なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

化学療法学会2日目

2015年06月06日 | Weblog

 化学療法学会2日目。モーニングセミナーは三鴨先生で、敗血症マーカーのプレセプシンの話だった。プロカルシトニンは2-3時間で反応して、感染症を合併しない侵襲の大きな疾患でも上昇するが、プレセプシンは2時間未満で反応して、単なる炎症性マーカーではなくて主に感染症が存在する場合に上昇する。プレセプシンンは前pre+敗血症seps(is)+蛋白(prote)inの意味で可溶性CD14サブタイプ。500以上を敗血症(314以上が参考値)とするが、200以上なら何かあると考えていいそうだ。APACHEⅡスコアと相関して重症度を良く反映するので、予後予測マーカーとしてプロカルシロニンよりも有効だ。再発の予測マーカーにもんる、高いままだと再発する。ピットフォールとしては、プレセプシンは腎排泄なので慢性腎不全や透析患者では高値になってしまう(急性腎不全では使える)。肺炎では有意差は出るが、差は今一つだという(CAPでは重症でないと差がつきにくい)。セミナーで出されたサンドイッチが豪華でちょっと驚いた。

 午前中はワクチンと緑膿菌の抗体療法などの講演を聴いた。ランチョンセミナーは富山大学病院の感染症科を立ち上げた山本善裕先生の感染管理の講演を聴いた。御出身の長崎大学から感染症の教授が30数名も出ているそうだ。

 午後はクロストリディウム・ディフィシル感染症(CDI)のシンポジウムを聴く。最近、当院でもCDIが複数出ているので関心があった。下痢を欠く症例もあり、腸管穿孔・イレウス・中毒性巨大結腸症などの重症例では最初から下痢を欠くそうだ。抗菌薬で腸内細菌叢のバランスが崩れると、回復するまで数週間から2カ月くらいかかる(その間に再発しやすい)。軽症~中等症では抗菌薬を中止して2-3日経過をみると15~23%で軽快するが、まあ通常は治療することになる。メトロニダゾール500mgを1日3回10日間投与(まずこちらから)かバンコマイシン125mgを1日4回10日間投与する。バンコマイシンでは阻害できない芽胞も阻害するfidaxomicin(200mg1日2回)が治験中。重症ではバンコマイシン125~500mgを1日4回10日間投与する。腸管の問題で経口投与できない時は、メトロニダゾール500mgの点滴静注やバンコマイシン500mgを注腸(併用も)。再発時(治療完了後8週間で再燃・再感染)は、1回目では初回と同じ(重症はバンコマイシンへ)、2回目の再発ではバンコマイシンのパルス療法を行う。便移植療法は90%の治癒率だというが、実用は難しそうだ。プロバイオティクス(クロストリディウム・ブチリクム=ミヤBM)はエビデンスが確定していないが、併用されているようだ。毒素吸着療法(もうすぐ実用化)や抗CD toxinモノクローナル抗体療法(まだ研究段階)もある。検査でCD抗原陽性・CD toxin陰性でも、培養すると2/3はtoxin陽性になるので、治療するそうだ。

 その後、抗酸菌感染症のシンポジウムも聴いた。未だに日本は結核の中蔓延国で常に結核の可能性を考える必要がある。年間2万1千人が発症して、塗抹陽性が8千人になる。70歳代~80歳代の高齢者が多く、戦後期に感染して再活性化したものだ。2011年段階で54%が治療成功するが、15%は死亡している(高齢者が多い)。治療開始後2カ月での菌陰性化が重要で、陰性化しないと難治性になる。診断・治療の遅れが問題で、doctor's delay(診断まで時間がかかった)とpatient's delay(健診で指摘されても受診しない)がある。多剤耐性結核(MDRTB)はイソニアジドとリファンピシン2剤に抵抗性の結核菌で、不規則な服用・副作用で結核薬が使用できない・不適切な処方(キノロン単独)・最初から耐性菌感染(ロシア・中国)などで起こる。数十年ぶりに新規抗結核薬が出てきていて、MDRTBにも有効・治療期間が短くできる・重篤な副作用が少ないなどの利点がある。

 ICD講習会にも出たので、大分疲れた。これで3回出席したのでICDを申請することができる。やれやれ。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする