なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

肝膿瘍

2015年06月04日 | Weblog

 一昨日の夕方にクリニックの先生から不明熱の患者さん(64歳女性)を紹介したいという電話が来た。先々月からの発熱というので、亜急性の経過で緊急性はないと思ったので、翌日の内科新患に紹介してもらうことにした。発熱以外の症状はないそうだ。そこには高血圧症・高脂血症で通院している。3週間くらい経過しての受診で、クリニックで抗菌薬を処方して約3週間抗菌薬を投与してみたが軽快しない。ニューキノロンやミノマイシンが処方されていた。通常ならばもっと早く紹介するはずだが、日中は平熱から微熱(夜間に38℃台)で重症感があまりない印象だったのだろう。

 その日は内科再来で、新患担当は内科の若い先生だった。朝の段階では、発熱以外の症状がないことから、感染症としては心内膜炎がありうるか、どちらかというとリウマチ抗原病かなと話していた。

 診察しても確かに発熱しか症状がなかった。倦怠感を訴えて入院を希望されているという。画面で検査結果を確認すると、白血球数14000、CRP10だった。ALPとγ-GTPがわずかに上昇していたが、AST・ALT・LDH・総ビリルビンは正常域だった。HbA1cが6.7%と軽度の糖尿病があるようだ。次に、胸腹部CTを確認した。肺炎はなかった、腹部を見るといっせいに「あっ」と声が出た。肝臓右葉に明らかな肝膿瘍があった。胆嚢が腫大していないが、壁肥厚と結石(1個)があって、肝床部から膿瘍につながっている。胆嚢炎からの波及だ。CT一発で診断だついた。

 その前に循環器科医をつかまえて、心内膜炎疑いで心エコー検査を依頼したばかりだった。菌血症からvegitationが付く可能性もないとはいえないことと、術前検査の意味もあって、そのまま心エコーは行うことにした。入院は外科で診てもらうことになった。

 患者さんのところに行って、内科と外科で右季肋部~側腹部~背部に疼痛・違和感がないか何度も確かめたが、何でもないという。圧痛・knock painもなかった。若い先生は診察で所見がとれないことを残念がっていた。外科医は胆嚢癌だろうという。胆嚢癌が肝床部から肝臓に浸潤して、胆嚢の炎症がそのまま肝臓に波及したと考えていた。CEAは正常で、CA19-9は200ちょっとだった。炎症でも上がるので何とも言えないが、外科医の解釈が正解のように思える。MRIも行うが、画像だけで癌と診断するのは困難かもしれない。癌だと播種させる可能性があるので、うっかり穿刺もしにくいという。

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