At The Living Room Reloaded

忙しい毎日の中で少し足を止めてみる、そんな時間に聴きたい素晴らしい音楽の紹介です。

Romantic Story 11:30 p.m. / Mackey Feary

2013-03-31 | Hawaii
このところアクセス解析結果を見ているとやたらBurning Bridgesのページが見られているようなので、同じく彼の関連作中でも取り上げられることが少ないこちらのアルバムも紹介。1991年にVapから国内盤オンリーでリリースされた彼の5thアルバムです。もっとも本作が初出となる曲は1~2曲程度しか入っておらず、大半の曲は過去のカラパナ作品や自身のソロ作品の焼き直し。そこに本人の意思がどの程度介在していたかは分かりませんが、結果的にはボビー・コールドウェルのHeart Of Mineに端を発する、90年代初頭のAORリバイバルブームにあやかりリリースされた作品群のうちの一つと捉えるのが自然でしょう。おそらくセールス的にもさほど振るわなかったものと推測されます。ただ、だからと言って駄作というわけでもなく、リバイバルブーム以降のいわゆるアダルトコンテンポラリーの作品としては極上の部類。この頃のカラパナに見られたような産業ロック的展開も少なく、タイトル通り落ち着いた夜の雰囲気で過去の名曲を再演しています。彼の場合、まず声が圧倒的に甘いのでこうした雰囲気の曲にはぴったり。特にM-3のIn Your EyesやM-4のSoon、そしてM-6のAlways Be With Youあたり、アダルトコンテンポラリー好きにはたまらないナンバーかと思います。個人的に気に入っているのはM-9のSummer End。彼の2ndアルバムに収録されていた原曲も良いですが、ここではグッとテンポを落として大人な雰囲気で再演しており、これはこれで良いアレンジです。またカラパナの代表曲の一つでもあるM-7のMoon And Starsは原曲とほぼ変わらないアレンジながら、全体的に音の厚みが上がっておりゴージャスな仕上がり。この曲の持つ雰囲気からすると、こちらの分厚いアレンジの方がしっくり来ます。日本国内オンリーでのリリース、しかもCDのみの作品ということからあまり見かけない作品ではありますが、もしどこかで見かけることがあれば聴いてみてください。血眼になって探すほどの作品ではないと思いますが、ブックオフあたりを気長に探すとそのうち格安で見つかると思います。
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A Soft Touch / Heartfelt

2013-03-30 | Hawaii
ここ最近取り上げられることも増えてきた一枚。日系と思わしきハワイのギタリスト2人による1986年のLPです。リリース元は一応Lahaina Recordsとなっていますが、聞いたことのないレーベルな上、レコード番号が見当たらないためおそらく自主盤。僕の持っている盤でも裏ジャケにサインが入っていたりするので、おそらく彼ら自身が当時ほぼ手売りで配っていたものと思います。ただ内容的にはかなり良く、チープながら非常に洗練されたサウンドメイクとなっているので、おそらくこの手の自主盤系マイナーAORが好きな人なら一発で気に入るはず。爽やかなアルトサックスの音色に誘われるアイランドメロウなA-1のStill In Love With Youからとろけるように甘い展開で、マニアうけ良さそうなナンバーです。サックスを吹いているのは以前紹介したNaluの1stにも参加していたDavid Choi(デヴィッド・チョイ)。おそらくマイケル・パウロ辺りから影響を受けたと思われるカラパナ直系のプレイが微笑ましいですね。またA-5のWantchyaも同系統のアーバンリゾートAOR。ここではサビで女性コーラスも加え、より一層涼しげなライトメロウナンバーを披露しています。洗練されたSSWが好きな人にはB-4のI Dreamed Of You。Erin Dickens(エリン・ディケンズ)なる女性ヴォーカリストとのデュエットで歌われる優しい一曲となっています。ちなみに、ほとんどの曲を書いているのは、ヴォーカルのGlenn Alan Kakugawa(グレン・アラン・カクガワ)ではなく、リードギターを務めるBenedict Collins Uyetake(ベネディクト・コリンズ・ウエタケ)。グループ名そのままにHeartfeltなセンスはどうやらウエタケ氏によるもののようです。ダンサンブルでクラブうけしそうなナンバーこそありませんが、こうして休日の朝にゆったりとした気分で聴くには最適な一枚。自主盤という性質上プレス数も少なく、そのうち手に入りにくくなると思うので、気になる方はまだ取り上げられている今のうちに入手することをおすすめします。
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Risco Connection / Same

2013-03-29 | Free Soul
プロデューサーJOE ISAACS(ジョー・アイザック)によるプロジェクト、Risco Connection名義での音源をまとめ2010年にリリースされた編集盤。このRisco Connectionはいわゆるディスコのヒットナンバーをレゲエでカバーするという少し変わった立ち位置にあるグループで、そのサウンドの特性上ディスコ~レゲエ~フリーソウルと幅広くアピール出来る存在として人気が高いのですが、いかんせんリリースされている12インチが全てレア&高額。そのため一部のマニアを除き、これまで彼らの曲をフルで聴くことは敷居が高かったのですが、この編集盤のリリースによって誰もが気軽に耳にすることが出来るようになりました。ダイアナ・ロスのカバーであるM-1のIt's My Houseからいきなりクォリティが高く驚きますが、サバービア的にはやはりM-2のI'm Caught Upがベスト。Jocelyn Brown(ジョセリン・ブラウン)が歌ったInnner Lifeのカバーで広く知られる、Terri Gonzalez(テリ・ゴンザレス)によるダンス・クラシックのカバーです。そもそもオリジナルやInner Lifeのヴァージョンが特大級の名曲なので、どう料理しても悪い仕上がりになるはずはないのですが、それでもここまで完成度の高いカバーに昇華したことは素直に賞賛すべきでしょう。特に原曲には出てこない切ないストリングスのラインが見事です。またM-7のBringing Out The SunshineはMuroさんのDiggin' Iceに収録されていたラヴァーズロックの名曲。元々はOtis Gayle & Juliette名義でカナダのレーベルからリリースされていたようですが、実態がほぼRisco Connectionということでちゃっかり収録曲に選ばれています。10年くらい前に何枚か出ていたRelaxin' With Loversという一連のラヴァーズ・ロック系コンピが好きな人なら、おそらくまず気に入ることでしょう。ちなみにこの編集盤、CDだけでなく2LPでもリリースされています。個人的にはこの手の近年リリースされた編集盤をわざわざLPで買う趣味はありませんが、LPにこだわりのある方はそちらで入手を検討しても良いかもしれません。いずれにしろ最初にも書いたように幅広い層にアピール可能な作品なので、興味があればまずはどこかで試聴ください。ブラックミュージックを中心としたジャンル横断型のリスナーには間違いなくお勧めの一枚です。
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Hurricane / Kalapana

2013-03-26 | Hawaii
お馴染みカラパナが1986年にリリースした6作目のオリジナルアルバム。先日このブログでも紹介した1982年のライブでリュニオン(再統合)した後、最初にリリースされたスタジオ録音作品です。このときのカラパナはカーク・トンプソンを除くオリジナルメンバー3人に、ナイトライフでマッキー・フェアリーと活動を供にしたケンジ・サノを加えた4人編成。一時期はマラニ・ビリューすら脱退し、オリジナルメンバーがD.J.プラットのみという時期もあったようですが、この作品以降はただ一人99年に他界したマッキーを除き、現在に至るまで基本的に本作録音メンバー+αで作品制作やライブ演奏を行っているようです。もっとも80年代以降のカラパナは取り上げられることも極端に少ないため、リバイバルブーム以降のAORファンにはほとんど馴染みがないかもしれませんが…。さて、本作はそんなカラパナ作品の中でも次作のLava Rockと並びひときわ地味な一枚。おまけにA-1のPain, Pain, Painを筆頭に産業ロック色が濃い作品なので、正直サバービア~フリーソウルの流れでコンテンポラリー・ハワイアンを聴いているリスナーにとっては、あまり手放しでお勧め出来る一枚ではありません。ただ、そうは言ってもやはり70年代にサーフロックで一世を風靡したカラパナ。いかにも彼ららしいナンバーも幾つか収録されており、聴き逃すのは少しもったいないです。特にマッキーのペンによるA-5のLightsはアイランド・メロウなバラードで良い雰囲気。これぞマッキー節と言った趣の激甘ナンバーに仕上がっています。またB-5のLiving Without Youは切ないピアノの音色が印象的なボサノバ風AOR。あまり知られていないマラニ・ビリュー作の隠れ名曲です。アップテンポなナンバーではB-2のTonightがポップな曲調でグッド。テンダー・リーフ辺りが好きな人はきっと気に入るとナンバーかと。中古レコード屋やオークションでも安値でよく見かける盤なので、聴いたことがないと言う人は探してみてもいいかもしれません。ちなみにLPに比べ見る機会が少ないですが、実は発売当時にCDでもリリースされているのでCD派の人はそちらもチェック。なお掲載したジャケットは国内盤のもの。本国盤はジャケットが違いますが、こちらの国内盤の方が遥かによく見かけるため、素直にこのジャケットを探した方が良いかと思います。
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Eyes / 鷺巣 詩郎 with Somethin' Special

2013-03-24 | Japanese AOR
僕たちの世代では「新世紀エヴァンゲリオン」の音楽担当としても知られる作曲家/マルチプロデューサー、鷺巣詩郎氏による1979年のデビュー作品。例のLight Mellow和モノ669掲載後、一部で話題となったことがきっかけで、2年ほど前にdisk unionのThink!からCD化済みの作品です。実はCD化の際に一度試聴するも今ひとつピンと来ずスルーしていたのですが、最近たまたま入った地元のレコード屋で帯付きLPが安く売られていたので買ってみました。一通り聴いてみた印象としては、全体的に悪くはないものの地味。いわゆるフュージョン~クロスオーヴァー畑の人がやっている和製AORとしてはなかなかの佳作で全体的に隙もないのですが、なんというかこのモノクロ写真のジャケット含め全体的に華がないので、きっとどこまで行ってもマニアックな作品止まりで、広く世に知られる作品になることはなさそうです。おそらくリイシューCD自体もそれほど極端には売れていないはず。ただ、そうした中でもA-3の「黒い雪」はやはり名曲。吉田美奈子あたりにも通じる和製メロウグルーヴで、須貝恵子嬢のヴォーカル・ワークを含めJ-AOR前夜のシティポップスとしてはかなりの完成度を誇っているため、一部マニアの間で人気があるのも頷けます。その他の曲では村川ジミー聡とのデュエットで歌われるB-2のLong Peaceも程よくポップなナンバーで良い感じ。途中のテナーサックスによるソロも雰囲気抜群です。いわゆる和モノ系DJが好みそうなのは全英語詞で歌われるダンサンブルなB-3のFly!。個人的には音の質感含めあまり好みの雰囲気ではありませんが、これはこれで和製ディスコブギーとしてクラブではそれなりに機能するのでしょう。個人的にはわざわざ大枚叩いて購入するほどの作品ではないと思いますが、もしも僕のようにどこかで安く発見できたら買ってみても損はない一枚。もしも興味があれば街のレコード屋さんを気長に探してみてください。
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Pumpkin Pradise / Super Pumpkin

2013-03-20 | Japanese AOR
知っている人は知っている1978年にリリースされたシティポップスの名盤。数あるこの手の音楽の中でもマリン~オーシャン度がかなり高い一枚で、この手のジャンルに「真夏の海」のイメージを求める人にとってはぴったりな作品になっています。70年代後半という微妙な時期のリリースから、全体的にまだJ-AORというよりはシティポップスと呼んだ方が適切なサウンドメイクになっていますが、それでもその演奏の洗練度はかなりのもの。同時代の他ミュージシャン作品と比べても頭一つ抜けた存在と言えるでしょう。A-1の「フレッシュ・レモネード」から南国風味たっぷりなシティポップスを存分に聴かせてくれます。個人的にはやや南国度が高すぎるような気がしますが、こうした雰囲気が好きな人もきっと多いはず。そして続くA-2の「ハーバー・ライト」が本作最大のハイライト。静かに始まるイントロから一転、メロウなエレピとサックス、そして軽快なカッティングギターとビートに心躍る非常に爽快かつグルーヴィーなナンバーとなっています。偶然か否かは分かりませんが、同じ年にリリースされたオハイオのファンクバンドSunによるDance (Do What You Wanna Do) と良く似た雰囲気のライトファンクで、あの曲同様まさに「オマエもこの気持ちよさにやられちまいな」状態。国産のシティポップスでここまでグルーヴィーな曲は稀有だと思います。あのころSunを聴いて盛り上がっていた人なら間違いなく気に入るはず。また、個人的に気に入っているのはB-2の「風の中に」。派手さはないものの、「夏の木陰」系のしっとりとしたシティポップスでメロウなエレピの音色がたまりません。このアルバムを形容するときによく使われる「ハワイ風」というキーワードは個人的に正直あまりピンときませんが、それでも海を感じるシティポップスとしては最適な一枚。アナログはそこそこレアなので気軽にお勧め出来るというわけでもありませんが、気になった人はぜひ探してみてください。もしかしたら最近のJ-AORブームに乗じてそのうちリイシューされるかもしれませんが、今のところは残念ながら未CD化です。
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Summertime Love Song / The Milky Way

2013-03-18 | Japanese AOR
昨年タワーレコード限定で再発され一部で話題になったLP。後に芳野藤丸らと共にAB'sを結成する松下まこと(松下誠)と、その彼がネム音楽院(現在のヤマハ音楽院)在学時にピアノを師事していた信田まことのデュオによる1979年の作品です。例のLight Mellow和モノ669誌上で「職人による知られざる奇跡の名盤」として大きくフィーチャーされている3作のうちの一つで、おそらく最近の和モノ系リスナーの間でも比較的評価が高い作品でしょう。共にスタジオミュージシャン気質の2人なのでヴォーカルについてはご愛嬌ですが、まるで夏の避暑地を思わせる洗練された演奏とアレンジが素晴らしく、巷で人気が高いのも頷ける一枚。いわゆるJ-AORというよりは純粋に良質な和製ポップス系作品なので、たとえばピチカートファイブの1st(=Couples)あたりが好きならドンピシャでハマるのではないでしょうか。収録曲には洋楽の日本語カバーと自身らのオリジナル曲の両方がありますが、全体的にアレンジの傾向はリゾート風味で統一されているので、おそらく特に違和感なく聴けるはず。夏の木陰でひっそりと聴くのには最適な一枚です。突出したナンバーこそないものの、逆に聴いていて嫌な感じを受ける曲もないので、スピーカーから何気なく流れていても気にならない空気のような作品。カフェなんかのBGMにしても良さそうですね。どの曲も均一に良い雰囲気ですが、あえて一曲を挙げるなら個人的に気に入っているのはB-3の「ひとりぼっちの渚」。信田かずおのペンによるソフト&メロウな跳ね系ポップスで、収録曲中でも特に初期ピチカート度が高い一曲です。ちなみに本作、実は発売から4年後の1983年には再プレス盤が出ており、僕が持っているのもその再プレス盤。ガイド本での扱いからつい誤解してしまいがちですが、この再発まで含めると実はそれほど極端なレア盤というわけでもありません。CDでも再発された今となっては、正直それほど血眼になって探すような作品ではないと思いますが、もしもどこかで見つけた際には是非聴いてみてください。
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Loyal / Loyal Garner

2013-03-14 | Hawaii
このブログでは既にお馴染みなハワイのディーヴァ、故ロイヤル・ガーナーによる大手Paradiseレーベルからの2作目。Hula時代から通算するとおそらく4作目となるアルバムです。フリーソウルで人気の高い例の白ジャケット盤とハワイアンAORで知られCDでもリリースされている次作に挟まれている作品のため、彼女の作品の中ではいまいち影が薄い部類の作品ですが、何せこの頃の彼女は70年代後半~90年代までのキャリアの中でも絶頂期。当然、本作でも素晴らしい歌声を聴かせてくれます。いわゆるフロア向けのアップテンポな曲こそ収録されていないものの、全体的に非常に統一感のあるアダルト・コンテンポラリー・ハワイアン作品として仕上がっており、真夜中に聴くアルバムとしてはうってつけ。冒頭A-1のHello HonoluluからラストB-5のBlind Man In The Bleachersまで、しっとりとした大人のアイランドメロウソウルを堪能出来る名盤と言えるでしょう。収録曲個別に見ていくとまず注目なのがA-2のChotto Matte Kudasai。以前ここでも紹介したPhase 7による脱力系カバーのせいで世間的にはすっかりネタ曲扱いされていますが、実はこの曲のオリジナルは本作に収録されており、しかもこれがタイトルに似合わず普通にジャジーメロウなスロウAORの名曲だったりするので困ります。先にPhase 7のカバーを聴いている人がこのオリジナルを聴いたら、そのあまりのギャップに驚くこと請け合い。また、フリーソウル的な展開を見せるミディアム~スロウなA-4のHome In The IslandsとB-1のI Don't Want To Go Awayもなかなかのアイランドソウル傑作です。個人的に特に気に入っているのはA-3のBlessed With Another Day。どこか落ち着いた雰囲気なが魅力なAOR~ブラコン系コンテンポラリーハワイアンの名曲で、ガーナーの素晴らしい歌声を存分に堪能出来るライトメロウな一曲です。ちなみに他で紹介されているのをあまり見たことがありませんが、単に影が薄いため取り上げられる機会が少ないだけで、アルバム自体のレア度はそれほど高くない作品なので、気になる方は是非探してみてください。隠れた大人系コンテンポラリー・ハワイアンの名盤です。ちなみに参考になるかどうか分かりませんが、本作にはギター&バッキング・ヴォーカルであのマイク・ランディが参加。知っている人は話のネタにしてみるのも面白いかもしれません。
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Dance For Me / Nalu!

2013-03-13 | Hawaii
前作から長いスパンを開け2003年にリリースされた彼らの4th。オリジナル曲が3つ収録された後に、Talk Storyという13分にも及ぶメイキング・インタビューのような語りのみのトラックが収録されているという変則的な構成になっているため、正直アルバムと呼ぶには少し無理がありますが、現時点で世の中にリリースされている彼らの音源の中ではこれがもっとも新しい作品です。本作リリース時点ではグループの中心人物であったルパートも既に脱退しているらしく、もう一人のメンバーであるウェイマウスが一人でNalu!を名乗っている模様。そういう意味では少し扱いの難しい作品と言えるでしょう。ただ、たとえメンバーが1人になっていようが2000年代の作品であろうがサウンドメイク自体は以前と変わっていないのでご安心を。本作でもこのグループらしいナチュラルなコンテンポラリー・ハワイアンをやっています。木陰で休んでいるような気怠い雰囲気で始まるM-1のタイトル曲もなかなかですが、注目はM-2のIn Your Hawaiian Way 2003。1stアルバムにおいてタイトルとなった曲の2003年式リメイクです。M-1からの流れを受け序盤はまったりとした雰囲気で始まるものの、1番が終わった時点でテンポアップし得意のボサノバ系AORへ転調。原曲にはなかった展開ですが、今のリスナーには多分こちらの方が好みかと思われます。続くM-3のIsland Ladyもサニーサイド感溢れるボサリズムのAORで、おそらくフリーソウル的な観点から一番ウケがいいのがこの曲。同じコンテンポラリー・ハワイアンでも、たとえばロブ・メールのようなタイプのサウンドが好きな方なら多分ツボでしょう。変に時代が新しすぎる分、逆になかなか見つかりづらい一枚かもしれませんが、興味があれば是非探してみてください。さて珍しく4回に渡って連続して紹介してきたNalu!ですが、これでおそらく世に出ている全てのアルバムを紹介出来ているはず。他であまりこうしてまとめて紹介しているところが見当たらなかったので、いつもとは少し趣向を変えてお届けしてみましたがいかがでしたでしょうか。次回からはまた通常営業に戻りますので今後とも宜しくお願いします。
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Step / Nalu!

2013-03-12 | Hawaii
そしてこちらが1991年にリリースされた彼らの3rdアルバム。前作までとは異なり当初からCDで発売されたと思われる作品で、リリース元も前作までのKahale MusicからMr.B Recordsなるレーベルへ変更となっています。2ndの紹介でも書いたとおりウィリー・ソロモンは本作録音時点で既に脱退しているため、1stと同じくルパートとウェイマウスのデュオ体制にて制作されていますが、今回は比較的予算があったのか、バックミュージシャンの参加人数で言うならば彼らの作品中ナンバーワン。アルバム全体を包む空気感は1stリリース時から変わっていないものの、サウンドメイクという意味では時代の流れと共に徐々に洗練されてきており、そうした意味では彼らの作品中もっともコンテンポラリー度が高いのが本作ということになります。収録曲ごとに見ていくと、少し切ないメロディーが印象的なM-1のLocked Into Your Loveがまず名曲。ボサノバ調のミディアムなAORですが、アコギとピアノとキーボードで紡がれる陰のある音作りが堪りません。間奏でのサックスの音色も良い雰囲気です。そしてなんといっても絶品なのがM-7のHad To Run。イントロのメロウなサックス一発でハワイアンAOR好きはまず間違いなく悶絶なキラーナンバーです。知らない人が聴いたらマッキー・フェアリーの曲だと言っても信じてしまうくらいアーバンリゾート度が高い一曲で、自作コンピでも隠し球として入れてみました。良い意味で90年代のサウンドとは思えないチープな音作りとなっており、70年代の曲と混ぜて流しても全く違和感がないのも高得点。ハワイの90年代コンテンポラリーには隠れ名曲がたくさん眠っていますが、ここまで70年代後半の雰囲気をそのままトレースしている曲はちょっと他に思いつきません。いわゆるアイランドメロウな雰囲気が好きな方なら、正直この一曲のためだけに買っても損がないと断言出来る作品。CDオンリーでのリリースということもあり、コンテンポラリー・ハワイアンに詳しい人はともかく、普通のフリーソウル~AORファンには今のところほぼ無視されているアルバムなので、他の人と差を付けたい人には是非お勧めの一枚です。ちなみに有難いことに彼らの作品の中でもっとも入手が容易なのが本作。もちろん普通に転がっているというような類のアルバムではありませんが、気合を入れて探せばそう遠くなく手にすることが出来ると思います。
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