナンバー。真夜中のドライブに良く似合う素敵な一曲です。ただ、これ以上に素晴らしいのがA-1の「メタモル シティ」。こちらはグッとテンポを落とした横揺れ系のミディアムで、間宮貴子あたりを思わせるエレピとコード進行が印象的な都会派J-AORに仕上がっています。個人的には、本作はこの一曲のためにあると言ってしまっても良いと思っています。コンチネンタルからリリースされているオリジナルのLPはそれなりにレアなため、値段はともかく探すと苦労するかもしれませんが、再発CDならば簡単に手に入るのでまずはそちらで聴いてみてはいかがでしょうか。それにしてもいくらタワレコ限定とは言え、こんなマニアックな作品まで再発されてしまうとは。。。どんな方が購入されているかは分かりませんが、そろそろこの辺りの和モノ再発バブルもネタ切れ感があるので、もしかしたら終わりが近いのかもしれませんね。
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Back To The Rock! / Various Artists

2013-12-02 | CCM
カナダのレリジャス系レーベルと思われるMaranatha! Musicから1981年にリリースされたコンピレーション。発売に至る経緯については良く分かりませんが、どうやらMRC(Ministy Resource Center)なるレーベルからの曲を中心にコンパイルされた作品のようです。以前Creole Stream Musicから再発され話題となったハワイアンAORのロブ・メールのLPがリリース元が実はこのMRCで、本作にもLPのリード曲であるHouse On The RockというナンバーがB-4に収録されていることが知られているため、その筋では比較的有名な一枚。他にはライトメロウ系CCMで一部マニアに知られるTamarackのアルバムから2曲収録されており、こちらの知名度もそこそこなので、ほとんどの方はこのいずれかに惹かれて手にするものと思われます。ただ、実はこれら以外にも見逃せないナンバーが二つあり、それがB-1のGotta Keep Loving YouとB-3のChild Of The Father。前者はBen Mendoza(ベン・メンドーザ)なるシンガー・ソングライターによる、おそらく本作エクスクルーシブのブルーアイドソウル系CCMナンバー。さりげなくブルース・ヒバードとケリー・ウィラードがコーラスで参加していることもあり、同時代に製作されたコイノニア周辺あたりのCCMやエリック・タッグの2ndが好きな方はまず間違いなくハマる曲かと思われます。また後者はMike And Von RogersなるグループによるPre-AORナンバー。きらきらとしたギターの音色と美しいコーラスが印象的な名曲で、以前ここで紹介した自作のコンピレーションにも収録しました。こちらはエクスクルーシブではなく、きちんとLPでリリースもされているようなので機会があれば是非オリジナルLPを聴いてみたいものです。ちなみに本作、日本で見かけることは少ないですが北米では比較的流通しているようで、海外から取り寄せれば入手は容易です。またアメリカ版のitunesではダウンロード販売もしているため、LPが聴ける環境にない方はそちらで聴いてみても良いかもしれません。ジャケットは何だか残念な一枚ですが、なかなかにコストパフォーマンスが高くお勧めのアルバムです。
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Belief / The Questions

2013-12-01 | Neo Acoustic
1980年代のモータウンを目指しポール・ウェラーが設立したレスポンド。セールスが振るわなかったため、レーベルは1981~1985年の4年間という非常に短い期間で活動に幕を閉じましたが、その志向していた音楽性は高く1990年代の渋谷系ムーヴメントの中で再評価され、一連の作品は今ではネオアコの文脈で語られています。本作はそんなレスポンドの看板アーティスト、クエスチョンズが1984年にリリースしたLP。その出自やスタイルからスタイル・カウンシルの弟的バンドと呼ばれることが多いですが、実際にはもう少しストレートにヤングソウルをやっており、これはこれでスタカンとは異なるオリジナリティーに溢れる一枚となっています。いわゆるUKソウルを先取りしたかのようなA-1のタイトル曲、後のアシッドジャズを思わせる揺れるベースが気持ちいいA-2のAll the Time in the World、クレプスキュールあたりの雰囲気に近いネオアコ的なA-3のThe Bottom Lineと掴みは完璧。さらに続くA-4のMonth of SundaysはスタカンのHeadstart For Happinessと良く似た瑞々しく弾けるヤングソウルとなっており、いわゆるポップスおたくの人ならばここまでの流れでやられること間違いなしでしょう。また個人的に気に入っているのはB-1のTuesday Sunshine。アニマル・ナイトライフのNative Boyと並ぶお洒落スウィンギンネオアコの最高峰です。高速で刻まれる8/12拍子とどこか懐かしいコード進行がいかにも渋谷系。当時小山田圭吾のトラットリアから再発されたのも頷けます。ちなみにLPだと比較的よく見つかりますが、CDではこのトラットリア再発のみでしかリリースされていないため、気になる人は若干根気良く探す必要有り。amazonでは異常な値段が付いていますが、町の中古屋で見つければ普通の値段で買えるので頑張って探してみてください。
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