またまた更新が滞ってしまった結果、お久しぶりとなってしまいすいません。本日紹介するのは鹿児島に本社を置く業務用食品卸会社「西原商会」の製作による、自社の社歌「世界、西原商会の世界!」を収めた昨年リリースのシングル盤。一般流通がないノベルティ作品のため、普通の人が作品を手に入れようとすると時折オークションや中古市場に流れてくるものを気長に待つしかないわけですが、これが単なるノベルティの枠を超えた、非常にクォリティ高い一枚になっているので困りものです。知っている人は知っていると思いますが、この社歌を手掛けているのはクレイジーケンバンドの面々。元々は2014年発売のSpark Plugというアルバム中の一曲という形でリリースされており、高速の8ビートに爽快なホーンとメロウな歌が乗る好ナンバー。ピチカートファイブの「夜をぶっとばせ」あたりをルーツとする、CKBお得意のパターンの一つです。本作はそんなオリジナルから雰囲気がガラっと変わり、歌い手・アレンジともに異なる3バージョンが収録された一枚。このうち野宮真貴さんが歌うM-2は、自身の「野宮真貴、ヴァカンス渋谷系を歌う。 」収録でオフィシャル・リリースもされたエレガントなボサ風ポップス。太宰百合さんの優しいピアノと野宮さんのキュートな声がマッチした佳曲です。また日系ブラジル人3世の女性歌手Keissy Costaが歌うM-3は、もう少しストレートにボサノバ。ポルトガル語(?)で書き直された歌詞の雰囲気とも相まって、なんだかとてもカフェっぽいアレンジとなっており、こちらは実際のCMにも使用されているようです。そして本作最大の注目は、なんと言っても須永辰緒さんがCKBバージョンのリミックスを手掛けたM-1。オリジナルの持つ雰囲気とスピード感はそのままに、2管のクインテットによる生演奏でオケをそっくり録り直すという、得意の手法によるリミックスですが、これがいつも以上に大ハマリ。以前手がけた「あ、やるときゃやらなきゃダメなのよ。」と並び、知らない人が聴いたらこっちがオリジナルと言われても全く違和感ない、会心の仕上がりとなっています。こんなのノベルティ・オンリーで出したらダメでしょう(笑)この一曲だけのためにでも買う価値ありだと思うので、気になる人は是非市場でまったく見かけなくなる前に、探してみてください。ちなみにCDと一緒に少数ながら7インチも作ったみたいです。ノベルティなのに本気出しすぎ。。。
なんとなくネットを見ていて発売を知ったシングル盤。2012年に「謎の大学生バンド」という触れ込みでリリースされたCDが一部で話題を呼んだ、流線形のクニモンド瀧口氏プロデュースによる匿名バンド"あっぷるぱい"がこの8月に7インチ・ヴァイナル・オンリーでリリースした一枚です。彼らは2012年のCDアルバムを発売した後は、翌年末に配信のみで"ココナツ・ホリデイ"というしただけで、それ以外に新作の発表はしていなかったので、今回の作品は約5年ぶりの作品ということになります。6年前のアルバムに収録された曲は、思い切りシュガーベイブによるシティポップ黎明期の音作りを意識というかトレースしたものでしたが、今回の新曲はそこから少し時代が下って1980年前後の生音シティポップ最盛期サウンドを真似たもの、要は流線形の1stと同様の質感になっており、個人的には非常に好み。00年代以降のシティポップ再評価におけるエポック・メイキングとなった"3号線"や"東京コースター"の流れを組む、軽やかかつノスタルジックな王道メロウ生音シティポップに仕上がっています。洋楽に明るい方には、セルメンあたりのA&M〜CTI系サウンドというと分かりやすいかも。この手の音楽を好む方なら、おそらく雰囲気が好きな人は多いのではないでしょうか。流線形の1stが2003年なので、個人的には、待ち侘びたサウンドメイクが15年越しでようやく戻ってきたという思い。最初の出会いがあまりに衝撃的だったので、それ以降もクニモンド瀧口さん関連の曲はだいたいチェックしていますが、個人的にはどれもイマイチのれなかったため、久しぶりのヒットです。7インチの新譜というフォーマットはあまり好きではなく、実は気に入らない部分もあるのですが、今のところCDのリリースはないようなので買ってしまいました。なお、本作のリリース背景などを色々と調べていたら、11月にサノトモミさんによるこちらも6年ぶりの新譜が出ることも発覚。そちらも併せて楽しみにしておこうと思います。さて、今回のあっぷるぱい。プロデューサーである瀧口氏が立ち上げたレーベルの第一弾作品という位置づけでしたが、果たして次回作はあるのでしょうか。シュガーベイブの雰囲気に寄せていた前作はともかく、ここまで自身の趣味丸出しの音作りをするならば、何も匿名バンド名義にしなくても良いような気がしますが・・・。
久しぶりの音盤紹介は、この夏話題となった細田守監督のアニメ「未来のミライ」の主題歌となるこの作品。僕を含めた音楽好きの方々の間ではアニメ以上に大きな話題となったのが本作ではないでしょうか。アニメのオープニング曲であるM-1の「ミライのテーマ」、そして主題歌であるM-2の「うたのきしゃ」ともに生バンド主体の演奏をバックに従えた楽曲となっており、まさに往年の達郎サウンドそのもの。For YouやPocket Musicあたりの80年代前半作品の質感を、2018年の気分で再構築した雰囲気となっているため、あの時代のシティポップ~AORサウンドが好きな方にはたまらない内容かと思います。個人的にも達郎さんの現行作品としては、2002年にリリースされたLOVE GOES ON(その瞳は女神 (Goddess))以来の大ヒット。それ以降の作品にも好きなものは多少あるものの、近年のバラード主体の作風は正直あまり好みではないので、新曲でストレートな達郎サウンドにノックアウトされるのは15年以上ぶり。あまりの完成度の高さに感銘して、思わず衝動的に10年ほど前に選曲したタツロー・ベストの続編を作ってしまいました(笑) 前回の選曲は70年代のRCA/Air時代の楽曲が中心でしたが、今回は80年代以降のMoon期にスポットを当てており、70年代とは一味違う30代以降の円熟した達郎サウンドが楽しめる仕上がりとなっています。諸事情あるのでここには載せませんが、いつもの通りアップしているので気になる方は聴いてみてください。SonoriteやRay Of Hopeの雰囲気は個人的にイマイチ乗り切れないので、願わくば次回のアルバムはこの路線で制作頂けると嬉しいです。ちなみにシングルのカップリングや毎年のクリスマスプレゼントで届けられるライブ音源の編集盤については別企画で進行希望。特に難波弘之(key)、伊藤広規(G)との3人体制によるアコースティック・ライブ音源については抜群の出来なので、未発表もの含めオフィシャルCD化してほしいものです。いずれにしろ本作が往年のファンにとっての名作であることは疑いないので、まだ未聴で興味のある方はぜひご視聴をば。素敵な達郎サウンドにやられること間違いなしです。
どうも、皆様お久しぶりです。最近ほとんど音源を買っていないため、このブログもすっかり開店休業状態なのですが、久しぶりに気になるシンガーソングライターさんと出会うことが出来たので、たまにはCDレビューでもと思い、書いてみることにしました。彼女の名前は辻林美穂さん。恥ずかしながら全く存じ上げなかったのですが、少し興味がわいて調べてみたら、この手の自主系ミュージシャン界隈では比較的知られた方のようですね。彼女は先日リリースされた星野みちるさんのアルバム『黄道十二宮』にONE-TIME LOVEという楽曲を提供しており、僕はこの曲を聴いて彼女のことを知ったのですが、まずこの曲が凄すぎ。マイクロスターの佐藤さんや元シンバルスの沖井礼二さん等々、錚々たる勢作陣が作った楽曲を抑え、作中ベストとなるグルーヴィーなミディアム・シティポップに仕上げてきました。あまりのクォリティの高さに驚かされ、itunesでも配信されている去年リリースされた本人のデビュー作を聴いてみたところ、人並み外れているのは楽曲製作センスのみではないことを知り再び仰天。声がね…、もう最高なんです。ここまでどんぴしゃで自分好みな声に出会うのは、流線形の1stで存在を知りもの凄い衝撃を受けたサノトモミさん以来。もう一瞬で大ファンになってしまいました。本作はそんな彼女がソロ活動として平行して昨年から取り組んでいるバンドの2ndシングル。ソロのときと比較してより明確にシティポップスを志向しており、聴いていて非常に気持ちいいです。バンドでの生音演奏なので当たり前ですが、きちんとアコースティックな質感を保っているところも好感が持てますね。表題曲もさることながら、個人的にはカップリングM-2の「ナイーブとスイート」がヒット。このシングル自体は一般流通に乗っておらず、メンバーによる手売り状態のようですが、これはもっと広く知られるべき。数年前の和モノAORブーム以降、猫も杓子もシティポップ・リバイバル状態で正直辟易していたのですが、久しぶりに良い巡り合いが出来ました。興味のある方は是非是非聴いてみてください。文中にも書きましたが流線形の1stが好きな方ならばっちりだと思います。
なんとなく存在は知っていたものの今までスルーしていた一枚。サウンドプロデューサーの佐藤清喜とボーカルの飯泉裕子によるユニット、microstar(マイクロスター)がVividからリリースした7インチ+CD-R盤です。佐藤氏と言えば、最近は星野みちるの一連のソロ・プロジェクトの共同プロデューサーとしての顔の方が良く知られていますが、本作はそんな星野みちる関連作品のプロデュースが本格化する少し前の2012年に吹き込まれた作品です。なんと言ってもA面のタイトル曲が最高。サブカル界隈でスマッシュ・ヒットした星野みちるの「私はシェディー 」のプロトタイプとも言える、シティポップmeetsテクノポップな極上の一曲です。2003年にクニモンド瀧口氏の流線形が「東京コースター」で話題をさらって以降、この手の80年代を意識した夜感ただようライトメロウな女性ヴォーカルのミディアム・ナンバーは多数作られていますが、本作はそんな中でも頭一つ飛びぬけた出来。なんというか、ノスタルジックな雰囲気とポップさ加減のバランス感覚が素晴らしいです。飯泉裕子さんの大人っぽいアルトの歌声もまた良い感じ。ちなみに7インチ+CD-Rという形態のみでの限定リリースだったため、現在ではやや手に入りにくいですが、件のタイトル曲のみであれば金澤さんが監修するコンピ・シリーズLight MellowのVivid編にも収録済。ご覧のとおりジャケットの出来も非常に良いので、個人的にはオリジナル盤で所持することをお勧めしますが、音源のみで良いというのであればコンピを買うのもありかもしれません。ちなみにカップリングのHappy Christmas To You From MeはLynsey De Paul(リンジー・ディ・ポール)とBarry Blue(バリー・ブルー)による1975年のクリスマス・ソングのソフトロックっぽいカバーで、こちらもなかなか良い感じです。なお、このmicrostar、現在この夏リリース予定のアルバムを鋭意製作中とのこと。この間リリースされた先行シングルのTiny Sparkもなかなかの出来だったので、アルバムの方も楽しみです。
また更新間隔あいてしまい申し訳ありません。約2ヶ月前のフランキー・ナックルズから久しぶりの作品レビューがこんな作品で何だか恐縮ですが、今回紹介するのは大阪市堀江発のローカル(?)・アイドル、Especia(エスペシア)が2013年にインディーズからリリースした作品。どことなく鈴木英人やわたせせいぞうのイラストを思わせる、アイドル作品らしからぬジャケット・ワークからピンと来る人もいるかもしれませんが、80年代シティポップス色の強い一枚です。彼女たち自身のことは良く分かりませんが、流線形や一十三十一、土岐麻子あたりが志向しているシティポップス・リヴァイヴァル系の音作りをそのままアイドル業界に持ち込んだグループと言えば分かる人には分かるでしょうか。なんでも横山佑輝という方を中心としたSchtein & Longerなるチームがプロデュースを手掛けているようです。本作は彼女たちの2作目のEPにあたり、ジャケットと一部の収録曲が異なるAMARGA-Noche-という作品と対になる一枚。売り方がいかにもなA○B商法で気に入りませんが、悔しいかな各々の盤オンリーな楽曲がそれぞれ素晴らしく、特にこちらのTardeのみに収録されたM-7のオレンジ・ファストレーンは、メジャーセブンスのコード全開でポップに弾ける超名曲になっています。Isley Brothersあたりのポップソウルが好きな人はきっと一発でやられるはず。ちなみに共通収録曲ではM-2のトワイライト・パームビーチが良い感じ。最近メジャーから1stフルアルバムもリリースしていますが、いずれの作品にもコンスタントに佳曲が収録されています。もっとも素晴らしいのは音源のみで、Youtube等にアップされているライブ・パフォーマンスは正直学芸会レベル(ファンの方、ごめんなさい!)。きっとただ作られたものを歌わされているだけで、曲そのものへの音楽的な思い入れや関心はあまりないのでしょう。最もこれは別に彼女たちに限った話ではなく、最近のアイドル楽曲全般に感じることですが…。楽曲的にはどれも完全に製作者(楽曲提供者や俗に言う運営サイド)の自己満足なのでしょうが、彼らも今の時代自分が好きなテイストの曲を作りつつ食べて行こうとしたら結局アイドル・ブームに乗じるしかないわけで、何だか音楽業界全体がひどく歪な方向に向かっていますね。なんだか書いてるうちに少し暗い話になってしまいましたが、楽曲自体に罪はなく素直にいい曲なので気になる人は要チェック。少なくとも僕の普段紹介しているような曲が好きな方なら満足頂けると思います。
特に前もって注目していたわけではなく、たまたま入ったレコード屋で「こんなの出てたんだ」と思って買った新譜。元ムーン・ドッグスのイクラちゃんこと井倉光一氏が自身のバンドであるファンキースタイルを率いて録音したシングル盤です。知っている人には有名な話だと思いますが、このムーン・ドッグス、大半の曲を手掛けていたのが職業作曲家時代の横山剣。井倉氏自身も2005年にイクラ&ファンキースタイル名義で当時のセルフカバー作品を発表していますが、曲によってはボーカル以外ほとんどCKBそのものと言った趣になっています。本作もA面はクレイジーケンバンドのカバー、B面は横山剣作詞作曲によるムーンドッグス時代のお蔵入り曲ということでCKB色はそれなりに強め。しかしながらボーカルの雰囲気は剣さんとは少し違うので、これはこれでなかなか良い感じの仕上がりです。芳野藤丸のソロ作品あたりに近い質感かなというのが個人的な印象。このブログをきっかけに自分でもその片棒の数%を担いだとはいえ、最近のJ-AOR~シティポップス再評価熱のあまりの高まりには正直少し辟易しているのですが、久しぶりに面白い作品に出会えたかなと思っています。ただリリース形態には少し疑問。Vividからのリリースと言うことで、星野みちるの一連の作品と同じく7インチ+CDのパッケージという体裁を取っているのですが、正直あまり嬉しい形式ではないというのが本音です。と言うか数年前流行ったモダンソウルのドーナツ盤再発がマニア層にウケて以降、J-AORやJ-HIPHOPも新譜/再発問わず、やたらと7インチで商品展開されるようになりましたが、正直どこまで一般リスナーに好意的に受け止められているのか分かりません。音楽業界が先細りしているのは揺るぎのない事実ですが、そこに投じるべき一石としては悪手のような気がします。こんなことをしてもコア層と一般層の間に開きが生じるだけ。本当に業界の未来を憂うのであれば、一般層を取り込むもっと別の方法を考えるべきだと思うのは僕だけでしょうか。
知っている人は知っている今年度アイドル&サブカル業界における最注目盤。星野みちるとスクーターズによるライブ会場限定販売の7インチ盤です。作品自体のレビューを書く前にまず一言、なんというか本当に商売が上手いですね。本家スクーターズを迎えての表題曲カバーだけでも充分インパクトあるのに、裏面には古巣AKB48による特大ヒット、恋するフォーチュンクッキーのカバーを持ってきた挙句、それを一般発売なしでライブ会場限定でリリースするその手腕は見事なもの。「アイドル」として彼女を追いかけている人たちは当然もう何枚も買っているのでしょうが、この売り方だと「サブカル」として彼女に注目している僕みたいな人種もレコードを買うため必然的にライブ会場へ向かうことになるわけで、そのセールス手法に素直に脱帽です。さて、気になる楽曲自体の完成度ですが、A面の「東京ディスコナイト」は文句の付けようなし。僕らくらいの世代だとスクーターズのオリジナルよりも小西康晴さんが絡んだキョンキョンのカバーの方が馴染み深いですが、そのいずれにも勝るとも劣らないクォリティを秘めており、いわゆるモータウン・サウンドが好きなら確実にハマることでしょう。ある意味オリジナル以上にモッズでヒップな雰囲気と、それに似合わぬみちるヴォイスのギャップが抜群に今っぽいです。逆にB面の「恋するフォーチュンクッキー」は今一つ。決して悪いわけではないのですが、オリジナルの完成度があまりに高過ぎたこともあり、残念ながらそれを超えるほどのカバーにはなっていないです。スクーターズを呼んでいる以上ある意味仕方ないのですが、贅沢を言うならばこっちはモッズではなく、正当派の現代風モータウン・サウンドでリコンストラクトしてほしかったというのが正直な気持ち。ちなみに某ネットオークションではライブ会場限定リリースというセールス形態から異常な値段で取引されていますが、実際にはかなりの枚数が製作されていると思われ作品自体の稀少価値はそれほど高いわけではないのでご用心を。ライブ会場にさえ足を運べば今でも正規の値段で普通に手に入れることが出来るので、悪質な転売ヤーに騙されてはいけません。
どうも皆さん、あけましておめでとうございます。紹介するようなネタも徐々に少なくなってきているため、以前ほど頻繁に更新出来ないかもしれませんが、今年もどうか一つ宜しくお願い致します。さてさて新年一発目に紹介するのは半年ほど前にも少し触れた、ピチカート・ファイヴによる1988年の2ndアルバム。マニアの方は掲載ジャケットを見て頂けると分かると思いますが、CDとは規格番号が違う当時少数のみリリースされたLP盤です。あの時は「出会ったことない」と書きましたが、某ユ○オンの年始セールで売りに出されるとの情報を前日たまたま事前察知したので正月早々サルベージしに行きました。知っている人は分かると思いますが、このLPはとにかく中古市場に流通する機会が極端に少なく、作品自体の知名度の割にシティポップス~J-AOR界隈では最難関の入手難易度を誇る一枚。当時2000枚ほど製作されたようなので、いわゆる自主盤などに比べれば流通量が多いと思うのですが、おそらく現在所有しているオーナーのほとんどが重度のピチカートマニアのため、滅多なことでは手放さないのでしょう。内容的にはCDとまったく同じで以前にもレビューしているため深くは触れませんが、田島=小西=高浪による『聖三角形』が見事にハマった名盤中の名盤。人によって感じ方は違うと思いますが、個人的にははっぴいえんどの「風街ろまん」、シュガーベイブの「SONGS」と肩を並べることが出来る数少ない日本語ポップスの歴史的名盤の一つだと思っています。僕のようにわざわざ苦労してまでLPを手に入れずともCDなら普通に買えるので、もし聴いたことないという人は是非。最近のリスナーだとこの辺りはピンと来ないかもしれませんが、ちょうどフリーソウルとライトメロウの両方からOriginal Loveのコンピが出たタイミングでもあることだし、聴き返してみても罰は当たらないと思います。
一部の耳が肥えた邦楽リスナーの間で、ここ最近支持を集める女性シンガー・ソングライターが彼女。どうやらAKB48の初期メンバーのようですが、一気に注目を浴びることになったきっかけはそうした出自に由来することでなく、昨年リリースした自身名義での1stアルバムに収録されていた「私はシェディー」という曲です。Rah BandのClouds Across The Moonを下敷きにした(と言うよりほぼ忠実に再現した)この曲の完成度が非常に高く、おまけにDJのはせはじむとマイクロスターの佐藤清喜が全面的に製作に関わっているという事実も加わり、彼女の名前は界隈で一気に知れ渡ることに。その彼女が昨年1枚シングルを切った後、次なるプロジェクトとして掲げたのが今回紹介盤も含む4ヶ月連続のシングル・リリースです。僕自身、昨年のアルバムが話題になった時点で一応ある程度の注目はしていたのですが、今回の4ヶ月連続シングルでいよいよ本格的に聴かなければいけないなというのが正直な印象。1stアルバム時点では件の「私はシェディー」含め全体的にエレポップ~テクノポップ路線だったため、個人的には趣味ど真ん中からは外れていたのですが、今回のシングル群はいずれも往年の渋谷系サウンドとなっており、渋谷系OB的にこれは無視できないわけです。巷ではシティポップスとかナイアガラとかフィリー・ソウル風歌謡とか色々言われていますが、要は全盛期のオザケン・サウンドそのもの。あの頃オザケンにハマっていた人なら懐かしくなること間違いなしでしょう。4枚の中でもっともポップ志向が高く一般受け良さそうなので、ここではこのシングルを掲載しましたが、他の3枚もそれぞれクォリティが高いためまだ聴いていないという人は要チェック。来週これらシングル曲を中心としたアルバムがリリースされますが、実はアルバムに収録されないカップリング曲にも名曲が隠れているため、気になる人はシングルを探しましょう。本作とこの前にリリースされた「雨の中のドリーマー」に関しては、80年代女性アイドル風なジャケットのアート・ワークも素晴らしく、敢えてアナログで所有する価値ある一枚かと思います。