なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

見逃した心不全

2014年09月18日 | Weblog

 9月15日(敬老の日)は当直明けだった。日直は内科の若い先生(4年目)で、シンナー中毒の患者さんと大腸術後の嘔吐・発熱の患者さんが同時に救急搬入されたので、いっしょに診ていた(どちらも入院)。他にも歩いて受診してきた患者さんが溜まってきたので、そちらはさらっと診て終わらせるモードだった。

 61歳男性が2週間前から咳と痰が続くという主訴で受診した。発熱はない。COPDや喘息を意識して、夜間の症状を聞くと、夜間は日中に比べて咳はあまり出ないという答えだった。肺炎を見るため胸部X線は検査したが、肺炎などの異常影はなさそうと判断した。心陰影が大きいとは思った覚えがあるが、咳と痰イコール気管支と肺の病気としか考えなかったようだ。鎮咳薬と去痰薬を処方して、症状が続いたらまた来てくださいと帰した。

 今日循環器科医からこの患者さんが心不全で入院したと聞いた。今日、呼吸器外来(大学病院から応援)があって、患者さんは咳が続くという主訴だったので、そちらに回された。呼吸器外来担当医は胸部X線を診て、心不全として循環器科に回した。改めて、胸部X線を見ると、心拡大があって、肺うっ血もありそうだ。

 胸部CTでは右胸水が軽度にあり、肺野にはもやっと肺水腫様の陰影がある。BNPは377と上昇していた。そして心不全になった原因は頻脈性心房細動だった。初診日の脈拍数は正常域でも、心拍数は上昇して不整だったはずだが、自分では聴診時に気づかなかったらしい。今後はちゃんと診ましょう。

 

  

 

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診断のゲシュタルトとデギュスタシオン

2014年09月17日 | Weblog

 岩田健太郎先生編集の「診断のゲシュタルトとデギュスタシオン2」が出た。変な題名が岩田先生らしい。今回の2では精神科・春日武彦先生が統合失調症と境界性パーソナリティー障害について書いている。春日ファンとしては、即買いだ。「1」から購入して楽しみながら読んでいる。多数の著者が担当しているので、疾患によって当たりはずれがある。そのうち半分いいものがあればよしとしたものだが、当たり率は高い。「モンドール病」を実際に自分が罹患した川島篤志先生がかいているのが面白い。よく癌になった医師が自分の闘病記を書くのがあるが、専門医が自分の専門とする病気にかかることもあるはずで、実際に経験した医師が病気を語るシリーズがあってもいいかもしれない。

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糖尿病を放置

2014年09月16日 | Weblog

 49歳男性が転倒して下肢の擦過傷様の潰瘍ができて、外科外来を受診した。外科医は皮膚科に回した。外科で提出した検査結果を見た皮膚科医が、そのあまりの悪さに驚いて内科に連絡してきた。血清クレアチニン4.78mg/dlでHbA1c12.5%だった。

 昨年の3月に糖尿病で通院していた近くの病院から、糖尿病腎症で当院の腎臓内科に紹介された。血清クレアチニンは1.4mg/dl程度だった。その後当院に通院してHbA1cは7%台で経過してした。今年2月の血清クレアチニンは2まで上昇していた。そこで通院を中断してしまった。

 先月で腎臓内科医が退職したので、常勤医はいなくなった。週に2回大学病院から応援がある。今日も来ていたが、糖尿病腎症は安静で利尿剤を使いうしかないとアッサリ言われた。治療を再開すれば、血清クレアチニンは少し戻るのかもしれない。ネフローゼを呈して、下半身全体に浮腫が目立つ。足が重くて動くのが大変な様子だった。胸水・腹水も軽度にある。むくんだ両下肢は赤黒く汚い色を呈していた。そこに浅い皮膚潰瘍が散在している。下肢の閉塞性動脈硬化もありそうだ。

 大至急透析ではないが。これは腎臓内科のある病院で診てもらう方がいいと判断した。やめた腎臓内科医が、困ったら腎センターのある病院に送るようにと言い置いていった。さっそく電話してみると、明日来てくれれば診てくれる(入院)というので、ありがたくお願いした。酸素飽和度は92%(室内気)と軽度に低下していた。下肢の潰瘍からは浸出液がたらたらと出ていて、内科外来の処置室で看護師さんが皮膚科で処方された軟膏を塗布して包帯を巻いた。

 高齢の両親が来ていたが、患者さん本人よりもしっかりしていた。患者さんはことの重大さがわかっていないようだ。糖尿病腎症は血清クレアチニンが5mg/dlを超えると、そこから一気に悪化してくる。以前病院にいた透析担当医は糖尿病腎症はクレアチニンが5を越えたら、シャントを考慮する様にといっていた。この前腎臓内科の外来に紹介した糖尿病腎症の患者さんは5を越えたところで、シャント造設となったが、それからあっという間に6から7と上昇した。

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急性胆嚢炎

2014年09月15日 | Weblog

 先週の金曜日に84歳が昼食後から腹痛・嘔吐が続いて夕方に受診した。肺癌で通院していたが(何かのかかわりで消化器科の外来)、担当医が他施設の健診で不在だったので変わりの診た。肺炎で入院した既往もあるが、肺炎はなかった。肥満(内臓脂肪が著明)があって、単純CTでも腹部臓器の読影は楽にできた。胆嚢結石が以前から指摘されているが、胆嚢炎の所見はなかった。白血球数はわずかに上昇して、CRPは陰性。肝機能障害はなかった。胆石の症状が疑われて入院となった。

 入院後も症状が続いて、白血球数18000、CRP17と上昇した。あまりに腹部が立派すぎて、患者さん本人もどこが痛いかわからないのか、下腹部が痛いと言ったりしていた。昨夜当直だったので、夕方から病院に来ていた。血液検査をみて、抗菌薬をスルペラゾンからメロペンに変更した。今日CTを再検すると、胆嚢壁が全周性に肥厚して、内部にdebrisがあり、急性胆嚢炎と確定した。37,5℃前後の発熱がある。肺癌はあるものの、まだ頑張れる見込みだ。今日日直で来ていた外科医に事情を話して、明日手術を検討してもらうことにした。

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急性硬膜外出血

2014年09月14日 | Weblog

 昨日の土曜日は日直で出ていた。午前中は開業医の先生方が診療しているので、受診は少なかった。通常お昼すぎから受診が増えるが、午後4時近くまで3名の受診だった。楽に終わるかと思われたが、午後4時過ぎに88歳男性が頭痛・嘔吐を訴えて受診した。心房細動・心源性脳梗塞の既往があり、ワーファリンを内服している。頭部CTを行うと右側頭~後頭にかけて凸レンズ様の血腫を認めた。わずかだが、外傷性くも膜下出血も伴っていた。もともと見守り歩行くらいのADLらしいが、会話はそれなりにできた。

 1名しかいない脳外科医はこの連休中不在だった。一番近い当地域の基幹病院は手術があるということで、受け入れ不可だった。その次に電話をかけた外傷に強い総合病院は、いったん受け入れOKとなったが、わずかの差で外傷性くも膜下出血の手術が入って、受け入れできないと連絡が来た。すでに搬送依頼の救急隊が来て、出発する直前だった。その後連絡した脳外科のある2か所の病院はいずれも受け入れできないと断られた。これで連絡する病院がなくなってしまった。

 脳外科医に連絡して、受け入れてくれる病院がないと伝えた。ワーファリン内服中で年齢もあるので、保存的に経過をみて対応を決めることになるらしいが、やはり脳外科医のいる病院で経過をみる必要がある。結局、他県になるが、知り合いのいる脳外科病院に頼んだので、そのに搬送する様にと連絡が入った。搬送先がなかなか決まらず、いったん帰ってもらった救急隊にまた来てもらって、やっと搬送できた。

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癌性胸膜炎、後縦隔膿瘍?・心嚢液貯留

2014年09月12日 | Weblog

 4日前の夜に当直帯で入院した85歳男性は左胸水が大量に貯留して、心臓・右肺を圧排していた。胸腔穿刺を行うと、淡血性の胸水が引けた。胸水細胞診を提出すると、小細胞癌が検出された。喀痰細胞診でも小細胞癌と診断された。手術適応はないし、年齢的に抗癌剤治療の対象にはならないと思われた。

 5月に外出して倒れ、当院に搬入された既往がある。検査してこれといった異常はなく、暑い日に歩き回った結果ということで、熱中症のようなもの?という結論で退院していた。その時の胸部X線を癌はあるはずという目で見た。左肺に数ミリの陰影があり、ひょっとしたらこれが原発かと思われるが、確定はできない。それにしても、進行が速い。やるとすれば、胸腔トレーンを挿入して、胸水をできるだけ排出して胸膜癒着術だろう。主治医になった内科の先生が家族と相談すると、専門医に診てもらいたいという希望があり、地域の基幹病院呼吸器科に転送した。そちらでは胸膜癒着術にどんな薬を使うのだろうか。自分がこれまで行った数少ない胸膜癒着術では、ピシバニールとミノマイシンだった。

 

 3日前に食欲不振で入院した86歳男性は、入院したからはそれなりに食欲はあった。入院時の胸腹部CTで後縦隔に腫瘤様の病変があった。また心嚢液も貯留していた。炎症反応が上昇していて、微熱がある。最初単純CTだったので、改めて造影CTをとると、外側が造影されて、内部は液体化していた。放射線科医の読みでは膿瘍ではないかという。膿瘍が心嚢に穿破したのではというが、確定はできない。2年前にCTで後縦隔に石灰化したリンパ節があり(腫瘤はない)、結核の既往が疑われた(治療の既往はなし)。食道に近接しているが、上部内視鏡検査では食道は異常なしだった。今のところ、穿刺して吸引できるほどの心嚢液ではない。

 当院でこれ以上の検索はできない。いつも急性心筋梗塞の患者さんを紹介している心臓センターのある病院には、心臓血管外科・呼吸器外科もそろっているので、そちらに紹介することにした。当院の循環器科医が、以前来ていたその病院の循環器科の先生に電話するとすぐに送ってほしいと快く引き受けてくれた。その先生は経食道エコーの資格をもっているそうで、さっそく行うそうだ。他の可能性としてはリンパ腫だが、表在も深部も含めて他の部位にリンパ節腫脹はない。結核なのだろうか。

 

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トルバプタン(サムスカ)の講演会

2014年09月10日 | Weblog

 昨日は市医師会学術講演会があって、肝硬変の浮腫・腹水に対するトルバプタン(サムスカ)の話だった。座長を頼まれていたので、開始時間の40分前から会場に行っていた。講師の先生は、大学院生の時に診療に来てもらったことがあって面識があるが、15年ぶりくらいだった。製薬メーカーで説明している間に勤務している病院の話をしていた。

 通常の利尿剤(アルダクトンA・ラシックス)の投与でも改善しない時にサムスカを使い投与する。高ナトリウム血症や肝機能の悪化の有無を確認しながら入院で使用する。アルダクトンA50mg・ラシックス40mg(静注だったらラシックス20mg・ソルダクトン200mg)使用しても効果がない時と思っていたが、アルダクトン25mg・ラシックス20mgで効果がない時から使用したほうがいいという話だった。また、数日の投与で浮腫・腹水が改善すれば、サムスカを中止するという。うっ血性心不全でいえば、重症の時にハンプを使用して、改善すれば通常の利尿剤だけに戻すというようなものか。

 肝硬変で使ったのは、基幹病院から転院してきたC型肝硬変の80歳代女性で、この方はサムスカが継続投与になっていた。処方はラシックス40mg・ダイアート30mg・アルダクトンA100mg・サムスカ7.5mgで、浮腫が改善した時に減量を試みるとすぐに悪化した。これはまれな例だろう。今のところはこれだけで、自分で処方を開始したことはない。消化器科の先生も3例くらいで、使用経験には乏しい。

 米国ではサムスカで肝機能障害が出て、肝硬変の適応はとっていない。日本で使用経験が増加してある程度安全性が保障されれば、事情は変わるのかもしれない。

 講演会の座長や講演会後の懇親会は苦手だが、昨日は講師の先生や医師会の先生方と話をしながら、テーブルの料理を普通に食べていた。少し慣れてきたようだ。

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後縦隔腫瘍?

2014年09月09日 | Weblog

 食欲不振で86歳男性が受診した。膵嚢胞の手術歴があり、膵癌が疑われたようだが、結果的には悪性ではなかった。その後1回腸閉塞で短期間入院した既往がある。また内科クリニックで糖尿病の治療も受けていたが、血糖コントロールは悪く、といってインスリン導入もためらわれるということだったようだ。

 胸腹部CTで心嚢液が軽度だが貯留していた。心臓の背側である後縦隔に食道に接して(食道からの進展も否定できず)、腫瘤があった。2年前のCTにはなかったものだ。食道癌の有無を上部消化管内視鏡検査で確認するとして、悪性リンパ腫の可能性もある。LDHが550と高値で、悪性疾患を示唆しているようだ。あとはIL2受容体抗体を含めて腫瘍マーカーを提出する。今日のCTは単純だけだったので放射線科医と相談して、改めて造影CTを再検予定となった。さて、何だろう。

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成人パルボウイルスB19感染症

2014年09月08日 | Weblog

 先週木曜日から夏休みだったので、4日ぶりで病院に出てきた。午前中は内科再来を診ていたが、なかなか調子が上がらなかった。内科の若い先生から58歳女性のことで相談を受けた。先週火曜日に全身の発疹(紅斑)と多発性関節痛で受診したそうだ。リンゴ病の小児との接触はない。パルボウイルスB19IgM抗体を提出した。受診時から浮腫も伴っていたというが、金曜日に全身の浮腫(主に下半身)がひどくなり、救急外来受診した。・担当は外科医だったが、心不全・腎不全・肝不全ではないので、そのまま経過をみることにして、月曜日に内科外来を受診するよう伝えた。通常は60Kgの体重が68Kgに増加していたそうだ。

 朝に、先週診察した先生から、今日受診する予定だが、対応をどうするかと相談を受けた。外注検査のパルボウイルスB19IgM抗体は陽性と出ていた。診断は正しかった。これまでに成人のパルボウイルスB19感染症を数名(たぶん5人?)診たことがある。子供から感染した若いお母さんや姪からうつった若いおばさんもいた。子供から感染したお父さんは2-3週間発熱と関節痛が続いた。印象的だったのは、Pure red cell aplasiaの60歳代男性で、症状はなかったが、パルボウイルス感染の先行が証明された。当時病院にいた腫瘍内科の先生が治療したが、今思うと血液内科に紹介すべきだったか。

 いっしょに患者さんを診察すると、まだ皮疹が残っていた。関節痛は軽減して、浮腫もひどかった時よりも改善してきたという。ピークは過ぎたようだ。浮腫がこれほど目立った患者さんは診たことがないが、他の疾患を併発しているようではない。処方するとすれば少量の利尿薬だが、余計な薬は飲みたくないという。このまま1週間経過をみて、軽度に異常を呈していた検査を再検することにした。B型肝炎ウイルスのキャリアといわれているというので、そちらも合わせて検査(肝炎マーカーと腹部エコーなど)する。

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Stevens-Johnson症候群?

2014年09月03日 | Weblog

 昨日、56歳男性が内科医院から蜂窩織炎の疑いで紹介されて、救急搬入された。前日に長時間草刈をしたそうだ。後で漆もあったようだという話も出た。一昨日夜から40℃の発熱が出現して、市販の「ルル・ゴールド」を飲んだ。その後に頭痛もあって、さらに「ノーシン」も飲んだ。今朝、発熱が続いて、右頸部から上胸部にかけて浮腫上紅班があるのに気付いた。紅班の中心部には多発性に水疱形成も見られた。顔面浮腫と両手の浮腫もあった。下肢には小紅班が数個あった。幸いに呼吸困難・嚥下困難はなく、バイタルはショックではない。

 外科医が救急対応したが、蜂窩織炎ではないということで、皮膚科(大学病院からの応援)にコンサルトした。あっさり蕁麻疹でしょうという返事だったそうだ。いやいや単なる蕁麻疹では絶対にない。発熱をきたす何らかの感染症かあるかと、検索したが何もなかった。発熱は皮膚疾患そのものの全身症状だった。喉頭浮腫の有無を診てもらった耳鼻咽喉科医は、Stevens-Johnson症候群ではないでしょうかと返事をくれた。耳鼻科医の診断の方が正しいと思われた。内科の若い先生が担当になって、ステロイドを大量投与した(ソル・メドロール500mg)。今朝は全体的に発赤が軽快していた。顔面浮腫はまだあった。担当医はステロイド投与を継続して、漸減するという。抗菌薬投与は迷ったが投与しなかったそうだ。

 当院は皮膚科常勤医がいないので、このような患者さんが来た時にどうするかという問題がある。当地域の基幹病院には皮膚科常勤医が2名いて、うち一人は多少面識もある。すくに連絡して、救急搬送して外来でまずは診てもらうのがベストだろうということに入院させてから気づいた。以前、入院させてステロイドで経過をみているうちにTEN様になって、あわてて大学病院に転送したことがある(受け入れはかなり渋かった)。

 明日から4日間夏休みをとる(木曜金曜の夏休み+土曜日曜)。箱根に2泊して、その後東京に1泊して戻ってくる予定だ。日曜日は妻が小児科専門医試験の面接の仕事があるので、その間ひとりで時間をつぶすことになる。オルセー美術館展を見に行くが、時間が余るので喫茶室ルノアールをはしごして感染症の本を読むことにした。

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