At The Living Room Reloaded

忙しい毎日の中で少し足を止めてみる、そんな時間に聴きたい素晴らしい音楽の紹介です。

Sketch / Orsted, Axen, Rostvold

2010-12-26 | Hard Bop & Modal
ヨーロッパのPortrait In Jazz。本作は1962年の3月に吹き込まれた録音で、このほぼ1ヶ月前に名作Poll Winner 59を完成させていたアクセンとロストヴォルドの名コンビに、当時まだ15才だったペデルセンが加わることで誕生したヨーロピアン・ジャズの記念碑的一枚です。ペデルセンはこの前年にもDebutからリリースされたEP×2枚(Steeple Chaseから出てた編集盤にも収録された作品です)で既にアクセンと共演実績があるものの、ドラムスにロストヴォルドを配したこの布陣での組み合わせでの録音はおそらくこのときが初。アクセンとロストヴォルド側からしてみても「馬車」の吹き込み以降Poll Winner 59まではエリック・モーセホルムと行動を共にしており、特にアクセンに関してはさらに以前のHitレーベル初期からモーセホルムとタッグを組んでいたこともあり、この辺りで一つ若い新顔を加えようという意図があったのでしょう。そこで抜擢されたのが以前にも共演歴のある天才若手ベーシストのペデルセン。ここにオルステッド=アクセン=ロストヴォルドの鉄壁布陣が誕生します。このトリオ、冒頭にもふれたようにエヴァンス=ラファロ=モチアン的な性格が強く、ピアノ・ベース・ドラムスの三者が対等な立場で演奏をする「インタープレイ」が積極的に取り入れられており、そのせいか明確なリーダーが存在しません。例えばB-1のSoftly, As In A Morningではテーマを奏でるのはベースのペデルセン。彼のプレイはしばしばスコット・ラファロと比較されますが、本作ではその傾向がより顕著に表れていると言えるでしょう。収録された4曲はどれも宝物のようなナンバーばかりですが、個人的に一番好きなのは冒頭A-1を飾るI Can't Get Started。厳かなペデルセンのベースの音色に誘われるかのように入る神秘的なロストヴォルドのブラシとアクセンのピアノ。そして曲は徐々に盛り上がり…。どこか神々しささえ漂うこの演奏は、間違いなくこの時期のダニッシュ・ジャズ最高峰でしょう。手に入れるのには相当苦労しましたが、この演奏を聴いているとそれも報われる気がします。ちなみに本作の数ヵ月後にこの3人がボッチンスキー、ニルス・ハスムの二人をフロントに迎え録音したのが例のJazz Quintet 60のMetronome盤(ジャケット写真の場所も同じ)。こちらも勿論合わせて必聴の一枚。今は澤野の再発で聴いていますが、そのうちオリジナルでも手に入れたいものです。
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Our Dilemma / Bent Axen, Bjarne Rostvold

2010-12-25 | Hard Bop & Modal
デンマークのHitレーベルからリリースされたベント・アクセンとビャルネ・ロストヴォルドによるデュオ作品。この時期のHitと言えば先ほどロストヴォルドのリーダー作でも触れた「馬車」(HR710/レーベル唯一のLP)が良く知られるところですが、本作はそのちょうど3週間後に吹き込まれた録音で、レコード番号的にもHR711と直近の作品となります(ちなみにTOPのトリオ作品2枚はさらに1ヶ月後)。アクセン名義のPoll Winner 59は翌年の録音のため、本格的な二人の共演としては恐らく最初期のものと言えるでしょう。それにも関わらず本作はモーセホルムのベースを排したデュオと言う最小でのコンボ編成。非常に意欲的な録音です。リズムの要となるベースがいない状態で二人の息を合わせるという作業は、それだけでどう考えても並大抵のことではないはずだと思いますが、ここではそれをさも当然のように実践し、かつピアノとドラムス各々の演奏としても非常にハイレベル。やはりこの人たちは只者ではありません。特に素晴らしいのはA-2のOn Green Dolphin Street。アクセンはちょうどこの半年ほど前にも、ペデルセンとフィン・フレデリクセンを従えたトリオで同曲を録音していますが、こちらのデュオ演奏の方が躍動的かつキレのあるプレイでより魅力的です。またロストヴォルドのドラムロールから始まるB-2のI've Got You Under My Skinも、多幸感に満ち溢れたスウィンギンなナンバー。要所で入る「止め」のポイントも絶妙な素晴らしい演奏になっています。アクセンとロストヴォルドは確か一回りくらい年が違うはずなのに、良くもここまでぴったりと息が合うものだと驚きを隠せません。これぞジェネレーション・ギャップを感じさせぬ阿吽の呼吸。ちなみにこの二人、よっぽどウマが合ったのか翌年のPoll Winner 59でも一曲だけデュオ演奏を披露していて、そちらもなかなかに快演となっているので興味のある方は聴いてみてください。なお本作は十数枚あるHitのEP諸作でも特に見ない一枚かと思われますが、純粋な玉数の少なさもさることながら、デュオという特殊なフォーマットを売り手/買い手共に敬遠していることが原因で市場に出回りにくくなっている節があります。この辺りのデンマークものの中では内容のわりにそこまで極端に値段が高いというわけでもないと思いますので、見つけたら即買いした方が無難かと。
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Fanfar! / Lasse Lystedt Quintet

2010-12-25 | Hard Bop & Modal
クラブにおける欧州ジャズブーム真っ只中、DJを中心に局地的にヒットし後にCelesteからCD復刻もされたラース・リーステットのJazz Under The Midnight Sun(Swedisc/1964)。その復刻CDにボーナス・トラックとして2種類のアウトテイクが収録されていたFanfar!のオリジナル・バージョンが収められているのが本作です。Jazz Recordsというスウェーデンのプライベート・レーベルから1962年にリリースされた作品で、何でも500枚のみのプレスだそう。10インチというマニア好きするフォーマットもまた収集欲をそそりますね。さて、そんな本作。まず聴きものはA-1のタイトル曲で、Jazz Under~にも収録されたThe Runnerのプロトタイプ的ナンバーです。本盤収録のオリジナル・テイクで既に充分その萌芽は感じられますが、Celeste盤収録のアウトテイクではその傾向がより顕著。特にソロ部分では同じフレーズが飛び出してきたりもしますので、The Runnerはおそらくこの曲をベースにより洗練度を高めていく内に完成した曲なのでしょう。なお演奏自体の完成度としては、やはりアウトテイクではなくこちらのオリジナルに軍配。まぁ当然と言えば当然ですが。続くA-2のSo Dareはブルージーなナンバーでこれもなかなかの佳曲。ソロを務めるレイフ・ヘルマン(ts)が抜群に格好いいですね。ちなみに2曲とも「子供」ことA Boy Full of Thoughtsで有名なベント・エゲルブラダ(p)の作品です。どうやらこのコンボにおけるエゲルブラダの存在はある意味でリーダーのリーステット以上に重要だったようで、B面ではリーステット不在の中、エゲルブラダのカルテット名義でLP裏面いっぱいを使いArctic Suiteなる実験的なナンバーを収録しています。もちろんこれもエゲルブラダ作。一曲の中で静と動が何度も交錯するタイプの曲で、先のロストヴォルドらによるVenusian Blueやコメダの諸作辺りにも通じる雰囲気ではあるものの、それほど難解と言うわけでもなくわりと聴きやすい仕上がりになっているため好感が持てます。一時期のレアリティが嘘のように頻繁に出てくるJazz Under The~やThe RunnerのEPとは異なりあまり市場に出回らない一枚ではありますが、見つけたら是非聴いてみてください。個人的にはこのArctic Suiteがエゲルブラダのナンバーで一番好きです。
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Switch / Bjarne Rostvold 5,4 & 3

2010-12-25 | Hard Bop & Modal
澤野工房から昨年ようやくCD化された通称「馬車」ことJazz Journeyで知られるロストヴォルドによる66年の3作目。前作Tricrotismから続投する朋友ペデルセンとボッチンスキー、数年前にデンマークに移住しここを終の棲家としたケニー・ドリュー、そしてRadio Jazz Groupにも参加する黒人テナー奏者レイ・ピッツにより吹き込まれた一枚です。オリジナルのメンバーとは人選に多少の違いが見られるも、この翌年リリースされたヤーディグのDanish Jazzman 1967と同じく、ある意味では後期Jazz Quintet 60作品とも呼べそうですが、それと同時に64年にブルーノートに吹き込まれたデクスター・ゴードンのOne Flight Up(BN4176)の続編的意味合い(こちらはフランス録音ではあるもののペデルセン、ドリューが参加)もあり、そちらの関連性から聴いてみても何かと興味深い作品。特にドリュー作のA-3、Coppin' The HavenはOne Flight Upでも演奏されていたナンバーの再演となるため、両者を聴き比べてみるのも面白いかもしれません。個人的にはこちらの盤の演奏の方が好み。北欧の風に当てられたせいかドリューのピアノの繊細度がグッと増していて、今の季節に聴くと非常に耳馴染みが良いです。またB-3のVenusian Blueはレイ・ピッツの作品。以前ここでも紹介したようにRadio Jazz Groupからの再演で、静と動を行き来するモーダルなナンバーになっています。ちなみにここでのボッチンスキーはマイルスを意識したミュート・プレイで個人的に少し苦手。何というか彼には、オープンでのプレイの方が似合う気がするんですよね。そんな彼のオープン・トランペットが思う存分堪能出来るのがB-1のWampoo。自分で書いた曲だからと言うこともあるかもしれませんが、ここでの彼はこれまで以上に非常に堂々としたプレイをしていて大いに好感が持てます。Jazz Quintet 60のFontana盤に通じるきれいめ系のバップなので、おそらく好きな人も多いのではないでしょうか。ちなみに以前Ricky-Tickのコンピに入っていたA-1のFolk Musikは、曲調とは裏腹にハードなジャズロック。確かにヨーロッパのDJに好まれそうな音ではありますが日本人的には少し微妙です。ともあれ最近の欧州ジャズのバブル崩壊に伴い値段が下がってきた作品のため今が買い時の一枚。片手で数えられるくらいの値段で発見したら購入を検討してみても良いかもしれません。
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Ballet Etudes / The Music Of Komeda

2009-12-12 | Hard Bop & Modal
ヨーロピアン・ジャズの極北。ポーランドが世界に誇るピアニスト兼作曲家、故クシシュトフ(クリストファー)・コメダが63年にデンマークで吹き込んだアルバムです。過去にNormaからも編集盤がリリースされていたMuzaの初期音源と、一部ではヨーロピアン・ジャズの金字塔と謳われる65年のAstigmaticの間を繋ぐミッシング・リング的作品で、おそらくLPとしては彼の初リーダー作。地元デンマークからボッチンスキー(tp)、スウェーデンからルネ・カールソン(ds)、そして同郷ポーランドからヤン・ヴロブレフスキ(ts)とロマン・ディラグ(b)を迎えたインターナショナル・クインテット(但しボッチンスキーはA面のみ参加)によって製作された一枚です。A面いっぱいを使って収録された組曲形式のタイトル曲もそれなりに悪くはないものの、最大の聴きものはB-1のCrazy Girl。61年にスウェーデンのテナー奏者ベルント・ローゼングレンと共に吹き込んだワルツ曲の再演です。オリジナルの演奏はEP収録ということもあり、ほとんどローゼングレンのテナー・ソロのみの短尺曲なのですが、ここではそれを12分の大作に再構成していて、それが何だか凄いことになっています。特にメロディーをリードするヴロブレフスキには圧巻。自身のポーリッシュ・ジャズ・カルテットではロリンズ風の保守的なプレイに徹していた彼が、ここではなんとコルトレーンばりのシーツオブサウンドを展開していて、それがまた本家にも負けないくらいバッチリと決まっているのだから驚愕です。後のAstigmaticでのナミスロウスキ辺りにしてもそうですが、コメダの持つミュージシャンの引き出しを開けるスキルとセンスはやはり尋常ではありません。もちろんリズム隊2人のプレイも最高。コメダの手腕により自身の潜在能力限界まで高められた最高の演奏が思う存分堪能できます。元々のプレス数自体も少ないのか、盤自体のレアリティーもかなりのものですが、是非一度は聴いてみてください。ちなみに最後に件のボッチンスキーに関して少しだけ触れておくと、ここでの彼のプレイは正直それほど目立ったものではありません。一応タイトル曲にて若干の見せ場はあるものの、それも一瞬(時間にして約20秒)で終わるので、彼のプレイ目当て「のみ」での購入は控えた方が賢明だと思います。最も他の4人が充分すぎるほど素晴らしいので、個人的には全く問題は感じませんが…。真の欧州ジャズ好きにお薦めの一枚です。
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The Radio Jazz Group / Same

2009-12-12 | Hard Bop & Modal
サヒブ・シハブとの共演盤が有名なRadio Jazz Groupによる一枚。このRadio Jazz Groupはエリック・モーセホルムとベント・アクセンを中心に61年に結成されたグループで、メンバーにはアラン・ボッチンスキー、ベント・ヤーディグ、ニルス・ハスム、ニルス・ペデルセンなどなどJazz Quintet 60周りの人脈がズラリ。当時のデンマークを代表するミュージシャンが一同に介したオールスター的グループです。これはそんな彼らの65年作。あのシハブのOktav盤から1~2ヶ月後に録音された作品となります。ただ、内容の方はOktav盤とは少し趣が異なり、彼らにしてはかなりフリー寄りの演奏になっているため、あの迫力のビッグバンド・サウンドを期待してる人は要注意。LPはA面がモーセホルム作による長尺曲Hanne、B面が黒人サックス奏者レイ・ピッツ作による組曲Voyage Of The Star-Birdで構成されています(A面には他に3曲収録されていますが、いずれも短尺でインタールード的)が、どちらもわりと前衛的な曲です。もっとも演奏してる面子が面子なので、いわゆる「デンマーク・ジャズらしさ」が全くないわけでもなく、たとえば三部構成のHanneにおける第二部辺りはOktav盤(特に一曲目のDi-da)にわりと近い雰囲気。パレ・ミッケルボルグとヤーディグによるソロも悪くないと思います。ただ、個人的にこの作品一番の聴き所だと思うのは組曲Voyage Of The Star-Birdの二曲目、Earthlight。テーマ部でトロルフ・モルガードが吹くユーフォニウムと、ボッチンスキーのソロが非常に耳辺り良く、聴いているとタイトル通り何とも言えぬ優しい気持ちになります。ちなみにこの組曲の四曲目Venusian Blueはこの後、作曲者のレイ・ピッツ自身も参加したロストヴォルド(本作には不参加)の66年作にて再演済み。以前ニコラ・コンテが、このロストヴォルドらによる演奏の方をチャートに挙げていました。もっとも僕としては、いずれの演奏もそれほど好みのタイプではありませんが…。ともあれレア度だけで言えばそれなりに高めの一枚。それほど血眼になって探す必要のある作品とは思いませんが、どこかで見つけたら聴いてみてください。なお、スウェーデンにもRadiojazzgruppenなるグループが存在しますが、あちらはヤン・ヨハンソンらが中心になって結成されたもので、このRadio Jazz Groupとは無関係です。お間違えのないように。
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Djingis Kahn / Staffan Abeleen Quintet

2009-12-08 | Hard Bop & Modal
おどろおどろしいジャケットについ慄いてしまう本盤は、60年代スウェーデンを代表する名コンボ、ステファン・アベリーン・クインテットがSonetレーベルに吹き込んだ一枚。数年前にユニバーサルの企画で再発されて話題になったLP2枚の吹き込みより少し前の61年に、全く同じメンバーによって製作されたEP作品です。詳しいことを知らないので何とも言えないのですが、おそらく彼らの処女作に当たる吹き込みのはず。ただジャケットからも何となく雰囲気が伝わる通り、ここでの演奏は彼らの後の作品とは幾分毛色の異なるものとなっています。例のPhillipsの2枚(+70年代のOdeon盤)では非常に洗練された北欧ジャズを惜しげもなく披露していた彼らですが、このEPではそうした洗練された雰囲気は影を潜め(と言うより当時まだその境地に辿り着いていなかった?)、終始ファンキーな演奏に務めています。全体の質感としては、先日澤野工房からも再発されたジョルジュ・アルヴァニタスのSoul Jazzをもう少し男くさくしたような感じ。全4曲それぞれに悪くないですが、中でも特筆すべきはA面の2曲。まずタイトル曲のA-1は、ざくざくとスタッカートで迫るタイトなピアノに乗せた2管ユニゾンのテーマが最高に格好いいバップ・ナンバー。ビョルン・ネッツ~ラース・ファーノフ~アベリーンと続く各ソロもそれぞれに素晴らしく、このコンボのレベルの高さが伺えます。そして続くA-2のJuan-Les-Pinsは、以前CDからの音源を自作コンピにも収録した3拍子のハードバップ。3拍子と言えばDownstreamの冒頭に収録されていたFin Sikt Over Havetもそうでしたが、わずか数年で彼らに何があったのかと思うほどプレイの質感が違います。その傾向が特に顕著なのがリーダーのアベリーン。音の選び方からタッチの運び方に至るまで完全に別人のようになっているので、両者を聴き比べてみるのも面白いかもしれません。スウェーデン、そしてステファン・アベリーンと言えば今や洗練された60'sヨーロピアン・ジャズの代名詞的存在ですが、そんな彼のイメージが180度変わること間違いなしの一枚。これも一時期のピークに比べ少し相場が落ちてきている(とは言えまだ少し高いですが…)ようなので、興味があったら是非チェックしてみてください。
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Feeling Good / Bryony James

2009-12-07 | Hard Bop & Modal
これも一時期ガイド本掲載で話題になった一枚。マンハッタン生まれブルックリン育ちの女性シンガー、ブライオニー・ジェームスが渡英先で吹き込んだ69年のアルバムです。バックを務めるのはピアノのローリー・ハロウェイを中心としたギター入りカルテット。ただ、ギターの音は全編に渡りほとんど前面には出てこず、その代わりにほとんどの曲でラテン・パーカッションが効果的に使われているという、少し変わったバンド編成になっています。言葉ではうまく説明し辛いのですが、以前ここでも紹介したフランシー・ボランのOut Of The Backgroundにヴォーカルがフィーチャーされた感じと言えば、何となくアルバム全体の雰囲気が伝わるでしょうか。さて、そんな本作。引き合いに出したボランのアルバム同様、やはり全体的に非常にグルーヴィーな作品に仕上がっています。その象徴とも言えるのが冒頭A-1のタイトル曲とB-1のCome Back To Meで披露される超高速プレイ。特に前者に関しては、おそらくアラン・ギャンリー(タビー・ヘイズのFontana実況盤に参加してた人)だと思うのですが、超高速で疾走しつつも目まぐるしくリズム・パターンの変わっていくそのドラム捌きは見事としか言いようがありません。また、BPM的にクラブ・プレイにもばっちりなのがB-3のSummertime。ラテン・パーカスを駆使したノリの良い横揺れ系ワルツ・ナンバーです。間にピアノの間奏を挟んで、英語→(多分)ポルトガル語→英語と歌われるブライオニー嬢のヴォーカルも抜群。ジェラルド・フリシナやロ・グレコ兄弟辺りのスキーマ系クラブジャズ好きなら必ず気に入る一曲だと思います。ただ、個人的にこれらの曲以上に何よりおススメなのは、A-3のOur Day Will Come。基本はリムショットを効かせた高速調のボサ・ジャズなのですが、ここでのローリー・ハロウェイの小洒落たピアノ・プレイが非常に見事で、何度聴いても余りの巧さについ頬が緩んでしまいます。個人的にはボランのDark Eyesと並ぶお洒落なジャズ・ピアノの代名詞的存在。いちおう僕もピアノ経験者なため、いつかはこれくらい弾けるようになるのが目標だったりするのですが、現実はまぁなかなか難しいですね…。そもそもジャズピアノ自体ほとんど弾けませんし。ともあれ、本作は全体的に自信を持って薦められる一枚。人気のピークが過ぎて相場もだいぶ落ち着いてきているので、今が買い時の作品だと思います。
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Jazz Em Embassy / Cuarteto Jorge Anders

2009-12-06 | Hard Bop & Modal
ブリザ・ブラジレイラやJazz Next Standardへの掲載で、以前その筋の一部の人たちの間で話題になったアルバム。アルゼンチンのテナー&アルト奏者ホルヘ・アンダース(で読み方合ってるのでしょうか?)が、自身のカルテットを率いて65年に吹き込んだ実況録音盤です。さすがにアルゼンチン・ジャズともなると情報も少なく、あまり詳しいことは分からないものの、このアンダースとベースを務めるホルヘ・ゴンザレスはジャズ批評に掲載された例のTrovaの同ジャケEPシリーズにも参加していたりする人なので、当時のアルゼンチン・ジャズ界ではわりと中心的な人物だったのかもしれません。なお、アンダースさんの方はガブリエラ・アンダースなる美人女性シンガーの父親なんだそう。僕は恥ずかしながら全く存じ上げませんでしたが、このガブリエラさんの方は日本でもそこそこ知られる方のようです。閑話休題。さて、肝心の中身の方ですが、さすがサックス奏者の実況盤と言うことで全体的に管の音が前面に出た一枚になっています。その筋の人たちの間で人気が出たのは、アフロ・キューバン風味に味付けしてあるアップテンポなA-3のSuave Como Un Amanecer (Softly as in a Morning Sunrise)でしたが、個人的に好きなのはバラードでのプレイ。特にA-2のSobre El Arco Iris (Over The Rainbow)に関しては、古今東西に数あるこの曲のカバーの中でもベストトラックの一つだと思います。コルトレーンのBalladの雰囲気でOver The Rainbowを演奏していると言えば、なんとなくそのニュアンスが伝わるでしょうか。もう1曲バラードをやっているB-2のPodria Ser Primavera (It Might as Well Be Spring)もなかなかに素敵。ディスクガイドには「ロリンズばりの力強い演奏で鳴らした」とありますが、このアルバムを聴く限りでは、個人的にバラードでの優しく雄大なプレイの方が彼の真骨頂と言うような気がします。と言うわけで、その辺りの雰囲気が好きな人にはわりとお薦めな一枚。クラブ向けと言うよりは部屋聴きが似合う作品だと思います。
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Holiday In Studio / Bent Axen Trio

2009-05-05 | Hard Bop & Modal
また暫く間が空いてしまいましたが、久しぶりの更新。何枚か前に紹介した同タイトル(Nr.5007)に続く、アクセン=ロストヴォルド=モーセホルムによるEP盤です。オリジナルは同じくTop Jazzですが、今回手に入れたのはTop Popからリリースされたジャケ違い。本来はVol.2に当たる作品なのですが、Top Jazzジャケと異なりナンバリングの記載が特にされていないところから推測するに、恐らくジャケ&レーベル違いがリリースされたのはこちらの盤だけなのかと思われます。肝心の内容の方はと言うと、同じトラッド曲中心でもわりとポップな雰囲気だったVol.1と比べ、全体的にややビターな印象。今日みたいにあまり天気の良くない午後によくハマります。収録曲が現地語表記なので分かりくいですが、A-1のSorte ønjeは邦題で言うところの「黒い瞳」。ミッド・テンポのアフロキューバン・リズムに乗せた良く歌うピアノがシックです。ソロ冒頭が「馬車」での「枯葉」にそっくりなのはご愛嬌。Hit盤でのHilsen fra Bentでも良く似たフレーズを弾いていましたし、恐らくこれがアクセンの手癖なのでしょうね。B-2のAch Värmlandは「懐かしのストックホルム」。演奏時間こそ短いものの、こちらもシックな雰囲気で巧くまとめられていて好印象です。また、B-1のLa Mucuraは、他の収録曲とはやや毛色が異なり、リズムの跳ねたラテン・タッチの瑞々しい一曲。個人的には、これまで聴いてきたアクセンの中でも一際ポップな印象を受けました。最後にA-2のEih Ukhnem。こちらはモーセホルムのベースで幕を開ける渋いナンバー。僕としてはこの渋さにある意味もっとも「らしさ」を感じるのですが、皆さんはいかがでしょう。まぁ何はともあれ、全4曲それぞれが名演。先のVol.1と合わせて聴きたいおススメの一枚です。ジャケットの雰囲気も良いですしね。ちなみに例のジャズ批評のEP特集では、プリントミスが原因なのかVol.1とVol.2の紹介記事が逆になっている上、収録曲の記載も間違っている(どちらもVol.1の内容で書かれてます)ため要注意。最初にも書きましたがジャケが2種類あるのはこっち(Nr.5010)の方です。
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