先々週の土曜日の日直の時に、86歳男性が心窩部痛で救急外来を受診した。腹部は平坦・軟で心窩部に軽度に圧痛のみだったが、それまで特に症状がなかった方の急な発症で、年齢的には何か器質的な疾患があると判断された。
外科の術前検査の相当する血液検査と胸腹部造影CTを行った。軽度の炎症反応上昇と胆嚢内の小結石は認めたが、心窩部痛の原因となる疾患を指摘できなかった。心電図や心原性酵素の上昇もない。
ちょっと拍子抜けだった。胃十二指腸病変は内視鏡検査をしないとわからないので、入院して経過をみて週明けに上部内視鏡検査を行うことにした。絶食・水分のみで点滴をして、タケキャブ・ムコスタを処方していた。月曜日の朝には心窩部痛は軽快していた。
内視鏡検査では十二指腸下行脚に粘膜の発赤とびらんの散在を認めた。十二指腸炎ということになるが、十二指腸炎とは何かというと良くわからない。
また検査の結果、食道にわずかな隆起と浅い陥凹(0-Ⅰ+Ⅱc=表在癌)を認め、胃噴門部小彎に浅い隆起(Ⅱa)も認めた。これらは腹痛の原因にはならないので、健診で見つかった形になった。
心窩部痛は消失して、食事摂取も良好になっていた。家族と相談して、内視鏡治療のできる専門病院に紹介することになった。一人暮らしということで、家族の希望で当院を退院した朝に、そのまあ外来受診へ向かうことにした。
患者さんは昨年奥さんを在宅介護の末に亡くしていて、お盆のことを盛んに気にしていた。