これは素晴らしい。久々に魅力的な新譜に出会いました。ノルウェーのDJで、Butti 49としての活動も知られるSnorre Seim絡みの一枚のようですが、これが昨今稀に見るクロスオーヴァーな名盤。基本的にはジャズ・ワルツなんだけれど、アコースティックなギターの音色にフォーキー・ソウルの雰囲気もちらほら。さらにメロウな女性ヴォーカルと、曲中盤でのある種ロック的なギター・ソロの音色はAOR~SSWと言った趣き。当ブログをよく見てくださっている方で、この曲嫌いな人って多分いないんじゃないでしょうか?Butti 49名義でのLPにもSun vs Moonというジャズ・ボッサの名曲が収録されていますが、何と言うかこの人とても日本人好みする曲を作ってくれます。今やそれほど使われなくなった「こみ上げ系」という単語が似合うジャズ・ヴォーカルで、サビでのコーラスも本当に完璧。R&Bとジャズを繋ぐ時には勿論のこと、旧譜のセットで混ぜてかけてもハマりそうだし、幻想的なイントロで始まるのでDJの1曲目にかけても良いかもしれません。そういう意味で用途が多く、とってもユースフルな1枚なのでは?ド派手な曲をガンガンかけてフロアを上げていくDJよりも、こういうしっとりとした曲を聴かせることが出来るDJがボクは好きです。
このジャケットが既にそこそこ有名なので、少し知識のある人ならばジャケを見るだけでピンと来るでしょう。そしてこの手のインスト系ジャズ・ボッサを熱心に聴いている人にとっては、もはや定番中の定番と言えるのがこの作品。ピアニストのFernando Martinsを中心としたブラジルのトリオが、渡仏中の68年にリリースしたSaravahに残したLPです。たしかブラジル本国での録音作はなかったと思うので、これが彼ら唯一のアルバムと言うことになるはず。オープニングを飾るA-1のBerimbauから高速ジャズ・ボッサで気持ちよく駆け抜けてくれます。自作となるA-3のBiaやCafe Apres-Midiのコンピに収録されたB-5のMuito A Vontadeも同様の疾走ジャズ・ボッサ・チューンでオススメ。個人的に気に入っているのはジョビンをカヴァーしたA-5のEstrada Do Sol。いわゆるブラジルのピアノ・トリオと言ってしまえばそれまでなのですが、Tamba TrioやSambalanco Trioなどの他コンボに比べるとやはり洗練度が違います。間違いなく、フランスで録音されたということが影響しているのでしょう。あまり話題には上がらないA-2のNao Tem Solucaoや、A-4のNascenteのようなモーダルなバラードも美しくて気に入っています。この辺りがやはりブラジル録音では出せない独特の味わい。ちなみにオリジナルは結構レアですが、Dare-Dareからの再発はわりとよく見かけます。再発なら値段も安いのでオススメですね。
Yusef Lateefと言えば、クラブ・ジャズ界隈ではLove Theme From Spartacus収録の61年作、Eastern Soundsが非常によく知られているマルチ・リード奏者。数年前にNujabesによってサンプリングされたことから、ヒップホップ関係の人などにも知られる存在です。本作はそんな彼の57年録音で、名門Verveから出ているアルバム。正直Verveというと再発とかも数多くリリースされていそうで、オリジナルはともかくとしても、再発としてならば比較的容易に入手出来ると思いがちですが、それがとんだ勘違いなのがこの一枚。アナログ再発がない上に、98年にリリースされたCDも廃盤で、入手にはかなり手こずりました。で、肝心の内容の方はと言うと全体的に「怪しい」雰囲気が漂うスピリチュアルな一枚。あまり良く分かりませんが、たまにユニオンで開催されているホラー・ジャズ・セールとかって、こういう雰囲気なのでしょうか?Jazz Next Standard誌にてStrangeコーナーに紹介されているのも納得の、なんだか怖くて奇妙なアルバムです。ジャケも呪術的で怖いですし…。ただ、そんな中で見逃せないのがM-7のChang, Chang, Changという曲。これぞフロア・キラーと言った感じの高速アフロ・キューバンなジャズ・ダンサーです。夜ジャズ〈裏〉にも収録されていました。正統派なバップのM-3、Pike's Peakもなかなかに格好いい。今日みたいな天気の日には、こういうアルバムを聴いてみるのも面白いのではないでしょうか。
G/9 GroupやOrchester Peter Jaquesなどのレア盤復刻で知られるSonoramaが、またまたやらかしてしまったとんでもない再発。モダン/クラブ問わず人気のInge Brandenburgによる65年独CBS盤です。某有名ディスク・ガイドにおいてもリコメンされていたので、ジャケットを見ればピンと来る人も多いのではないでしょうか。一部マニアの間では超絶レア盤として知られる本作、先日もとんでもない価格でオリジナルが取引されているのを見たばかりです。それが今回こうして再発されているわけですから喜ばしいというか残念というか…まぁ僕はオリジナルは持っていないので喜ばしいのですが、複雑な気分ではありますね。若干アフロなゆるめ6/8拍子から一転、高速ジャズダンサーに展開するA-4のSummer Timeがキラーとして紹介されています。前半部はともかく後半部はともかく格好いいの一言。妖艶な女性ヴォーカルとマイナー・コードのアレンジがヨーロピアンで良い雰囲気です。そして、そんな曲よりもさらに僕が気に入っているのはA-3のOut Of Nowhere。派手さはないものの、きっちりとしたアレンジのヨーロピアン・ボッサ・ジャズで、タイプとしてはMonica ZetterlundのSpeak Lowに近いです。エレガントなピアノとフルートが心地良いですね。全体的にクォリティが高い一枚なので、ジャズ初心者の方~上級者までオススメ出来るアルバムです。格好いい!
最近あまりレコード&CDを買えていないので、ここにアップ出来るようなものも実は正直なところないのですが、先日久しぶりに自作のセレクトCDを作ったので紹介しておきますね。最近は生音の古いジャズばかり聴いているということもあって、どうにも僕のスキルではミックスCDを作るのが難しいもので、こう言ったセレクトCDをよく作っています。まぁセレクトCDとは言っても、基本的にはミックスCDと同じ要領で作っているので、ある程度のノイズを取り除いたり曲間を詰めたり、それなりに気を遣っているのですけれど…。さて、今回のCDは「ジャズる心」のタイトル通り、全編においてダンサンブルな生音ジャズです。60年代のハードバップ~モーダル音源を中心に、新録モノも多少ながら織り交ぜた全17曲。自分でもなかなか気に入っていて、最近はレコード変えるのがめんどくさい時なんかに部屋で流しっぱなしにしています。以下、トラックリストを載せておくのでご参考に。やっぱり何だかんだで基本的にユーロものばかりですね(笑)
1. Dr. Jackle / Sestetto Basso = Valdambrini (1962 / RCA / Italy)
2. The Runner / Lars Lystedt Sextet (1963 / Swedisc / Sweden)
3. Tensao / Sambossa 5 (1965 / Som Maior / Brazil)
4. Time Check / Group Six Players ( ? / KPM / UK)
5. 246 / Jazz Quintet-60 (1962 / Metronome / Denmark)
6. Crazy Driving / Hideo Shiraki (1966 / Tohshiba / Japan)
7. Montreal East / Nick Ayoub Quintet ( ? / RCA Victor / Canada)
8. The Most Beautiful Girl In The World / Tubby Hayes Quintet (1962 / Fontana / UK)
9. Lighthouse / The Five Corners Quintet (2005 / Ricky-Tick / Finland)
10. Episode / Volkmar Schmidt Combo (1969 / Amiga / Germany)
11. Lining Up / Diamond Five (1964 / Fontana / Holland)
12. Windy Coast / Idea 6 (2005 / Deja Vu / Italy)
13. Cuba Libre / Sunaga t Experience (2006 / Flower / Japan)
14. Wives And Lovers / Dieter Reith (1967 / Saba / Germany)
15. Tip Cat / Santucci = Scoppa (1971 / Dire / Italy)
16. Kashba / Angel Pocho Gatti ( ? / Pan / Italy)
17. Se Voce Disser Que Sim / Edison Machado ( ? / CBS / Brazil)
18. Out Of Nowhere / Inge Brandenburg (1965 / CBS / Germany)
追記:どうにも気に入らなかった後半部を若干変えてみました。15~17の流れとか個人的に燃えます。18はおまけ。最後はジャズ・ヴォーカルでしっとりと。
1. Dr. Jackle / Sestetto Basso = Valdambrini (1962 / RCA / Italy)
2. The Runner / Lars Lystedt Sextet (1963 / Swedisc / Sweden)
3. Tensao / Sambossa 5 (1965 / Som Maior / Brazil)
4. Time Check / Group Six Players ( ? / KPM / UK)
5. 246 / Jazz Quintet-60 (1962 / Metronome / Denmark)
6. Crazy Driving / Hideo Shiraki (1966 / Tohshiba / Japan)
7. Montreal East / Nick Ayoub Quintet ( ? / RCA Victor / Canada)
8. The Most Beautiful Girl In The World / Tubby Hayes Quintet (1962 / Fontana / UK)
9. Lighthouse / The Five Corners Quintet (2005 / Ricky-Tick / Finland)
10. Episode / Volkmar Schmidt Combo (1969 / Amiga / Germany)
11. Lining Up / Diamond Five (1964 / Fontana / Holland)
12. Windy Coast / Idea 6 (2005 / Deja Vu / Italy)
13. Cuba Libre / Sunaga t Experience (2006 / Flower / Japan)
14. Wives And Lovers / Dieter Reith (1967 / Saba / Germany)
15. Tip Cat / Santucci = Scoppa (1971 / Dire / Italy)
16. Kashba / Angel Pocho Gatti ( ? / Pan / Italy)
17. Se Voce Disser Que Sim / Edison Machado ( ? / CBS / Brazil)
18. Out Of Nowhere / Inge Brandenburg (1965 / CBS / Germany)
追記:どうにも気に入らなかった後半部を若干変えてみました。15~17の流れとか個人的に燃えます。18はおまけ。最後はジャズ・ヴォーカルでしっとりと。
Readymade Internationalからリリースされた前作から早3年、Sunaga t Experienceの3rdアルバムがようやく発売されました。まぁ何と言うか予想通りの音でしょうか…。と言うよりも、辰緒さん自身のDJやラジオでのエア・プレイで聴いたことあるお馴染みの曲たちが、ようやくの音源化という感じです。先行の12インチやVersiliana Sambaについては最早多くを語る必要もないと思うので、ここではそれ以外の曲について触れることにします。完全オリジナル曲としてはM-7のDig The Nu Breedがなかなか良い感じのニュージャズ。Idea 6のNew Bornをもう少し繊細にした印象のダンサンブル・チューンです。最も僕は解説に書かれているようなハードバップだとは思いませんが…。そしてもう1曲、M-12のEdward Hopperも「これぞ、夜ジャズ」的な佳作モーダルですね。三管セクステット編成ながら、無駄を削ぎ落としたコンボでエレガントな雰囲気が好みです。ヴォーカル曲ではSheila Landisを迎えたM-4のLove Is A Birdかな。前作収録のFutariに近い質感を持った美しいワルツ・ナンバー。ちなみにM-10のSasukeが先日リリースされた東京ワルツRemixの焼き直しだというのはご愛嬌…。アルバム全体としては賛否両論あるのでしょうが、僕はそこそこ気に入っています。少なくとも一般リスナーがジャズを聴く取っ掛かりの一つにはなるのではないかと思うのですが、どんなものでしょうか?
ブラジル(と言うかジャズ・ボッサ)を代表するドラマー、Edison Machadoによる60年代のCBS盤。一部のブラジル音楽マニアの間でカルト的人気を誇る本作は、ほとんどジャズ・ボッサ・オールスターズと言えそうな最高の面子で録音された大傑作。J.T.MeirellesにPaulo MouraにRaulzinho、さらには伝説のピアニストTenorio Jr.までもが参加していると言えばブラジル音楽に心得のある方なら、そのメンバーの凄まじさが分かるはずです。そしてそれらを操るEdison Machadoのドラムがまた抜群に素晴らしい。A-3のAboioからしてClarke = Boland Big Bandばりの強烈なラテン・ジャズなのですが、その本領が発揮されるのはB面。もはやこの辺りのホーン入りジャズ・ボッサでは定番のB-1のQuintessenciaカヴァーに始まり、B-2のSe Voce Disser Que SimやB-3のCoisa N°1、さらにはB-4のSoloなど息をも尽かさぬ高速ジャズ・ボッサの連続の前にはただただ呆然と立ち尽くすばかり。Art Blakeyのアルバムを引き合いに出すまでもなく、ドラマーのリーダー作と言うのは得てしてフロア向けのものが多いですが、そのような中でもこのアルバムはダントツ。あまりの格好よさの前にため息しか出ません。ちなみに現在は廃盤ですが、アナログ・CD共に数年前に正規で再発出ています。僕が持っているのはこの再発アナログですが、今となってはなかなか見かけないですね…。
こちらもSunaga t Experienceの12インチ同様、最近になってようやく正規リリースと相成った一枚。2年近く前にテープ版のWorld Standardに収録されていた楽曲の音源化です。元サニーデーサービス(もうこの冠はいらないかな)の曽我部さんのレーベルであるRhodes Recordsからの限定リリースだそう。ハンド・メイドなジャケットが素敵で、思わずジャケット買いしたくなってしまう一枚ですね。そしてタイトルとアーティスト名のネーミング・センスにも思わずニヤリ。実は楽曲としてはれっきとした4拍子の曲でワルツ(3拍子)ではないのですが、そんなことすらどうでも良くなってしまうような確信犯的12インチです。もう、タイトルとジャケだけで買い。さてさて、そのワルツではない肝心の楽曲の方ですが、北欧Raw Fusion辺りのセンスにも通じそうな良質のジャジー・ブレイクと言った趣き。プログラミングされたビートの上に多重録音でピアノ・ギター・ベースを重ね、トランペットをフィーチャーした不穏でダークな一曲に仕上がっています。須永さんが手掛けたA-2、モダンジャズ入門RemixもChicago Underground Trioなどに近い実験音楽meetsジャズでなかなか。久々に聴くプラザさんによる硬質タッチのピアノも美しいです。ちなみに裏面に収録されている曽我部さんのラップ入りReworkはご愛嬌。7月にはアルバムも出るそうで、そちらも楽しみに待っておきたいと思います。
延期に延期を重ね、ようやく先日リリースされたSunaga t Experienceの12インチ。今月末に発売となる3rdアルバムの先行という体裁でリリースされた今作は、須永さん自身が大変に影響を受けているであろうヨーロピアン・ジャズのカヴァー集。まず耳が行くのはA-1のCuba Libre、昨年の澤野工房による奇跡的再発が話題となり、当ブログ始め至るところで紹介し尽くされたJazz Quintet-60の演奏が下敷きになっています…。というかコレはほぼ完コピですね、ほとんど反則でしょう(笑) おまけに、録音が古く他の曲と混ぜてかけるのはキツかったオリジナルに比べ、数段DJフレンドリーな音質を誇っています。そしてB-1、Metropoliは先日Idea 6もカヴァーしたGino Marinacciのクラシック・ナンバー。残念なことに数年前にリリースされた自身の音源の使い回しながら、その卓越した素晴らしさは今聴いても変わらず。そしてB-2のIn Case Of EmargencyはSlide Hamptonのカヴァー。ワンホーンでやや男臭すぎる印象のあったオリジナルを、ここでは2管クインテットでお洒落にリ・アレンジ。Quintetto Lo GrecoのYes And No辺りに通じる素敵なジャズ・サンバに仕上がっています。まぁ正直なところ、どの曲も既に何度も聴いているので新鮮味はないのですが、やっぱり自宅でレコードで聴くとまた違った良さがありますね。先日のライブも素晴らしかったし、アルバムを楽しみに待つことにします。
久々のブログ更新となる本作は、トロンボーン奏者のCicci Santucciとテナー・サックス奏者のEnzo Scoppaによる1971年録音のLP。Right Tempoクラシックとして、以前から知っている人は知っている的な盤だったようですが、昨今のユーロ・ジャズ・ムーヴメントにて雑誌等で再びクローズ・アップされていますね。つたない僕のジャズ知識では、イタリアものと言うとすぐに例のBasso=Valdambriniみたいな音を想像してしまいがちなのですが、本作はそれとは若干毛色が異なる雰囲気の一枚。71年という微妙な録音時期のせいか、いわゆるストレート・アヘッドな欧州ハードバップではなく、全体的にジャズ・ロックだったりフリーだったりと言った実験的な曲で構成されています。曲によってエレピなどを使用しているせいもあるかもしれませんが、どちらかと言うと「夜ジャズ」ではなくレア・グルーヴという括りの方がしっくりきそう。そんな中で比較的今っぽい雰囲気の曲がA-3のTip Cat。陽気なリズム隊とトロピカルなピアノを従えたラテン風味のジャズ・ダンサーです。BPM的にも早すぎず遅すぎず尺も短めなので、DJ的にもよろしいのではないでしょうか。ちなみに掲載ジャケはRight Tempoから90年代に再発されたもの。最近はあまり中古レコ屋で見ることもありませんが、あれば多分それほど高くはないのではないでしょうか。なおオリジナルは黄色いジャケットなので悪しからず。