なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

腎膿瘍でした

2019年08月03日 | Weblog

 地域の基幹病院泌尿器科の先生から連絡がきた。当方が6月半ばに紹介(救急搬送)した75歳女性は病状が安定したが、治療継続とリハビリ目的で転院をお願いしたいという。話を聞いて全然思い当らなかったが、転院の手続きをすすめてもらうことにした。

 あとでカルテを開いてわかった。泌尿器科ではなく、タール便で消化器内科へ紹介したはずの患者さんだった。先方の病院の臨床各科で診てもらっていて、最終的に泌尿器科の扱いになったのだった。

 当院搬入時は、直腸指診でタール便を認めて、Hb6.3g/dl(MCV89.8)と正球性貧血を呈していた。BUN/Cr比も上昇していて、急性出血と判断した。土曜日の日直で、現在当院は夜間休日の消化管出血に対応できないので、紹介させてもらった。

 CRP11.4と上昇していたが、胸腹部CTで肺炎はなかったので、それほど気にしていなかった。貧血の程度からは相当な量の消化管出血なので、すぐに対応できる病院へ送ることしか考えていなかった。

 消化管出血はそうたいしたことではなかったそうだ。内科医院に高血圧症で通院していて、ある程度の慢性腎臓病(CKD)と腎性貧血があったらしい。そこに消化管出血が加わったので、大量出血と思われる値になったらしい。

 当院搬入時に平熱だったが、搬送後に発熱があり、感染症の検索がなされて、腎膿瘍と診断されていた。尿培養・血液培養で大腸菌が検出されて、泌尿器科で治療していたが、炎症反応の値がなかなか改善しなかった。脊椎MRIで検査した結果、腰椎硬膜外膿瘍もあった。ただし大きさからは、手術処置せずに抗菌薬投与での改善が見込める、と判断されていた。

 現在は抗菌薬内服が継続されていて、それを継続して肺用症候群・筋力低下に対するリハビリをお願いします、という内容だった。「上部消化管出血・大量出血」として搬送したが、実際は「腎性貧血+消化管出血はあるが、主病は腎膿瘍からの硬膜外膿瘍」が正解だった、ということ。ありがとうございました。

 CTの所見で左腎臓内に嚢胞があるので、右腎も嚢胞と判断したが、よくみると境界が明瞭ではない。

 

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