At The Living Room Reloaded

忙しい毎日の中で少し足を止めてみる、そんな時間に聴きたい素晴らしい音楽の紹介です。

世界は愛を求めてる / 野宮 真貴

2016-04-14 | Pops
前回「いつも愉快な」小西康晴さんによるPizzicato One名義での作品を取り上げたので、今回はかつての相棒である「いつもチャーミングな」野宮真貴さんの昨年リリースされたアルバムを紹介。「What The World Needs Now Is Love ~野宮真貴、渋谷系を歌う。~」とサブタイトルにあることからも分かるようにカバー曲集なのですが、実際に取り上げられている楽曲は90年代中盤のいわゆる「渋谷系」ソングのみではなく、その元ネタであるロジャー・ニコルスやバート・バカラックであったり、往年のシティポップスであったりとバラエティに富んでおり、単純に聴いていて気持ちいいポップスの名盤となっています。冒頭M-1は誰もが認めるP5時代の代表曲「東京は夜の七時」。過去にDVDでも映像作品がリリースされたBSフジでのP5ラストセッションに近い、パーカッションを効かせたジャズ風のアレンジとなっており、往年のファンならばこの一曲だけで引き込まれること必至かと思われます。M-6の「ドリーミング・デイ」は山下達郎がソロ本格始動前にナイアガラからリリースした作品のカバー、カジヒデキをゲストに迎えたM-10の「ラテンでレッツ・ラブまたは1990サマー・ビューティー計画」はフリッパーズ・ギターのカバー。どちらもオリジナルの良い部分をうまく昇華した好カバーに仕上がっています。そして個人的に最も気に入っているのがM-9の「音楽のような風」。元々はEPOが1985年にリリースしたシングル曲(日本ビクタービデオテープDYNAREC CMソング)なのですが、ここではそれをロジャニコ(というか、それに影響を受けたピチカート全盛期)風のボサノバmeetsソフトロックなサウンドでアレンジしており、M-1同様P5ファン即死の展開となっています。正直ここ数年の野宮真貴さんの活動は琴線に触れることが少なく、あまり真剣に追ってはこなかったため、個人的には久々のヒットです。前回のPizzicato Oneと併せて、当時を懐かしみながら少しノスタルジックな気持ちで聴くのが正しい楽しみ方なのかもしれませんね。
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わたくしの二十世紀 / Pizzicato One

2016-04-10 | Pops
特に存在も知らなかったのに、たまたまレコ屋で壁にかかっているのを発見した結果スルー出来ず、つい購入してしまった一枚。元ピチカートファイブの小西康晴さんによるPizzicato One名義での2ndアルバムです。元々CDでは昨年の6月にリリースされていた作品ですが、昨今の怪しげなブームの影響もあり、つい先日アナログ化された模様。まぁ元々P5時代から正規盤のリリースがなくても趣味でアナログのプロモ盤を山ほど作っていた人なので、凝った装丁でのアナログ化に関しては想定の範囲内でしょう。ただ、なんというか売り方がどこぞのアイドルみたいでやや阿漕。CDでの収録曲16曲を、14曲を収録したLPと2曲のみ収録の7インチに分割した上、各々の価格も通常の値段の約1.5倍に設定するというのは流石にやり過ぎかと思います。もっともファンと言うか元信者なので、酷い商売だと分かっていながらも買ってしまうわけですが…(笑)。まぁ肝心の内容自体も抜群ですしね。基本的には曲ごとに異なるゲスト・ボーカルを招き、P5時代の曲を中心とした過去の楽曲をシンプルかつアコースティックにセルフカバーした作品なのですが、アレンジがシンプルになった分だけ、どの曲も小西さんの書いた詞の魅力がダイレクトに伝わる作りになっており、はっぴいえんどに端を発する日本語ポップスが好きな人なら、まず間違いなく満足出来るはず。収録曲はいずれも素晴らしいものばかりですが、敢えて一曲をピックアップするのであればA-6の「ゴンドラの歌」がベスト。オリジナルは98年にP5名義で発表された「華麗なる招待」というロジャニコやミシェル・ルグラン風のアップテンポ曲なのですが、今回はグッとテンポを抑えた大人なアレンジとなっており、おまけにメイン・ボーカルを務めるのは小西康晴さん自身(!)。ラジオとか聴いていた人なら分かると思いますが、実は彼は良く響く低音の凄く良い声をしているんですよね。この曲も含めいずれも内向的なアレンジになっているため、皆でわいわい楽しむような作品では決してありませんが、深夜に一人楽しむには本当にお勧めの一枚。前述のとおりアナログの売り方はひどいですが、CDであれば普通に買えるので、気になる方は是非試してみください。
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