もう一枚続けてフィンランド産ジャズを紹介。Levytetty Vuoona 1959と副題にもあるように、59年に録音された3組のコンボによる演奏を1枚のLPにコンパイルしたものです。オリジナルはEPとのことですが実物を見たことがないので詳細は不明。ただ、このColumbia-EMIからリリースされた70年の編集盤も相当に珍しいものだと思われます。内容の方もなかなかに興味深いものになっていますが、中でも耳を惹くのは全12曲中10曲を占めるオッシ・マリネン(Ossi Malinen)・オクテット。編成的にはやや大きめなものの、演奏自体は比較的タイトで、非常に聴き易い仕上がりとなっています。スタンダード曲を取り入れず、マリネン自身のペンによる自作曲を中心に演奏しているのも面白いところ。北欧らしい綺麗なバラード・タッチのイントロから一転、アップテンポで華麗にスウィングするA-1のDouble Time辺り、なかなかにレベルが高いのではないかと思われます。続くA-2のRober Sailorは小気味良いテンポでプレイされるバップ。良い意味で泥臭さのない一曲で、僕のようにクラブ周辺からモダンに入ってきたリスナーだったら多分気に入るはずです。タイトなドラムに導かれるA-4のBlues For Fugueや、幻想的な管のアンサンブルが耳を惹くA-3のBallads For Bonesもなかなかの出来。また、マリネン以外で良いのはA-5のLast Chance。こちらはペンチ・ラサネン(Pentti Lasanen)・セプテットなるコンボによる演奏で、初期のダニッシュ・ジャズにも通じる渋いハードバップが堪能できます。中でも白眉はボッチンスキーを彷彿させるトランペットでソロ1番手を取るヨルゲン・ペテルセン(Jörgen Petersen)。メロディアスかつどこか透明感あるそのプレイは、この辺りの北欧モダン・ジャズが好きな人なら絶対気に入るでしょう。ちなみに紹介している曲がいずれもA面に収録されている曲ばかりなのでお気付きの人もいるかもしれませんが、B面はA面に比べてやや内容が落ちます。ともあれ、クリスチャン・シュウィンドやエサ・ペスマン以前の初期スオミ・ジャズとして、非常に興味深い音源であることは確か。資料的価値も高そうです。Ricky-TickのOn The Spotシリーズ辺りが好きな人は是非チェックしてみてください。
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