なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

一発診断 第10回~偽性腹壁ヘルニア、亜急性壊死性リンパ節炎症(菊池病)

2019年08月12日 | Weblog
CareNeTV
一発診断
第10回 39℃の発熱と右頸部に痛みと腫脹がある33歳男性
 
Script illuness19
68歳男性
現病歴:
数日前から右側腹部のヒリヒリ感があり、其の後、ぶつぶつが出て痛痒いため受診
身体所見:
デルマトーム(Th10~11)に一致した神経痛と水泡を伴う浮腫性紅斑→帯状疱疹
2週間後 数日前から急に右横腹が膨らみ、便秘になったため受診→同領域に帯状疱疹による色素沈着
腹部CT:腹腔内病変(-)ヘルニア(-)
一発診断:偽性腹壁ヘルニア
 
偽性腹壁ヘルニア
概念:
・帯状疱疹にみられる、デルマトームに位置した欠損のない腹壁の膨隆
・後根神経節の炎症が前角・前根に波及することで運動神経障害が生じ、腹壁筋の筋力が低下することで生じる
・帯状疱疹の3~5%でみられる
・皮疹が出現して2~6週間以内に出現(平均3.5週で出現)
・男性に多い(4倍)
・Th11領域で最も多くみられる
・立位や息みで腹部が膨隆する
・腹圧の低下
・自律神経障害による腸管運動の低下→便秘・偽性腸閉塞(約20%)
・約89%の症例が2~18影地以内に完全に治癒する(平均4.9か月)
・帯状疱疹の運動神経障害の程度により、側彎や歩行障害を来すことがある
鑑別診断:
糖尿病性胸部神経根障害
・糖尿病性神経障害のひとつ(体幹ニューロパチー)
・胸神経の分布に一致した胸腹部の痛み・感覚異常
・運動枝が障害されると腹筋が弛緩し、腹部が局所的に膨隆する
・体重減少を来すこともある
一発セオリー:
帯状疱疹罹患後に腹部が膨隆してきたら・・・
偽性腹壁ヘルニア

これはまったく経験がない
 
Script illuness20
33歳男性
現病歴:
39度の発熱と頸部痛を訴えて受診
身体所見:
・扁桃の腫脹、白苔の付着はない
・右頸部に発赤、熱感、腫脹、圧痛を認め、後頸部リンパ節の腫脹(+)
検査所見:
・白血球3000/μL(異形リンパ球3%)、CRP6.0mg/dL、LDH400IU/L
一発診断:
亜急性壊死性リンパ節炎(菊池病)
 
亜急性壊死性リンパ節炎(菊池病
概念:良性の非化膿性リンパ節炎
病因:はっきりわかっていない
・ウイルス感染
・自己免疫
・アレルギー
疫学:
・40歳未満に多い
・やや女性に多いと言われていたが、最近の報告では性差なし
症状:三徴
1.発熱(35%)
2.圧痛を伴うリンパ節腫脹(100%)
・0.5~4cm大(約90%)(ときに6cm)
・自発痛(約60%)
・片側性(約90%)
・後頸部(約90%)>鎖骨上窩、腋窩、鼠径
・両側性・全身性(約3%)
→縦隔・腹腔内・後腹膜はまれ
3.白血球減少(43%)
そのほかの症状
・倦怠感(7%)
・関節痛・筋痛(7%)
・肝脾腫(3%)
・その他:寝汗・体重減少・嘔気・嘔吐・下痢・腹痛
検査所見:
・白血球減少(43%)
・異型リンパ球(25%)
・血小板減少
・フェリチン上昇
・貧血
・血沈亢進(70%の患者で60mm/Hr)
・肝胆道系酵素上昇:とくにLDH
治療:
・数週~数か月以内に自然軽快
・消炎鎮痛薬で対症療法
・症状が強い場合もしくは経過が長い場合:ステロイドの内服(0.4mg/kg/日)(20~30mg/日)投与のタイミングの明確な基準がない
消炎鎮痛薬で症状が改善した場合は施行するまでに至らないため。確定診断されないまま治癒する
予後:
・再発例あり(3~4%)
・SLEに移行することがある(約3%)
:108人のうち15年間で2人が発症
:108人のうち5年間で3人が発症
   ↓
再発の過程で抗核抗体が陽性化することがある
注意すべき併発疾患
・SLE
・無菌性髄膜炎
・成人スティル病
・多発性筋炎
・抗リン脂質抗体症候群
・甲状腺炎
・自己免疫性肝炎
一発セオリー:
若年成人で発熱、圧痛・自発痛を伴う後頸部リンパ節の腫脹、白血球減少、LDH上昇をみたら・・・
亜急性壊死性リンパ節炎(菊池病)

 これは数例経験がある。症状が軽度で外来治療で軽快した症例もあった。整形外科クリニックの看護師さんが、当院の内科外来を2回受診して、その都度鎮痛薬などが処方されたが、症状が続いた。以前当院に勤務していた先生だったので、常勤医が診察するよう電話が来て話を聞いただけでわかるくらい症状が典型的だった。入院後に外科リンパ節生検してもらった症例もある。全例女性で、症例が少ないのでその後にSLEを発症したというのは経験していない。

コメント
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