多分この盤が今年最後の紹介となるのでしょうか?先日不慮の死を遂げたスウェーデンの歌姫Monica Zetterlundによる64年録音の快作。モニカと言えばクラブ界隈のみならず世界中で人気のジャズ・ヴォーカリストなので、今回の件についてはひどく残念です。心からご冥福をお祈りします。で、このアルバムですがBill Evansと共作でリリースしたあの大名作Waltz For Debbyとほぼ同時期な64年にリリースというわけで、当然の如く悪いわけがありません。山ほどある彼女のアルバムの中でも、Waltz For DebbyやChicken Feathersと並んでサバービア大定番なA-1、Speak Lowが収録されているだけで充分買う価値ありです。わりと古い時期の録音ながら、流麗なピアノトリオをバックに伸びやかに歌い上げる様は、ヴォーカル・ファンなら必聴でしょう。前述のRita Reys辺りのアルバムが気に入ったなら、是非この盤も手にするべき。素敵なヨーロピアン・ジャズ・ヴォーカルが思う存分に堪能できます。個人的にはA-3でThe More I See Youあたりをカヴァーしているのも嬉しいところ。とりあえず持っていない人は外資系CDショップへ行きましょう。素敵な夜を味わえること請負です。
Schemaレーベルから年の瀬に届けられたアルバムは素敵なブラジリアン。Nicola Conteとの競作としてリリースした前作も、例のFive Corners QuintetやGerardo Frisinaのリミックスを含めかなり聴きましたが、今作はソロ名義にてよりブラジル度が上がって素晴らしいアルバムに仕上がっています。いわゆる旧譜の持つノスタルジックでサウダージな質感と、現代クラブ・ミュージックが嫌味なく融合しているところは流石ですね。D.M.R.などではB-1のOnde Anda O Meu Amorという曲をプッシュしていて、この曲はいかにもSchemaと言った趣のクラブ向け高速ブラジリアンなのですが、僕としてはむしろこの盤の良さはその他の曲にあるのではないかと感じています。そのなかでも特に抜群に素晴らしいのがC-1のRio De Janeiro。かろやかに舞うフルートとピアノの音色がエレガントなサンバ・ジャズです。ラスト付近で現れる、どことなくTania Maria辺りを彷彿とさせるスキャットも完璧。これ、知らない人が聴いたら新譜だとは思わないはず。そのくらい(良い意味で)旧譜っぽい一曲です。Cafe Apres-Midiに収録されているような曲が好きな人には絶対オススメです。これぞ現代のリヴィング・ミュージック。
早いもので今年ももう終わり。と、言うわけで僕なりに今年の気分をベスト10でまとめてみました。普段と少し雰囲気が違いますが、まぁたまにはこんなのもいいかなと思いまして。本当は全部ジャケットを掲載したいところなんだけれど、ブログの機能的にそれはムリそうなので、一位のもののみ掲載しておきます。
1.And The Feel Life Orchestra / Torbjorn Langborn And The Feel Life Orchestra (Free Soul)
2.Atom's Flower / Gino Marinacci (Hardbop & Modal)
3.L'evenement Le Plus Important Depuis Que L'homme A Marche Sur La Lune / Michel Legrand (O.S.T.)
4.Just In Time / Svante Thuresson (Comtemporary Jazz)
5.Livin' In The City / Melton Brothers Band (Free Soul)
6.Le Diable Et Les Dix Commandements / Guy Magenta (O.S.T.)
7.Avec Ou Sans Veston / Paul Louka (Brasil)
8.At The Living Room / Marco Di Marco Trio (Hardbop & Modal)
9.Marju Kuut - Uno Loop / Same (Hardbop & Modal)
10.Hug / Toko Furuuchi (Japanese Groove)
とりあえず、ここに挙げた以外にも愛聴盤はたくさんあるのですが、この10枚はその中でも抜群によく聴いていたものばかりです。全体的にヨーロッパの古いジャズを良く聴いてた気がするのですが、こうして見ると何気にフリーソウルとかも相変わらず聴いてますね。なお各レビューは既に既出のものですので割愛します。それでは、来年もまた当ブログをよろしくお願いします。よいお年を…。
1.And The Feel Life Orchestra / Torbjorn Langborn And The Feel Life Orchestra (Free Soul)
2.Atom's Flower / Gino Marinacci (Hardbop & Modal)
3.L'evenement Le Plus Important Depuis Que L'homme A Marche Sur La Lune / Michel Legrand (O.S.T.)
4.Just In Time / Svante Thuresson (Comtemporary Jazz)
5.Livin' In The City / Melton Brothers Band (Free Soul)
6.Le Diable Et Les Dix Commandements / Guy Magenta (O.S.T.)
7.Avec Ou Sans Veston / Paul Louka (Brasil)
8.At The Living Room / Marco Di Marco Trio (Hardbop & Modal)
9.Marju Kuut - Uno Loop / Same (Hardbop & Modal)
10.Hug / Toko Furuuchi (Japanese Groove)
とりあえず、ここに挙げた以外にも愛聴盤はたくさんあるのですが、この10枚はその中でも抜群によく聴いていたものばかりです。全体的にヨーロッパの古いジャズを良く聴いてた気がするのですが、こうして見ると何気にフリーソウルとかも相変わらず聴いてますね。なお各レビューは既に既出のものですので割愛します。それでは、来年もまた当ブログをよろしくお願いします。よいお年を…。
ベルギーの女性コンポーザー兼ピアニストMyriam Alterが、1994年に残した甘美で繊細なクインテット作品。例によって澤野工房からの再発作品カタログの一つなのですが、これがなぜ今まで聴いてこなかったのかが自分でも不思議なくらいに、僕の趣味にぴったり当てはまる素晴らしい作品。ピアノ・トリオ作品がほとんどの澤野作品のなかでは異色のクインテット作と言うことで、気になって聴いてみたら大当たりでした。まるで映画音楽のようなM-3のTendernessは至福のワルツ・ジャズ。女性特有の優しさと儚さが繊細な鍵盤タッチから伝わります。まろやかな2管のアンサンブルも印象的。今の季節のフロアでもばっちりなM-5のBossaも秀逸。爽快なリズムの中に、どこまでも切なく響き渡るホーンが素晴らしすぎです。まさに冬に聴きたいジャズ・ボッサと言った趣。またモーダルなバラード、M-9のMysteryも神秘的で美しい。94年という昨今のリリースにも関わらず、いい意味で古き良きモダンなセンスを持った一枚です。全体的に柔らかいタッチでまとめてあるので、おそらく女性でも聴きやすいはず。「きれいなジャズは好きだけれど、ピアノ・トリオにはもう飽きた」という人にもオススメです。もちろんジャズDJ諸氏にもね。CDだからって見逃すと損しますよ。澤野作品中1、2位を争うほど好きなアルバムです。
1975年のドイツに残された欧州産ジャズ・ボッサの最高峰。あまりにもレアなオリジナルはともかく、数年前に澤野からアナログでリイシューされたようなのですが、それすら今では全く見つからなくなってしまったので、とりあえずは同じ澤野からのCDで我慢することにします。それはさておき、この盤は本当に素晴らしいですね。なんと言うかTenorio Jr.とDudley Mooreの良いところだけを持ってきたかのような印象。全曲最高ですが、とりあえず注目すべきはM-1のタイトル曲とM-3のBossa Made In Germany。どちらも超絶技巧のピアノとリムショットが素晴らしい高速ジャズ・ボッサです。これほどの技術を持ちながら、当時はほとんど無名だったのが信じ難い。高速アフロキューバンにアレンジされたM-7のAutum Leavesも最強。ここでも惜しむことなく超絶のピアノ・ソロを披露しています。管なしのピアノトリオ作品ながら、おそらくフロアでもよく映えることでしょう。ちなみにブラジリアンと言えど、全体的にヨーロッパならではのモード感に包まれているので、決してゆるいというわけではありません。多分近年のSchema辺りのファンでも全然いけるはず。かなりオススメ盤なので是非聴いてみてください。
一部ヨーロピアン・ジャズ愛好家のみが知るスイス産の激レア盤。僕自身正直なところあまり情報がなくて分からないのですが、SBC(Swiss Broadcasting Corporation)という放送局のノベルティー盤として1981年に製作されたもののようです。演奏を担当するSwiss Jazz Quintetなる5人組も、日本では無名であろうと思われる(当時における)新鋭のミュージシャンなので全く事情が分からないながら、この盤は文句なしに非常に素晴らしい作品です。と言うよりも両面の一曲目に配されたTell's Shotという曲が奇跡。トロンボーン奏者のRobert Morgenthalerによるオリジナル作品のようですが、これがモロにモーダルなジャズ・ワルツの逸品なんですね。典型的なヨーロピアン・モーダルと言うか知性と気品に満ちた演奏を9分という長尺で思う存分堪能できます。特にピアノに関してはあまりにも美しすぎる。そしてDJ諸氏にとって嬉しいのはB面は各曲の最初がナレーション入りだということ。うまくミックス・テープなどに収録したら格好よく映えそうです。須永辰緒さん辺りのテープの雰囲気そのものと言ってもいいでしょう。ただ結構なレア盤なので、探すのはなかなか難しいかもしれません。おまけにもしも見つけても値段が張ることも考えられます。僕はたまたま吉祥寺のユニオンで相場の3分の1程度で見つけられたのでラッキーでしたが・・・。
ようやくアナログでもリリースされたFive Coners Quintetの1stアルバム。クラブジャズ周辺の新譜としては、おそらく今年を代表する一枚として、誰もがこの盤を挙げることでしょう。クインテットとは名ばかりで、実は曲によって様々なミュージシャンが参加するTeppo Makynenによる一大プロジェクトがこのFive Corners Quintet。おまけに当初クレジットされていたベースのTapani NevalainenとドラムスのPekka Jaclinとは実は架空の人物で、実際には打ち込みサウンドだと言うのだから驚きです。さて、既発の曲は除き新録曲だけを見ていくとして、まず耳に留まるのはB-2のThis Could Be The Start Of Something。C-3のBefore We Say Goodbye同様にMark Murphyのヴォーカルをフィーチャーした洗練された大人のジャズ・ボッサで、小粋なヴァイブ使いが心憎い一曲です。Markのヴォーカルもどこまでもヒップで素晴らしい。高速アフロキューバンなC-2のLighthouseもストレート・アヘッドな快作。まさにFCQ節の一曲です。そしてオルガンとフルートをフィーチャーしたモーダルな高速ボッサのD-1、Unsquare Bossaはこの2LP中で僕が最も気に入っている曲。文句なしに格好いいフロア・キラーです。とりあえず全曲素晴らしいので、まだ知らない人は今すぐ聴いてみてください。ちなみに彼らは2月に初来日の予定。何があっても、とりあえずは見に行こうかなと考えています。
こちらはRicky-Tickレーベルの新作12インチ。Jukka Eskola同様TFCQプロジェクトにも参加しているテナー奏者Timo Lassyによるソロ・プロジェクトです。当然のようにJukka Eskolaも参加し、プロデュース兼ドラムスはTeppo Makynenなわけですが、こちらはどちらかと言うとスピリチュアル度が高めな一枚に仕上がっています。1ホーンと言うのが残念な気もしますが、B面のHigh At NoonはSleep Walker辺りを彷彿させるアフロ~ブラジリアンな高速スピリチュアル・ジャズなので、その辺りのファンの方には堪らないないようでしょう。しかしながら、相変わらずの快進撃を続けるRicky-Tickですが、個人的には初期のクォリティは最早維持できていないかなというのが正直な本音だったりもします。特にBlueprintやThe Devil Kicks辺りのリリースは本当に素晴らしかったので、どんな曲を出してもアレには勝てないと言う気がしてしまうんですよね。普通に格好いいんだけれど、それほど衝撃を受けるということはない。何となく最近のRicky-Tickにはそんな印象を受けてしまいます。ただ、相変わらず素晴らしいのはそのジャケット・センス。60年代のブルーノート作品かと見紛うほどの美麗ジャケットは、是非手元に置いておきたいものです。
Five Corners Quintetの主流メンバーであるトランペット&フリューゲル・ホーン奏者Jukka Eskolaによる最新12インチ。前作Buttercup/1973はどちらもアフロキューバン~ブラジルな雰囲気のアップテンポな楽曲でしたが、今作はAB面どちらも比較的落ち着いたダウンテンポの佳曲となっています。どちらかと言うとジャズと言うよりジャズ・ファンクと言った作風で、たとえば最近だと日本人アーティストのIno Hidefumi辺りにも近い印象を受けます。まぁ両者共に生ピアノではなくローズ使いのダウンテンポだということもあるのでしょうが…。若干気になるのはその発売元レーベル。これまでのRicky-TickではなくFree Agent Recordsという新興レーベルからのリリースとなっています。元々Jukka Eskolaのアルバムをリリースしたのもこのレーベルなので、当たり前と言えば当たり前なのかもしれませんが、今のところ所属アーティストは彼一人の模様。どちらの曲もFCQ同様にTeddy RokことTeppo Makynenのプロデュースとなっていますが、僕はどちらかと言うとB面のKuloの方が好み。ちなみにどちらもCDのみの1stアルバムからのカットとなりますので、CDを既に持っている方は買う必要ないかもしれませんね。
フリーソウル・フリークからBボーイまでお馴染みのこの盤は、白人一人を含む8人編成のバンドBreakwaterによる78年の1stアルバム。曲自体は全然前から知っていたのですが、実はこの盤って今まで持っていなかったので、ふと思い立って購入してみました。やっぱりこの盤の肝はA-1のWork It Outにあるのでしょうね。他の曲が悪いと言うわけでは決してないのですが、この一曲があまりにも素晴らしすぎるために他が完全に霞んでしまいます。タイタニックのテーマを思わせる壮大なフルート使いのイントロからして既にノックアウト。この気持ちよさと言ったら本当に言葉に出来ません。正にフリーソウル・クラシックの名に恥じない最強の一曲です。こういう曲ってソウルの文脈で語られがちだとは思うのですが、僕の中ではどちらかというとソウルと言うよりAORに近い雰囲気です。黒人AORって言うと何だか語弊がありそうだけれど、本当にそんな感じがします。SMAPネタが有名なNiteflyte辺りにも似た印象。70年代後半から次第に増えてくるアーバンでクリスタルなお洒落系音楽。そんな風に感じます。いや、本当に素直にいい曲です。再発なら普通に安く買えるし、オリジナルだって今ではそれほど高くないのでオススメですよ。