なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

粘液水腫性昏睡・肺胞低換気

2020年03月13日 | Weblog

 2月半ばに自宅で動けなくなって救急搬入された85歳女性のその後。

 搬入時は意識障害・浮腫・低体温・低血圧・低ナトリウム血症を呈していた。当直の外科医(大学病院からバイト)が低体温そのものによる症状と思ったらしい。加温して明日まで点滴をしていきますと連絡が入った。

 その後に追加した甲状腺機能で著明な低下症を認めて、夜間にチラーヂンS50μgを内服させていた。朝早めに大学へ行ってしまうので、直接の申し送りはなかった(早朝の当直分は外科常勤医がカバー)。

 粘液水腫と心不全による浮腫があった。体温・血圧も上がってきて、少しずつ改善するかと思われた。食事も介助で食べ始めていた。ところが、入院して1週間目にCO2ナルコーシスになった。

 病棟でその前の日の夕食が食べなかったという報告を聞いて病室に見に行くと、呼吸が弱い。血液ガスをとると呼吸性アシドーシスを呈していた。みるみる呼吸が弱くなって、アンビュバッグでゆっくりと補助呼吸を開始したが、そのままほとんど呼吸停止になった。

 気管挿管・人工呼吸を開始するしかなかった。SIMV+PSで経過をみて、自発呼吸が見られたが弱かった。2週間経過して、続けるとすれば気管切開をするしかない。それでもがっかりするほど、わずかしか改善しない甲状腺機能がなんとか上がってきた(まだ低下症)。

 いきなり抜管では不安なので、NPPVに切り替えて経過をみることにした。フィリップスのV60を使用したが、これは使いやすい。内科専攻医の若い先生方は普通に使用しているが、当方はV60は初めてになる(BiPAPの世代)。

 心配になるほどうまくNPPVに乗っていた。自発呼吸が思ったよりあるので、日中は外して夜間に使用するなど、離脱を目指してやってみる。

 抗サイログロブリン抗体・抗TPO抗体陽性で橋本病だった。副腎不全ではなかった。

 腎性代償作用が働いていて、PaCO2が低下しても重炭酸イオンが高いので、慢性的なCO2上昇で経過していたはずだ。粘液水腫の影響はあるが、機序としては肥満低換気症候群なのだろうか。入院後ちょっとだけ良くなりかけてから悪化したのがわからない。

 

コメント
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