At The Living Room Reloaded

忙しい毎日の中で少し足を止めてみる、そんな時間に聴きたい素晴らしい音楽の紹介です。

Danish Jazzman 1967 / Bent Jadig

2006-10-27 | Hard Bop & Modal
寡作なことで知られているデンマークのサックス奏者による本作は、昨今のユーロ・ジャズ・ブームにおける台風の目。以前のHank Bagby Soultetに続き、高額&レア過ぎて自分では絶対に買えないレコードながら、運良くも音を実際に聴いた者ならば、やはり紹介せざるを得ないLPです。デンマークのDebutに67年において吹き込まれた作品で、生涯において2枚しか単独リーダー作を残さなかった彼による貴重な演奏を聴くことが出来る一枚。しかも次作となるSizzlin'は、本作から実に20年ものスパンを開けて80年代中盤に録音された作品であるため、そう言った意味では60年代当時の彼の演奏を存分に堪能できるLPは、アクセンとの1枚を除くとなるとこれだけと言えるでしょう。もちろんサイドを固めるのは、当時のダニッシュ・ジャズ・オールスターズ。さらにこの前年に大傑作Swinging Macedoniaを残したばかりのダスコ・ゴイコビッチを、ユーゴスラビアからゲストとして迎えているとなったら、もう聴かなくともだいたいの音は想像が付くでしょう。まず耳を奪われるのはA-1のB'z Waltz。イェーディグのフルート(!)とボッチンスキーのミュート・トランペットによる化学反応が美しすぎるワルツ・チューンです。そして本作中最も素晴らしいのがA-2のDoo's Blues。ペデルセンによる重厚なベース・ソロから始まる高速キラー・ジャズ・ダンサー。クレジット上はボッチンスキーとなっているものの、ほぼ間違いなくダスコが吹いていると思われるトランペットと、イェーディグのテナー・サックスによるフロントは正に欧州最強。もちろんリエルによる迫力のドラミングも抜群です。これまでも数々の幻盤が再発されてきましたが、それらの中において最後の砦と言えるのが本作。心の底から再発を希望します。
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.....idea / Gino Marinacci e il suo Complesso

2006-10-22 | OST / Library
あまりにもシンプルかつ洗練されたジャケットが印象的な本作は、イタリアが誇るジャズメンの活躍をドキュメントタッチで描いたという映画のサントラ。知る人ぞ知るフルーティストGino Marinacciを中心として71年に吹き込まれたセクステットによる大名盤です。前々から欲しい欲しいとは思っていながら再発もされず、かと言ってオリジナルは全く見つからずという状況で、長年目にすることが出来なかった盤でしたが、様々な紆余曲折を経てようやく手にすることが出来ました。とにかく何はなくともA-2のMetropoli。近ごろDeja VuレーベルのIdea 6や、Sunaga t Experienceもカヴァーしている作品ですが、やはりオリジナルは完成度が圧倒的に違います。マリナッチのフルートとピアーナのトロンボーンによる掛け合いが唯一無二。全てにおいてパーフェクトなモーダル・ジャズと言っても過言ではないでしょう。そして、もう1曲これと同系統なのがB-4のDialogo。須永氏がラジオ番組にてジングル・ネタにしているので、テーマ部分を耳にしたことある方もいるかと思いますが、こちらもMetropoli同様に異常に完成度の高いモーダル・ジャズで、Antonello Vannuchiの歌心溢れるピアノ・ソロが抜群。もはやサントラの域を完全に超えています。また牧歌的なA-5のClub Privatoも素晴らしい。ピアーナの暖かなトロンボーンが全体をリードする至福のワルツ・チューンです。どの曲にも共通して言えることですがメロディーが非常に良いですね。やはりこのセンスは、カンツォーネの国であるイタリアならでは。サントラとしてはもちろんのこと、純粋なジャズ作品として聴いた場合でも相当にクォリティが高い1枚。家宝にしたいと思います。
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Companionship / Sahib Shihab

2006-10-21 | Hard Bop & Modal
1971年に独Vogueレーベルからリリースされた本盤は、ヨーロピアン・ダンス・ジャズの古典として広く知られる一作。彼の一連の作品の中で、クラブ世代にとって最も知名度が高いのは多分本作でしょう。ちなみに2枚組という体裁になってはいますが、Disc 2はClarke = Boland Sextett名義でCBSからリリースされたSwing Im Bahnofと全く同じで、Disc 1の方はそのアウトテイクに幾つかの別セッションを加えた一枚という内容になっています。最もアウトテイク集とは言えど、この時期のClarke = Boland楽団のこと、それはそれは素晴らし過ぎる作品が満載なのでご安心を。特にクラブジャズ系のコンピでは常連となっているA-2のBohemia After Darkは、Sahib Shihabのバリトン・サックスがスリリングに飛ばすハードバップ・チューンで格好いい。また、Disc 2では最近僕自身のコンピにも収録させてもらったD-2のSerenataが、少しラテンがかったアップテンポのボッサ・ジャズで文句なし。こちらではバリトンからフルートに持ち替えての演奏が映え渡ります。彼の場合、ブリブリ吹くバリトンも充分格好いいのですが、個人的には恍惚の表情を浮かべるフルートの方が好きですね。特にサディのヴァイブやボランのピアノには、この独特のフルートの音色が非常によく合っていると思います。ちなみに僕が持っているのは、おそらく80年代に作られたと思われるブート盤。オリジナルはそこそこレアでしょうし、おまけに見つかったとしても非常に高額なので、普通の人は諦めた方が無難かと…。
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Tokyo Sniper / 流線形

2006-10-20 | Japanese Groove
今から3年前に前作「シティミュージック」が宇田川町周辺で密かなブームとなった流線形の2nd。かく言う僕も、そのブームの真っ只中にいた人間の一人です。もうとにかく好きで好きで、最初にCDで買ったのにもかかわらず、後から出たアナログも当然ゲット。周囲のあまり音楽が詳しくない友達にもリコメンしまくりました。さてそんな流線形ですが、昨年メンバーの2人が脱退したために、今作ではリーダーのクニモンド瀧口さんの一人ユニットとなっています。ヴォーカルも前作の人から変わっているので、若干雰囲気が変わっているかなと思ったのですが、そんなことは全くなく、前作と同様に往年のシティポップスを現代に蘇らせた素晴らしい作品に仕上がっています。クラブ世代のリスナーを意識したためか、ボトムがやや強めになっている点がやや気になりますが、それもまぁ充分に許容範囲内。独特のきらきらしたアレンジと甘酸っぱい歌詞世界は本作でも健在です。特にM-2の「花びら」は前作の「東京コースター」直系の和製フリーソウルで素晴らしい。M-3の「レインボー・シティー・ライン」も、前作「3号線」の延長線上にあるナイト・ドライビング・チューン。またSaigenjiさんとのデュエットで聴かせるM-6のタイトル曲は、山下達郎氏のSolid Sliderのサビ部分をモロ使いしたシティ・ポップスで、どこか初期ピチカートを思わせるデュエットが最高です。とにかく全編で琴線触れまくりの名作なんで、前作を知っている人はもちろん、知らない人にも是非聴いてもらいたい一枚。オススメです。
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Listen or Love / Jenny 01

2006-10-18 | Japanese Groove
これは素晴らしい。個人的にポップス系のシンガーでは久々となる大ヒットです。最もポップスとは言っても、チャートを賑わすようなメジャー系アーティストではないのですが…。でも、この人は多分メディアに上手く乗せてあげれば、メジャー・シーンでも普通に通用するでしょう。天使のように美しいウィスパー・ヴォイスと、小悪魔系のキュートなルックスを合わせ持つそんな彼女の名はNaoko≒Jenny 01。僕もさっきラジオで聴くまで全然知らなかったのですが、どうやら既に何枚かアルバムを出している模様です。さて、本作はそんなNaoko嬢の作品をオルガンバー~フラワー人脈がプロデュース&リミックスした一枚。とりあえず須永さんが手がけたM-1の「都会」が最高です。ちなみに言うまでもなくオリジナルは大貫妙子ですね。アレンジ自体は須永節(というか太宰節?)全開のエレガントなローズ使いボッサ・ジャズでいつも通りなのですが、このバック・トラックとNaoko嬢の柔らかなヴォイスの相性が驚くほど抜群。思わず「ズルい!」と思ってしまうほど、奇跡的な出来に仕上がっています。Studio Apartmentが手がけるM-2のrain, rainも彼らの1stに近いオシャレなブラジリアン・フュージョン風の楽曲で良い感じ。そして、同じくStudio ApartmentによるM-3のMelodyが、これまた最高のポップ・ハウスに仕上がっています。Tommy Februaryとか最近のYukiなんかの雰囲気が好きな人は、絶対コレも気に入るでしょう。とにかく何より可愛らしい声が素晴らしいです。個人的に理想の声。クラブ系~ポップス・ファンまで幅広くオススメ出来る一枚。
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Jazz En Barcelona 1921-1965 / Various Artists

2006-10-15 | Hard Bop & Modal
Fresh Soundからリリースされた本盤は、タイトル通り1920~65年の間に吹き込まれたスパニッシュ・ジャズを3枚組のCDにまとめた作品。最も20年代~50年代中盤までの演奏を収めた1~2枚目のCDには全く興味を持てないのですが…。ただ、57~65年までの作品を収めたDisc 3は凄いことになっているので要チェック。驚くべきことに、普通に暮らしていたのでは手にすることはおろか、目にすることすらまずないと思われる激レアなEP音源が、丸ごと7枚分そっくりそのまま収録されています。ちなみにスパニッシュ・ジャズの第一人者であるピアニストTete Montoliuの作品が4枚、Salvador Font ''Mantequilla''なるテナー奏者の作品が3枚という内訳。どれも非常にクォリティが高いスパニッシュ・モダン・ジャズです。当ブログ的に本命なのはTete Montoliu y su Quinteto名義でのEP作品でしょうか。先日発売されたジャズ批評のEP特集で紹介されていた、デンマークのBent Jaedigがテナーで参加しているあの1枚。Horace SilverのカヴァーとなるM-15のHome Coockin'が相当格好いいヨーロピアン・ハードバップに仕上がっています。また、Salvador Font ''Mantequilla''の3枚も非常に素晴らしく、特にM-22のNo Problemなどオリジナルを凌ぐ完成度。考えてみればスペインってこの手のラテン系リズムの本場なので、こう言った曲を演奏すれば素晴らしいものになるのは必然と言えば必然なのですが。オリジナルのM-23、Blues 3/4などもスパニッシュ・モーダルで良い雰囲気です。と言うかこのDisc 3に収録された音源に関しては、本当にまず手に入らないものばかりなので、少々値は張りますが諦めてこのCDを買いましょう。
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Impacto / Hector Costita Sexteto

2006-10-14 | Brasil
こんなものまでCD化されてしまうなんて…。ブラジルのサキソニストHector Costitaによる1964年の隠れ名盤。たとえばOs Cobrasのメンバー辺りと比べれば、ジャズ・ボッサ界の中でも極端に知名度が低い彼ですが、意外にもその活動歴は長く、他のミュージシャンのサイドメンとして地味ながらも活躍していたそう。たしか最近紹介したセルメンのジャズ・ボサ盤にも参加していたはずです。さて、本作はそんな彼による珍しいリーダー作。エディソン・マシャードやセバスチャン・ネトらをサイドメンに迎えて、かなり本格的なハードバップをやっています。おそらく当時の他のハード・ジャズ・ボッサの名盤と比べても、際立ってジャズ度が高いと感じるはず。Horace SilverのカヴァーとなるM-5のTokioや、流麗な高速ジャズ・サンバであるM-10のTem Doなど秀逸ですが、個人的に本作中で白眉とさせてもらいたいのはM-1のLe Roi。どこか呪術的でアフロな雰囲気が漂うミディアムのブルース・ナンバー。要所要所での3拍子への転調も華麗にキマっています。トム・ジョビンの名曲を夜ジャズ風にアレンジしたM-2のInsensatezやM-4のVivo Sonhandoも文句なしの完成度。ちなみにオリジナルはFermataというマイナー・レーベルからリリースされていますが、今回はSom Livreからの復刻となっています。何度かオリジナルを買おうとしたこともあるのですが、安い盤でもないので躊躇していたところに来ての嬉しい再発。ブラジル・ファンのみならずジャズ・ファンにもオススメの一枚です。
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French Riviera / Isabelle Antena

2006-10-07 | Club Music
J-Clubシーンの重鎮である福富氏が企画した、日本エクスクルーシヴによるIsabelle Antenaのニュー・アルバム。大手外資系レコード店を中心に話題になっている本作ですが、予想通りと言うかやっぱりアナログでも発売。早まってCDを買わずに正解でした。つい1ヶ月ほど前に彼女の過去作品についてレビューしたので、彼女自身の解説はそちらをごらんください。さて肝心の内容のほうですが、一言で言うならばオシャレでポップなクラブ・ミュージック。ちょうど8年ほど前に、これと同じパターンで小西さんの企画でClementineの日本エクスクルーシヴ盤が出たことがありますが、そのアルバムと非常に良く似た雰囲気です。8年という歳月を経て参加プロデューサーは若干変化しているものの、基本的なコンセプトはほぼ同じかと…。「パリ=お洒落」という良い意味で短絡的かつ日本人らしいイメージを具現化した1枚になっています。タイトル曲のA-1は元Cymbalsの沖井さんがプロデュースしたボッサ・ビートのクロス・オーヴァー・ナンバー。どこかFPMにも通じる都会的なクラブ・ミュージックに仕上がっていて良い感じ。須永さんが手がけるA-3のSunshine Expressは、Deborah Brownのオリジナルを若干ゆったりめに生音でカヴァーした心地良いカフェ・ミュージック。そして吉沢はじめさんのエレガントなピアノが美しいD-1のDans le jardin d'Edenは、まるで和製Koopと言った感じのワルツ・タイム・チューン。それぞれのプロデュース陣が存分に個性を発揮しています。ただ、それでも1枚のアルバムとしてきちんと纏まっているのは福富さんのプロデュースの賜物。手軽にオシャレな気分を味わいたい人にはオススメのアルバムです。
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Tuesday Wonderland / Esbjorn Svensson Trio

2006-10-06 | Contemporary Jazz
前作から約1年半ぶりとなるe.s.t.の最新作。このブログをチェックしている人たちにはお馴染みだと思うけれど、一応念のためにもう一度だけ紹介しておくと、彼らはリーダーのEsbjorn Svenssonを中心としたスウェーデンのピアノ・トリオです。最もヨーロッパのコンテンポラリーなピアノ・トリオとは言っても、たとえば澤野工房が発掘してくるような耳障りの良いエレガントなトリオものではなく、その演奏は非常に前衛的な内容なのでご注意を。さて、そんな彼らによる最新作は個人的に今までの彼らの集大成的一枚。これまでも何枚か聴いてきましたが、本作はその中のどれよりも高水準だと思います。とりあえずM-2のタイトル曲が非常に素晴らしい。ピアノ・トリオでの演奏ながら、壮大なスケールと張り詰めた緊張感、そして北欧独特の哀愁を感じさせる演奏に脱帽です。テーマのフレーズも中盤のピアノ・ソロも格好良過ぎ。これまで彼らの最高傑作と思っていたSpam-Boo-Limboを超えた感すらあります。続くM-3のThe Goldhearted Minerもしっとりとした曲調ながら、美しいピアノのフレーズとエレクトロニクスが融合した名曲。軽くボッサなM-6のDolores In A Shoestandや、以前リリースしたSeven Days Fallingを少しアップテンポにしたかのようなM-8のEighthundred Streets By Feet辺りも本当に素敵です。ひょっとしたら今年1番良いアルバムかもしれません。その前衛的なスタイルゆえに誰にでも勧められる類の盤ではありませんが、真の音楽好きならきっとこの素晴らしさが伝わるはず。間違いなく名盤です。
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Dorothy's Harp / Dorothy Ashby

2006-10-03 | Free Soul
ジャズにおいてハープという楽器は非常にマイナーなもの。そのプレイ人口もおそらく他の楽器に比べて極端に少ないことでしょう。さて、本作はそんな数少ないジャズ・ハーピストDorothy Ashbyが69年にCadetレーベルに吹き込んだ音源です。古くは50年代から活動を続ける彼女がRichard Evansのオーケストラと共に作り上げた一枚で、その肌触りはとてつもなくラグジュアルでエレガント。ハープがリーダーを務めていること、さらにバックがオーケストラであることから、普通のモダン・ジャズとは少々異なる趣ではありますが、たまにはこんなアルバムを聴いてみるのもいいものです。いわゆるイージー・リスニングやヨーロッパ映画のサントラ辺りに近い質感。時代がらブラジル風の曲や8ビートの曲を取り上げているところも、そうした雰囲気に拍車をかけているのかもしれません。MadlibがサンプリングしたらしいM-9のCause I Need Itなんかはその典型。この後訪れるフュージョン・ブームの走りと呼べそうなナンバーです。M-2のCanto De Ossanhaなんかも同系統の曲と言えそうですね。個人的に気に入っているのはM-1のBy The Time I Get To Phoenix。知っている人は少ないかもしれないですが、四街道ネイチャー(現Force Of Nature)による「一年中」という曲の元ネタがコレです。ゆっくり跳ねる8ビートの中、柔らかなストリングスに絡む優美なハープの音色が絶品。あくまで脇役に徹する控えめなフルートもまた良し。今から8年前にコレをネタにヒップホップを作っていたKZAさんには、本当にもう脱帽という他ありません。ちなみにオリジナルは若干高めですが、最近CD化されたのでこちらでどうぞ。
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