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なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

宮沢孝幸先生の本

2021年05月04日 | Weblog

 「京大おどろきのウイルス学講義」宮沢孝幸・著(PHP新書)を読んでいた。著者の宮沢先生はテレビの「そこまで言って委員会NP」に出演されていて、顔が落語家の立川志らくさんに似ている。

 番組で、ご本人は「コロナのことはあまり書いていない、(読むと)最後はもやっとする」と言っていたが、ベストセラーになっていた。

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は世界中に広がって、新興ウイルス感染症として認知された。だが、実際は毎年2~3個のペースで新興ウイルス感染症が発生している。新型コロナのようなウイルスがまた出てくる可能性がある。

 昔は地球上のある地域でヒト新興ウイルス感染症が発生しても、その限られた地域で広がって終わりだった(アフリカのあるが謎のウイルスで全滅など)。現在は、都市化・交通の発達(・戦争)によって世界中に広がりやすくなった。

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、コウモリ(キクガラシコウモリ)の体内で組み換えが起こってヒトに感染するウイルスになった。または、他の動物に2種類のコウモリ由来のコロナウイルスが感染して組み換えを起こした。

 つまりキクガラシコウモリの中か他の動物の中で、SARS-CoVとSARS-CoVと似たようなウイルスが共感染して、遺伝子の組み換えが起こった。組み替えられた新しいウイルスは、ヒトの細胞にも相性の良い遺伝子配列になって、世界中に拡がった。

 風邪コロナウイルスのNL63は13世紀頃(鎌倉時代)に発生したので、人類は鎌倉時代から「ウィズコロナ」にだった。動物由来の新たなコロナウイルスがヒトで流行する可能性もある。人間は動物とともに生きていく以上、常に(過去も未来も)「ウィズコロナ」になる。

 新型コロナウイルスには、イギリス型・南アフリカ型・ブラジル型・フィリピン型(・インド型)などの変異株があり、スパイク蛋白の一部のアミノ酸が変わることによって、感染力や拡散力が増した。

 新型コロナウイルスは生き残るために、ランダムにいろいろな部分の配列を入れ替えている。ランダムに変化させていったら、ある部分を変化させたときに、ヒトへの感染力や増殖力が増して生き残りやすくなった。

 宮沢先生は畜産獣医学科出身でもともとは獣医さんだ(臨床はしていないだろうからウイルス学者だが)。医師が知っているのはヒトに病原性をもつウイルスをちょっと知っているだけだ。動物に感染するウイルスはほとんど知らない。獣医さんの方がウイルス全般について詳しいのだった。

 一般の人でもわかるようにやさしく記載している。最前線の学者さんで、ここまでわかりやすく説明出来るというのも才能だと思う。

 

京大 おどろきのウイルス学講義 (PHP新書)

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