At The Living Room Reloaded

忙しい毎日の中で少し足を止めてみる、そんな時間に聴きたい素晴らしい音楽の紹介です。

Bizarre Ride II the Pharcyde / The Pharcyde

2015-12-19 | Golden Age Hip Hop
少しくどいですが、いわゆるゴールデン・エイジ・ヒップホップをもう一枚だけ。今回紹介するのはLA生まれの西海岸ニュースクール。日本でも人気が高いThe Pharcyde(ファーサイド)による1992年の1stアルバムです。初期De La SoulやA.T.C.Q.らNative Tongue(ネイティブ・タン)勢による本家ニュースクール・サウンドは正直何度聴いてもあまり好きになれないのですが、このアルバムは初めて聴いたときから今も変わらず大好物。フィーリング的なものなので言葉で説明するのがなかなか難しいのですが、なんというか初期De La Soulがちょっとチャラけすぎ、逆にA.T.C.Q.はサウンド的に少し玄人向けすぎな気がするのに対し、こちらのファーサイドは4MCによるポップなラップと音楽的にもレベルが高いハイクォリティなトラックのバランスが絶妙で、聴いていて耳馴染みが凄く良いんですよね。いわゆるヒップホップ畑の人以外でも、この作品は好きと言う方は多いはず。収録曲ではなんと言ってもM-7のSoul Flower (Remix) が抜群の完成度。先日ここでも紹介したメイン・ソースのFakin' The Funk、それからNaughty By Nature(ノーティー・バイ・ネーチャー)のHip Hop Hooray (Pete Rock Remix)、さらに同じ西海岸出身のSouls Of Mischief(ソウルズ・オブ・ミスチーフ)の93 'Til Infinityあたりと並び、アップテンポでメロディアスなパーティー系ラップの定番曲です。個人的にはSlimkid Tre(スリムキッド・トレ)がヘタウマなハモりを交えて聴かせる3バース目が特に好み。正にアゲアゲと言った感じですね。ちなみにその他の収録曲では続くM-8のOn The DLとラストを飾るM-16のReturn Of The B-Boyが好きです。M-8のPassin' Me ByとM-9のOtha Fishに関しては、共に魚のジャケットの12インチに収められていたリミックス・ヴァージョンの方が好み。最近リリースされている再発ではこれらの12インチ・リミックスも併せて収録されているようなので、気になる人は是非。ちなみに5回連続で続いたヒップホップの紹介はこれにてひとまずお休み。興味のない人も長々とお付き合い頂きありがとうございました。
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Resurrection / Common Sense

2015-12-12 | Golden Age Hip Hop
現在はコモンとして知られるシカゴ出身のラッパー、Common Sense(コモン・センス)による1994年の2ndアルバム。これもまた90'sヒップホップを語る上では避けて通ることが出来ない作品ですね。冒頭M-1のタイトル曲と、続くM-2のI Used To Love H.E.R.が二大クラシックとして知られていますが、実はそれ以外の曲もかなりレベルが高く、個人的には先日紹介したPete Rock & C.L.Smoothの3rdと並び、コアなファンでなくてもアルバム全編通して聴ける数少ないストリート系ヒップホップのアルバムだと思っています。全体的にレイドバックした曲が並んでいるのも両方の作品に共通した特徴ですね。ちなみに上記2曲以外で特に好きなのはM-5のIn My Own World (Check The Method)とのM-10のThisisme、それからM-12のChapter 13 (Rich Man Vs. Poor Man)あたり。特にYnotをフィーチャーしたM-12は正に古き良き時代の90'sヒップホップと言った趣で個人的にヘビロテ曲です。いずれの曲にも言えることですが、綺麗でありながらもどこかザラっとしたサンプリングによる上モノとタフなビートによる音作りが耳に心地よく、今聴いても古臭さを決して感じません。僕自身USモノのヒップホップを本格的に聴き始めたきっかけが2003年にリリースされたGrooveman Spotのミックステープだったこともあり、この辺りの音はやっぱり未だにど真ん中です。なお本作リリース後に同名のバンドから訴えられ、彼は改名を余儀なくされることになるのですが、その後の作品はオーガニック志向が高くなる変わりにストリート色が薄くなっていくため、個人的にはそれほど好きでもない感じ。デビュー作である91年のCan I Borrow A Dollar?も含め、やはり改名前の作品の方がずっと愛着があります。
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Illmatic / Nas

2015-12-06 | Golden Age Hip Hop
ゴールデン・エイジ・ヒップホップを取り上げるにあたり、どうしても避けて通ることが出来ないのが本作。天才Nas(ナズ)による1994年のデビュー作です。90'sヒップホップとしては基本中の基本となる作品であり、既に至るところで語りつくされている一枚ですが、作品トータルとしての完成度はやはり段違い。全10曲で約40分とLP時代を思わせる短い作品ながら、プリモの愛称で知られるDJ Premierをはじめ、ピート・ロックにラージ教授、それからATCQのQ-Tipなど当時の東側陣営の錚々たる面々が作る傑作トラック群は、今聴いても決して色褪せることがありません。個人的にはL.E.S.ことLeshan David Lewis(ルシャン・デイヴィッド・ルイス)が手がけ、盟友AZ(エーズィー)を迎えたM-2のLife's A Bitchと、マイケル・ジャクソンのHuman Natureを効果的に使った教授作によるM-10のIt Ain’t Hard To Tellが好みですが、その他にもストリート色濃い名曲群がズラリ。特にピート・ロックによるM-4のThe World Is Yoursやプリモが手がけるM-6のMemory Lane (Sittin' in da Park)、Q-Tipが製作したM-7のOne Loveあたりはクラシックとして名高いです。One Loveに関してはThe LG Experienceによる、よりドープでソウルフルなLG Main Mixや、God Father Donが手がけSadat Xを迎えたOne L Main Mixなどのリミックスも有名ですね。最近出ている20周年記念のリイシュー盤ではこのあたりのリミックス作品もボーナス・トラックとして収録されているため、今までヒップホップに触れておらず、これから初めて聴くというような人にはこちらの20周年記念盤がお勧めです。冒頭でも触れましたが、紛うことなく90'sヒップホップを代表する一枚。僕らよりも上の世代では、当時この辺りの音楽を否定していたような人も多いと思いますが、今こうして改めて聴いてみると何か新しい発見があるかもしれませんよ。偏見は捨てて是非一度聴いてみてください。
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Breaking Atoms / Main Source

2015-12-05 | Golden Age Hip Hop
ここ日本でも「教授」の愛称で知られるプロデューサー兼ラッパー、Large Professor(ラージ・プロフェッサー)が、カナダ出身の兄弟DJであるSir Scratch(サー・スクラッチ)、K-Cut(K・カット)らと結成した1MC+2DJのユニット、Main Sourceによる1991年の1stアルバム。これも僕らと同世代でヒップホップに興味のある方なら知らなきゃモグリな、ゴールデン・エイジ・ヒップホップを代表する一枚ですね。一口にヒップホップと言っても年代や場所によって様々なスタイルの作品がありますが、個人的に最もしっくりくるのがこの作品。程よくポップでありながらストリート感に満ちた極上のサンプリング・サウンドは唯一無二でしょう。特に気持ちよく跳ねたドラムにファンキーな上モノが重なるM-3のLooking At The Front DoorやM-4のLarge Professor、それからM-7のPeace Is Not The Word To Playあたりは彼らの真骨頂。いずれも聴いていると自然とカラダが動き出すキラー・チューンです。また、M-10のLive at the Barbequeは当時弱冠16歳であったNasの初お披露目曲として知られるナンバー。ドラムとビートのみのシンプルなトラックに乗るナズ、Joe Fatal(ジョー・フェータル)、Akinyele(アキネリ)、教授のマイクリレーが心地よいポッセカットに仕上がっており、往年のB-Boyなら胸が熱くなることでしょう。ちなみに2006年の国内リイシュー盤ではオリジナルの12曲のほか、未発表曲を含めた6曲が追加収録。これらのボーナス・トラックの中では何といってもサントラ「White Men Can't Rap」に収録されていた彼らの代表曲Fakin' The Funkが圧巻です。元B-Boy諸兄なら知らない人はまずいないと思いますが、これまでヒップホップに抵抗感があった人にも是非一度耳を傾けてもらいたい一枚。90年代初頭の空気感満載な最高の作品です。
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The Main Ingredient / Pete Rock & C.L. Smooth

2015-11-30 | Golden Age Hip Hop
付き合いが長い方はご存知だと思いますが、意外と昔から好きなのがヒップホップ。このブログの読者層とは少し違うかなと思い、実はこれまで意識的に取り上げてこなかったのですが、ゴールデン・エイジと呼ばれる90年代前半から20年以上が経過し、この辺の音楽も既に若者音楽という雰囲気ではなくなっているので、これを機に解禁したいと思います。と言うわけで記念すべき(?)第一作目はこの作品。Pete Rock & C.L. Smooth(ピート・ロック&C.L.スムース)のコンビによる1994年の3rdアルバム。往年のヒップホップ・リスナーにとってみれば知らなきゃモグリな大傑作です。ミドル・スクール感たっぷりのアッパーナンバーThe Creatorが収録された1stや、天下無敵なThey Reminisce Over You (T.R.O.Y.)収録の2ndも言わずもがなの傑作ではありますが、トータルの完成度という意味ではやはりこの3rdが一番でしょう。いわゆるフロアキラーなアッパー・チューンこそ収録されていないものの、全編にわたりソウルフルかつジャジーなサンプリングの美学が貫かれており、間違いなくこの時代におけるヒップホップの一つの到達点。M-1のIn The House~M-3のI Get Physicalに至る冒頭3曲の流れがまず曲間のスキットを含め完璧。その後もD.I.T.C.を思わせるファンキーなM-5のI Gotta Love、ラブリーでピースフルなM-10のTell Me、O.C.のBorn 2 Live同じくKeni Burke(ケニ・バーク)のRisin' To The Topサビ前2小節をループしたM-11のTake You Thereと傑作揃い。ラスト付近、M-14のIn The Fleshで、I Get Physicalと同じGeorge Benson(ジョージ・ベンソン)によるIt's Overの別箇所を改めてループさせているのも心憎いですね。50代以上の人にしてみれば、ヒップホップと言うだけで抵抗感があるかもしれませんが、今だからこそ逆にそうした先入観を持たずに聴いてみてもらいたい一枚。名盤中の名盤です。
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