77歳男性が8月中旬に食欲低下を主訴に内科外来を受診した。画像検査で前立腺癌があり、大動脈周囲リンパ節が腫大してほとんど一塊になって横隔膜下か前立腺に接するところまであった。肺転移もあった。腫瘍マーカーはPSAが1000以上と判明した。相当に進行しており、泌尿器科医の表現では末期癌の一歩手前ということだった。今週泌尿器科外来に来てもらって、病状説明して治療開始となる予定だった。
ところが、昨日夕方から両側下肢の脱力で歩行できなくなり、当直帯で救急搬入された。対麻痺だった。意識は清明で、上肢の動きは問題ない。泌尿器科医が整形外科医に相談して、MRIを撮ろうとしたが、右目は義眼だった。昔の義眼で、患者さんによると磁石で眼窩に固定しているという。義眼をはずしてもらおうと、眼科医に相談すると、昔おの義眼で、それを外しても中の十尺は外せないという。MRの技師さんが検査すると、金属反応が強陽性だった。MRIをあきらめて椎骨のCTで見ると、整形外科医が第2胸椎と第4胸椎の位置に前立腺癌が転移していて脊柱管内にも腫瘍がある。
手術は無理だろうということで、がんセンター放射線科に放射線治療をお願いすることになり、救急搬送した。整形外科医によれば、放射線は1回だけ照射して、それで効果なければそれ以上はしないという。2-3日で当院に戻ってくることになる。それからホルモン療法が開始される予定だ。