At The Living Room Reloaded

忙しい毎日の中で少し足を止めてみる、そんな時間に聴きたい素晴らしい音楽の紹介です。

The New York Scene / George Wallington Quintet

2008-06-22 | Hard Bop & Modal
ビバップ期から活躍していた数少ない白人ピアニストの一人、ジョージ・ウォーリントンによる57年のリーダー作。詳しいことは分かりませんが、何でも30年ほど前の「幻の名盤」ブームの頃に話題になった作品のうちの一枚だそうで、当時は非常に貴重視されていた作品のようです。内容の方はと言うと、同じく白人のアルト奏者フィル・ウッズと、後に大学教授にまで登り詰めるドナルド・バードの2人をフロントに従えたハードバップ・セッション。一般に本場アメリカのハードバップと言うと黒く荒々しいブローイング・セッションを連想しがちですが、上記のような白黒混合のメンバー構成になっているせいか、いわゆるブルーノートの諸作などとは異なる風味の洗練された演奏が繰り広げられていて、わりとスッキリした味わいの一枚となっています。昔からのジャズ・ファンの方には異論がある人もいらっしゃると思いますが、真っ黒な演奏が苦手な僕としてはかなり好きなタイプの演奏。スウィング・ジャーナル誌別冊の「ハードバップ熱血事典」では酷評されていたウォーリントンの演奏も個人的にはなかなかだと思いますし、この盤に限って言うならば何よりフロント2人の相性が抜群です。収録曲単位で言うならば、気になるのはやはり冒頭A-1のIn Salah。ニック・スタビュラスによるタイトなドラミングの上で展開される急速調のハードバップで、エキゾチックな中に哀愁を潜ませたテーマと、歌心溢れるフロント2人のソロが素晴らしいです。どことなくダスコ・ゴイコヴィッチ等の作風に通じるところもあるので、その辺りのファンは聴いてみると良いかもしれません。あまりメジャーな部類ではないと思いますが、こういう曲はクラブで大音量でかけたら良く映えそうですね。また、その他の曲ではA-2のUp Tonight CreekやB-3のSol's Ollieもなかなか。ファンキーなB-2の'Dis Mornin'は残念ながら少し苦手ですが、その他の曲は全体的にかなり良い感じです。ちなみにプレスティッジの廉価レーベルNew Jazzからのリリースと言うことで、オリジナルはそこそこレアかつ高価だと思われますが、国内のリイシュー盤であれば安価に手に入れることが出来るのでご安心を。僕と同じくアメリカのハードバップが苦手だという人にこそ聴いてもらいたい一枚。隠れた名盤だと思います。
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Ballads / John Coltrane Quartet

2008-06-20 | Hard Bop & Modal
昔からのジャズ・ファンならばきっと誰もが知っているであろう本作は、偉大なるジョン・コルトレーンによる62年の傑作バラード集。既に評価が確立された余りに有名すぎる一枚のため、今さら僕のような人間がリコメンしても良いものか少し悩んだのですが、最近とても良く聴いているレコードなので、やはり一度自分なりにきちんとした形で紹介しておきたいと思います。さて、クラブ界隈ではいわゆるスピリチュアル・ジャズの開祖のように言われることが多い彼。僕と同じようにクラブ経由でジャズに入った若いリスナーの人たちには、以前ジャズ・ネクスト・スタンダード誌にてそうした扱いで大きく取り上げられていたことが強く印象に残っている方も多いと思います。確かに彼の作品には代表作「至上の愛」をはじめ、そうした精神の高みに上り詰めるようなプレイが多いのは紛れもない事実でしょう。ただ、個人的にそう言った演奏が耳に馴染まず深く聴きこんで来なかったこともあり、僕としてはコルトレーンと言えばどちらかと言うと、非常に優しく綺麗なメロディーを奏でるサキソニストという印象の方が強かったりします。そして、そんな彼の柔らかいプレイが思う存分に堪能できるのが本作。とにかく冒頭A-1のSay It(Over And Over Again)から、ラストを飾るB-4のNancy(With The Laughing Face)まで、全ての曲が溜め息の出るほど繊細で美しいメロディーで綴られた名盤中の名盤です。少し照明を暗くした部屋で、真夜中に一人酔い痴れるのに最高の一枚。もちろん片手には忘れずにアルコールのご用意を。ちなみにご存知の通り米Impulseが原盤ですが、ここに掲載した英EMI(His Master's Voice)盤をモノラル針で聴くとトリップ度3割増です。ほぼオリジナルと同じデザインながら、左肩に付いたニッパーのロゴがなんとも言えぬアンティーク心をくすぐる好ジャケット。少し大きめのフォントで書かれた「mono」の文字も良い感じですね。単に音源を聴くだけならば容易い作品なだけに、このような一味違った楽しみ方もまた乙なのではないかと思います。なお、タイトルにもあるようにバラード集なので踊れる要素は当然0ですが、内容的には上述の通り素晴らしい一枚になっているので、若い方でもしまだ未聴の方がいらしたら是非聴いてみてください。
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Walkin' / Miles Davis Quintet And Sextet

2008-06-01 | Hard Bop & Modal
一般的にはハードバップ初期の名盤として数えられることの多い有名盤。あまりジャズに詳しくない方はそのタイトルから、後の-ing4部作(いわゆるマラソン・セッション)の一つと混同してしまうかもしれませんが、こちらはまだマイルスがレギュラー・クインテットを結成する前の54年録音なのでお間違いのないように。ちなみに掲載しているのはプレスティッジのオリジナルではなく、後にオランダのArtoneからリリースされた盤。いわゆるジャケ違いの内の一つで、おそらく60年代に入ってから製作されたものだと思われます。オリジナルのデザインがあまり好きではないので、こちらで購入することにしてみました。信号機を抱えながら片足を上げる女性が何ともヒップ。この時期のヨーロッパ盤には優れたデザインのジャケットが多くて好きです。既にこれまでにも多くの方がレビューしていらっしゃる超有名盤なので、内容的には今さら僕がわざわざ何か書くまでもないのですが一点だけ。軽快に跳び跳ねるA-2のBlue'n'Boogieが最高にゴキゲンなハードバップです。ここでの主役はマイルスではなくソロ3番手のラッキー・トンプソン。冒頭オープンで軽やかにソロを取るマイルスや続くJ.J.ジョンソンのプレイも良いのですが、このトンプソンのソロはちょっと反則でしょう。マイルス+J.J.をサイドに従えての盛り上がり方が凄まじいです。控えめにプレイするホレス・シルヴァーやケニー・クラークもなかなかに良い感じ。やや逆説的ではありますが、こういう曲を聴くと初期のJazz Quintet 60を始め、60年前後の欧州ジャズがいかにマイルスの音作りの影響を受けていたかが良く分かって面白いです。中山氏の語る「ジャズはマイルスだけ聴けば充分」と言う極端な発言にも少し頷けてしまいます。僕の場合、マイルスはBitches Brewとの衝撃的な出会い(良くも悪くも)を皮切りに、図らずもKind Of Blue→'Round About Midnight→本作と徐々に時代を遡る形で聴くことになったのですが、その度に新しい発見があって改めてマイルスこそがジャズの本流なのだなぁと思わされる次第。今さら言うことではないかもしれませんが、やはりこの人は只者ではないですね。最近の若いファンの中には50年代という録音の古さで敬遠している人もいると思いますが、是非一度は耳を傾けてみてください。当然文句なしのオススメ盤です。
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Piano Jazz In Czechoslovakia / Various Artists

2008-06-01 | Hard Bop & Modal
知っている人は知っている東欧チェコ・スロバキア(当時)のコンピレーション盤。世間的には余り知られていないと思われる彼の地のピアノ・トリオ5組と、トリオにパーカッションを加えたカルテット1組にスポットを当て、現地の国営レーベルSupraphonにて68年に製作された作品です。コンセプト的にも資料価値的にも、おそらくビアンキやダウナーが参加した独Sabaの有名盤Piano×4のチェコ版と言う位置づけで良いと思われますが、あちらの盤に比べ全体的に統一感のある仕上がりになっていて、アルバム通して綺麗に纏まった一枚となっています。ちなみにライナーは英語で書かれているので、もしかしたら当時は世界市場を意識して製作されたものなのかもしれませんね。なお、このライナーを読むところによると、B面に収録されているヨーゼフ・ブラハ・トリオとカレル・ルズィッカ・カルテットは、それぞれグスタフ・ブロム楽団とカレル・クラウトガートナー楽団の参加者により構成されている模様。どちらも当時のチェコを代表するオーケストラなので、おそらく現地ではそれなりに名の知れていた人たちなのだと思います。この彼らを含めた6組のコンボがそれぞれスタンダード曲と自作曲を一曲ずつ演奏するというのが全体の基本的な構成。ただ、スタンダード曲とは言えど、どの組もわりと新鮮なアレンジを施してあるので、なかなかに聴き応えのある作品に仕上がっています。特に面白いのがB-4のSecret Love。演奏は上記のカレル・ルズィッカ・カルテットで、耽美的なイントロから一転、まるでフランシー・ボランらによる名演Dark Eyesの如く縦横に揺れる、スリリングでグルーヴィーなピアノ・ジャズが繰り広げられています。クラシック・ピアノのようなイントロで始まるB-5のNight And Dayもなかなか。こちらはリュデック・スヴァベンスキー(?)なるピアニストの演奏で、いかにもヨーロッパ的な繊細なピアノ・タッチが美しいです。クラブ的にはラディスラフ・ゲルハルトらによるA-3のWoody'n youが、ボサノバを取り入れたグルーヴィーな演奏で良い感じ。こちらは以前、須永氏による夜ジャズ<裏>にも収録されていましたね。ちなみにその他の曲もオリジナル含め全体的にかなり水準と言うかIQ高めです。ヨーロッパの洒落たピアノ・トリオを思う存分に堪能したい人には、是非ともオススメの一枚。気になる方は探してみてください。
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