意外なことに、当ブログでは初めての紹介となるロマーノ。ファシズムの創始者であるベニート・ムッソリーニの実の息子である彼が、同時にイタリアにおけるモダン・ジャズ黎明期を語る上で重要なピアニストであることは、この辺りの欧州ジャズ史に興味のある人の間では良く知られることですね。ただ、元来変わり者の性格だったのか、これだけ有名な人でありながら、いわゆるメジャー・レーベルに遺した録音は少なく、特に70年代以降の作品は全て地元ローカルのマイナー・レーベル産。おまけに後年の作品はエレピを用いた実験的な作風の曲が多いため、正統派のファンからは敬遠されがちなピアニストだったりします。さて、本作はそんな彼の作品の中でほとんど唯一、しっかりとしたモダン・ジャズをやっているという珍しい一枚。Ricordi原盤の62年度作品です。ただ、このレーベルのLPは本当に数が少なく、入手に当たっては困難を極めるため、僕が所有しているのは72年のFamily盤。それでもなかなか見つからない盤ではありますが…。内容的にはA面が4管セプテットによるオールスター、B面がトリオでの録音という構成になっており、いずれもウェストコースト風味のバップ。同郷であるバッソらによる初期の演奏と良く似た雰囲気です。径さんはA-6のFull di dameを褒めていましたが、個人的に気に入っているのはA-2の3/4 di giola。チッチ・サントゥッチとエンゾ・スコッパのModern Jazz Gangコンビとディノ・ピアーナが良い仕事してます。収録曲中で一際ハードバップ度が高いジョーダン作のA-4、Jorduも格好良く決まってて良い感じ。どことなく南国の風を感じるA-5のSan Thomasは、タイトルからも分かるようにロリンズのSt.Thomasのカヴァー。聴いていると自然と楽しい気分になってきます。例のVersiliana Samba収録のLatin Tasteというプライベート盤がクラブ界隈では良く知られる彼ですが、今聴くべき作品はどちらかというと本作かと…。ちなみに伊Right Tempoからリイシューされてる70年代の諸作は個人的に苦手です。何というか音の鳴りが妙に気持ち悪くて…。
このジャケットを見てピンと来た方は要注意。ほぼ間違いなく末期症状の夜ジャズ・マニアです。本作は1928年にコペンハーゲンの郊外に生まれ、後にアイスランドに移住したテナー奏者、故Gunnar Ormslevによる30年間の音楽活動を纏めた彼の集大成的な一枚。今の言葉で表すならば、さしずめベスト盤というところなのでしょうか。アイスランドのJazzvakningが原盤のようですが、オリジナルは全く見たことないので詳しいことは分かりません。僕が持っているのは、1996年にJazzísというこれもアイスランドのレーベルからリリースされたCD。最もこちらも情報がないので良く分かりませんが…。と言うよりも、今回こうして偶然目手に入れるまでCDで出てるということすら知りませんでした。気になる中身の方はと言うと、2枚組全28曲とボリューム満点のものになっていて、非常に聴き応えがある作品に仕上がっています。ライナーを読む限り、彼のリーダー名義ではなく、サイドメンとして参加した曲も相当数収録されているようなので、もしかすると彼が関わった録音のほぼ全てが網羅されているのかもしれません。まぁ真相は分かりませんが…。ただ、48年~78年間という非常に長期に渡る演奏がこの一作に収録されているので、本作を聴けばアイスランドにおける大まかなモダン・ジャズ史が分かるかも。僕が気に入っているのは、60年にHljómsveit Gunnars Ormslevs名義で収録されたDisc2、M-6のBig P。おそらく同じくアイスランドのトランペッターと思われるViðar Alfreðssonとの2管クインテットで、北欧らしいタイトでモーダルな高速バップをやってます。多分こういう曲はフロアーでも受けがいいはず。そして極めつけは夜ジャズ<裏>に収録された同じくDisc2のM-13、デンマークのRadioens Big Bandと78年に共演したPink Tenor。ボッチンスキー・イェーディグ・ペデルセン・ロストヴォルド、さらにはEero Koivistoinenと錚々たるメンバーでプレイされる最高のビッグバンド・ジャズ(しかも高音質の実況録音)です。あまり日本に入ってきてない盤だとは思いますが、正直この1曲のためだけにでも探す価値あり。本気でオススメします。
デンマークのJazz Quintet 60やイギリスのThe Jazz Couriersなど共に、1960年前後のヨーロッパにおけるモダン・ジャズ黄金期を代表するグループがこのThe Diamond Five。シーズ・スリンガーとシーズ・スモールの2人を中心に結成された、メンバー固定のクインテット編成によるコンボです。例の64年の蘭フォンタナ盤がユニヴァーサルから復刻された際、クラブ方面でもわりとフィーチャーされたので、現在では若いファンの間でもそれなりの知名度を持ったグループになったのかな。さて本日紹介するのは、そんな彼らが59~62年にEPのみで発表した初期作品を集めた編集盤。78年にも蘭フィリップスからAmsterdam bluesというタイトルで同じような体裁のLP盤が出ていますが、本作はそのLPに収められていた3枚のEP盤に加え、さらに60年のOmega盤も追加収録した構成でのリリースとなっています。M-1のDiamondateから軽快に飛ばすバップで格好いいですね。スモールのペンによるオリジナル作ですが、タイトルから察するに彼らの名刺代わりの1曲と言ったところでしょうか。フィリップス盤には収録されていなかったM-4のNever Mindも素敵。どことなく同時代のダニッシュ・ジャズ辺りにも通じる重厚な雰囲気が魅力的です。ただ、個人的に本作中で白眉としたいのはM-8に収録されたLita's Dance。ボサノヴァ調の軽快なリズムで演奏されるテーマ部からソロ入りと同時に転調して4ビートになる辺り、なんとなく今の気分にぴったりな気がします。基本的には暖かいタッチとアレンジでソフトに演奏されているのに、曲全体を包む雰囲気はしっかり「夜ジャズ」してるのもポイント高いですね。ちなみに時々DJの方たちの間で話題になるM-7のBohemia After Darkですが、僕としてはこのアレンジはそれほど好みではありません。ちょっとあまりにも丁寧にやり過ぎというか、同じような雰囲気でもSahib ShihabのVogue盤に入ってるヴァージョンの方がよっぽど良いと思います。でも上記3曲は良いので、とりあえず興味を持たれた方は耳を傾けてみてください。輸入盤のCDではありますが、まだ廃盤にはなっていないかと思われます。
異端のマルチ・リード奏者ユゼフ・ラティーフによる65年のImpulse盤。ラティーフと言えばクラブ世代にとっては、例の61年のMoodsville盤に収録されたLove Theme From Spartacusで有名ですが、それ以外の作品は聴いたことがないと言う方も実は意外に多いのではないでしょうか。かく言う僕もその一人。もっとも全く聴いたことがないというわけではなく、レコード屋で見かけるたびに試聴はしているのですが、そのあまりに独創的な音楽の方向性に付いていけず、結局いつも購入までには至らないというのが僕のパターンです。東洋的なアプローチだったりフリーっぽいのが苦手なんで、なかなか買う気が起きないんですよね。僕にとっての鬼門です。さて、本作はそんなラティーフが渡米中のジョルジュ・アルヴァニタスを迎えて製作した一枚。例によってフリーすれすれのアレンジの曲も多く、正直アルバム全体を通して広く一般にオススメすることは憚られるのですが、この中に収録されたM-5のFirst Gymnopedieは是非皆さんに聴いてもらいたい一曲です。少し音楽の知識がある方は曲名を見てすぐに分かると思いますが、エリック・サティの「ジムノペディ1番」のカヴァーですね。これが最高に素晴らしい。原曲は完全なピアノ・ソロ曲ですが、ここでは主旋律と伴奏部で演奏楽器を分け、それぞれラティーフとアルヴァニタスが担当しています。ほぼ原曲の譜面通り忠実に伴奏部を再現するアルヴァニタスに対し、ラティーフも非常に柔らかく美しいフルート演奏で呼応。バックで効果音的に流れるドラミングも控えめながら相当に良い感じです。演奏パートが2人に分かれていること以外に、何かジャズ的な特別なアレンジを加えてあるわけでもなく、ほとんど原曲そのままなのですが、曲自体の持つ美しさと悲壮感を最大限に引き出した絶品の演奏に仕上がっています。これだけ聞くためだけでもアルバムを買う価値あり。ただ、とても静かな曲なので少しでもノイズが入ると曲自体が成立しません。従ってアナログよりもCDでのご購入をオススメします。僕も何枚かレコードで試聴しましたが、どれもノイズが入ってしまってダメでしたので…。
ベルギー生まれのパーカス兼ヴァイブ奏者のサディが独Sabaレーベルに残した小粋な一枚。50年代から既にパリなどで活動をしていた彼(たしかVogue辺りにリーダー作もあったはず)ですが、今の若い世代にとっては60年代に例のクラーク=ボラン楽団に参加していた人と言った方が馴染みがありそうですね。もっとも錚々たるメンバーがソリストとして名を連ねる同楽団の中では、演奏する楽器の特性上、比較的目立たないポジションの人なので、そもそも他のメンバーに比べて知名度が低いかもしれませんが…。さて、本作はそんな彼が66年に吹き込んだアルバムです。サイドを務めるのはクラークにボランにウッドと、いずれも楽団の核となるベテラン・ミュージシャンたち。もしかするとお気づきの方もいるかもしれませんが、以前ここで紹介したボランのOut Of The Backgroundと全く同じメンバー編成ですね。ただ、あちらではコンガのみを叩いていたサディが、本作では逆にヴァイブのみを弾いているので、2作品の毛並は若干異なる雰囲気です。Out Of~の方がリズム重視だとするならば、こちらはメロディー重視と言った趣き。ちなみにこの2作品に対し、音楽的に中間に位置するのが67年のMusic For The Small Hoursだと思います。昨年ユニヴァーサルから復刻されたグリフィンの作品でもプレイしていたA-1のNight Ladyの再演がまず最高。リードを務める楽器がテナーからヴァイブに変わって、グッと夜感の増した素敵な仕上がりになっています。続くA-2のタイトル曲は逆に翌年のMusic For The Small Hoursで再演された曲。ウッドがヴォーカルを務めるあちらのヴァージョンも良いですが、こちらのインスト・ヴァージョンもかなり良い雰囲気ですね。他にもB-1のAll Of YouとB-4のRidin' Highという2曲のポーター作ナンバー辺りもかなり良い出来栄え。普段は他の豪華なソリストの陰に隠れてあまり目立たない彼ですが、こういう作品を聞くと楽団内での彼のポジションの重要性を再確認出来る気がします。今ならCDで容易に入手可能なので、興味のある方は聴いてみてください。特にクラーク=ボランのスモール・コンボが好きな方は是非。
今から13年ほど前にリリースされた独Compostレーベルの記念すべき1作目。最近クラブジャズに興味を持ち始めた方にはさほど馴染みがないかもしれませんが、Compostと言えば一昔前のシーンでは圧倒的な人気を誇っていた名門レーベルです。特にジャザノヴァ以降の90年代後半におけるクラブジャズを語る上では、決して避けて通ることの出来ない非常に重要な存在。「未来のジャズ=Future Jazz」という概念を提唱し、当時のダンスフロアーで一世を風靡していましたね。このA Forest Mighty Blackは、そんなCompostレーベルの中心人物であるRainer Trübyらによるユニット。おそらくジャザノヴァ以前におけるこのレーベルの看板ユニットは彼らだったのではないでしょうか。その彼らのデビュー作にして代表作がこの12インチ。何と言ってもSide-AAに収録されたFresh In My Mindの人気と知名度が圧倒的です。Tenorio Jr.によるジャズサンバの名曲Nebulosaを効果的に使用したループの魔法。アルバムに収録された高速ドラムン・ベースのヴァージョンも相当格好よいですが、エレガント度という点でこのオリジナルに軍配かな。要所で巧みに挿入されるKitty Kのジャジーなスキャット・ワークも良い感じです。ただ、個人的にはSide-Aのタイトル曲の方がFresh~よりもさらにお気に入り。どこまでもグルーヴィーなベース・ラインに乗る、メロウなフェンダー・ローズの調べが余りにも素晴らしい。さらにはNovi Singersから拝借した爽快な混声コーラスまで加わり、聴いていると何だかいつの間にか幸せな気持ちになってきます。フリーソウル周辺の音楽が好きな人にはこの展開はたまらないはず。初期のモンドグロッソやU.F.O.にも近い雰囲気ですね。最近の日本でのクラブジャズ・シーンは、ニコラ・コンテやTFCQ以降すっかりオーセンティックな傾向にあって、こういう一昔前に流行った打ち込みの曲はおざなりにされてしまいがちですが、そんな中にもやっぱり時を越えて愛すべき曲ってあると思います。ただブームに便乗しただけのツマらない曲が多いのも事実ですが、そんなのいつの時代だって同じことですし…。
少し前にこっそりアナログのみでリイシューされ、一部マニアの間で話題になった80年代ネオ・バップの隠れ名盤。以前のタイミングで買い逃してしまい再入荷待ちをしていたために、やや遅蒔きながら今回ようやく購入することが出来ました。僕はコンテンポラリーなジャズ・シーンには明るくないので、あまり詳しく紹介することは出来ないのですが、少し調べてみたところ、スイス生まれのアルト・サックス奏者ジョルジュ・ロベールと、本場アメリカ生まれのトランペッターであるトム・ハーレルの双頭リーダーによるクインテット作品のようです。この辺りの事情が分かっていると、録音自体がスイスで行われているのにも関わらず、リリース元が米Comtemporaryレーベルなのにも納得出来ますね。内容的にはいわゆるネオ・バップ。60年代後半~70年代にかけてフリーやフュージョンを通過したジャズは、80年代に入ると一回りしてもう一度バップに戻っていくわけですが、本作はそんな原点回帰の様子を捕らえた瑞々しい名盤と言えそうです。水溜りが一気に弾けるような高速サンバ・ジャズのA-3、Cancunなどはその典型。勢いある演奏で気持ちよく飛ばしてくれます。個人的には正統派の高速4ビートで演奏されるA-1のSoladが好み。こんな書き方をするとまた怒られそうですが、正にバッソら直系とでも言うべき洗練されたヨーロピアン・ハードバップに仕上がっています。2管のフロントがグイグイ引っ張っていく冒頭部から既に格好いいですね。ニコラの影響で最近若いファンにも人気が高いFabrizio Bossoの諸作にも共通する雰囲気なので、クラブ・ジャズ好きのリスナーにも素直に受け入れられそうです。80年代録音ということで音質がややクリアー過ぎる点は否めませんが、それを差し引いても是非聴いてもらいたい作品。CDへの移行期という年代柄オリジナルは出てきにくい一枚なので、このリイシューが買えるうちに購入をオススメします。
最近はリイシューやらCDばかり紹介していたので、久しぶりに少し珍しめのオリジナル盤を。バッソとのコンビを解消したヴァルダンブリーニが、盟友ディノ・ピアーナとの双頭クインテットで76年に吹き込んだLPです。コンビ解消後もイタリア随一のソリストとして積極的にリーダー作を発表していったバッソとは対照的に、このヴァルダンブリーニの方はリーダー作がほとんどなく、その数少ない作品群も僕の知る限り全てピアーナとの双頭コンボ名義。10年ほど前に惜しくも他界してしまいましたが、もしかすると元来あまり前へ前へと出るようなタイプではなく、わりと控えめな人柄だったのかもしれませんね。さて、本作はそんな彼が遺した数少ないリーダー作のうちの一枚。Vedetteというイタリアのマイナー・レーベルからリリースされています。70年代後半という時代柄、全編に置いて生ピアノの変わりにエレピが使用されているものの、ヴァルダンブリーニによる圧倒的な作曲力はここでも健在。スタンダードやカヴァーは一切なく、全曲が自身のペンによるオリジナルという意欲作になっています。Oscar Rocchiのエレピとアゾリーニの弓弾きベースが幻想的なイントロから一転、不穏な雰囲気漂う高速ワルツ・ジャズへとシフトするA-1のArabian Moodが最高に格好いい仕上がり。タイトル通りアラビア音階を用いた怪しげなモーダル・ナンバーで個人的にツボです。フロント2人によるソロでの暴れぶりも凄いですね。ジャズロック風のアプローチで聴かせるB-1のI Due Modiも、例の名盤Exciting 6収録のGuernicaをさらに深化させたような内容で良い感じです。そして一番のお気に入りはB-2のPalpitazione。別段取り立てた派手さはないものの、少しジャズサンバ風なIQ高めのモーダル・ナンバーで、これぞヨーロピアン・ジャズの真髄と言ったところ。クラブ・プレイをするとなったらこの曲かな。あまり見かけることはない盤ですが、もし見つけたら試聴してみてください。
イタリアという国におけるモダン・ジャズ黄金期の一翼を担ったドラマー、Gil CuppiniことGilberto Cuppiniによる数少ないリーダー作品を紹介。以前モノクロ・ジャケットの59年作(S/T)を掲載したことがありますが、本作はそれより2年ほど後の録音となるアルバムです。Meazziというマイナー・レーベルが原盤でありながら、参加メンバーが非常に豪華かつ好内容なため、玄人筋から支持されることも多い一枚ですね。名義上は一応クインテット作となっているものの、彼の場合レギュラー・コンボを持っていないのでメンバーは流動的。しかしながら、バッソやヴァルダンブリーニらを始めサイドメンを身内で固めた前作とは違い、本作にはバルネ・ウィランにゴイコヴィッチにジョルジュ・グランツと、さながら当時の欧州ジャズ・オールスターズとでも呼べそうな凄まじい面々が参加していて、非常に興味深い演奏を展開しています。アレンジの方もバリバリのハードバップだった前作から随分と洗練された印象で、大人な夜の雰囲気が楽しめる素晴らしいもの。グランツのペンによるM-1のVinnie's Componentsが流れた瞬間、まるで60年代の真夜中のジャズクラブにタイム・スリップしたかのような感覚を味わえることでしょう。ちなみにこの曲、何年か後にグランツ自身が音楽監督を務めたスイス映画でもテーマ曲として使用されていたような…。続くM-2のHatch-Tag-Bluesはゴイコヴィッチ作。例のベント・イェーディグによる激レアDebut盤でも別タイトルにて再演していますが、華やかな雰囲気の漂う本作でのアレンジもなかなかに良い感じ。またピアノ・トリオによる小品であるM-3のBlue Danielや、ウィランのソプラノによるワン・ホーンが非常に美しいM-7のJohn's Balladなども最高です。ちなみにオリジナルは相当レアですが、セカンド・プレスがあるほか近年になってからもRight TempoからCD/アナログ共にリイシュー済み。僕が現在持っているのはこのCDのみですが、そのうちセカンド・プレスくらいは購入する予定。大人なジャズを楽しみたい人にオススメの一枚です。
ちょうど昨年の同じ頃に少し話題となった作品を、今さらというかかなり遅ればせながら紹介しておきたいと思います。別名義ユニットSoulstanceとしての活動や、Gerardo Frisinaの楽曲製作におけるブレーン的役割で知られる伊Schema所属のLo Greco兄弟。そんな彼らが、自分たちの活動のアナザー・サイドとして2003年にQuartetto~名義で発表した作品に続き、2005年にミラノで吹き込んだのが本作です。Soulstance名義の作品では他のレーベル・メイト同様、いわゆるNu Jazz的な音作りの多い彼らですが、以前ここでも紹介した前作や本作ではオーセンティックなジャズを披露していて、それが何だか逆に新鮮と言うか良い雰囲気。クラブ畑から発信された作品ながら、おそらく年配層にも自然にアピール出来る内容なのではないかと思います。ニコラ・コンテの名作Other Directionsよりも、さらにもう一歩だけモーダルな世界に踏み込んだかのような印象。おそらく数あるSchema作品の中でも、モーダル度という点では本作がトップに位置するのではないでしょうか。Freedom Jazz Dance Book IIに先行収録されたM-4のYes And No(ウェイン・ショーターのカヴァー)が、躍動感と高揚感に満ちたダンサンブルなサンバ・ジャズで人気ですが、今の気分としては断然M-1のタイトル曲が好み。軽快なテンポで演奏されるモーダルなブルース・ナンバーで、まるでスパイ映画のサントラのような少し陰のある雰囲気が抜群に格好いいです。特にGermano Zengaの吹くテナー・サックスが秀逸。他の曲も決して悪くはないものの、この1曲が飛びぬけて素晴らしいために霞んで聴こえてしまいます。こういう雰囲気の曲ってありそうで実はなかなかないんですよね。ちなみに「往年のBasso=Valdambrini楽団のような」という形容を時たま耳にしますが、正直バッソたちよりも演奏はずっと洗練されていると思います。CDのみでのリリースではあるものの、アナログ派の人もチェックしてみるに値する作品。しばらく前に年配層の間でもIdea 6が話題になったことがありますが、同じクラブ発のイタリアン・コンテンポラリーでもこちらの方が内容良いですよ。