なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

プライマリケア学会1日目に聴いたこと

2015年06月14日 | Weblog

 昨日はプライマリケア学会1日目。午前は漢方薬のシンポジウム。症例は脳梗塞後遺症の82歳女性で、夜間に頭痛で何度か救急外来を受診している。介護している娘の何かあったらという不安もある。アセトアミノフェンやNSAIDsはあまり効いていない。往診医は口渇・足背のむくみ・舌歯痕に着目して、水毒があると判断して五苓散を処方したところ、効果があった。水毒は「水の変調・偏在によって起こる症状」で、口渇・下痢・浮腫・舌歯痕・尿不利(尿の出が悪い)など。さらに介護支援や家族へのアプローチを行うところが家庭医らしい。水毒を伴う頭痛の治療として、五苓散(水毒あり・冷えなし)・真武湯(水毒と冷えあり)・半夏白朮天麻湯(胃腸が弱い)。2例目は不眠の71歳女性で、ベンゾジアゼピン系はある程度効くが、飲み続けることに不安がある。下半身の冷えがあり、夜間に尿意を催してトイレに行く(冷える5回、冷えないと1~2回)。冷えに着目して、清心蓮子飲を処すると夜間尿が2回以内になり熟眠できるようになった。不眠の漢方治療としては、酸そう仁湯(体力がなく疲れているのに眠れない)・抑肝散(いらいら神経過敏)・加味逍遥散(冷え・不安感が強い)・冷えのぼせ)がある。頻尿の漢方治療としては、八味地黄丸(胃腸が丈夫・前立腺肥大)・清心蓮子飲(胃腸が弱い・不安感が強い)・真武湯(胃腸が弱い・冷えが強い)。今回もうちょっと漢方のレパートリーを増やしたいと思った。

 その後は、「認知症のBPSDへのアプローチ」。講師は平原佐斗司先生で「医療と看護の質を向上する認知症ステージアプローチ入門」の著書がある。BPSDを理解するための中核症状を詳しく解説された。BPSDは、1)複合的要因によって起こる、2)必ず出現するわけではない(緩やな機能低下で経過することも)、3)様々な程度とタイプがある。アルツハイマー型は薬物を使わない対応(環境調整)も効果があり、対応困難では薬剤を使用する。それに対して、レビー小体型認知症と前頭側頭型認知症は薬剤介入が必要になる。まずは抗精神薬を使用しないで対応を考えるが、必要があればリスパダール・ルーラン、セロクエル・ジプレキサなどを少量がら使用する(添付文書の記載は統合失調症での使用量)。前頭側頭型はSSRIが有効。レビー小体型では幻視にドネぺジル・抑肝散、パーキンソン症状にL-DOPA、REM睡眠行動異常にリボトリール、起立性低血圧症にドプスなどが処方される。

 午後は「急性腹症診療ガイドラインの概要と使用法」。まだ購入はしていない。重要なQuestionについての説明を聴いたので、かなり読みやすくはなったと思う。その後は「精神科救急患者の初期対応」。症例は、1例目が繰り返す過換気症候群(パニック障害?)で、2例目が自殺企図(過量服薬)。1例目は一般病院でも対応は可能だ。2例目は精神科通院中で、リストカットや過量内服の既往があり、境界性人格障害と推定される。こちらは精神科のない病院では大変だ。身体疾患(誤嚥性肺炎)の治療を要するが、治療拒否して退院を主張している。鎮静・身体抑制をしてでも頑張るしなないそうだ。一緒のグループになった若い先生(イケメン)は飯塚病院所属で精神科があるという。当県では中心となるべき市立病院が、精神科救急を扱えるように精神科医を集めている段階だ。精神科単科病院だけなので、身体疾患があると対応できない。

 今日は家庭医療が中心のセッションだけだったので、学会には行かないで、内科学会の教育講演会(参考になるようなならないような)を聴いてから帰ってきた。

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