At The Living Room Reloaded

忙しい毎日の中で少し足を止めてみる、そんな時間に聴きたい素晴らしい音楽の紹介です。

Klavier Feuer / Wolfgang Dauner Trio

2006-08-31 | Hard Bop & Modal
MPSに録音したThe Oimelsという69年のクインテット作が、シタール入りレア・グルーヴとしてクラブ方面で名高いドイツのピアニストWolfgang Daunerによる67年のトリオ作。その後70年代に入ってから組んだジャズ・ロック・バンドのEtcetraでの諸作は言うに及ばず、Yoki Freundのコンボで活動していた60年代中盤から既に比較的前衛志向が高めであったダウナーのキャリアの中では、オーソドックスな演奏に徹しているこのような作品が逆に異色扱いされるのだから面白いものです。さて、そんな本作で彼が聴かせるのは、いわゆるジャズのスタンダードではなく、当時のポップスをジャズ風にアレンジした演奏。こんな風に書いてしまうと安易な企画盤のように思えてしまうかもしれませんが、これが意外にも上手くマッチしていて、洗練されたモダン・ジャズのピアノ・トリオ名作として普通に聴けてしまうのだから、やはり彼は只者ではないです。特に非常に気に入っているのはM-5のYesterday。言わずもがなビートルズのカヴァーですが、ここではそれを優雅なワルツ・ジャズで演奏しています。この手のビートルズ・カヴァーの中ではLondon Jazz FourのA Hard Day's Nightと双璧。テーマ部分のアレンジも去ることながら、中盤以降のピアノ・ソロが美しすぎです。お洒落なボッサ・ジャズに変換されたM-3のA Man And Womanもまた素敵。高級ホテルのバー・ラウンジなんかに良く似合う粋な演奏ですね。オリジナルはユーロ・ジャズのカルト人気盤として有名ですが、むしろ余りジャズを知らない人への入門編としてオススメしたいアルバム。毎度のことながら澤野さんに感謝ですね。
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Total Response / Horace Silver

2006-08-27 | Free Soul
1969年にバンド活動を停止したHorace Silverが、70~72年に吹き込んだThe United States Of Mind(人心連合)シリーズの2作目にあたるのが本作。1952~77年までの25年間に及び、Blue Noteの顔役として同レーベルに在籍していた彼ですが、Blue MitchellとJunior Cookの2人をフロントに据えたクインテットを解散した64年以降の楽曲に関しては、やっぱり生粋のジャズ・ファンからは評価が低いというのが本音です。しかしながら、レア・グルーヴ・ムーヴメント以降にヒップホップ世代から再評価されたのは、むしろ逆にソウル・ジャズ風の手触りを感じるこの辺りの彼の楽曲郡。特に本作などはその筆頭的存在でしょう。声が低すぎて全く女性とは思えないSalome Beyと、その兄Andy Beyの2人をヴォーカリストに迎えた作品で、全曲ヴォーカル入りの編成となっています。4 HeroがカヴァーしたA-3のWon't You Open Up Your Sensesはメロウな展開が魅力のワルツ・ジャズ、それから小林径さんのフェイバリットでもあるA-5のSoul Searchin'は良い意味でどこか土臭いソウル・ジャズで、いずれもレア・グルーヴ的人気が高い曲ですね。今の気分に合うのはA-4のI Had A Little Talk。アルバム中で最も踊れる楽曲で、アフロ・キューバン調のビートに乗る渋いヴォーカルが印象的な好曲です。最近ダブルジャケで再発が出たので、まだ知らない人はこれを機にお試ししてみてはいかがでしょう。ちなみにジャケットはMuroさんネタですね。
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Amalgam EP / Why Wait

2006-08-27 | Club Music
D.M.R.渋谷店のニュージャズ・コーナーから久々に買ってきたのは、イタリアの新人ピアノ・トリオWhy Waitによるデビュー10インチ。Idea 6によるMetropoliがスマッシュヒットしたPaolo Scotti主催Deja Vuレーベルからの新譜です。タイトルにもなっているA-1のAmalgamは、イギリスのコメディアン兼ピアニストDudley Mooreによる名曲のカヴァー。原曲はクラブ・ジャズ・クラシックスとして知られる超絶技巧の高速ボッサ・ジャズで、僕も昔から大好きなナンバーだったりします。以前Nicola ConteがこのAmalgamをモチーフにしたリミックス作品を手がけたことがありますが、このWhy Waitによるヴァージョンも基本的にはそれに近い雰囲気。いわゆるNu Jazz風な作品と言うことが出来るでしょう。最近ひそかに話題となっているIndigo Jam Unitにも近いところがありますね。良い意味で硬質なベースとドラムのアンサンブルが印象的で、どことなくDieter ReithのWives And Loversを高速化したような曲に仕上がっています。一方、オリジナル曲となるB-1のVoid Aheadは若干テンポゆったりめな変拍子によるサンバ・ジャズ。個人的にはこちらの方が少し落ち着いた感じがして好みです。それにしてもこのDeja Vuというレーベルは、明らかに日本のクラブ・ジャズ・マーケットを狙い撃ちしていますね。まぁ日本人の僕としては大いに結構なのですが、ここまで徹底してやるならば、いっそもうGino MarinacciのIdea辺りをガツーンと再発してもらいたいもの。Paoloならば出来そうな気がするんですけれど…やっぱり難しいのかなぁ?
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Macky Feary Band / Same

2006-08-24 | Hawaii
なんだか最近は60年代のハードバップ~モーダル・ジャズを取り上げていることが多いせいか、いつの間にか筋金入りのジャズ専門ブログみたいになってきてしまいましたが、本来的にはAt The Living Roomとタイトルを冠しているように、リヴィング・ルームで聴いて気持ちいい曲を紹介するのが当ブログの目的。そんなわけでかなり久しぶりとなるフリーソウルもの紹介です。この手のハワイ産AORとしては昔から定番とされていて、正直今さら取り上げるのもどうかなと思ったんですが、このところ毎日聴いているので掲載しておきます。けっこう店によって値段がマチマチのレコードで、おまけにダブルジャケットの状態が良くないものも多く、値段/状態共に納得できるものになかなか出会えなかったのですが、先日某チェーンでようやく納得出来る盤に出会えたんですよね。内容的には説明不要、桑名晴子バージョンも人気のA-1、You're Youngを筆頭に全編アーバン・メロウ・グルーヴの嵐です。若干スティーヴィー風なマッキーのヴォーカルも絶妙にエロくて良い感じ。ホノルルの夜景を切り取ったジャケットを、まるでそのまま曲に閉じ込めたかのようなA-5のA Million Starsが個人的には最もフェイバリットです。と言うかA面は通して完璧。ハワイものに限らず、この手のアーバン・メロウなブルー・アイド・ソウル全体から見ても、かなりクォリティが高い屈指の一枚ではないかと思います。夏の終わりの今の時期にまた良く似合う一枚なので、ぜひ聴いてみてください。僕みたいにアナログに拘らなければ、数年前に出た再発CDを普通に買えると思います。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ファンキードライブ&民謡集 / 古谷充とフレッシュメン

2006-08-23 | Hard Bop & Modal
昨年末の白木秀雄による「加山雄三の世界」復刻あたりから、モダン/クラブ両ジャズマニアの双方入り乱れて徐々に盛り上がりを見せている和ジャズ・ブーム。特に本作も含む「昭和ジャズ復刻シリーズ」という企画がそのムーブメントの中核ですね。まぁこのブーム自体そもそも相当に怪しくて、仕掛け先である某大手中古レコード屋チェーンに、周囲全体が言いように踊らされている向きも多々ありますが…。方々で話題になった3月に組まれたジャズ批評誌の和ジャズ企画だって、本音のところはこの「昭和ジャズ復刻シリーズ」のプロモーションの一環ですしね。いずれにしろ、どこか商業的なにおいが漂う胡散臭いムーブメントであることは間違いありません。最も僕は個人的にそれほど和ジャズって好みではないので、この似非ブームに乗せられてはいませんけれど。僕がジャズを好きな理由の根幹的なところには「お洒落さ」みたいなものがあるのですが、はっきり言って和ジャズにはそれが余り感じられないんですよね。さて、そんな僕がこの一連の復刻シリーズで唯一気になったのがコレ。タイトルからは全くオシャレさを感じられませんが、意外にも内容は僕好みで、特に「民謡集」の方に収録されたM-13の「祇園小唄」が最高。ブルーノート1500番台風と言うよりも、往年のBasso = Valdambriniを思わせる古谷と稲見の阿吽の呼吸によるソロがクールです。まぁこれからも別に和ジャズ・ブームに乗せられるつもりはありませんが、とりあえずこれだけは聴いておいて損のない内容かと…。使いようによってはDJプレイも可、ですかね?
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

For Friends And Relatives / Christian Schwindt

2006-08-21 | Hard Bop & Modal
近年のクラブシーンにおいて大きなブームとなったTFCQが、Jukka EskolaやTeppo Makynenを始めとするフィンランドの若きジャズメン達を中心としたプロジェクトだと言うのは有名な話。しかしながら、そんな彼らのルーツでもある60年代のフィニッシュ・ジャズについて語られている文章は、ここ日本においてはほとんど見受けられないですね。まぁ同時期における他の北欧諸国に比べれば、当時のフィンランドはジャズ自体の浸透度も低く、また純フィンランド産によるモダンジャズのLPもまた非常に少ないために、ある意味ではこの現象は必然と言えるのかもしれませんが…。しかしながら彼の国にもやはり優れたミュージシャンはいたようで、このアルバムはそんなフィンランドのミュージシャンによる60年代モダンジャズの貴重な記録。ドラマーのChristian Schwindtを中心とした2管クインテット編成で、基本的にはマイルスなんかに影響を受けたのであろうモダンジャズをやっています。まぁこれはこれで悪くないのですが、当ブログ的には何と言ってもA-1のHelsinki At Noon。あの人気コンボJazz Quintet '60をも凌ぐ、異常に格好いい高い北欧産ハードバップ~モーダルジャズです。とにかく渋くて格好いいとしか言いようのないナンバーで、タイトルとは裏腹にその雰囲気は正に夜ジャズど真ん中。この手の少しモーダルがかったヨーロピアン・バップの中でも5指に入る名曲と呼べるでしょう。とにかく最高としか言いようがありません、素晴らしいです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

A Vontade Mesmo / Raulzinho

2006-08-20 | Brasil
1960年代のブラジルを代表するトロンボーン奏者Raulzinho(ハウルジーニョ)が、Sanbalanco Trioをバックに従えて吹き込んだハード・ジャズボッサな一枚。それなりのマニアの方でないと彼の名前には馴染みがないかもしれませんが、実は参加している作品は結構多く、有名どころだとTenorio Jr.の例のアルバムなんかにもいる人です。と言うか当時のブラジルにおけるジャズ・ボッサ人脈では、彼以外にトロンボーン奏者っていなかったのではないでしょうか。そんな風にすら思えるほど、当時の作品においてトロンボーンと言えば彼の名がクレジットされています。正確なことは分かりませんが、いずれにしろこの楽器において彼に匹敵する実力者が当時いなかったことだけは間違いなさそうですね。それくらい圧倒的にトロンボーンの扱いが上手いです。バルブをスライドさせて音を出す楽器で何をどうやったらこんな音が出るのか、はっきり言って超絶技巧過ぎて意味が分かりません。アルバム全編において人並み外れた素晴らしい演奏を堪能できますが、そんな中で彼の実力が最も如何なく発揮されているのが、M-1のタイトル曲。例によってブラジル産ハードバップとも呼べそうな高速ジャズ・サンバなのですが、ここでの彼のトロンボーン捌きはまさに神業というしかない代物。Sambalanco Trioによる強烈な援護射撃も相まって、この手の作品の中でも抜群の輝きを放った1曲です。とにかく始めから終わりまで両腕握りっぱなしの熱い演奏。ブラジル好きはもちろんハードバップを愛する若者にこそ聴いて欲しい1曲です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Timeless / Sergio Mendes

2006-08-20 | Brasil
今さらですが衝動買いしてしまったので紹介。世界中で今現在も売れに売れまくっている本作は、セルジオメンデスによる約10年ぶりの新譜です。ヒップホップ界の人気者であるBlack Eyed PeasのWill.I.Amをプロデューサーとして迎えて作られたアルバムで、巷では「ヒップホップとボサノヴァの融合」だなんて触れ込みで紹介されているのをよく見かけますね。まぁどちらかと言うと「ブラジル音楽のヒップホップ的解釈」と言った方が適切かと思いますが、要するにセルジオ・メンデスを売れ線のヒップホップ的な音作りで全面的にプロデュースして完成したのがコレということです。従って豪華(?)な客演陣を含め基本的には商業的な雰囲気が見え隠れする1枚で、あまり個人的に好きなタイプのアルバムでもないのですが、要所要所で見せるMPB~コンテンポラリー・ブラジリアン風味のアレンジが秀逸で、ついつい我慢できずに購入してしまいました。2枚あるLPの内で最もMPB傾向が高いSide 3が一番のお気に入り。ブラジル・ヒップホップ界からMarcelo D2を迎えたボサmeetsヒップホップのC-1、Samba Da Bencao(ピアノが綺麗過ぎ!)に始まり、フリーソウル度高めのメロウMPBなC-2のタイトル曲、それから大人のヒップホップとでも呼べそうなC-3のLoose Endsまで、この面に関しては本当に文句の付けようのない素晴らしい出来。他の曲はともかく、この3曲のためだけに買っても損はないアルバムかと思います。まぁどこの試聴機にも入っていると思うので、まずは試聴からどうぞ。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Mental Cruelty / George Gruntz

2006-08-19 | OST / Library
ずいぶん久しぶりとなるサウンド・トラックもの紹介。スイスのコンポーザー兼ピアニストGeorge Gruntzがリーダーとなって1960年に録音した本作は、サントラマニアのみならずヨーロピアン・ジャズ好きの方にもオススメしたい一枚です。一応サウンドトラックなので基本的には1~2分の短い作品ばかりなのですが、それでも全体的に統一された雰囲気が素晴らしく、内容的にもこの手のサントラの中では突出してジャズ度が高い1枚に仕上がっています。例えばあのウミリアーニの水着ジャケ辺りに近い雰囲気と言えば分かる人には分かってもらえるはず。さらに編成は同時期のシネジャズ名作「死刑台のエレベーター」にも参加していたBarney WilenとKenny Clarkeを含む3管セクステット。冒頭で展開されるM-1のMain Themeから既にド渋な夜ジャズで格好いいのですが、個人的にはM-5のMusic For Night Childrenという曲が特にお気に入り。若干ラテン風味のマイナー調4ビートで、どことなくJazz Quintet '60辺りの雰囲気も漂うヨーロピアン・バップの隠れ名曲。さらに続くM-6のJazz Appreciation Iがまた格好いいモーダル・ジャズ。アレンジ違いのM-7、Jazz Appreciation IIと共にアルバム全体の空気感をバッチリ凝縮したかのような名演ですね。ちなみにこのアルバム、オリジナルはDeccaからリリースされているのですが、どうやら100枚しか存在しない挙句に、発売直後にすぐ回収されたという曰くつきの一枚だそう。と言うわけでアナログで手にするのはまず不可能なので、おとなしくCDで買いましょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Shades Of Blue / Don Rendell = Ian Carr Quintet

2006-08-18 | Hard Bop & Modal
英国3大テナーの一人であるDon Rendellと、後にニュークリアスを結成することになるトランペッターIan Carrによる64年の録音作品。オリジナルは廃盤市場にて常に高額で取引されているレア盤として知られていますね。僕みたいな小市民がこんな高額盤を買えるわけはないので、当然の如くCDでしか持っていませんが…。数年前に別の盤とスプリット形式で発売されていて、以前に当ブログでもそのもう一枚の盤の方であるDusk Fireを紹介しましたが、確かこちらの盤の紹介はまだだったはず。なんと言うか別に派手なアルバムではないので、今まで聞き流してしまっていたのですが、改めてしっかりと聴いてみると、やはり名盤と言われるだけあって非常にクォリティが高いアルバムだということに気付かされました。特に冒頭M-1のBlue Mosqueは「これぞヨーロピアン・ジャズ・ワルツ」と言った雰囲気の名演。テンポ自体は非常にゆるやかながら、全体的にピーンと張り詰めた空気が漂う大人のジャズです。各ソロもさることながらテーマ部分のメロディーが格好よすぎ。一転してボサノヴァ調のM-2、Latin Blueも秀逸なアレンジが効いた名曲。ボッサと言っても決して明るい曲調ではなく、ヨーロッパ特有のマイナーコードで展開されるあたり、やはりアメリカやブラジルの音楽とは一味違うなと思わされます。ちなみに他の曲も良いのですがこの2曲は別格。決してフロアー受けする楽曲ではないものの、この辺りのヨーロピアン・ジャズが好きな人には、きっとこの格好良さは伝わるはずです。僕と同世代の若い人にこそオススメの一枚ですね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする