At The Living Room Reloaded

忙しい毎日の中で少し足を止めてみる、そんな時間に聴きたい素晴らしい音楽の紹介です。

Pal Jimmy / Jimmy Deuchar Quintet and Sextet

2008-04-27 | Hard Bop & Modal
こちらも最近話題の再発盤。欧州ジャズ好きにはタビー・ヘイズの相方として知られるUKのトランペッター、ジミー・デューカーの58年録音盤です。クラブ・ジャズ系のファンの方々には後のクラーク=ボラン楽団参加でも、その名前に聞き覚えがあるでしょうか。最もタビーやレンデル=カーと異なり、単独名義でのリリースがあまり多くないため(EPは何枚かあったはず)、一般には一部マニアを除き知名度が高いミュージシャンではないと思いますが…。さて、本作はそんな彼が英Tempoに遺した一枚。何でも極端に少ない枚数しかプレスされなかったそうで、オリジナルは僕もこれまで見たことがありません。おそらく、この手のブリティッシュ・ジャズの中でもトップ・レアな一枚であることは間違いないでしょう。ただ、そうした作品自体のレアリティーとは裏腹に、肝心の中身の方はさほど身構えて聴くような内容ではなく、むしろどちらかと言えば肩の力を抜いて聴ける耳馴染みの良い作風。当然のようにフロントとして参加してるタビーが、お馴染みのテナーではなくバリトンを吹いていることもあるのでしょうが、全体的にとても落ち着いた渋い仕上がりになっています。目先の派手さはないものの、玄人好みする雰囲気とでも言ったところでしょうか。夕暮れ時に良くハマる一枚ですね。特に気に入っているのはA-3のBewitched Bothered And Bewildered。古きよきモダン・ジャズを聴かせてくれる名バラードです。少しテンポは上がりますが、A-2のI Didn't Know What Time It Wasもノスタルジックな仕上がりで良い感じ。ここでもタビーによるバリトンの温かい音色が絶品ですね。最近は何だか、派手な曲よりもこういう落ち着いた雰囲気により惹かれます。少し歳を取ったせいでしょうか。一方、クラブ世代の人に受けが良さそうなのはB-4のSplit Second。アップ・テンポの込み上げメロディーで疾走する素敵な三管バップです。初期のバッソ=ヴァルダンブリーニにも通じる雰囲気なので、おそらく皆好きなはず。ちなみにCDもJasmineから出ているようで、こちらであれば今後も労せず買うことが出来ると思いますが、おそらくアナログに関してはこの先のプレミア化が必至。興味のある人は店頭にあるお早めのうちにどうぞ。
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Funky Jam Session / Mitsuru Ono

2008-04-22 | Hard Bop & Modal
巷で話題のコロムビア再発から紹介。元ビッグ・フォーのベーシスト、小野満氏による60年の実況録音盤です。何でもオリジナルは非常にレアな作品だそうで、市場に出回れば軽く20万円はする代物なのだとか…。こちら方面はそれほど知識があるわけではないので、詳しいことはあまり分かりませんが、少なくとも普通に生活している限りはまず出会わない作品と考えて間違えないでしょう。こんなアルバムをわざわざ再発して頂いていたレーベルに、まずは感謝したいと思います。さて、気になる中身は、トリオが3曲にオールスターでのセッションが4曲。白木秀雄が参加と言うことで、最初に目を惹かれるのはやはり、本家ブレイキーばりに叩きまくるB-3のNight In Tunisiaですが、実際にはどちらかと言うとトリオでの曲の方が全体に出来が良いかなというのが正直なところでしょうか。何と言うか編成の少ないトリオの方が、小野満のベース・プレイがより映える気がします。個人的に特に気に入っているのはB-2のOver The Rainbow。本来であればピアノが弾くべきメロディー・ラインを敢えてベースで弾いてることにより、曲自身の持つブルージーな雰囲気が強調されていて、かなり良い雰囲気に仕上がっています。世良譲による途中のピアノ・ソロがまた素敵。間違ってもクラブ向きの演奏ではないですが、真夜中に聴くのにぴったりの幻想的なナンバーですね。一転して急速調の展開で聴かせるA-2のS' Wonderfulもなかなか。こちらも別の意味で夜の雰囲気を持った良いアレンジだと思います。また、オールスターのセッションではB-1のNow's The Timeがお気に入り。渡辺貞夫ら4管が、ミディアム・アップの4ビートに乗せ軽快なソロ回しを見せる好セッションで、特にクラリネットの北村英治が抜群に良い雰囲気です。これまでクラリネットと言うと古い感じがしてしまって、あまり惹かれたことはありませんでしたが、モダンに吹けばきちんと格好良いんですね。ちょっとびっくりしました。クラブ世代の人まで広くオススメ出来るような作品かと言われれば少し微妙な気はしますが、モダン好きならばおそらく気に入るであろう一枚です。あまり多くプレスはされていないと思うので興味のある人はお早めにどうぞ。
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The Rainbow Quartet / Same

2008-04-17 | Hard Bop & Modal
少し間が空きましたが、先日のルイス・ヴァン・ダイクに引き続き今回も蘭盤のEPから紹介。一般的な知名度は全くないものの、この印象的なジャケットとコンボ名の覚えやすさも手伝い、知っている人は知っているThe Rainbow Quartetによる57年の作品です。彼らはヴィブラフォンのロブ・メインを中心としたオーソドックスなヴァイブ・カルテット。年代がら若干古いスタイルのモダン・ジャズではありますが、メインのヴァイブを主体にした演奏はとても上品で、全体的にも非常に聴き易い一枚になっています。中でも面白いのはA-2のSoftly, As In A Morning Sunrise(邦題:朝日のようにさわやかに)。タイトルとは裏腹に上手く抑制を効かせた知的なアレンジとなっていて、ある意味とてもヨーロッパ的とも言える陰のある仕上がりを見せている点が興味深いですね。また、B-2に収録されたStrike Up The Bandは小気味良いテンポで聴かせる好ナンバー。いわゆる派手さこそないものの、非常にIQの高そうな演奏で良い感じです。こういう耳ざわりの良いサウンドは女の子にも受けが良いかもしれませんね。僕自身もこういう音は好き。何と言うかハードバップに疲れたような時に、そっとかけるのに最適なのではないかと思います。そして冒頭でも少し触れましたが、内容以上に魅力的なのがこのジャケット。全く無駄のない洗練されたデザインが素敵ですね。ヨーロッパのEPには優れたジャケを持つものが多いですが、本作も写真の撮り方、カラーリング、レーベル表示の位置と全てにおいて調和された正に文句の付けようのない一枚です。こういう盤はつい部屋のどこかに飾ってしまいたくなります。たかがジャケット、されどジャケット。個人的にはレコードを買う上で、このジャケのデザインというのもかなり大きなウェイトを占めている気がするのですが、皆さんはどうでしょう。もちろん、内容がある程度以上の水準であることは必要最低条件ですが…。
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Loosdrecht Jazz Concours / Trio Louis Van Dijk

2008-04-08 | Hard Bop & Modal
先日マルティン・ホークを紹介した時にも少し触れたルイス・ヴァン・ダイクのデビュー作がこれ。例の「ヨーロッパのジャズ・ディスク1800」でもカラー・ページで紹介されていた盤ですね。さて、彼と言えば当時わりとジャズ喫茶でもかかっていたという70年代以降の知的なプレイのイメージが強いですが、どうやら元々は正当派のバップ系ピアニストだったようで、意外にも本作では瑞々しいトリオで洗練されたハードバップを披露しています。ピアノ・トリオはあまり詳しくないので良く分からないものの、同じ頃のベント・アクセン辺りに近い雰囲気と言うのが最初に抱いた感想。モノクロームのジャケットからして、既に何となくダニッシュ・ジャズを思わせるものがある気がしますが、プレイ自体の質感にもわりと似たところがあるのではないでしょうか。ヨーロッパ的な洗練さと力強さが巧い具合に調和していて、個人的にはかなり好きな感じです。不穏なイントロから始まり一気に駆け抜けるA-1のIt Don't Mean A Thingもバピッシュな演奏で素敵ですが、白眉は何と言ってもA-2のDear Old Stockholm。ゲッツやマイルスのプレイで広く知られるこの曲を、ここではとびきりダンサンブルなマイナー・バップに変換。グルーヴィーに打ってるリズムと跳ねるピアノが印象的な今風のアレンジになっているので、おそらくこれは若いリスナーもきっと好きでしょう。特にニコラ・コンテ辺りのファンならば確実に気に入るはず。少なくとも僕は大好きです。ちなみにB-Sideに収録されたStraight, No Chaserも同タイプのアレンジでかなりグッド。あまり目立たないポイントではありますが、いずれの曲でもベースのシーズ・ハメリンク(?)が地味に良い仕事をしていて、若かりし頃のペデルセン・ファンはこちらに耳を傾けるのも面白いかもしれません。EPというフォーマットの特性上、全3曲10分程度と息も付かぬ間に終わってしまう作品ではありますが、その分だけ当時の欧州ジャズが持つ独特の魅力がギュっと凝縮されたような一枚。僕のようにルイス・ヴァン・ダイクという名前に抵抗がある方にこそオススメな素敵な作品です。
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My Point Of View / Herbie Hancock

2008-04-06 | Hard Bop & Modal
いわゆる新主流派ピアニストの代表格、そしてマイルスによる第二期黄金クインテットの一員としても知られるハンコックによる63年のリーダー作。ブルーノートの廉価盤LPでも最近再発されたので、それほど詳しくない方でもジャケットに見覚えのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。さて、そんな本作。彼のブルーノート諸作の中では比較的地味な一枚ですが、ちょうどマイルスのバンドに加入するのと同じくらいに録音されたアルバムとのことです。冒頭A-1のBlind Man, Blind Manは、前年に吹き込まれたTakin' Off収録のWatermelon Manの二匹目の泥鰌的な曲。ジャケットでも大きくクローズアップされています。ただ、ジャズ・ロック自体がそれほど好きでもないこともあり、個人的にこれはちょっと苦手だったり…。むしろ気になるのはA-2のTribute To Someoneの方で、僕にとって本作はこの1曲のためにあるようなもの。欧州ジャズ好きには分かるかもしれませんが、ジョルジオ・アゾリーニによる同名のイタリアン・モーダル名盤の元曲です。ハンコックがまだ学生の頃に書いた曲らしいのですが、これが非常に美しいメロディーを持った素晴らしい作品で、聴くたびに優しい気持ちになれる魔法のナンバーになっています。きらめくようなピアノのイントロに続くドナルド・バードのトランペットが絶品。ハンコックのピアノ・ソロもニューヨークの摩天楼を思わせる都会的なプレイで良いですね。ちなみにソロ2番手のモブレーに関しては賛否両論あるようですが、個人的にはこちらも結構好きです。やわらかな夜に恋人同士で聴くのにもぴったりなロマンチックな一曲。クラブ向きでは全くないですが、こういう曲はもっと大切にしていきたいですね。なお僕が持っているのはリバティー盤。そんなに高くもなく結構頻繁に見かける盤です。わりと音も良いので、廉価再発LPを買うくらいならこちらの購入がオススメ。ちなみに最後になりますが、この盤はここにも良くコメント下さる某コレクターさんから教えて頂きました。この場を持ってお礼に変えさせて頂きたいと思います。
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At The Expo / The Metronome Quintet

2008-04-04 | Contemporary Jazz
先日に続き再び登場のMetronome Quintet。この間紹介した盤は彼らのデビュー作でしたが、こちらはその後10年ほど経過した1970年の作品です。Jazz Next Standard誌に紹介されていた例のSwinging Mahagonnyが67年作なので、それよりも少し後の作品と言うことになりますね。さて、この作品でまず気になるのはジャケットに書かれた片仮名。一見すると国内の企画盤のようにも思えますが、裏ジャケのクレジットを見ると、これでもチューリッヒ録音のれっきとしたスイス盤だから驚きです。そして当然ながら当時の日本にこの作品は入ってきていないでしょう。そんな作品のジャケットになぜ片仮名が使われているのか。その秘密はどうやらタイトルにありそう…。はい。そろそろこの謎の種明かしをしてしまうと、実は彼らは70年の大阪万博でひっそりとライブを行っていたらしく、このEPはその後スイスに帰ってから日本文化にインスパイアーされて録音した作品とのことです。従って収録曲もどこか日本風のものばかり。特に象徴的なのはJapan Suite(日本組曲)と名づけられたB-Sideのメドレーで、黒田節~草津湯もみ唄~豊盃節~貝殻節~山形おばこと、我々日本人ですらほとんど知らない民謡を見事にジャズ化しています。個人的にはちょっと色物っぽくて正直好きではないのですが、きっと外国の方はこういうの好きなんでしょうね(笑) 外国人が日本をどういう風に見てるかを知るためには興味深い一曲です。A-1のExpo Bluesは彼らのオリジナル。こちらはオルガンを交えたジャズ・ファンク調の一曲で、ヒップホップの人がサンプリングに好みそうなナンバーになってます。ただ個人的に、本作最大の聴き所は何と言ってもA-2のHadaka No Shima(裸の島)。元々同名の日本映画のタイトル曲(未聴です)のようなのですが、これが地味ながらも非常に夜感漂うモーダルな仕上がりとなっていて相当良い雰囲気です。日本的な雰囲気とジャズが高次元で融合した名演。ウリ・スターブによる転がるヴァイブと、むせび泣くブルーノ・スポエリのサックスの音色が気持ちいいです。少し前に流行った和ジャズに対するヨーロッパからの回答と言うか、そんな雰囲気が味わえる不思議な一枚。あまり見かけない作品ですが、聴いてみる価値はあると思います。
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