■社説 朝日新聞(8月5日)
途上国とのビジネスでは相手政府の高官らへのわいろは欠かせない――。まことしやかにささやかれてきた話だが、日本政府の途上国援助(ODA)でもそうした腐った現実のあることが明るみに出た。
舞台はベトナム・ホーチミン市。日本のODAで高速道路を建設するプロジェクトで、コンサルタント業務を請け負った日本企業「パシフィックコンサルタンツインターナショナル(PCI)」の前社長ら4人が、同市の幹部に約9千万円のわいろを渡した疑いなどで東京地検特捜部に逮捕された。
PCIの複数の元幹部は「外国公務員へのリベートは会社が設立された直後から40年近く続いていた」と朝日新聞社の取材に答えている。
途上国には、インフラ整備などで巨額の開発援助資金が流れ込む。それを目当てに先進国の企業が相手国の高官にわいろを贈って取り入り、工事などを受注する。業界では以前から、半ば当然のことのように語られてきた。
今回のPCIのケースは二重の意味で悪質だ。わいろの金額の大きさもさることながら、ホーチミン市の公務員の汚職・腐敗を助長したこと。さらに、日本国民の税金が投入されているODAを食いものにしたことだ。せっかくの援助なのに、ベトナムの人々は失望したことだろう。
不正を許した外務省など日本のODA担当部門は、援助契約の点検や事後調査の方法などをもう一度、最初から見直すべきだ。
ODAは、途上国援助の名の下に、資本家が労働者から搾取、収奪する巨大な機構だ。
インフラ整備などの工事を日本企業に限定する「ひも付き援助」で、事業を請け負う企業(商社・ゼネコン等)と政治家の癒着がおこる。
また日本のゼネコンや地元の政治家が私腹を肥やす目的で不必要な施設が作られ、住民が援助ではなく被害を受ける。
国内でゼネコンを儲けさせる公共投資が国土交通省の天下りとつながっていることがマスコミでも取り上げられてきたが、日本は7兆円をかける世界一の公共投資国である。ODA も7000億をかけた国境を越える公共投資だ。巧妙に労働者の財産を資本家にかすめとってきた。
すべて労働者が、主人公でないために起こっている。労働者の国際連帯で、末期資本主義を終わらせよう。